土地所有者の調べ方完全ガイド|登記簿謄本の取得方法と注意点

公開日: 2025/10/27

土地所有者を調べる必要がある場面と基本知識

土地の購入を検討している方や、隣地との境界問題に直面している方にとって、「土地所有者の情報をどうやって調べるのか」は重要な課題です。

この記事では、土地所有者を調べる3つの方法(登記情報提供サービス・法務局窓口・郵送請求)と、地番の調べ方、所有者不明土地への対処法を、法務省国土交通省の公式情報を元に解説します。

初めて土地所有者を調べる方でも、必要な手続きを正確に把握できるようになります。

この記事のポイント

  • 土地所有者は登記情報提供サービス(338円)、法務局窓口(600円)、郵送請求で調べられる
  • 登記情報を取得するには地番の特定が必須(住所とは異なる)
  • 登記情報は公開情報だが、正当な目的(土地購入交渉、境界確定等)でのみ使用すべき
  • 登記名義人の住所が古い・既に死亡している場合は専門家への相談を推奨

土地所有者を調べる必要がある場面は、主に以下のようなケースです。

  • 土地購入を検討している: 売主が本当の所有者かを確認したい
  • 境界確定をしたい: 隣地所有者と境界線を明確にする必要がある
  • 相続手続きで所有者を特定したい: 亡くなった親族が所有していた土地の現在の所有者を確認

登記情報は公開情報ですが、個人情報保護法との関係で、正当な目的でのみ使用することが求められます。営業目的での取得・使用は避けるべきです。

土地所有者を調べる3つの方法

土地所有者を調べる方法は、大きく分けて3つあります。それぞれの特徴を理解し、自分の状況に合った方法を選びましょう。

方法 手数料 所要時間 法的証明力 取得できる情報
登記情報提供サービス 338円/件 即時 なし 所有者氏名・住所
法務局窓口 600円/件 即日 あり 登記事項証明書
郵送請求 600円+郵送料 3-7日 あり 登記事項証明書

(出典: 法務省

オンラインで調べる(登記情報提供サービス)

登記情報提供サービスは、インターネットで登記情報を閲覧できる有料サービスです。

特徴:

  • 手数料: 1筆338円
  • 所要時間: 即時閲覧可能
  • 取得できる情報: 所有者氏名・住所、抵当権の有無等
  • 注意点: 画面閲覧のみで、印刷しても法的証明力はありません

利用手順:

  1. 登記情報提供サービスの公式サイトにアクセス
  2. 利用者登録(クレジットカード払い)
  3. 地番を入力して検索
  4. 手数料を支払い、即時閲覧

オンラインで手軽に確認したい場合や、公的証明書として提出する必要がない場合に適しています。

法務局窓口で取得(登記事項証明書)

法務局の窓口で「登記事項証明書」を請求する方法です。公的証明書として使える点が最大のメリットです。

特徴:

  • 手数料: 600円/件
  • 所要時間: 即日(窓口で数分~30分程度)
  • 取得できる情報: 登記事項証明書(公的証明書)
  • 注意点: 地番が必要、窓口の営業時間内(平日8:30-17:15)に訪問が必要

利用手順:

  1. 管轄の法務局を確認
  2. 地番を事前に調べる
  3. 窓口で「登記事項証明書」を請求
  4. 手数料(600円)を支払い
  5. 証明書を受領

公的証明書として提出する必要がある場合(銀行融資、裁判所への提出等)は、この方法を選びましょう。

郵送で請求

遠隔地の土地を調べたい場合や、平日に法務局へ行けない場合は、郵送で請求する方法があります。

特徴:

  • 手数料: 600円+郵送料(往復で300-400円程度)
  • 所要時間: 3-7日程度
  • 取得できる情報: 登記事項証明書(公的証明書)
  • 注意点: 地番が必要、所要時間がかかる

利用手順:

  1. 管轄の法務局を確認
  2. 登記事項証明書交付請求書を記入
  3. 収入印紙(600円)、返信用封筒を同封
  4. 管轄法務局へ郵送
  5. 数日後に証明書が届く

時間に余裕がある場合や、遠隔地の土地を調べたい場合に適しています。

地番の調べ方(登記情報取得の前提)

登記情報を取得するには、「地番」が必要です。地番とは、土地1筆ごとに付けられた番号で、住所(住居表示)とは異なります。

地番と住所の違い:

  • 地番: 土地を特定するための番号(例: 〇〇町1番2)
  • 住所(住居表示): 建物を特定するための住所(例: 〇〇町1-2-3)

地番が分からない場合は、以下の方法で調べることができます。

地番検索サービス(無料・オンライン)

法務省の地番検索サービスは、住所から地番を無料で調べられるオンラインサービスです。

利用方法:

  1. 地番検索サービスの公式サイトにアクセス
  2. 都道府県・市区町村を選択
  3. 住所を入力
  4. 該当する地番を確認

注意点: 全国すべての地域に対応しているわけではありません。対応していない地域は、次の方法を試しましょう。

ブルーマップで住所から地番を調べる

ブルーマップとは、ゼンリン社が発行する住宅地図に地番を併記した地図です。法務局や大規模図書館で閲覧できます。

利用方法:

  1. 最寄りの法務局または図書館へ訪問
  2. ブルーマップを閲覧
  3. 住所から該当する地番を確認

注意点: ブルーマップは有料図書のため、購入する必要はありません。法務局や図書館で閲覧するだけで十分です。

法務局への電話照会・市区町村の固定資産税課

地番検索サービスやブルーマップで見つからない場合は、直接問い合わせる方法があります。

法務局への電話照会:

  • 管轄の法務局に電話
  • 住所を伝え、地番を教えてもらう
  • 本人確認書類の提示が必要な場合あり

市区町村の固定資産税課:

  • 市区町村の固定資産税課に電話
  • 住所を伝え、地番を教えてもらう
  • 正当な理由(土地購入検討等)の説明が必要

登記名義人の住所が古い・既に死亡している場合の対処法

登記簿を取得しても、登記名義人の住所が古い場合や、既に死亡している場合は、現在の所有者が特定できません。このような場合の対処法を解説します。

住民票除票で住所変更を追跡

登記名義人の住所が古い場合、住民票除票を取得することで、住所変更を追跡できます。

住民票除票とは:

  • 転居・死亡により住民登録が抹消された記録
  • 保存期間は5年間
  • 市区町村の窓口で取得可能

利用手順:

  1. 登記簿に記載された住所の市区町村へ問い合わせ
  2. 住民票除票を請求(正当な理由の説明が必要)
  3. 転居先・死亡の有無を確認

注意点: 保存期間(5年)を過ぎている場合は、取得できません。その場合は次の方法を試しましょう。

戸籍調査で相続人を特定

登記名義人が既に死亡している場合は、戸籍調査で相続人を特定する必要があります。

戸籍調査とは:

  • 亡くなった方の戸籍を辿り、相続人を特定する手続き
  • 専門性が高く、司法書士・弁護士への相談を推奨

相続人調査の流れ:

  1. 登記名義人の死亡を確認(住民票除票・戸籍謄本)
  2. 亡くなった方の本籍地の市区町村で戸籍謄本を取得
  3. 戸籍を辿り、相続人を特定
  4. 相続人全員と連絡を取る

注意点: 相続人が複数いる場合や、相続放棄がある場合は、さらに複雑になります。専門家への相談が必要です。

国土交通省のガイドラインによると、所有者不明土地の探索には、住民票除票・戸籍調査が有効とされています。

その他の調べ方(固定資産課税台帳の閲覧)

登記情報とは別に、市区町村で固定資産課税台帳を閲覧する方法もあります。

固定資産課税台帳とは:

  • 市区町村が管理する固定資産税の課税対象者を記載した台帳
  • 借地人・隣地所有者等は閲覧可能
  • 一般人は閲覧不可

閲覧できる人:

  • 固定資産の所有者本人
  • 借地人・借家人(賃貸借契約がある場合)
  • 隣地所有者(境界確定等の正当な理由がある場合)

利用方法:

  1. 市区町村の固定資産税課に問い合わせ
  2. 本人確認書類と正当な理由を説明
  3. 固定資産課税台帳を閲覧

注意点: 一般人が「興味本位」で閲覧することはできません。正当な理由が必要です。

費用の比較と注意点

土地所有者を調べる各方法の費用を比較し、注意点をまとめます。

各方法の手数料比較

方法 手数料 法的証明力 所要時間
登記情報提供サービス 338円 なし 即時
登記事項証明書(窓口) 600円 あり 即日
登記事項証明書(オンライン・窓口受取) 490円 あり 1-2日
登記事項証明書(オンライン・郵送) 520円 あり 3-5日
登記事項証明書(郵送請求) 600円+郵送料 あり 3-7日

(出典: 法務省

費用を抑えるポイント:

  • 法的証明力が不要なら、登記情報提供サービス(338円)が最安
  • 公的証明書が必要なら、オンライン請求(490円)が窓口請求より安い

所有者情報の正当な利用

登記情報は公開情報ですが、個人情報保護法との関係で、正当な目的でのみ使用することが求められます。

正当な目的の例:

  • 土地購入交渉
  • 境界確定の手続き
  • 相続手続き
  • 訴訟等の法的手続き

不適切な目的の例:

  • 営業目的での情報取得
  • DM送付等の勧誘
  • プライバシー侵害

営業目的での取得・使用は、個人情報保護法違反のリスクがあります。正当な目的でのみ使用するよう注意してください。

まとめ

土地所有者を調べる方法は、登記情報提供サービス(338円)、法務局窓口(600円)、郵送請求の3つです。登記情報を取得するには地番の特定が必須で、地番検索サービス・ブルーマップ・法務局への電話照会で調べることができます。

登記名義人の住所が古い・既に死亡している場合は、住民票除票・戸籍調査で現在の所有者を特定する必要がありますが、専門性が高いため、司法書士・弁護士への相談を推奨します。

所有者情報は正当な目的(土地購入交渉、境界確定等)でのみ使用し、営業目的での取得・使用は避けましょう。不明点がある場合は、専門家に相談することをおすすめします。

よくある質問

Q1登記名義人が既に亡くなっている場合はどうすればいいですか?

A1住民票除票(保存期間5年)で死亡を確認後、戸籍調査で相続人を特定します。戸籍調査は専門性が高く、亡くなった方の本籍地の市区町村で戸籍謄本を取得し、戸籍を辿って相続人全員を特定する必要があります。相続人が複数いる場合や相続放棄がある場合はさらに複雑になるため、司法書士・弁護士への相談を推奨します。

Q2登記情報提供サービスと登記事項証明書の違いは何ですか?

A2登記情報提供サービス(338円)は画面閲覧のみで法的証明力がありません。印刷しても公的証明書として使えません。一方、登記事項証明書(600円)は法務局が発行する公的証明書で、銀行融資や裁判所への提出等、法的証明力が必要な場面で使用できます。手軽に確認したいだけなら登記情報提供サービス、公的証明書として使う必要があるなら登記事項証明書を選びましょう。

Q3地番が分からない場合はどうすればいいですか?

A3地番を調べる方法は4つあります。①法務省の地番検索サービス(無料・オンライン)で住所から地番を検索、②ブルーマップ(法務局・大規模図書館で閲覧可能)で住所から地番を確認、③管轄の法務局に電話して住所を伝え地番を教えてもらう、④市区町村の固定資産税課に問い合わせる。最も手軽なのは地番検索サービスですが、全国すべての地域に対応しているわけではないため、見つからない場合は他の方法を試しましょう。

Q4所有者情報を営業目的で使用してもいいですか?

A4営業目的での取得・使用は個人情報保護法違反のリスクがあるため、避けるべきです。登記情報は公開情報ですが、正当な目的(土地購入交渉、境界確定、相続手続き、訴訟等の法的手続き)でのみ使用することが求められます。DM送付等の勧誘やプライバシー侵害につながる使用は不適切です。取得した情報は目的外利用せず、適切に管理しましょう。