土地とは?法律上の定義と地目・権利の基礎知識

公開日: 2025/11/6

土地とは?民法・不動産登記法における定義

不動産取引を検討し始めた際、「土地」という言葉の法律上の定義や種類が分からず、戸惑う方は少なくありません。

この記事では、土地の法律上の定義、地目(田・畑・宅地・山林等23種類)、権利(所有権・借地権等)、用途地域の基礎知識を、法務省国土交通省の公式情報を元に解説します。

初めて土地に関わる手続きをする方でも、不動産取引時に必要な基礎知識を把握できるようになります。

この記事のポイント

  • 土地は民法上「不動産」の一種であり、建物とは別の独立した権利客体として扱われる
  • 地目は不動産登記法により定められた全23種類の土地用途の分類、登記簿上の地目と実際の利用状況が異なる場合もある
  • 所有権は物権(対世効あり)で自由に使用・収益・処分できる、借地権は債権で地代・更新料が必要
  • 用途地域は都市計画法により定められ全13種類、建築できる建物の種類や建ぺい率・容積率が制限される
  • 不動産取引時は地目(農地転用の有無)、権利(所有権か借地権か)、用途地域(建築制限)を確認すべき

地目の種類と分類(田・畑・宅地・山林等23種類)

地目は、不動産登記法により定められた土地の用途の分類です。全23種類あり、登記簿に記載されます。

23種類の地目一覧(不動産登記法)

不動産登記法により定められた23種類の地目は以下の通りです。

分類 地目 定義
農地 耕作地で用水を利用して耕作する土地
農地 耕作地で用水を利用しないで耕作する土地
宅地 宅地 建物の敷地及びその維持もしくは効用を果たすために必要な土地
山林 山林 竹木の生育する土地
原野 原野 耕作の方法によらないで雑草、かん木類の生育する土地
その他 雑種地 上記以外の土地
その他 池沼・墓地・境内地・運河用地・水道用地・用悪水路・ため池・堤・井溝・保安林・公衆用道路・公園・鉄道用地・学校用地・鉱泉地 それぞれの用途に応じた土地

地目と実際の土地利用状況の違い

登記簿上の地目と実際の利用状況が異なる場合があります。例えば、登記簿上は「田」となっているが、実際には宅地として利用されている場合です。このような場合、地目変更登記が必要です。

地目変更の手続き(農地転用等)

地目を変更する場合、法務局へ地目変更登記を申請します。ただし、農地(田・畑)を宅地に変更する場合は、農業委員会の許可(農地転用許可)が必要です。許可なく転用すると違法となり、罰則の対象となります。

土地の権利の種類(所有権・借地権・地上権・地役権)

土地の権利は、大きく分けて所有権と借地権があります。それぞれの特徴を理解することが重要です。

所有権とは(物権・対世効)

所有権は、民法206条に基づく物権です。土地を自由に使用・収益・処分できる権利であり、対世効(誰に対しても主張できる効力)があります。

所有権の特徴:

  • 自由な使用・収益・処分:土地を自由に使用・収益(賃貸収入等)・処分(売却等)できる
  • 物権:対世効があり、誰に対しても主張できる
  • 登記:登記簿に所有者として記載される

借地権とは(債権・地代・更新料)

借地権は、建物所有を目的として地主から土地を借りる権利です。債権(主に地主に対してのみ主張可能)であり、地代・更新料・承諾料等が必要です。

借地権の特徴:

  • 地代の支払い:毎月または毎年、地主へ地代を支払う
  • 更新料・承諾料:契約更新時や建物増改築時に費用が発生する場合が多い
  • 資産価値:所有権の60-70%程度の資産価値とされる
  • 債権:主に地主に対してのみ主張可能

所有権と借地権の違い(資産価値・費用)

所有権と借地権の主な違いを比較します。

項目 所有権 借地権
権利の性質 物権(対世効あり) 債権
地代 なし あり
更新料・承諾料 なし あり(契約による)
資産価値 100% 60-70%程度
処分の自由度 高い 制限あり(地主の承諾が必要)

その他、地上権・地役権等の制限物権もあります。地上権は土地を使用する権利、地役権は他人の土地を特定の目的で利用する権利です。

用途地域とは?建築制限との関係

用途地域は、都市計画法により市街化区域等で定められる土地利用の制限です。

都市計画法に基づく13種類の用途地域

国土交通省によると、用途地域は全13種類あります。

分類 用途地域 建築可能な建物
住居系 第一種低層住居専用地域 低層住宅、小規模店舗
住居系 第二種低層住居専用地域 低層住宅、小規模店舗
住居系 第一種中高層住居専用地域 中高層住宅、中規模店舗
住居系 第二種中高層住居専用地域 中高層住宅、中規模店舗
住居系 第一種住居地域 住宅、3000㎡以下の店舗・事務所
住居系 第二種住居地域 住宅、大規模店舗・事務所
住居系 準住居地域 住宅、道路沿いサービス施設
住居系 田園住居地域 低層住宅、農業関連施設
商業系 近隣商業地域 近隣住民向けの商業施設
商業系 商業地域 商業施設、事務所
工業系 準工業地域 環境悪化のおそれが少ない工場
工業系 工業地域 工場
工業系 工業専用地域 工場(住宅建築不可)

住居系・商業系・工業系の分類

用途地域は、住居系(8種類)・商業系(2種類)・工業系(3種類)に分類されます。それぞれの地域で建築できる建物の種類が異なります。

建ぺい率・容積率の制限

用途地域により、建ぺい率(敷地面積に対する建築面積の割合)と容積率(敷地面積に対する延床面積の割合)が制限されます。例えば、第一種低層住居専用地域では建ぺい率30-60%、容積率50-200%の範囲で制限されます。

まとめ:土地の基礎知識と不動産取引での注意点

土地は民法上の不動産であり、地目・権利・用途地域等の分類があります。不動産取引時は以下を確認すべきです。

  • 地目:農地転用の有無(田・畑を宅地に変更する場合は農業委員会の許可が必要)
  • 権利:所有権か借地権か(借地権は地代・更新料が必要で資産価値は所有権の60-70%程度)
  • 用途地域:建築制限(建ぺい率・容積率、建築可能な建物の種類)

次のアクションとして、登記簿謄本の取得(法務局または不動産登記情報提供サービス)、不動産会社・司法書士への相談を推奨します。専門家のアドバイスを受けながら、安全な不動産取引を進めましょう。

よくある質問

Q1土地と建物は別々に登記されますか?

A1はい、別々に登記されます。民法上、土地と建物は独立した不動産として扱われ、所有者が異なる場合もあります(借地権付き建物等)。不動産取引時は、土地と建物それぞれの登記簿謄本を確認することが重要です。登記簿謄本は法務局または不動産登記情報提供サービスで取得できます。

Q2登記簿上の地目と実際の土地利用が違う場合、どうすればよいですか?

A2地目変更登記が必要です。法務局へ地目変更登記を申請してください。ただし、農地(田・畑)を宅地に変更する場合は、農業委員会の許可(農地転用許可)が必要です。許可なく転用すると違法となり、罰則の対象となります。農業委員会は市区町村役場に設置されています。

Q3借地権の土地は所有権に比べてどのくらい安いですか?

A3一般的に所有権の60-70%程度の資産価値とされます。ただし、地代・更新料・承諾料等のコストが発生するため、長期的な総コストを比較すべきです。借地権の場合、建物増改築時や売却時に地主の承諾が必要で、承諾料が発生する場合もあります。購入前に地代・更新料の条件を確認してください。

Q4用途地域はどこで調べられますか?

A4市区町村の都市計画課、または国土交通省の「都市計画情報検索システム」で確認可能です。不動産取引時は、宅地建物取引業法により、宅建業者が重要事項説明で用途地域を説明する義務があります。用途地域により建築できる建物の種類や建ぺい率・容積率が制限されるため、購入前に必ず確認してください。