マンション建築費用の相場とは?坪単価と総額の目安
マンション建築を検討する際、「建築費用はどれくらいかかるのか」「坪単価の相場は」と不安に感じる土地オーナーや投資家は少なくありません。
この記事では、マンション建築費用の坪単価相場、総額の内訳、費用を左右する要素を、国土交通省や建設業界の公式情報を元に解説します。
事業計画の参考になる実用的な情報を得て、複数の建設会社で見積もりを比較する際の判断基準が明確になります。
この記事のポイント
- マンション建築費用の坪単価は70-125万円程度(構造・仕様・地域により大きく変動)
- 建築費以外に設計監理費(4-5%)、各種申請費用、外構・附帯工事費(15-20%)、諸費用(10%)が必要
- RC造(鉄筋コンクリート造)は96-125万円/坪が相場で、耐震性・遮音性に優れる
- 資材価格の変動により建築費は年々上昇傾向、2024-2025年時点のデータを基準に判断すべき
- 複数の建設会社で見積もりを取り、総事業費を比較することが重要
マンション建築費用の構成要素
マンション建築費用は、本体工事費だけでなく様々な費用で構成されます。総事業費を正確に把握するため、以下の5つの要素を理解することが重要です。
本体工事費:躯体・仕上げ・設備
本体工事費は、建物本体を建設する費用で、以下の3つに分類されます。
- 躯体工事: 基礎、柱、梁、床、壁などの構造体
- 仕上げ工事: 内装、外装、塗装、タイル等
- 設備工事: 電気、給排水、空調、エレベーター等
本体工事費は総建築費の70-80%を占め、構造(RC造・鉄骨造・木造)や階数、設備グレードにより大きく変動します。
設計監理費
設計事務所や建築士に支払う費用で、一般的に総建築費の4-5%が目安です。
例:
- 総建築費2億円の場合
- 設計監理費: 2億円 × 4% = 800万円
設計監理費は建物の品質を左右する重要な費用で、安価な設計事務所を選ぶと、後々のトラブルにつながる可能性があります。
各種申請費用
建築確認申請、消防設備検査、完了検査等の費用で、数十万円から数百万円が必要です。
- 建築確認申請: 20-50万円
- 消防設備検査: 10-30万円
- 完了検査: 10-20万円
外構・附帯工事費
駐車場、植栽、フェンス、給排水引込工事等の費用で、建設業界の一般的な相場では総建築費の15-20%が目安です。
例:
- 総建築費2億円の場合
- 外構・附帯工事費: 2億円 × 15% = 3000万円
その他諸経費
融資手数料、保険料、近隣対策費、仮設事務所費用等で、総建築費の10%程度が目安です。
| 費用項目 | 割合 | 総建築費2億円の場合 |
|---|---|---|
| 本体工事費 | 70-80% | 1.4-1.6億円 |
| 設計監理費 | 4-5% | 800-1000万円 |
| 外構・附帯工事費 | 15-20% | 3000-4000万円 |
| その他諸経費 | 10% | 2000万円 |
構造別の坪単価相場
マンションの構造により、坪単価は大きく変動します。RC造(鉄筋コンクリート造)が最も一般的で、高い耐震性・遮音性を持ちます。
RC造(鉄筋コンクリート造):96-125万円/坪
RC造は鉄筋とコンクリートを組み合わせた構造で、マンション建築では最も一般的です。
メリット:
- 耐震性・耐火性・遮音性に優れる
- 法定耐用年数47年と長い
- 資産価値が高い
デメリット:
- 建築費が高額
- 工期が長い(12-18ヶ月程度)
坪単価相場: 96-125万円/坪(2025年版の建築業界データによる)
鉄骨造(S造):80-100万円/坪
鉄骨造は鉄骨を骨組みとする構造で、中低層マンションで採用されます。
メリット:
- RC造より建築費が安い
- 工期が短い(9-12ヶ月程度)
- 大空間を確保しやすい
デメリット:
- 遮音性がRC造より劣る
- 防錆処理が必要
坪単価相場: 80-100万円/坪(2025年版の建築業界データによる)
木造:70-90万円/坪
木造は低層アパート・マンション(2-3階建て)で採用されます。
メリット:
- 建築費が最も安い
- 工期が短い(6-9ヶ月程度)
デメリット:
- 耐震性・遮音性がRC造・鉄骨造より劣る
- 法定耐用年数22年と短い
- 高層化できない
坪単価相場: 70-90万円/坪(2025年版の建築業界データによる)
| 構造 | 坪単価相場 | 耐震性 | 遮音性 | 法定耐用年数 | 適用階数 |
|---|---|---|---|---|---|
| RC造 | 96-125万円 | ◎ | ◎ | 47年 | 3階以上 |
| 鉄骨造 | 80-100万円 | ○ | △ | 34年 | 3-10階 |
| 木造 | 70-90万円 | △ | △ | 22年 | 2-3階 |
(出典: 2025年版建築業界データ)
総額の目安:20戸・延床面積1000㎡のRC造マンション
具体的な建築費用の総額を、20戸・延床面積1000㎡(約300坪)のRC造マンションで試算します。
前提条件
- 延床面積: 1000㎡(約300坪)
- 戸数: 20戸(1戸あたり50㎡)
- 構造: RC造
- 階数: 5階建て
- 坪単価: 100万円/坪(RC造の中間値)
本体工事費
300坪 × 100万円/坪 = 3億円
設計監理費
3億円 × 4.5% = 1350万円
各種申請費用
約100万円
外構・附帯工事費
3億円 × 17.5% = 5250万円
その他諸経費
3億円 × 10% = 3000万円
総額
3億円 + 1350万円 + 100万円 + 5250万円 + 3000万円 = 3億9700万円
1戸あたりの建築費: 3億9700万円 ÷ 20戸 = 約1985万円
この試算はあくまで目安で、実際の費用は地域・仕様・工期により大きく変動します。
費用を左右する主な要素
マンション建築費用は、以下の6つの要素により大きく変動します。
構造
RC造・鉄骨造・木造により坪単価が30-50万円程度変動します(前述)。
階数
高層化するほど、エレベーター、非常階段、耐震補強等のコストが増加します。
- 3-5階建て: 標準的なコスト
- 6-10階建て: 坪単価+10-20万円
- 11階以上: 坪単価+30万円以上(タワーマンション仕様)
設備グレード
エレベーター、オートロック、宅配ボックス、防犯カメラ等の設備により、総額が数百万円から数千万円変動します。
地域
首都圏・関西圏は人件費・資材費が高く、地方より10-20%高額になる傾向があります。
工期
工期が長引くと、仮設事務所費用、人件費が増加します。短工期を要求すると、割増料金が発生する場合もあります。
資材価格変動
2020年以降、建築資材(鉄鋼、コンクリート、木材)の価格が高騰しており、2024-2025年時点でも上昇傾向が続いています。古いデータ(2020年以前)を参考にすると、実際の見積もりと大きく乖離する可能性があります。
建築費以外の事業費
マンション建築では、建築費以外にも様々な事業費が発生します。
土地取得費
土地を保有していない場合、土地取得費が最大の費用項目となります。都心部では土地取得費が建築費の数倍になることもあります。
融資関連費用
金融機関からの融資を受ける場合、以下の費用が発生します。
- 融資手数料: 融資額の1-3%
- 保証料: 融資額の0.5-1%
- 抵当権設定登記費用: 10-30万円
販売費(分譲マンションの場合)
マンションを分譲する場合、広告宣伝費、販売手数料等が総事業費の5-10%必要です。
税金
- 不動産取得税: 固定資産税評価額の3%
- 登録免許税: 固定資産税評価額の0.4%
- 印紙税: 契約書の金額に応じて
見積もり取得と比較検討の重要性
マンション建築は億単位の投資となるため、複数の建設会社で見積もりを取り、総事業費を比較することが極めて重要です。
複数社の見積もりを比較
最低3社から見積もりを取得し、以下の項目を比較します。
- 坪単価(本体工事費)
- 設計監理費
- 外構・附帯工事費
- 工期
- アフターサービス
総事業費で判断
坪単価だけでなく、設計監理費、外構・附帯工事費、諸経費を含めた総事業費で判断します。坪単価が安くても、他の費用が高額な場合があります。
過去の施工実績を確認
建設会社の過去の施工実績(同規模・同構造のマンション)を確認し、品質・工期遵守の実績があるかを確認します。
専門家(建築士・不動産コンサルタント)への相談
見積もりの妥当性を判断するため、第三者の専門家に相談することを推奨します。特に初めてのマンション建築では、専門家のアドバイスが不可欠です。
まとめ:マンション建築費用は総事業費で判断
マンション建築費用の坪単価は、RC造で96-125万円程度が相場ですが、構造・階数・設備グレード・地域・工期・資材価格変動により大きく変動します。
建築費以外にも設計監理費(4-5%)、外構・附帯工事費(15-20%)、諸費用(10%)が必要で、総事業費は建築費の1.3-1.5倍程度になります。
複数の建設会社で見積もりを取得し、坪単価だけでなく総事業費で比較することが重要です。資材価格は年々上昇傾向にあるため、2024-2025年時点のデータを基準に判断しましょう。
事業計画の段階で専門家(建築士・不動産コンサルタント・税理士)に相談し、収益性・資金計画を慎重に検討することを強く推奨します。
