住宅ローン親子リレー返済の仕組みとメリット・注意点を解説

公開日: 2025/11/11

住宅ローン親子リレー返済とは?基本的な仕組みを解説

50-60代で住宅ローンを組みたいが年齢や返済期間に不安がある方、または親の住宅ローンを引き継ぐ可能性のある30-40代の方にとって、「親子リレー返済」は選択肢の一つです。

親子リレー返済は、親と子が連帯債務者として1本の住宅ローンを組み、親の返済を子が引き継ぐ仕組みです。返済期間は子の年齢で計算されるため、親の年齢制約を補い長期返済が可能になります。

この記事では、親子リレー返済のメリット、デメリット、利用条件、注意点を、住宅金融支援機構や金融機関の公式情報、弁護士の見解を元に解説します。

この記事のポイント

  • 親子リレー返済は返済期間を子の年齢で計算でき、月々の返済負担を軽減できる
  • 子は連帯債務者として全額返済義務を負い、将来の住宅ローン審査に影響する
  • 団信は多くの場合子のみ加入で、親の死亡時も子が債務を全額引き継ぐ
  • 相続時に不動産と債務が分離し、他の相続人とトラブルになりやすい
  • 親子での十分な話し合いと専門家(FP・弁護士)への相談が不可欠

親子リレー返済のメリット

親子リレー返済には、以下のようなメリットがあります。

返済期間を延長でき、月々の返済額を抑えられる

返済期間を子の年齢基準(最長35年)で計算できるため、月々の返済負担を軽減できます。例えば、親が60歳で借入する場合、通常は返済期間20-25年程度ですが、子の年齢が30歳なら最長35年の返済が可能です。

親が高齢でも住宅ローンを組める

多くの金融機関では親が70歳以上でも、子の年齢で審査されるため借入可能です。通常、住宅ローンは完済時年齢80歳未満という制限がありますが、親子リレーでは子の年齢基準で判断されます。

収入合算で借入可能額が増える

親と子の収入を合算することで、借入可能額が増え、希望の物件を購入しやすくなります。返済負担率(年収に対する年間返済額の割合)は合算後の収入で計算されるため、審査に通りやすくなる場合があります。

住宅ローン控除を親子両方で活用できる

住宅ローン控除(2022年以降入居の場合、年末残高の0.7%)を親子それぞれの持分に応じて受けられます。親と子の両方が所得税を納めている場合、控除額が増える可能性があります。

親子リレー返済のデメリット・注意点

一方で、親子リレー返済には重大なデメリット・リスクがあります。

子は連帯債務者として全額返済義務を負う

子は連帯債務者として親と同等の全額返済義務を負います。親が返済できなくなれば、子が全額負担する必要があります。金融機関は親・子どちらにも全額請求できるため、責任は非常に重いです。

子の将来の住宅ローン審査に影響する

子は連帯債務者として住宅ローン全額が信用情報に記録されます。このため、将来的に子が自分の住宅を購入したり、新規借入を希望しても、既存債務が審査に影響し、借入可能額が減少したり審査に通りにくくなります

団信は子のみ加入で親の死亡時も債務が残る

多くの金融機関では、親子リレーローンの団信(団体信用生命保険)は子のみ加入で、親は加入できません。これは、親の死亡リスクが高いことと、子の年齢で返済期間を計算する制度の性質によるものです。

親の死亡時でもローンは免除されず、子が全額引き継ぎます。一部金融機関では親も加入できる商品がありますが、保険料が高額になる傾向があります。

相続時に不動産と債務が分離しトラブルになりやすい

親の死亡時、不動産の持分は相続財産として複数の相続人で分割される一方、債務は子が全額引き継ぐため、他の相続人とトラブルになりやすいです。例えば、子が住宅ローンを全額負担しているのに、他の兄弟姉妹が不動産の持分を相続し、売却や処分の権利を主張する可能性があります。

みなし贈与で贈与税が発生する可能性

不動産の持分割合と返済負担割合が異なる場合、「みなし贈与」として贈与税が発生します。例えば、持分が親50%・子50%だが、実際の返済負担が親30%・子70%の場合、親から子へ20%分の贈与があったとみなされます。贈与税を避けるため、持分割合と返済負担割合を一致させることが重要です。

親子リレー返済の利用条件

親子リレー返済の具体的な利用条件は、以下の通りです。

親子の関係・同居要件

  • 実の親子または義理の親子(配偶者の親も可)
  • 同居または同居予定が条件(金融機関により異なる)

年齢制限と返済期間の計算

  • 子の年齢で返済期間を計算(最長35年)
  • 多くの金融機関では完済時年齢80歳未満が条件となっていますが、金融機関により異なるため確認が必要です

収入合算と審査基準

  • 親子の収入を合算して審査
  • 返済負担率は合算後の収入で計算

団信加入の条件

  • 子は団信加入が必須
  • 親は加入できない場合が多い

親子リレー返済を検討する際のポイント

親子リレー返済を利用する前に、以下のポイントを慎重に検討してください。

親子で十分に話し合う

親子での十分な話し合いが必須です。子の将来のライフプラン(結婚、転職、自分の家を持つ計画等)や親の相続時の影響を慎重に検討する必要があります。

将来のライフプラン(子の独立・結婚、親の相続)を見据える

子が結婚して独立する場合、親の住宅に住み続けるのか、自分の住宅を購入するのか、といった将来の計画を具体的に考える必要があります。親子リレーローンがあると、子の住宅購入計画に制約が生じる可能性があります。

専門家(FP・弁護士・税理士)に相談する

連帯債務の重さ、相続時の複雑化、贈与税リスク等を正確に理解するため、FP(ファイナンシャルプランナー)・弁護士・税理士等の専門家に相談することを強く推奨します。安易に利用すべきではない制度であることを理解してください。

まとめ:親子リレー返済は慎重な判断が必要

親子リレー返済は、返済期間延長、月々の負担軽減、高齢でも借入可能といったメリットがある一方、子の全額返済義務、将来の審査への影響、相続時の複雑化といった重大なデメリットがあります。

親子での十分な話し合いと、専門家への相談を経た上で慎重に判断することを推奨します。安易に利用すると将来的に後悔するリスクがあることを認識し、慎重な検討を行いましょう。

よくある質問

Q1親子リレーローンを組んだ後、途中で子が抜けることはできますか?

A1連帯債務契約のため、途中で子だけが抜けることは基本的にできません。子が抜けるには、親が単独で返済能力があることを証明し、金融機関の承認を得る必要があります。また、他の連帯債務者を立てるか、残債を一括返済する必要がある場合もあります。

Q2親が亡くなった場合、住宅ローンはどうなりますか?

A2親子リレーローンでは多くの場合、子のみ団信に加入しているため、親の死亡時にローンは免除されず、子が全額引き継ぎます。不動産の持分は相続財産として複数の相続人で分割される一方、債務は子が全額負担するため、他の相続人とトラブルになる可能性があります。

Q3子の信用情報に親子リレーローンはどう影響しますか?

A3子は連帯債務者として住宅ローン全額が信用情報に記録されます。このため、将来的に子が自分の住宅を購入したり、新規借入を希望しても、既存債務が審査に影響し、借入可能額が減少したり審査に通りにくくなります。

Q4親も団信に加入できますか?

A4多くの金融機関では、親子リレーローンの団信は子のみ加入で、親は加入できません。これは、親の死亡リスクが高いことと、子の年齢で返済期間を計算する制度の性質によるものです。一部金融機関では親も加入できる商品がありますが、保険料が高額になる傾向があります。

Q5親子リレーローンで贈与税が発生するケースは?

A5不動産の持分割合と返済負担割合が異なる場合、「みなし贈与」として贈与税が発生します。例えば、持分が親50%・子50%だが、実際の返済負担が親30%・子70%の場合、親から子へ20%分の贈与があったとみなされます。贈与税を避けるため、持分割合と返済負担割合を一致させることが重要です。