土地は借地・家は持ち家とは?借地権付き住宅のメリット・デメリット

公開日: 2025/11/4

借地権付き住宅とは?土地は借地・家は持ち家の仕組み

「土地は借地・家は持ち家」という借地権付き住宅の仕組みが分からず、購入を迷っている方は少なくありません。借地権付き住宅は購入価格が通常より安いですが、地代や更新料が継続的にかかるため、仕組みを正しく理解することが重要です。

この記事では、借地権付き住宅のメリット・デメリット、普通借地権と定期借地権の違い、将来の更新料や地代の目安、相続・売却時の注意点を、法務省国税庁等の公式情報を元に解説します。

どんな人に向いているか、どんなリスクがあるかを理解することで、自身のライフプランに合った判断ができるようになります。

この記事のポイント

  • 借地権付き住宅は土地を借りて地代を払い、建物だけを所有する形態
  • 購入価格が所有権の50-70%程度と安いが、地代(月1-5万円)・更新料(借地権価格の3-10%)が継続的にかかる
  • 普通借地権(更新可能、存続期間30年以上)と定期借地権(更新なし、期限後は建物解体)の2種類がある
  • 相続時は借地権も相続財産として評価され、売却時は地主の承諾が必要で承諾料(売却価格の10%程度)がかかる
  • 初期費用を抑えたい、都心・一等地に住みたい人に向いているが、将来売却を考えている人には不向き

普通借地権と定期借地権の違い

借地権には大きく分けて「普通借地権」と「定期借地権」の2種類があります。どちらを選ぶかで将来のコストや建物の扱いが大きく異なります。

普通借地権(更新可能、存続期間30年以上)

普通借地権は、借地借家法に基づく更新可能な借地権です。法務省によると、存続期間は以下のように定められています。

  • 初回: 30年以上
  • 1回目の更新: 20年以上
  • 2回目以降の更新: 10年以上

地主は正当な理由がない限り更新を拒絶できないため、借地権者は長期的に土地を利用できます。更新時には更新料(借地権価格の3-10%程度)を支払うのが一般的ですが、法的義務ではなく慣習によるものです。

定期借地権(更新なし、期限後は建物解体)

定期借地権は更新のない借地権で、契約期間満了後は土地を返還する必要があります。国土交通省によると、3種類の定期借地権があります。

種類 存続期間 契約方式 期限後の扱い
一般定期借地権 50年以上 公正証書等 建物解体、更地返還
事業用定期借地権 10-50年未満 公正証書 建物解体、更地返還
建物譲渡特約付借地権 30年以上 特約あり 地主が建物を買い取る

一般定期借地権が最も一般的で、50年後には建物を解体して更地にして返還する必要があります。解体費用(木造で100-200万円、RC造で200-500万円程度)は借地権者が負担します。

定期借地権の種類と特徴

一般定期借地権: 住宅用地として最も多く利用される。50年以上の長期契約だが、更新はなく、期限後は建物を解体して返還する。地代は普通借地権より安い場合が多い。

事業用定期借地権: コンビニ、飲食店等の事業用建物に利用される。契約期間が10-50年未満と短く、住宅には不向き。

建物譲渡特約付借地権: 30年後に地主が建物を時価で買い取る契約。建物の解体費用がかからないが、買取価格が低くなる傾向。

借地権付き住宅のメリット

購入価格が安い(所有権の50-70%程度)

借地権付き住宅の最大のメリットは、購入価格が所有権付き物件の50-70%程度に抑えられる点です。

: 所有権付き3000万円の物件の場合

  • 借地権付き: 1500-2100万円程度
  • 初期費用: 900-1500万円の削減

HOME'Sによると、都心の一等地でも借地権付きなら手が届く価格帯になる場合が多いです。

固定資産税・都市計画税が建物のみ

借地権付き住宅は土地を所有していないため、固定資産税・都市計画税は建物のみにかかります。

: 土地評価額2000万円、建物評価額1000万円の場合

  • 所有権付き: 固定資産税・都市計画税 年間約30万円
  • 借地権付き: 固定資産税・都市計画税 年間約10万円(建物のみ)
  • 年間差額: 約20万円

ただし、地代(月1-5万円程度、年間12-60万円)を支払うため、トータルコストでは所有権付きと大差ない、または高くなる場合もあります。

都心・一等地に住みやすい

借地権付き住宅は、所有権付きでは高額すぎて手が届かない都心・一等地の物件でも、購入しやすい価格帯になります。立地の良さを重視する方にとっては大きなメリットです。

借地権付き住宅のデメリット・注意点

地代・更新料が継続的にかかる

借地権付き住宅は、地主に地代を支払う義務があります。

地代の相場: 月1-5万円程度(年間12-60万円)

  • 立地・面積により異なる
  • 都心部は高く、郊外は低い傾向

更新料の相場: 借地権価格の3-10%程度

  • 初回更新時(30年後)に支払う
  • 借地権価格1500万円の場合、45-150万円程度

SUUMOによると、地代は契約内容により数年ごとに見直される場合が多く、地主の地代増額請求権も認められています。ただし、借地権者も減額請求権を持つため、一方的な値上げは阻止できます。

地主の承諾が必要な場面が多い

借地権付き住宅では、以下の場面で地主の承諾が必要です。

  • 建物の建て替え: 承諾料(建物価格の3-5%程度)が必要な場合あり
  • 借地権の譲渡・売却: 承諾料(売却価格の10%程度)が必要
  • 増改築: 大規模な増改築には承諾が必要

民法第612条により、地主の承諾なく借地権を譲渡・転貸することはできません。承諾料の金額は地主との交渉次第で、法的な基準はありません。

売却・相続が複雑

売却時の注意点:

  • 地主の承諾が必要で、承諾料(売却価格の10%程度)がかかる
  • 買い手が見つかりにくく、売却価格も所有権付きより低くなる
  • 住宅ローンが組みにくいため、現金購入できる買い手に限定される

相続時の注意点:

  • 借地権も相続財産として評価され、相続税がかかる
  • 地主の承諾は不要だが、名義変更を地主に通知する必要がある
  • 相続人が複数いる場合、借地権の分割が難しい

借地権付き住宅の相続時の注意点

借地権も相続財産として評価される

国税庁によると、借地権は相続財産として評価され、相続税の対象となります。

借地権の評価方法:

  • 路線価 × 借地権割合 × 面積
  • 借地権割合は地域により30-90%(都心部ほど高い)

: 路線価50万円/㎡、借地権割合70%、面積100㎡の場合

  • 借地権評価額 = 50万円 × 70% × 100㎡ = 3500万円
  • 相続税の基礎控除(3000万円 + 600万円 × 相続人数)を超える場合は相続税が発生

借地権の評価方法と相続税

相続時は地主の承諾が不要ですが、地主に名義変更を通知する必要があります。通知を怠ると、地代の支払い先が不明確になり、トラブルの原因となります。

相続人が複数いる場合、借地権を分割するか、代表者が相続して他の相続人に代償金を支払う方法が一般的です。借地権の分割には地主の承諾が必要で、承諾料がかかる場合があります。

借地権付き住宅に向いている人・向いていない人

向いている人

  • 初期費用を抑えたい: 購入価格が所有権の50-70%で済む
  • 都心・一等地に住みたい: 所有権付きでは高額すぎる立地でも手が届く
  • 長期間住む予定がない: 定期借地権で50年後には返還するつもり
  • 固定資産税を抑えたい: 建物のみに課税される

向いていない人

  • 将来売却を考えている: 買い手が見つかりにくく、売却価格も低い
  • 地主との交渉が苦手: 建て替え・増改築・売却時に承諾が必要
  • 長期的なコストを重視する: 地代・更新料を含めると所有権付きと大差ない場合も
  • 住宅ローンを組みたい: 金融機関によっては取り扱わない、または金利が高い

センチュリー21によると、借地権付き住宅は購入価格が安い反面、地代・更新料が継続的にかかるため、トータルコストを試算してから判断することが重要です。

最終的な判断は、税理士・不動産専門家に相談し、自身のライフプラン(何年住むか、売却の可能性、相続の予定等)を踏まえて決めることをおすすめします。

まとめ

借地権付き住宅は、土地を借りて地代を払い、建物だけを所有する形態です。購入価格が所有権の50-70%程度と安く、初期費用を大幅に抑えられますが、地代(月1-5万円)・更新料(借地権価格の3-10%)が継続的にかかり、売却・相続が複雑な点を理解する必要があります。

普通借地権(更新可能)と定期借地権(更新なし)の違いを理解し、自身のライフプランに合った選択をすることが重要です。メリット・デメリットを公平に比較し、トータルコストを試算した上で判断しましょう。

次のアクションとして、不動産会社に借地権付き住宅の物件を紹介してもらい、税理士に相続税の試算を依頼することをおすすめします。信頼できる専門家に相談しながら、無理のない住宅購入計画を立てましょう。

よくある質問

Q1借地権付き住宅でも住宅ローンは組めますか?

A1組めますが、所有権付きと比べて審査が厳しく、金利が高い場合が多いです。金融機関によっては取り扱わない場合もあるため、事前に複数の銀行に確認することをおすすめします。借地権付き住宅は担保価値が低いと判断されるため、頭金を多めに用意する必要がある場合もあります。フラット35等の公的融資も検討しましょう。

Q2地代は毎年値上がりするのですか?

A2契約内容によります。地主は地代増額請求権がありますが、借地権者も減額請求権を持ちます。一般的には数年ごとに見直される場合が多く、周辺の地価や固定資産税の変動を考慮して調整されます。地代の増額に納得できない場合は、借地権者が減額請求訴訟を起こすこともでき、一方的な値上げは阻止できます。

Q3定期借地権の期限が来たら建物はどうなりますか?

A3建物を解体して更地にして地主に返還する必要があります。解体費用(木造で100-200万円、RC造で200-500万円程度)は借地権者が負担します。建物譲渡特約付借地権の場合は、地主が建物を時価で買い取る契約となりますが、買取価格は低くなる傾向があります。期限が近づいたら、早めに地主と協議することが重要です。

Q4借地権付き住宅を売却する際の注意点は?

A4地主の承諾が必要で、承諾料(売却価格の10%程度)がかかります。買い手が見つかりにくく、売却価格も所有権付きより30-50%低くなる傾向があります。住宅ローンが組みにくいため、買い手は現金購入できる人に限定されます。売却前に地主に意向を確認し、承諾料の金額を事前に交渉しておくことをおすすめします。

Q5旧借地法と借地借家法の違いは何ですか?

A51992年8月1日以前の契約は旧借地法、以降は借地借家法が適用されます。旧法の方が借地権者の保護が強く、存続期間も異なります(堅固建物30年以上、非堅固建物20年以上)。旧法借地権は更新拒絶が極めて困難で、借地権者に有利です。自分の契約がどちらに該当するか、契約書の日付を確認しましょう。