団信に入れない人の住宅ローン対処法|代替手段と選択肢を解説

公開日: 2025/10/26

住宅ローンの団信に入れない理由とは

住宅ローンを組む際、多くの金融機関で団体信用生命保険(団信)への加入が原則必須となっています。しかし、持病や健康上の理由で団信に入れず、住宅購入を諦めるべきか悩んでいる方は少なくありません。

この記事では、団信に入れない理由、フラット35(団信任意)・ワイド団信・民間保険等の代替手段、告知義務の重要性を、住宅金融支援機構金融庁の公式情報を元に解説します。

団信に入れなくても住宅ローンを諦める必要はありません。複数の選択肢を比較検討し、自分に合った方法を見つけることができます。

この記事のポイント

  • 団信に入れない主な理由はがん・心疾患・糖尿病等の持病や既往症、年齢制限
  • フラット35は団信加入が任意であり、団信無しプランを選択可能
  • ワイド団信(引受基準緩和型)は金利上乗せ0.2-0.3%で加入条件が緩和
  • 民間の引受基準緩和型生命保険で団信を代替する方法もある
  • 告知義務違反は保険金不払いのリスクがあり、絶対に避けるべき

健康状態が理由で団信に入れないケース

団信加入を断られる最も多い理由は、健康状態です。PayPay銀行によると、以下のような病気・既往症がある場合、告知が必要となります。

  • がん: 過去5年以内の診断・治療歴
  • 心疾患: 心筋梗塞、狭心症、不整脈等
  • 糖尿病: インスリン治療、合併症の有無
  • 高血圧: 投薬治療中の場合
  • 精神疾患: うつ病、パニック障害等
  • その他: 肝疾患、腎疾患、喘息等

告知義務は非常に重要です。健康状態を偽って申込むと、保険金請求時(死亡・高度障害時)に保険会社が医療記録を調査し、虚偽申告が判明すると保険金不払いとなります。この場合、遺族がローン全額を負担するリスクがあります。

年齢制限で団信に入れないケース

多くの金融機関で、団信加入の年齢制限が設けられています。一般的に、申込時の年齢が70歳以上の場合、団信に加入できないケースが多くなります。

また、完済時の年齢が75-80歳を超える場合も、審査が厳しくなる傾向があります。

フラット35(団信任意)を利用する

住宅金融支援機構が提供するフラット35は、団信加入が任意となっています。これは民間住宅ローンとの大きな違いです。

フラット35の特徴と申込要件

フラット35の主な特徴は以下の通りです。

  • 団信加入が任意: 健康状態に関わらず申込み可能
  • 長期固定金利: 借入時の金利が完済まで変わらない
  • 保証料・繰上返済手数料不要: 諸費用を抑えられる

団信無しプランを選択すると、金利が約0.2%低くなります(2025年10月時点)。ただし、債務者死亡時に遺族がローン全額を負担するリスクがあるため、別の保障手段が必須です。

フラット35のメリット・デメリット

メリット:

  • 健康状態に関わらず住宅ローンを組める
  • 長期固定金利で将来の返済計画が立てやすい
  • 団信無しプランは金利が低い

デメリット:

  • 団信無しの場合、債務者死亡時に遺族がローン全額を負担
  • 民間ローンより金利が高い場合がある
  • 物件の技術基準が厳しい(耐震性・断熱性等)

ワイド団信(引受基準緩和型)を検討する

ワイド団信とは、通常の団信より審査基準が緩和された団体信用生命保険です。持病や既往症がある人も加入しやすくなっています。

ワイド団信の加入条件と費用

モゲチェックによると、ワイド団信の主な特徴は以下の通りです。

  • 金利上乗せ: 0.2-0.3%程度(金融機関により異なる)
  • 加入できる可能性がある病気: 高血圧、糖尿病、喘息、うつ病等
  • 審査基準: 通常の団信より緩和されているが、保険会社の判断による

金利上乗せ0.25%の場合、借入額3,000万円・返済期間35年で総返済額は約150万円増加します。長期的なコスト増加を理解した上で選択することが重要です。

ワイド団信で加入できる可能性がある病気・既往症

以下の病気・既往症でも、条件により加入できる場合があります。

  • 高血圧(投薬治療中でも数値が安定している場合)
  • 糖尿病(合併症がない、HbA1cが一定水準以下の場合)
  • 喘息(発作頻度が低い場合)
  • うつ病(寛解状態、投薬なし等)

ただし、金融機関・保険会社により基準が異なるため、複数社への相談が有効です。審査結果の詳細理由は開示されないため、別の金融機関で再度申込む選択肢もあります。

民間生命保険で代替する

フラット35の団信無しプランと民間の引受基準緩和型生命保険を組み合わせる方法もあります。

引受基準緩和型生命保険の選び方

フラット35相談センターによると、FWD生命等の保険会社が提供する引受基準緩和型生命保険を活用できます。

選び方のポイント:

  • 保障額: ローン残債をカバーできる金額を設定
  • 保険期間: ローン完済時期に合わせる
  • 保険料: 月々の負担と団信の金利上乗せを比較

この方法のメリットは、団信より審査が緩やかな場合があることです。デメリットは、保険料を別途負担する必要があり、健康状態により加入できない場合もあることです。

保障額の設定と注意点

保障額は、ローン残債と同額以上に設定することが基本です。ローン残高は年々減少するため、逓減定期保険(保障額が年々減少するタイプ)を選ぶと保険料を抑えられます。

注意点として、既に健康状態に問題がある場合、保険加入後の一定期間(通常1-2年間)は保障額が削減される場合があります。契約内容を十分に確認しましょう。

その他の対処法(配偶者名義・頭金増額)

団信に入れない場合、以下の選択肢も検討できます。

配偶者名義での借入

配偶者に十分な収入と健康状態があれば、配偶者名義でローンを組む選択肢があります。ただし、配偶者も団信審査に通る必要があります。

この方法のメリットは、配偶者が健康であれば通常の団信に加入できることです。デメリットは、配偶者に十分な収入が必要であり、配偶者が主債務者となるため、離婚時等のリスクがあることです。

頭金を増やして借入額を減らす

頭金を増やして借入額を減らすことで、万一の場合の遺族負担を軽減できます。

例えば、3,000万円の物件で頭金を1,000万円用意すれば、借入額は2,000万円となります。債務者死亡時の遺族負担は2,000万円となり、3,000万円の場合より1,000万円軽減されます。

ただし、頭金を増やしすぎると手元資金が枯渇し、教育費・医療費等の急な支出に対応できなくなるリスクがあります。貯蓄と借入のバランスを考慮しましょう。

まとめ:複数の選択肢を比較検討しよう

団信に入れない場合でも、住宅ローンを諦める必要はありません。フラット35(団信任意)、ワイド団信(引受基準緩和型)、民間の引受基準緩和型生命保険、配偶者名義での借入、頭金増額等、複数の選択肢があります。

それぞれのメリット・デメリット、長期的なコスト、遺族への負担を比較し、自分に合った方法を選ぶことが重要です。告知義務を守り、正規の金融機関・保険会社を通じて申込むことを徹底しましょう。

専門家(ファイナンシャルプランナー、金融機関担当者、保険代理店)に相談し、総合的に判断することをおすすめします。

よくある質問

Q1団信に入れない理由を金融機関に教えてもらえますか?

A1保険会社は審査結果の詳細理由を開示しません。「健康状態により加入不可」等の簡潔な通知のみとなります。審査基準は保険会社ごとに異なるため、別の金融機関のワイド団信を試す、またはフラット35等の団信任意のローンを検討することをおすすめします。複数の選択肢を並行して検討しましょう。

Q2告知義務違反が発覚するのはいつですか?

A2保険金請求時(死亡・高度障害時)に保険会社が医療記録を調査します。虚偽申告が判明すると保険金不払いとなり、遺族がローン全額を負担するリスクがあります。告知義務違反は契約解除の理由となるため、健康状態を正確に申告することが絶対に必要です。「告知しなければバレない」という考えは危険です。

Q3団信無しでローンを組んだ場合、後から加入できますか?

A3フラット35は借入後に団信への途中加入が可能です(年1回の受付、健康状態の再審査あり)。民間ローンは原則不可となっています。健康状態が改善した場合は金融機関に相談してみましょう。ただし、加入できる保証はないため、借入時に代替保障を準備しておくことが重要です。

Q4ワイド団信の審査に落ちた後、通常の団信に再申込できますか?

A4可能です。ワイド団信と通常の団信は審査基準が異なるため、両方に申込むことも選択肢です。ただし、同じ保険会社では審査結果が変わらない可能性が高いため、別の金融機関(異なる保険会社と提携している場合)で申込むことをおすすめします。複数の金融機関で事前審査を受けることが有効です。