土地所有者を調べる必要がある場面と基本知識
土地の購入を検討している方や、隣地との境界問題に直面している方にとって、「土地所有者の情報をどうやって調べるのか」は重要な課題です。
この記事では、土地所有者を調べる3つの方法(登記情報提供サービス・法務局窓口・郵送請求)と、地番の調べ方、所有者不明土地への対処法を、法務省や国土交通省の公式情報を元に解説します。
初めて土地所有者を調べる方でも、必要な手続きを正確に把握できるようになります。
この記事のポイント
- 土地所有者は登記情報提供サービス(338円)、法務局窓口(600円)、郵送請求で調べられる
- 登記情報を取得するには地番の特定が必須(住所とは異なる)
- 登記情報は公開情報だが、正当な目的(土地購入交渉、境界確定等)でのみ使用すべき
- 登記名義人の住所が古い・既に死亡している場合は専門家への相談を推奨
土地所有者を調べる必要がある場面は、主に以下のようなケースです。
- 土地購入を検討している: 売主が本当の所有者かを確認したい
- 境界確定をしたい: 隣地所有者と境界線を明確にする必要がある
- 相続手続きで所有者を特定したい: 亡くなった親族が所有していた土地の現在の所有者を確認
登記情報は公開情報ですが、個人情報保護法との関係で、正当な目的でのみ使用することが求められます。営業目的での取得・使用は避けるべきです。
土地所有者を調べる3つの方法
土地所有者を調べる方法は、大きく分けて3つあります。それぞれの特徴を理解し、自分の状況に合った方法を選びましょう。
| 方法 | 手数料 | 所要時間 | 法的証明力 | 取得できる情報 | 
|---|---|---|---|---|
| 登記情報提供サービス | 338円/件 | 即時 | なし | 所有者氏名・住所 | 
| 法務局窓口 | 600円/件 | 即日 | あり | 登記事項証明書 | 
| 郵送請求 | 600円+郵送料 | 3-7日 | あり | 登記事項証明書 | 
(出典: 法務省)
オンラインで調べる(登記情報提供サービス)
登記情報提供サービスは、インターネットで登記情報を閲覧できる有料サービスです。
特徴:
- 手数料: 1筆338円
- 所要時間: 即時閲覧可能
- 取得できる情報: 所有者氏名・住所、抵当権の有無等
- 注意点: 画面閲覧のみで、印刷しても法的証明力はありません
利用手順:
- 登記情報提供サービスの公式サイトにアクセス
- 利用者登録(クレジットカード払い)
- 地番を入力して検索
- 手数料を支払い、即時閲覧
オンラインで手軽に確認したい場合や、公的証明書として提出する必要がない場合に適しています。
法務局窓口で取得(登記事項証明書)
法務局の窓口で「登記事項証明書」を請求する方法です。公的証明書として使える点が最大のメリットです。
特徴:
- 手数料: 600円/件
- 所要時間: 即日(窓口で数分~30分程度)
- 取得できる情報: 登記事項証明書(公的証明書)
- 注意点: 地番が必要、窓口の営業時間内(平日8:30-17:15)に訪問が必要
利用手順:
- 管轄の法務局を確認
- 地番を事前に調べる
- 窓口で「登記事項証明書」を請求
- 手数料(600円)を支払い
- 証明書を受領
公的証明書として提出する必要がある場合(銀行融資、裁判所への提出等)は、この方法を選びましょう。
郵送で請求
遠隔地の土地を調べたい場合や、平日に法務局へ行けない場合は、郵送で請求する方法があります。
特徴:
- 手数料: 600円+郵送料(往復で300-400円程度)
- 所要時間: 3-7日程度
- 取得できる情報: 登記事項証明書(公的証明書)
- 注意点: 地番が必要、所要時間がかかる
利用手順:
- 管轄の法務局を確認
- 登記事項証明書交付請求書を記入
- 収入印紙(600円)、返信用封筒を同封
- 管轄法務局へ郵送
- 数日後に証明書が届く
時間に余裕がある場合や、遠隔地の土地を調べたい場合に適しています。
地番の調べ方(登記情報取得の前提)
登記情報を取得するには、「地番」が必要です。地番とは、土地1筆ごとに付けられた番号で、住所(住居表示)とは異なります。
地番と住所の違い:
- 地番: 土地を特定するための番号(例: 〇〇町1番2)
- 住所(住居表示): 建物を特定するための住所(例: 〇〇町1-2-3)
地番が分からない場合は、以下の方法で調べることができます。
地番検索サービス(無料・オンライン)
法務省の地番検索サービスは、住所から地番を無料で調べられるオンラインサービスです。
利用方法:
- 地番検索サービスの公式サイトにアクセス
- 都道府県・市区町村を選択
- 住所を入力
- 該当する地番を確認
注意点: 全国すべての地域に対応しているわけではありません。対応していない地域は、次の方法を試しましょう。
ブルーマップで住所から地番を調べる
ブルーマップとは、ゼンリン社が発行する住宅地図に地番を併記した地図です。法務局や大規模図書館で閲覧できます。
利用方法:
- 最寄りの法務局または図書館へ訪問
- ブルーマップを閲覧
- 住所から該当する地番を確認
注意点: ブルーマップは有料図書のため、購入する必要はありません。法務局や図書館で閲覧するだけで十分です。
法務局への電話照会・市区町村の固定資産税課
地番検索サービスやブルーマップで見つからない場合は、直接問い合わせる方法があります。
法務局への電話照会:
- 管轄の法務局に電話
- 住所を伝え、地番を教えてもらう
- 本人確認書類の提示が必要な場合あり
市区町村の固定資産税課:
- 市区町村の固定資産税課に電話
- 住所を伝え、地番を教えてもらう
- 正当な理由(土地購入検討等)の説明が必要
登記名義人の住所が古い・既に死亡している場合の対処法
登記簿を取得しても、登記名義人の住所が古い場合や、既に死亡している場合は、現在の所有者が特定できません。このような場合の対処法を解説します。
住民票除票で住所変更を追跡
登記名義人の住所が古い場合、住民票除票を取得することで、住所変更を追跡できます。
住民票除票とは:
- 転居・死亡により住民登録が抹消された記録
- 保存期間は5年間
- 市区町村の窓口で取得可能
利用手順:
- 登記簿に記載された住所の市区町村へ問い合わせ
- 住民票除票を請求(正当な理由の説明が必要)
- 転居先・死亡の有無を確認
注意点: 保存期間(5年)を過ぎている場合は、取得できません。その場合は次の方法を試しましょう。
戸籍調査で相続人を特定
登記名義人が既に死亡している場合は、戸籍調査で相続人を特定する必要があります。
戸籍調査とは:
- 亡くなった方の戸籍を辿り、相続人を特定する手続き
- 専門性が高く、司法書士・弁護士への相談を推奨
相続人調査の流れ:
- 登記名義人の死亡を確認(住民票除票・戸籍謄本)
- 亡くなった方の本籍地の市区町村で戸籍謄本を取得
- 戸籍を辿り、相続人を特定
- 相続人全員と連絡を取る
注意点: 相続人が複数いる場合や、相続放棄がある場合は、さらに複雑になります。専門家への相談が必要です。
国土交通省のガイドラインによると、所有者不明土地の探索には、住民票除票・戸籍調査が有効とされています。
その他の調べ方(固定資産課税台帳の閲覧)
登記情報とは別に、市区町村で固定資産課税台帳を閲覧する方法もあります。
固定資産課税台帳とは:
- 市区町村が管理する固定資産税の課税対象者を記載した台帳
- 借地人・隣地所有者等は閲覧可能
- 一般人は閲覧不可
閲覧できる人:
- 固定資産の所有者本人
- 借地人・借家人(賃貸借契約がある場合)
- 隣地所有者(境界確定等の正当な理由がある場合)
利用方法:
- 市区町村の固定資産税課に問い合わせ
- 本人確認書類と正当な理由を説明
- 固定資産課税台帳を閲覧
注意点: 一般人が「興味本位」で閲覧することはできません。正当な理由が必要です。
費用の比較と注意点
土地所有者を調べる各方法の費用を比較し、注意点をまとめます。
各方法の手数料比較
| 方法 | 手数料 | 法的証明力 | 所要時間 | 
|---|---|---|---|
| 登記情報提供サービス | 338円 | なし | 即時 | 
| 登記事項証明書(窓口) | 600円 | あり | 即日 | 
| 登記事項証明書(オンライン・窓口受取) | 490円 | あり | 1-2日 | 
| 登記事項証明書(オンライン・郵送) | 520円 | あり | 3-5日 | 
| 登記事項証明書(郵送請求) | 600円+郵送料 | あり | 3-7日 | 
(出典: 法務省)
費用を抑えるポイント:
- 法的証明力が不要なら、登記情報提供サービス(338円)が最安
- 公的証明書が必要なら、オンライン請求(490円)が窓口請求より安い
所有者情報の正当な利用
登記情報は公開情報ですが、個人情報保護法との関係で、正当な目的でのみ使用することが求められます。
正当な目的の例:
- 土地購入交渉
- 境界確定の手続き
- 相続手続き
- 訴訟等の法的手続き
不適切な目的の例:
- 営業目的での情報取得
- DM送付等の勧誘
- プライバシー侵害
営業目的での取得・使用は、個人情報保護法違反のリスクがあります。正当な目的でのみ使用するよう注意してください。
まとめ
土地所有者を調べる方法は、登記情報提供サービス(338円)、法務局窓口(600円)、郵送請求の3つです。登記情報を取得するには地番の特定が必須で、地番検索サービス・ブルーマップ・法務局への電話照会で調べることができます。
登記名義人の住所が古い・既に死亡している場合は、住民票除票・戸籍調査で現在の所有者を特定する必要がありますが、専門性が高いため、司法書士・弁護士への相談を推奨します。
所有者情報は正当な目的(土地購入交渉、境界確定等)でのみ使用し、営業目的での取得・使用は避けましょう。不明点がある場合は、専門家に相談することをおすすめします。
