住宅ローン控除でいくら戻る?還付額の基本を理解する
住宅ローンを組んだ、または検討中の方にとって、「実際にいくら戻ってくるのか」は最も気になるポイントです。
この記事では、住宅ローン控除の還付額の計算方法、年収・借入額別のシミュレーション、還付額を最大化するポイントを、国税庁・国土交通省の公式情報を元に解説します。
控除額と還付額の違いを理解し、自分のケースで実際にいくら戻るかを正確に把握できるようになります。
この記事のポイント
- 控除額≠還付額(所得税額が上限)
- 住宅ローン控除額は年末残高×0.7%で計算
- 控除しきれない分は住民税から控除(上限9.75万円/年)
- 年収・借入額により実際の還付額は大きく異なる
- 2025年入居の新築住宅は省エネ基準適合が必須
住宅ローン控除の計算式|控除額の求め方
住宅ローン控除額は、以下の基本計算式で求められます。
控除額=年末のローン残高×0.7%
ただし、実際の控除額は借入限度額と控除期間により異なります。
基本計算式(年末残高×控除率)
国税庁によると、2025年時点の現行制度では、令和4年以降に入居した場合、控除率は0.7%です。例えば、年末のローン残高が3,000万円の場合、控除額は以下のようになります。
3,000万円×0.7%=21万円
ただし、この21万円が「全額戻ってくる」わけではありません。所得税額が上限となるため、所得税額が15万円の場合、還付されるのは15万円です。
借入限度額の違い(住宅の種類・世帯で異なる)
住宅ローン控除の計算に使える借入限度額は、住宅の種類や世帯により異なります。
| 住宅の種類 | 一般世帯の借入限度額 | 子育て世帯・若者夫婦世帯の借入限度額 | 
|---|---|---|
| 認定住宅 | 4,500万円 | 5,000万円 | 
| ZEH水準省エネ住宅 | 3,500万円 | 4,500万円 | 
| 省エネ基準適合住宅 | 3,000万円 | 4,000万円 | 
| その他の住宅(新築) | 0円 | 0円 | 
(出典: 国土交通省)
重要: 2025年入居の新築住宅は、省エネ基準適合が必須です。基準を満たさない住宅は控除額が0円となりますので注意してください。
子育て世帯(19歳未満の子を有する世帯)または若者夫婦世帯(夫婦のいずれかが40歳未満)に該当する場合、借入限度額が上乗せされ、控除額が増える可能性があります。
控除期間(新築13年、中古10年)
控除期間は、新築住宅で13年間、中古住宅で10年間です。ただし、中古住宅の場合、1982年以降に建築された住宅、または新耐震基準適合証明を受けた住宅が対象となります。
年収・借入額別の還付額シミュレーション|具体例で理解
年収・借入額により、実際の還付額は大きく異なります。ここでは、3つのケースで具体的にシミュレーションします。
年収400万円・借入3000万円のケース
前提条件:
- 年収: 400万円
- 借入額: 3,000万円(省エネ基準適合住宅)
- 配偶者控除なし、社会保険料控除60万円
計算:
- 国税庁の給与所得控除額の計算式によると、給与所得控除: 400万円×20%+44万円=124万円
- 課税所得: 400万円−124万円−60万円−48万円(基礎控除)=168万円
- 所得税額: 168万円×5%=8.4万円
- 住宅ローン控除額: 3,000万円×0.7%=21万円
- 還付額: 8.4万円(所得税額が上限)
- 住民税控除: 21万円−8.4万円=12.6万円 → 上限9.75万円
- 合計還付額: 8.4万円+9.75万円=18.15万円/年
年収400万円の場合、控除額21万円に対し、実際の還付額は18.15万円となります。
年収600万円・借入4000万円のケース
前提条件:
- 年収: 600万円
- 借入額: 4,000万円(ZEH水準省エネ住宅、子育て世帯)
- 配偶者控除あり、社会保険料控除90万円
計算:
- 国税庁の給与所得控除額の計算式によると、給与所得控除: 600万円×20%+44万円=164万円
- 課税所得: 600万円−164万円−90万円−48万円−38万円(配偶者控除)=260万円
- 所得税額: 260万円×10%−9.75万円=16.25万円
- 住宅ローン控除額: 4,000万円×0.7%=28万円
- 還付額: 16.25万円(所得税額が上限)
- 住民税控除: 28万円−16.25万円=11.75万円 → 上限9.75万円
- 合計還付額: 16.25万円+9.75万円=26万円/年
年収600万円の場合、控除額28万円に対し、実際の還付額は26万円となります。
年収800万円・借入5000万円のケース
前提条件:
- 年収: 800万円
- 借入額: 5,000万円(認定住宅、子育て世帯)
- 配偶者控除なし、社会保険料控除120万円
計算:
- 国税庁の給与所得控除額の計算式によると、給与所得控除: 800万円×10%+110万円=190万円
- 課税所得: 800万円−190万円−120万円−48万円=442万円
- 所得税額: 442万円×20%−42.75万円=45.65万円
- 住宅ローン控除額: 5,000万円×0.7%=35万円
- 還付額: 35万円(全額所得税から控除可能)
- 合計還付額: 35万円/年
年収800万円の場合、控除額35万円を全額還付できます。
所得税と住民税からの控除の仕組み|控除しきれない場合の対処
住宅ローン控除は、まず所得税から控除され、控除しきれない分は住民税から控除されます。
所得税から優先的に控除
控除額は、まず所得税から差し引かれます。年末調整または確定申告により、所得税が還付されます。
住民税控除の上限(最大9.75万円/年)
所得税で控除しきれない分は、翌年度の住民税から控除されます。ただし、住民税控除には上限があります。
住民税控除の上限=以下のいずれか少ない額
- 課税所得×7%
- 13.65万円
多くの場合、課税所得×7%が上限となり、最大で9.75万円程度が上限となります。
年収が低い場合の影響
年収が低い場合、所得税額が少ないため、控除額の全額を還付できない可能性があります。例えば、年収300万円で所得税額が5万円の場合、控除額が20万円あっても、所得税還付は5万円、住民税控除は最大9.75万円で、合計14.75万円しか還付されません。
還付額を最大化するポイント|知っておくべき注意点
還付額を最大化するための実践的なポイントを紹介します。
省エネ基準適合住宅を選ぶ(2025年入居は必須)
国土交通省によると、2025年入居の新築住宅は省エネ基準適合が必須です。基準を満たさない住宅は控除額が0円となります。
省エネ基準適合住宅を選ぶことで、借入限度額が3,000万円(一般世帯)または4,000万円(子育て世帯・若者夫婦世帯)となり、控除額を確保できます。
子育て世帯・若者夫婦世帯の特例を活用
子育て世帯(19歳未満の子を有する世帯)または若者夫婦世帯(夫婦のいずれかが40歳未満)に該当する場合、借入限度額が上乗せされます。
例えば、ZEH水準省エネ住宅の場合、一般世帯の借入限度額は3,500万円ですが、子育て世帯・若者夫婦世帯は4,500万円となり、1,000万円の差があります。この差により、年間の控除額が7万円増える計算になります。
繰上返済のタイミングに注意
繰上返済で年末のローン残高が減ると、控除額も減少します。ただし、住宅ローン金利が控除率0.7%より高い場合、繰上返済による利息削減効果の方が大きいため、繰上返済を優先する方が有利です。
金利が控除率0.7%より低い場合は、繰上返済を控除期間終了後に行う方が有利になる可能性があります。
住宅ローン控除でよくある誤解と注意点
住宅ローン控除に関するよくある誤解を解消します。
控除額≠還付額(所得税額が上限)
最も重要なポイントは、控除額と還付額は異なるということです。控除額は計算上の上限で、実際の還付額は所得税額が上限となります。
例えば、控除額が30万円でも、所得税額が20万円の場合、所得税から還付されるのは20万円のみです。控除しきれない10万円は住民税から控除されますが、住民税控除には上限があります。
年収2195万円以上は対象外
住宅ローン控除の適用要件として、合計所得金額が原則として2,000万円以下(年収約2,195万円以下)である必要があります。高所得者は対象外となりますので注意してください。
2年目以降は年末調整で手続き可能
初年度は確定申告が必須ですが、2年目以降は会社員の場合、年末調整で手続きが可能です。税務署から送付される「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書」と、金融機関から送付される「住宅ローンの年末残高証明書」を会社に提出すれば、年末調整で還付されます。
まとめ|住宅ローン控除の還付額を正しく理解しよう
住宅ローン控除の還付額は、①年末残高×0.7%で控除額を計算、②所得税額が上限、③控除しきれない分は住民税から控除(上限9.75万円/年)という3つのポイントで決まります。
年収・借入額により実際の還付額は大きく異なるため、金融機関のシミュレーターで試算することをおすすめします。
2025年入居の新築住宅は省エネ基準適合が必須で、基準を満たさないと控除額が0円となります。初年度は確定申告を忘れずに行いましょう。
