土地登記簿謄本(登記事項証明書)とは
土地の売買や相続、融資を受ける際に「土地登記簿謄本を取得してください」と言われて、「どこで取得できるのか」「何が記載されているのか」と戸惑われる方は少なくありません。
この記事では、土地登記簿謄本(正式名称:登記事項証明書)の取得方法、記載内容の読み方、オンライン請求のメリットを、法務省の公式情報を元に解説します。
初めての方でも、スムーズに土地登記簿謄本を取得し、内容を理解できるようになります。
この記事のポイント
- 土地登記簿謄本は正式には「登記事項証明書」と呼ばれ、土地の所有者・面積・権利関係を証明する公的書類
- オンライン請求なら全国どこからでも即日取得可能で、手数料も窓口より安い(窓口600円→オンライン500円)
- 登記事項証明書は法的効力があり、登記情報提供サービスの登記情報は公的提出には使えない
- 記載内容は表題部(土地の表示)、権利部甲区(所有権)、権利部乙区(抵当権等)に分かれる
- 登記情報は公開情報のため、何人でも請求可能(不動産登記法第119条)
土地登記簿謄本の取得方法
土地登記簿謄本(登記事項証明書)は、オンライン・窓口・郵送の3つの方法で取得できます。それぞれのメリット・デメリットを理解し、自分に合った方法を選びましょう。
オンライン請求(登記情報提供サービス)
オンライン請求は、最も便利で手数料も安い方法です。
メリット:
- 全国どこからでも請求可能: 自宅のパソコンから24時間申請可能
- 手数料が安い: 500円(窓口600円より100円安い)
- 即日取得: クレジットカード決済後、PDFで即時ダウンロード可能
- 郵送も可能: 郵送で書面を受け取ることも選択可能(手数料480円+郵送料)
デメリット:
- 利用者登録が必要: 登記情報提供サービス(一般財団法人民事法務協会)への登録が必要(無料)
- 地番が必要: 土地の地番を事前に確認する必要がある
オンライン請求は、登記情報提供サービス(https://www1.touki.or.jp/)から申請します。
法務局窓口での請求
法務局の窓口で直接請求する方法です。
メリット:
- その場で取得: 窓口で申請し、その場で交付を受けられる
- 相談可能: 窓口で取得方法や記載内容について質問できる
デメリット:
- 平日のみ: 窓口受付は平日8:30-17:15のみ
- 手数料が高い: 600円(オンラインより100円高い)
- 出頭が必要: 管轄法務局または最寄りの法務局への出頭が必要
窓口請求では、申請書に土地の所在・地番を記載し、手数料(収入印紙)と一緒に提出します。
郵送での請求
法務局へ郵送で申請する方法です。
メリット:
- 出頭不要: 自宅から申請可能
デメリット:
- 時間がかかる: 往復の郵送に数日〜1週間程度かかる
- 返信用封筒が必要: 返信用封筒(切手貼付)を同封する必要がある
- 手数料は収入印紙: 収入印紙600円分を申請書に貼付
郵送請求では、申請書・収入印紙・返信用封筒を管轄法務局へ送付します。
オンライン請求の手順
オンライン請求は最も便利な方法です。初めての方でも、以下の手順で簡単に取得できます。
登記情報提供サービスへの登録
登記情報提供サービス(https://www1.touki.or.jp/)にアクセスし、利用者登録を行います。
登録に必要な情報:
- 氏名
- 住所
- メールアドレス
- 電話番号
- クレジットカード情報(または銀行振込)
登録は無料で、数分で完了します。登録後すぐに利用できます。
土地の地番を確認する方法
登記簿謄本を取得するには、土地の「地番」が必要です。地番は住所とは異なるため、事前に確認が必要です。
地番の確認方法:
| 方法 | 内容 | 
|---|---|
| 固定資産税納税通知書 | 毎年4-6月に送付される通知書に地番が記載 | 
| 法務局の窓口 | 住所から地番を調べてもらえる(無料) | 
| 法務局のブルーマップ | 住宅地図に地番が記載された地図(法務局で閲覧可能) | 
| インターネット | 一部の自治体では地番検索サービスを提供 | 
地番が不明な場合は、法務局の窓口で住所を伝えれば、職員が地番を調べてくれます。
請求から取得までの流れ
オンライン請求の流れは以下の通りです。
- ログイン: 登記情報提供サービスにログイン
- 請求種別の選択: 「登記事項証明書」を選択
- 土地情報の入力: 所在地・地番を入力
- 請求内容の確認: 土地の情報が正しいか確認
- 手数料の支払い: クレジットカードで500円を決済
- ダウンロード: PDFファイルを即時ダウンロード
PDFファイルは、印刷して提出することができます。ただし、公的な提出が必要な場合は、法務局の認証印がある書面(郵送受取)が必要です。
登記事項証明書と登記情報の違い
オンラインで取得できる「登記事項証明書」と「登記情報」には重要な違いがあります。
| 項目 | 登記事項証明書 | 登記情報 | 
|---|---|---|
| 発行元 | 法務局 | 登記情報提供サービス | 
| 法的効力 | あり(法務局の認証印あり) | なし(認証印なし) | 
| 手数料 | 500円(オンライン)、600円(窓口) | 332円 | 
| 用途 | 公的機関への提出(銀行・役所等) | 閲覧・確認目的 | 
| 取得方法 | オンライン・窓口・郵送 | オンラインのみ | 
登記事項証明書は、法務局が発行する公的証明書で、登記官の認証印があります。銀行での融資申請、役所への提出等、公的な場面で使用できます。
登記情報は、登記内容を確認するためのものです。記載内容は登記事項証明書と同じですが、認証印がないため、公的な提出には使えません。ただし、内容確認だけであれば手数料が安いため、閲覧目的なら登記情報で十分です。
購入前の不動産の権利関係を確認する場合は登記情報、融資申請や契約時の提出には登記事項証明書を使用します。
土地登記簿謄本の記載内容と読み方
土地登記簿謄本には、土地に関する重要な情報が記載されています。記載内容を理解することで、土地の権利関係を正確に把握できます。
表題部(土地の表示)
表題部には、土地の物理的な情報が記載されています。
| 項目 | 内容 | 
|---|---|
| 所在 | 土地の所在地(地番) | 
| 地番 | 登記上の番号 | 
| 地目 | 土地の用途(宅地・田・畑・山林等) | 
| 地積 | 土地の面積(㎡) | 
地目は、土地の現況とは異なる場合があります。例えば、昔は田だった土地を宅地に転用した場合、地目変更登記をしていなければ「田」のままです。
地積は登記上の面積で、実測面積とは異なる場合があります。売買時には実測を行い、面積を確定することが一般的です。
権利部甲区(所有権)
権利部甲区には、所有権に関する情報が記載されています。
| 項目 | 内容 | 
|---|---|
| 順位番号 | 登記の順番 | 
| 登記の目的 | 所有権保存・所有権移転等 | 
| 受付年月日・受付番号 | 登記申請の受付日時・番号 | 
| 原因 | 所有権移転の原因(売買・相続・贈与等) | 
| 権利者その他の事項 | 所有者の住所・氏名 | 
権利部甲区を見ることで、土地の所有者と、過去の所有権移転の履歴が分かります。
売買で購入する場合、登記簿上の所有者と売主が一致しているか確認することが重要です。
権利部乙区(抵当権等)
権利部乙区には、所有権以外の権利(抵当権・根抵当権・地上権・賃借権等)が記載されています。
| 項目 | 内容 | 
|---|---|
| 順位番号 | 登記の順番 | 
| 登記の目的 | 抵当権設定・根抵当権設定等 | 
| 受付年月日・受付番号 | 登記申請の受付日時・番号 | 
| 原因 | 抵当権設定の原因(金銭消費貸借等) | 
| 権利者その他の事項 | 抵当権者(銀行等)の名称、債権額、利息等 | 
土地を購入する際は、権利部乙区に抵当権が設定されていないか確認することが重要です。抵当権が残っている場合、売主が住宅ローンを完済していない可能性があります。
通常、売買決済時に抵当権は抹消されますが、事前に確認しておくことで、トラブルを防げます。
土地登記簿謄本が必要な場面
土地登記簿謄本は、さまざまな場面で必要になります。
不動産売買
土地を売買する際、買主は登記簿謄本で以下を確認します。
- 所有者: 売主が登記簿上の所有者と一致しているか
- 抵当権: 抵当権が設定されていないか(または決済時に抹消されるか)
- 面積: 登記上の面積と実測面積の差異
売買契約前に登記簿謄本を取得し、権利関係を確認することが重要です。
相続・贈与
相続や贈与で土地を取得した場合、名義変更(所有権移転登記)が必要です。登記申請時に、被相続人または贈与者の登記内容を証明するため、登記簿謄本が必要になります。
2024年4月から相続登記が義務化され、3年以内の申請が必要です。早めに登記簿謄本を取得し、手続きを進めましょう。
住宅ローン申請
住宅ローンを申請する際、金融機関は担保となる土地の価値を評価するため、登記簿謄本の提出を求めます。
金融機関は登記簿謄本で、以下を確認します。
- 所有者: 申請者が所有者であるか
- 面積・地目: 土地の規模と用途
- 既存の抵当権: 他の金融機関の抵当権が設定されていないか
登記簿謄本は最新のもの(発行後3ヶ月以内)を求められることが一般的です。
まとめ:土地登記簿謄本の取得は簡単
土地登記簿謄本(登記事項証明書)は、オンライン請求なら全国どこからでも即日取得可能で、手数料も窓口より安い(500円)です。
公的機関への提出が必要な場合は登記事項証明書、単に内容を確認したいだけであれば登記情報で十分です。いずれも、土地の地番さえ分かれば、誰でも請求できます。
登記簿の記載内容は、表題部(土地の表示)、権利部甲区(所有権)、権利部乙区(抵当権等)に分かれています。土地を購入する際は、権利部乙区に抵当権が残っていないか確認することが重要です。
登記情報は公開情報のため、不動産取引の透明性が保たれています。適切に登記簿謄本を取得・活用し、安全な不動産取引を進めましょう。
