住宅ローンが払えなくなったら|取るべき行動と対処法

公開日: 2025/10/31

住宅ローンが払えなくなったらどうなる?

住宅ローンの返済が厳しくなると「このまま滞納したらどうなるのか」「家を失うのか」と不安になる方は少なくありません。

金融庁の分析によると、地域・金利上昇の影響により住宅ローンのデフォルト状況は変化しており、返済困難に陥る可能性は誰にでもあります。この記事では、住宅ローンが払えなくなった際に取るべき行動と対処法を、公的機関の情報を元に解説します。

早期対応により家を守れる可能性があることを理解できるようになります。

この記事のポイント

  • 滞納すると3-6ヶ月で期限の利益を喪失し、一括返済を求められる
  • 放置すると競売・信用情報への影響・残債務が発生するリスクがある
  • 金融機関への早期相談で返済条件変更(リスケジュール)が可能
  • 任意売却・個人再生・自己破産等の選択肢があり、状況に応じて判断すべき
  • 相談窓口(金融機関、住宅金融支援機構、法テラス、弁護士・司法書士)を活用できる

返済が厳しくなった際の初動対応

金融機関への早期相談が最重要

住宅ローンの返済が困難になった場合、最も重要なのは金融機関への早期相談です。滞納を放置すると、期限の利益を喪失し一括返済を求められるリスクがあります。

金融庁の監督指針により、金融機関は貸付条件変更等の申込みに対して柔軟に対応することが求められています。返済が厳しくなった段階で相談すれば、返済期間延長やボーナス払い減額等の対応を受けられる可能性があります。

住宅金融支援機構の相談窓口を活用

住宅金融支援機構は、返済に困った場合の公的相談窓口を提供しています。フラット35を利用している方はもちろん、民間住宅ローンの方も相談できる窓口があります。

相談窓口では、返済条件変更の具体的な手続きや、状況に応じた対処法のアドバイスを受けられます。

返済条件変更(リスケジュール)で返済を続ける

返済期間延長・ボーナス払い減額等の具体策

返済条件変更(リスケジュール)とは、金融機関との合意により返済計画を見直す方法です。具体的な選択肢は以下の通りです。

選択肢 内容 効果
返済期間延長 30年→35年に延長 月々の返済額が減少
ボーナス払い減額 ボーナス払いを減らす・なくす 年2回の負担を軽減
一定期間の返済額軽減 数年間の返済額を減額 短期的な困難に対応

(出典: 住宅金融支援機構

条件変更のメリットと注意点

返済条件変更のメリットは、月々の返済負担を軽減しながら返済を継続できることです。一方で、以下の点に注意が必要です。

  • 金融機関の審査がある: 必ず認められるわけではない
  • 総返済額が増える: 返済期間延長により利息が増加
  • 信用情報への影響: 一部金融機関では条件変更が記録される場合がある

手続きには収入証明書、返済計画書等の書類が必要です。詳細は金融機関にご確認ください。

任意売却という選択肢

任意売却のメリット・デメリット

返済条件変更が困難な場合、任意売却という選択肢があります。任意売却とは、金融機関の合意を得て、競売前に市場価格に近い価格で不動産を売却する方法です。

メリット:

  • 競売(市場価格の6-7割)より高く売却できる(8-9割程度)
  • プライバシーが保護される(競売は公開情報になる)
  • 売却時期・条件を調整できる

デメリット:

  • 残債務が残る可能性がある
  • 信用情報に記録される
  • 金融機関の合意が必要

競売との違い(価格・プライバシー・柔軟性)

一般社団法人 全国任意売却協会によると、任意売却と競売の主な違いは以下の通りです。

項目 任意売却 競売
売却価格 市場価格の8-9割 市場価格の6-7割
プライバシー 保護される 公開情報になる
売却時期 調整可能 裁判所が決定
残債務交渉 柔軟に対応 一方的に決定

任意売却の場合、残債務の分割返済について金融機関と交渉できるため、競売よりも有利な条件で解決できる可能性があります。

個人再生で家を残す方法

住宅ローン特則(住宅資金特別条項)とは

個人再生は、裁判所を通じて債務を大幅に減額する法的手続きです。民事再生法196条に基づく**住宅ローン特則(住宅資金特別条項)**を利用すれば、家を残しながら他の債務を整理できます。

住宅ローン特則の仕組み:

  • 住宅ローンは減額されず、通常通り返済を継続
  • カードローン・消費者金融等の他の債務は大幅減額(原則5分の1)
  • 住宅を保持したまま債務整理が可能

個人再生の要件と手続き

債務整理専門サイトによると、個人再生の主な要件は以下の通りです。

  • 継続的な収入がある(給与所得者、自営業者等)
  • 債務総額が5000万円以下(住宅ローンを除く)
  • 住宅ローンが本人名義で、現在も居住している

手続きには弁護士・司法書士への依頼が一般的で、費用は30-50万円程度が目安です。個人再生を行うと信用情報に5-10年間記録されます。

自己破産と住宅の関係

自己破産すると住宅はどうなるか

自己破産は、裁判所を通じて全ての債務を免責する手続きです。自己破産を選択すると、住宅は手放すことになります。

自己破産の流れ:

  1. 裁判所に破産申立
  2. 財産(住宅を含む)を処分
  3. 債権者に配当
  4. 残債務が免責される

住宅ローンを含む全債務が免責されるため、残債務を負わなくて済むのが最大のメリットです。

自己破産のメリット・デメリット

メリット:

  • 全ての債務が免責される
  • 残債務を負わない
  • 生活再建ができる

デメリット:

  • 住宅を失う
  • 信用情報に7-10年間記録される
  • 一定期間の資格制限(宅地建物取引士、警備員等)
比較項目 個人再生 自己破産
住宅 残せる 失う
債務 大幅減額 全額免責
費用 30-50万円 20-40万円
信用情報 5-10年 7-10年

相談窓口と次のアクション

住宅ローンが払えなくなった場合、以下の相談窓口を活用できます。

相談窓口 対応内容 連絡先
借入中の金融機関 返済条件変更の相談 各金融機関
住宅金融支援機構 返済困難時の支援制度 公式サイト参照
法テラス 債務整理の法律相談 0570-078374
弁護士・司法書士 個人再生・自己破産の手続き 各事務所

選択肢の判断基準:

  • 返済継続が可能: 返済条件変更(リスケジュール)
  • 売却しても良い: 任意売却
  • 家を残したい: 個人再生(住宅ローン特則)
  • 債務を全て整理したい: 自己破産

早期相談により選択肢が広がります。状況が悪化する前に、専門家に相談することを強くおすすめします。

まとめ

住宅ローンが払えなくなった場合、滞納を放置すると競売・信用情報への影響・残債務が発生するリスクがあります。しかし、金融機関への早期相談により返済条件変更が可能で、任意売却・個人再生・自己破産等の選択肢もあります。

各選択肢には要件・手続き・費用があり、個別事情により最適解が異なります。申告期限や手続きのタイミングも重要なため、早めの対応が不可欠です。

金融機関、住宅金融支援機構、法テラス、弁護士・司法書士等の専門家に相談し、冷静に対処法を検討しましょう。

よくある質問

Q1住宅ローンを滞納するとすぐに競売になりますか?

A1すぐには競売になりません。通常は3-6ヶ月の滞納で期限の利益を喪失し一括返済を求められ、その後も返済できない場合に競売手続きが開始されます。滞納初期の段階で金融機関に相談すれば返済条件変更等の対応が可能です。早期相談が選択肢を広げる鍵となります。

Q2返済条件変更をすると信用情報に記録されますか?

A2金融機関により対応が異なります。正常な返済を継続している状態での条件変更は記録されないことが多いですが、滞納後の条件変更は記録される場合があります。事前に金融機関に信用情報への影響を確認することを推奨します。記録された場合でも、返済を継続すれば信頼は回復します。

Q3任意売却しても残債務が残る場合はどうなりますか?

A3残債務は消えず、金融機関と分割返済の交渉が必要です。任意売却の場合、金融機関は返済能力に応じて月々数万円程度の分割返済を認めることが多いです。どうしても返済が困難な場合は個人再生・自己破産を検討する必要があります。残債務の扱いは事前に金融機関と協議しましょう。

Q4住宅ローン特則を使えば住宅ローンも減額されますか?

A4住宅ローンは減額されません。住宅ローン特則は家を残すための制度であり、住宅ローンは通常通り返済を継続する必要があります。減額されるのは他の債務(カードローン・消費者金融等)のみです。個人再生は住宅を守りながら他の債務を整理できる点が最大の特徴です。

Q5弁護士に相談する費用はどのくらいかかりますか?

A5初回相談は無料の事務所が多いです。個人再生の場合は着手金・報酬で30-50万円程度、自己破産の場合は20-40万円程度が目安です。法テラス(日本司法支援センター)を利用すれば費用の立替・分割払いが可能で、経済的に余裕がない方でも利用できます。まずは無料相談を活用しましょう。