マンションは地震で倒壊する?耐震基準と安全性を徹底解説

公開日: 2025/10/31

マンションは地震で倒壊する?過去のデータで見る実態

マンション購入を検討する際、「地震大国日本でマンションは安全なのか」「築年数が古いと倒壊のリスクはあるのか」と不安に感じる方は少なくありません。

この記事では、過去の大地震でのマンション被害実績、旧耐震基準と新耐震基準の違い、耐震・制震・免震の構造の違い、安全なマンションの見分け方を、国土交通省日本建築防災協会等の公式情報を元に解説します。

「絶対安全な建物は存在しない」という前提を理解した上で、リスクを正しく把握し、安全なマンション選びができるようになります。

この記事のポイント

  • 「絶対に倒壊しない」マンションは存在しないが、新耐震基準(1981年6月1日以降)のマンションは過去の大地震で高い耐震性を証明
  • 東日本大震災では新耐震マンションの大破0件、無被害97.36%と、被害は極めて限定的だった
  • 旧耐震基準(1981年5月31日以前)のマンションでも、耐震診断・改修で安全性向上が可能
  • 耐震・制震・免震の3構造はそれぞれ特徴があり、コスト・揺れの大きさ・維持費で比較して選ぶ
  • 安全なマンションを選ぶには、築年数・耐震診断結果・管理状態・地盤を確認し、専門家への相談を推奨

過去の大地震でのマンション被害実績

過去の大地震でのマンション被害状況を、国土交通省・日本建築防災協会のデータで確認しましょう。

阪神淡路大震災(1995年)での被害状況

阪神淡路大震災では、旧耐震基準(1981年5月31日以前)のマンションで倒壊が多発しました。大和ハウス工業によると、特にピロティ構造(1階が柱だけで壁がない構造、駐車場等)の1階部分が倒壊するケースが多く見られました。

一方、新耐震基準(1981年6月1日以降)のマンションは、被害が限定的でした。この震災を契機に、旧耐震マンションの耐震診断・改修の必要性が広く認識されるようになりました。

東日本大震災(2011年)での被害状況

ノムコムによると、東日本大震災での新耐震マンションの被害状況は以下の通りです。

被害状況 件数割合
大破 0件(0%)
中破 0.09%
小破 2.55%
無被害 97.36%

(出典: ノムコム

新耐震基準の有効性が客観的に証明された結果となりました。

熊本地震(2016年)での被害状況

熊本地震では、新耐震基準のマンションでも一部で被害が発生しました。特に、ピロティ構造の1階倒壊が課題として指摘されました。新耐震基準でも、ピロティ構造には注意が必要であることが再認識されました。

大和ハウス工業によると、旧耐震と新耐震の被害率の違いは明確で、新耐震基準のマンションは地震に対して高い安全性を持つことが確認されています。

旧耐震基準と新耐震基準の決定的な違い

旧耐震基準と新耐震基準の違いを理解することが、マンション選びの第一歩です。

旧耐震基準(1981年5月31日以前)の内容

旧耐震基準は、震度5強で損傷しない基準です。震度6以上の地震に対する基準はなく、阪神淡路大震災で多くの建物が倒壊し、基準の見直しに繋がりました。

旧耐震基準のマンションは、築40年以上(2025年時点)となり、建築確認日が1981年5月31日以前の物件が該当します。

新耐震基準(1981年6月1日以降)の内容

新耐震基準は、震度5強で損傷せず、震度6強〜7で倒壊しない基準です。想定震度が引き上げられ、構造計算方法も強化されました。

国土交通省によると、新耐震基準のマンションは、過去の大地震で高い耐震性を示しており、倒壊リスクは極めて低いとされています。

2000年改正でさらに強化されたポイント

2000年改正では、木造住宅の基準が強化されましたが、マンション(鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造)への影響は限定的です。

SUUMOによると、新耐震基準(1981年6月1日以降)の建築確認を受けたマンションであれば、築年数にかかわらず一定の耐震性が確保されているといえます。

築年数での判断方法は、「建築確認日」で判断することが重要です。竣工日ではなく、建築確認日が1981年6月1日以降(2025年時点で築44年以内)かどうかを確認してください。

耐震・制震・免震の構造の違いと選び方

マンションの耐震構造には、耐震・制震・免震の3種類があります。それぞれの特徴を理解し、自分の優先度に合った構造を選びましょう。

耐震構造(最も一般的)

耐震構造は、壁・柱を強化し建物自体で地震に耐える構造です。最も一般的で、建設コストが低いのが特徴です。

揺れは直接伝わるため、制震・免震より揺れが大きくなります。高層マンションでは、揺れが大きくなる傾向があります。

制震構造(タワーマンションで多い)

制震構造は、ダンパー・重りで地震エネルギーを吸収・分散する構造です。タワーマンションで採用が多く、風揺れにも効果があります。

耐震構造より揺れが小さく、建設コストも耐震と免震の中間程度です。

免震構造(最も揺れが小さい)

免震構造は、基礎と建物の間に免震装置を設置し、地震の揺れを建物に伝えない構造です。3構造中最も揺れが小さいですが、建設コスト・維持費が高いのが特徴です。

三菱地所レジデンスによると、各構造のメリット・デメリットは以下の通りです。

構造 揺れの大きさ 建設コスト 維持費 備考
耐震 最も一般的
制震 タワーマンションで多い
免震 最も揺れが小さいが高コスト

(参考: 三菱地所レジデンス

予算・優先度(揺れの小ささ、コスト)を総合的に判断し、構造を選びましょう。

安全なマンションを見分ける4つのチェックポイント

マンション購入時に確認すべき4つのポイントを具体的に解説します。

築年数(1981年6月1日以降か)

築年数は重要な目安ですが、「竣工日」ではなく「建築確認日」で判断することが重要です。建築確認日が1981年6月1日以降なら新耐震基準です。

不動産会社・管理会社に建築確認日を確認し、新耐震基準かどうかを確認してください。

耐震診断結果の確認方法

旧耐震マンション(1981年5月31日以前の建築確認)の場合、耐震診断結果を確認することが強く推奨されます。

耐震診断結果は、管理組合・不動産会社に問い合わせることで入手できます。診断結果で「安全性が確認された」「耐震改修工事が完了した」物件であれば、選択肢に入ります。

管理状態(大規模修繕の履歴)

管理状態は、マンションの安全性・資産価値に直結します。大規模修繕の履歴・修繕積立金の状況を確認してください。

大規模修繕が計画通りに実施されているか、修繕積立金が不足していないかを確認することが重要です。管理が行き届いていないマンションは、経年劣化により耐震性が低下するリスクがあります。

地盤調査・地震ハザードマップ

地盤も耐震性に大きく影響します。自治体の地震ハザードマップ・地盤調査データで、地盤の強さ・液状化リスクを確認してください。

地盤が弱い地域では、建物の耐震性が高くても地盤沈下・液状化により被害が発生する可能性があります。

ピロティ構造(1階が柱だけで壁がない構造)は、旧耐震でも新耐震でも注意が必要です。阪神淡路大震災・熊本地震でピロティ構造の1階倒壊が多発したため、専門家の診断を推奨します。

既存マンションの耐震診断・改修の方法と費用

旧耐震マンションでも、耐震診断・改修で安全性向上が可能です。

耐震診断の流れと費用相場

耐震診断の費用相場は、1,000〜2,500円/㎡です。例えば、延床面積3,000㎡のマンションなら、300〜750万円が目安です。

診断の流れは以下の通りです。

  1. 管理組合で耐震診断の実施を決議
  2. 耐震診断士・建築士に依頼
  3. 診断結果(Is値:構造耐震指標、建物の耐震性能を数値化した指標)を確認
  4. Is値0.6未満の場合、耐震改修工事を検討

耐震改修工事の内容と費用目安

耐震改修工事は、外壁補強・柱補強・壁の増設等を行います。費用は数千万〜数億円(規模・工法により変動)です。

国土交通省によると、耐震改修促進法により、耐震診断・改修の費用の一部を補助する制度があります。

自治体の補助金制度の活用

東京都・大阪市等の自治体では、診断・改修費用の一部を補助しています。補助率・上限額は自治体により異なるため、自治体のホームページで確認してください。

大田区の例では、耐震診断費用の2/3を補助(上限あり)する制度があります。

マンション管理組合での合意形成が重要です。耐震改修工事には区分所有者の3/4以上の賛成が必要(区分所有法)なため、管理組合で十分に議論してください。

まとめ:リスクを理解して安全なマンションを選ぼう

「絶対に倒壊しない」マンションは存在しませんが、新耐震基準(1981年6月1日以降)のマンションは過去の大地震で高い耐震性を証明しています。

旧耐震マンションでも、耐震診断・改修で安全性向上が可能です。マンション購入時は、築年数(建築確認日)・耐震診断結果・管理状態(大規模修繕の履歴)・地盤を確認してください。

耐震・制震・免震の構造の違いを理解し、自分の優先度(揺れの小ささ、コスト)に合った構造を選びましょう。専門家(建築士、耐震診断士)への相談を推奨します。

耐震診断の実施、不動産会社への相談を進め、安全なマンション選びを進めましょう。

よくある質問

Q1旧耐震基準のマンションは絶対に買ってはいけませんか?

A1絶対にダメではありません。耐震診断で安全性が確認されている、または耐震改修工事が完了している旧耐震マンションなら選択肢に入ります。ただし、診断結果・改修履歴を必ず確認してください。専門家(建築士、耐震診断士)への相談を推奨します。旧耐震マンションは築40年以上(2025年時点)となり、建築確認日が1981年5月31日以前の物件が該当します。

Q2マンションは何階建てまでなら地震に強いですか?

A2階数だけで判断できません。低層(5階以下)・中層(6-14階)・高層(15階以上)でそれぞれ構造設計が異なります。タワーマンション(20階以上)は制震・免震構造が多く、長周期地震動への対策が重要です。築年数(建築確認日が1981年6月1日以降か)・構造(耐震・制震・免震)・管理状態を総合的に判断してください。ピロティ構造は注意が必要です。

Q3築年数だけでマンションの耐震性を判断できますか?

A3築年数は重要な目安ですが、それだけでは不十分です。建築確認日が1981年6月1日以降なら新耐震基準ですが、管理状態(大規模修繕の履歴)、構造(耐震・制震・免震)、地盤も含めて総合判断することが重要です。耐震診断結果があれば最も確実です。竣工日ではなく建築確認日で判断してください。管理が行き届いていないマンションは、経年劣化により耐震性が低下するリスクがあります。

Q4耐震診断は必ず受けるべきですか?

A4旧耐震マンション(1981年5月31日以前の建築確認)なら強く推奨します。新耐震マンションでも、築30年以上・ピロティ構造・大規模修繕が未実施の場合は診断を検討してください。費用は1,000〜2,500円/㎡が相場です。自治体の補助金制度が利用できる場合も多いです(例: 大田区では診断費用の2/3を補助)。診断結果(Is値0.6以上が目安)で安全性を確認できます。