住宅ローン親子リレー返済とは?基本的な仕組みを解説
50-60代で住宅ローンを組みたいが年齢や返済期間に不安がある方、または親の住宅ローンを引き継ぐ可能性のある30-40代の方にとって、「親子リレー返済」は選択肢の一つです。
親子リレー返済は、親と子が連帯債務者として1本の住宅ローンを組み、親の返済を子が引き継ぐ仕組みです。返済期間は子の年齢で計算されるため、親の年齢制約を補い長期返済が可能になります。
この記事では、親子リレー返済のメリット、デメリット、利用条件、注意点を、住宅金融支援機構や金融機関の公式情報、弁護士の見解を元に解説します。
この記事のポイント
- 親子リレー返済は返済期間を子の年齢で計算でき、月々の返済負担を軽減できる
- 子は連帯債務者として全額返済義務を負い、将来の住宅ローン審査に影響する
- 団信は多くの場合子のみ加入で、親の死亡時も子が債務を全額引き継ぐ
- 相続時に不動産と債務が分離し、他の相続人とトラブルになりやすい
- 親子での十分な話し合いと専門家(FP・弁護士)への相談が不可欠
親子リレー返済のメリット
親子リレー返済には、以下のようなメリットがあります。
返済期間を延長でき、月々の返済額を抑えられる
返済期間を子の年齢基準(最長35年)で計算できるため、月々の返済負担を軽減できます。例えば、親が60歳で借入する場合、通常は返済期間20-25年程度ですが、子の年齢が30歳なら最長35年の返済が可能です。
親が高齢でも住宅ローンを組める
多くの金融機関では親が70歳以上でも、子の年齢で審査されるため借入可能です。通常、住宅ローンは完済時年齢80歳未満という制限がありますが、親子リレーでは子の年齢基準で判断されます。
収入合算で借入可能額が増える
親と子の収入を合算することで、借入可能額が増え、希望の物件を購入しやすくなります。返済負担率(年収に対する年間返済額の割合)は合算後の収入で計算されるため、審査に通りやすくなる場合があります。
住宅ローン控除を親子両方で活用できる
住宅ローン控除(2022年以降入居の場合、年末残高の0.7%)を親子それぞれの持分に応じて受けられます。親と子の両方が所得税を納めている場合、控除額が増える可能性があります。
親子リレー返済のデメリット・注意点
一方で、親子リレー返済には重大なデメリット・リスクがあります。
子は連帯債務者として全額返済義務を負う
子は連帯債務者として親と同等の全額返済義務を負います。親が返済できなくなれば、子が全額負担する必要があります。金融機関は親・子どちらにも全額請求できるため、責任は非常に重いです。
子の将来の住宅ローン審査に影響する
子は連帯債務者として住宅ローン全額が信用情報に記録されます。このため、将来的に子が自分の住宅を購入したり、新規借入を希望しても、既存債務が審査に影響し、借入可能額が減少したり審査に通りにくくなります。
団信は子のみ加入で親の死亡時も債務が残る
多くの金融機関では、親子リレーローンの団信(団体信用生命保険)は子のみ加入で、親は加入できません。これは、親の死亡リスクが高いことと、子の年齢で返済期間を計算する制度の性質によるものです。
親の死亡時でもローンは免除されず、子が全額引き継ぎます。一部金融機関では親も加入できる商品がありますが、保険料が高額になる傾向があります。
相続時に不動産と債務が分離しトラブルになりやすい
親の死亡時、不動産の持分は相続財産として複数の相続人で分割される一方、債務は子が全額引き継ぐため、他の相続人とトラブルになりやすいです。例えば、子が住宅ローンを全額負担しているのに、他の兄弟姉妹が不動産の持分を相続し、売却や処分の権利を主張する可能性があります。
みなし贈与で贈与税が発生する可能性
不動産の持分割合と返済負担割合が異なる場合、「みなし贈与」として贈与税が発生します。例えば、持分が親50%・子50%だが、実際の返済負担が親30%・子70%の場合、親から子へ20%分の贈与があったとみなされます。贈与税を避けるため、持分割合と返済負担割合を一致させることが重要です。
親子リレー返済の利用条件
親子リレー返済の具体的な利用条件は、以下の通りです。
親子の関係・同居要件
- 実の親子または義理の親子(配偶者の親も可)
- 同居または同居予定が条件(金融機関により異なる)
年齢制限と返済期間の計算
- 子の年齢で返済期間を計算(最長35年)
- 多くの金融機関では完済時年齢80歳未満が条件となっていますが、金融機関により異なるため確認が必要です
収入合算と審査基準
- 親子の収入を合算して審査
- 返済負担率は合算後の収入で計算
団信加入の条件
- 子は団信加入が必須
- 親は加入できない場合が多い
親子リレー返済を検討する際のポイント
親子リレー返済を利用する前に、以下のポイントを慎重に検討してください。
親子で十分に話し合う
親子での十分な話し合いが必須です。子の将来のライフプラン(結婚、転職、自分の家を持つ計画等)や親の相続時の影響を慎重に検討する必要があります。
将来のライフプラン(子の独立・結婚、親の相続)を見据える
子が結婚して独立する場合、親の住宅に住み続けるのか、自分の住宅を購入するのか、といった将来の計画を具体的に考える必要があります。親子リレーローンがあると、子の住宅購入計画に制約が生じる可能性があります。
専門家(FP・弁護士・税理士)に相談する
連帯債務の重さ、相続時の複雑化、贈与税リスク等を正確に理解するため、FP(ファイナンシャルプランナー)・弁護士・税理士等の専門家に相談することを強く推奨します。安易に利用すべきではない制度であることを理解してください。
まとめ:親子リレー返済は慎重な判断が必要
親子リレー返済は、返済期間延長、月々の負担軽減、高齢でも借入可能といったメリットがある一方、子の全額返済義務、将来の審査への影響、相続時の複雑化といった重大なデメリットがあります。
親子での十分な話し合いと、専門家への相談を経た上で慎重に判断することを推奨します。安易に利用すると将来的に後悔するリスクがあることを認識し、慎重な検討を行いましょう。
