住宅ローン払えない人が増えている実態
「住宅ローンを払えない人が急増している」というニュースを見て、不安を感じている方は多いのではないでしょうか。
この記事では、返済困難者増加の背景要因、返済困難に陥りやすいケース、予防策と対処法を、公的機関の統計データを元に解説します。過度に不安を煽らず、実用的な情報を提供します。
現在住宅ローンを返済中の方も、これから借入を検討する方も、リスクを正しく理解し適切な対策を講じることができるようになります。
この記事のポイント
- 約4%(25人に1人)がデフォルト経験があり、返済困難者は珍しくない
- 背景要因は金利上昇(日銀の利上げ)、物価高騰、実質賃金の低下
- 変動金利・高い返済比率・収入不安定な人は返済困難に陥りやすい
- 予防策として固定金利への借り換え、繰上返済、家計見直しが有効
- 返済困難時は金融機関への早期相談、貸付条件変更、任意売却、個人再生等の対処法がある
統計データで見る返済困難者の割合
住宅金融支援機構のデータによると、住宅ローンのデフォルト経験がある人は約4%、つまり25人に1人の割合です。これは決して珍しい数字ではなく、誰にでも起こりうる問題であることを示しています。
返済困難の背景には、収入減少、病気、離婚、金利上昇等、様々な要因があります。
貸付条件変更の実績(金融庁統計)
金融庁の統計によると、2020-2021年のコロナ禍で5万人超が住宅ローンの返済猶予・条件変更を受けました。これは東日本大震災時の5倍の規模であり、社会的な経済状況の変化が返済困難者の増加に影響していることが分かります。
金融庁の監督指針により、金融機関は返済困難者に対して柔軟に対応することが求められており、早期相談により条件変更が可能です。
返済困難者増加の3つの背景要因
金利上昇(日銀の利上げ)
日本銀行は、2024年7月に政策金利を0%から0.25%へ、2025年1月に0.25%から0.5%へ引き上げました。これにより、変動金利で住宅ローンを返済中の方の負担が増加しています。
変動金利は短期プライムレート(銀行が優良企業に短期貸付をする際の金利)に連動するため、日銀の政策金利引き上げの影響を受けやすい特徴があります。
物価高騰と実質賃金の低下
総務省の2024年の消費者物価指数によると、エネルギー・食品を中心に物価が上昇しています。一方で賃金の上昇が物価上昇に追いついておらず、実質賃金は低下している状況です。
実質的な可処分所得が減少することで、住宅ローンの返済負担が相対的に重くなり、返済困難に陥る人が増加しています。
変動金利のリスク(5年ルール・125%ルール)
変動金利には「5年ルール」「125%ルール」という仕組みがあります。
- 5年ルール: 金利が上昇しても返済額は5年間据え置かれる
- 125%ルール: 返済額の増加幅を前回の1.25倍までに抑える
これらは返済者を保護する仕組みですが、落とし穴があります。金利は即座に上昇するため、返済額が据え置かれている間は未払利息が蓄積し、元本が減らないリスクがあります。
返済困難に陥りやすい4つのケース
変動金利で借りている人
変動金利は、金利上昇局面では返済額が増加するリスクがあります。固定金利と比べて当初の金利は低いですが、将来の金利変動リスクを負うことになります。
返済比率が高い人(年収の30-35%超)
返済比率とは、年収に占める年間返済額の割合です。一般的に、返済比率が年収の30-35%を超えると、金利上昇や収入減少時に返済困難に陥りやすいとされています。
理想的な返済比率は年収の25%以下です(ファイナンシャルプランナーの一般的な推奨)。新規借入時は余裕のある返済計画を立てることが重要です。
収入が不安定な人
自営業、フリーランス、転職予定がある人は、収入が不安定で予期せぬ収入減少リスクがあります。住宅ローンは長期の返済計画のため、安定した収入が前提となります。
ボーナス払いを多用している人
ボーナス払いは会社の業績に左右されます。ボーナスが減額・不支給になった場合、返済が困難になる可能性があります。月々の返済額を基本とし、ボーナス払いは最小限に抑えることが推奨されます。
返済困難を予防する4つの対策
固定金利への借り換え
金利上昇局面では、固定金利への借り換えにより将来の返済額を固定できます。ただし、借り換えには数十万円の費用(手数料、保証料、登記費用等)がかかるため、借り換えで削減できる利息と費用を比較し、メリットがある場合のみ実行すべきです。
繰上返済で元本を削減
まとまった資金がある場合は、繰上返済により元本を減らし、利息負担を削減できます。繰上返済には以下の2種類があります。
| 種類 | 効果 | 向いている人 | 
|---|---|---|
| 期間短縮型 | 返済期間を短縮し、総利息を大幅削減 | 余裕資金がある人 | 
| 返済額軽減型 | 月々の返済額を減らす | 毎月の負担を軽くしたい人 | 
家計の見直しと緊急資金の確保
家計の無駄を見直し、生活費を抑えることで、住宅ローン返済の余裕を確保できます。また、**緊急資金(3-6ヶ月分の生活費)**を確保しておくことで、急な収入減少に対応できます。
返済比率を適正に保つ
新規借入時は、返済比率を年収の25%以下に抑えることが理想です。金融機関の審査では35%程度まで認められることがありますが、余裕のある返済計画を立てることで、将来の金利上昇や収入減少リスクに備えられます。
返済困難に陥った時の4つの対処法
金融機関への早期相談(貸付条件変更)
金融庁の監督指針により、金融機関は貸付条件変更の申込みに対して柔軟に対応することが求められています。返済期間延長、金利減免、一定期間の返済額軽減等の対応を受けられる可能性があります。
任意売却(競売を避ける)
金融機関の合意を得て、市場価格に近い価格で物件を売却する方法です。競売(市場価格の6-7割)より高く売却でき(8-9割程度)、プライバシーも保護されます。残債務が残る場合は、分割返済を交渉できます。
個人再生(住宅資金特別条項)
裁判所を通じて債務を減額し、住宅を保持しながら返済を継続する方法です。民事再生法196条に基づく**住宅ローン特則(住宅資金特別条項)**を利用すれば、住宅ローンは通常通り返済し、他の債務(カードローン等)を大幅減額できます。
自己破産(最終手段)
全ての債務を免責する手続きです。住宅は失いますが、残債務を負わずに生活再建できます。信用情報に7-10年間記録されるデメリットがありますが、どうしても返済が困難な場合の最終手段として検討できます。
まとめ:返済困難は早期対応が最も重要
住宅ローン返済困難者は約4%(25人に1人)で、金利上昇・物価高騰・実質賃金低下が背景にあります。変動金利・高い返済比率・収入不安定な人は返済困難に陥りやすく、予防策(固定金利への借り換え、繰上返済、家計見直し)を講じることが重要です。
万が一返済困難に陥った場合は、金融機関への早期相談・貸付条件変更・任意売却・個人再生等の対処法があり、放置せずに早期対応することで住宅を守れる可能性があります。
不安を感じたら、まず金融機関や専門家(ファイナンシャルプランナー、弁護士等)に相談することを推奨します。早期相談が選択肢を広げる鍵です。
