住宅ローン5年ルールとは
変動金利の住宅ローンを検討・利用している方の多くが「金利が上がったら返済額はどうなるのか」という不安を抱えています。
この記事では、変動金利型住宅ローンの5年ルールと125%ルールの仕組み、未払利息のリスク、金利上昇時の対策を、国土交通省、金融庁、住宅金融支援機構等の公式情報を元に解説します。
変動金利の仕組みを正しく理解し、金利上昇リスクに備えられるようになります。
この記事のポイント
- 5年ルールは返済額を5年間固定する措置だが、元本と利息の内訳は変動し、未払利息が発生するリスクがある
- 125%ルールは5年後の返済額上昇を従前の125%までに制限するが、6回目以降(30年後)は上限撤廃される場合がある
- ソニー銀行・SBI新生銀行等は5年ルール・125%ルールを採用せず、金利上昇時に返済額が即座に変動する
- 元金均等返済・固定期間選択型には5年ルール・125%ルールが適用されない
- 変動金利型住宅ローンの利用割合は84.3%(令和5年度)に達しており、日銀の金利政策転換により金利上昇リスクが現実化しつつある
5年ルール・125%ルールとは
5年ルールと125%ルールは、変動金利型住宅ローンの一部で採用される返済額の急激な変動を抑える措置です。全国銀行協会によると、これらのルールは借主の家計への負担を軽減するために設けられていますが、総返済額を減らす効果はなく、利息の先送りに過ぎません。
5年ルールの仕組み
5年ルールとは、金利が見直されても5年間は返済額が変わらない措置です。変動金利型住宅ローンは通常、半年ごとに金利が見直されますが、5年ルールが適用される場合、返済額は5年間固定されます。
ただし、返済額は変わらなくても、元本と利息の内訳は変動します。金利が上昇すると、返済額のうち利息部分が増加し、元本返済部分が減少します。極端な場合、利息が返済額を上回り、未払利息が発生するリスクがあります。
125%ルールの仕組み
125%ルールとは、5年後の返済額見直し時も、新しい返済額が従前の返済額の125%を上限とする措置です。例えば、従前の返済額が月10万円の場合、5年後の返済額は最大12.5万円までに制限されます。
ただし、6回目以降(30年ローンの場合、30年後)は上限撤廃される場合があります。また、125%ルールで返済額が抑制されても、利息は継続的に発生するため、未払利息が累積するリスクがあります。
5年ルール・125%ルールの目的と限界
SBI新生銀行の解説によると、5年ルール・125%ルールは返済額を一時的に抑制するだけで、総返済額を減らす効果はありません。金利上昇により増加した利息は、返済期間終了時に一括返済を求められるか、返済期間が延長されることになります。
未払利息のリスク
未払利息とは、金利上昇により利息部分が返済額を上回った場合に発生する未払い分です。全国銀行協会によると、未払利息が発生すると、元本が全く減らず、最終的に一括返済を求められるリスクがあります。
未払利息が発生する条件
はじめての住宅ローンのシミュレーションによると、未払利息が発生する分岐点は金利上昇幅と返済期間によります。例えば、3000万円を35年ローンで借入し、当初金利が0.5%の場合、金利が2%程度まで上昇すると未払利息が発生する可能性があります。
| 借入額 | 当初金利 | 返済期間 | 未払利息発生の目安 | 
|---|---|---|---|
| 3000万円 | 0.5% | 35年 | 金利2%以上 | 
| 3000万円 | 0.5% | 25年 | 金利2.5%以上 | 
| 5000万円 | 0.5% | 35年 | 金利1.8%以上 | 
(出典: はじめての住宅ローン)
過去の未払利息発生事例
ダイヤモンド不動産研究所によると、過去の金利上昇局面(2006-2008年)では、実際に未払利息が発生したケースがありました。当時、金利が1%前後から2.5%以上に上昇し、一部の借主が返済期間終了時に一括返済を求められる事態となりました。
現役銀行員の解説では、未払利息が発生した場合、銀行は借主と返済計画の見直し交渉を行うことが一般的ですが、最終的には一括返済または返済期間延長が必要となります。
未払利息を防ぐための対策
未払利息を防ぐためには、以下の対策が有効です。
- 繰上返済資金の確保: 金利上昇時に繰上返済で元本を減らす
- 金利動向のチェック: 日銀の金融政策や短期プライムレートの動向を定期的に確認
- 返済額軽減型の繰上返済: 月々の返済額を減らし、利息負担を軽減
- 固定金利への借り換え検討: 金利上昇リスクを回避
5年ルールが適用されない銀行
SBI新生銀行、ソニー銀行等の一部金融機関は、5年ルール・125%ルールを採用していません。これらの銀行では、金利見直しのたびに返済額が変動します。
5年ルールなしの銀行の特徴
5年ルール・125%ルールを採用しない銀行では、金利上昇時に返済額が即座に変動するため、未払利息は発生しません(各銀行公式サイトより)。ただし、金利が急上昇した場合、返済額も急増するリスクがあります。
| 銀行 | 5年ルール | 125%ルール | 特徴 | 
|---|---|---|---|
| 三菱UFJ銀行 | 採用 | 採用 | 元利均等返済のみ | 
| SBI新生銀行 | 不採用 | 不採用 | 返済額が即座に変動 | 
| ソニー銀行 | 不採用 | 不採用 | 返済額が即座に変動 | 
(出典: 各銀行公式サイト)
どちらが有利か
SBI新生銀行の解説によると、5年ルール・125%ルールの有無は一概にどちらが有利とは言えません。5年ルールありの場合、返済額の急激な変動は抑えられますが、未払利息が発生するリスクがあります。5年ルールなしの場合、返済額は変動しますが、未払利息は発生しません。
自身のリスク許容度とライフプランに応じて選択することが重要です。
元金均等返済との違い
変動金利型住宅ローンの返済方式には、元利均等返済と元金均等返済の2種類があります。三菱UFJ銀行によると、5年ルール・125%ルールは元利均等返済のみに適用され、元金均等返済には適用されません。
元利均等返済と元金均等返済の違い
| 項目 | 元利均等返済 | 元金均等返済 | 
|---|---|---|
| 返済額 | 毎月一定(元本+利息) | 毎月変動(元本は一定) | 
| 5年ルール | 適用 | 適用外 | 
| 125%ルール | 適用 | 適用外 | 
| 総返済額 | 多め | 少なめ | 
| 初期返済額 | 少なめ | 多め | 
(出典: 三菱UFJ銀行)
固定期間選択型も適用外
固定期間選択型(一定期間固定金利、その後変動金利)も、固定期間終了後に5年ルール・125%ルールが適用されないことが一般的です。三菱UFJ銀行の公式FAQによると、固定期間終了後は即座に返済額が変動します。
金利上昇時のシミュレーション
国土交通省の調査によると、令和5年度の民間住宅ローン利用者のうち84.3%が変動金利型を選択しています。日銀は2024年3月にマイナス金利を解除し、2024年7月・2025年1月と段階的に利上げを実施しました。今後も金利上昇が続く可能性があります。
具体的なシミュレーション
借入額3000万円、返済期間35年、当初金利0.5%の場合、金利が上昇した際の返済額への影響をシミュレーションします(住宅金融支援機構のシミュレーションツールによる試算)。
| 金利 | 月々の返済額 | 総返済額 | 増加額(月々) | 増加額(総額) | 
|---|---|---|---|---|
| 0.5% | 約77,875円 | 約3,271万円 | - | - | 
| 1.0% | 約84,685円 | 約3,557万円 | +約6,810円 | +約286万円 | 
| 1.5% | 約91,855円 | 約3,858万円 | +約13,980円 | +約587万円 | 
| 2.0% | 約99,378円 | 約4,174万円 | +約21,503円 | +約903万円 | 
(試算条件: 元利均等返済、5年ルール・125%ルールなしの場合)
5年ルール・125%ルール適用時の注意点
5年ルール・125%ルールが適用される場合、返済額は段階的に上昇します。ただし、未払利息が発生するリスクがあるため、金利上昇幅が大きい場合は注意が必要です。
実践的な対策
変動金利型住宅ローンを利用している方、または検討している方は、以下の対策を講じることで金利上昇リスクに備えることができます。
繰上返済資金の確保
金利が上昇した際に繰上返済で元本を減らすことで、利息負担を軽減できます。月々の給与の一部を繰上返済用に貯蓄しておくことをおすすめします。
金利動向のチェック
日銀の金融政策決定会合の結果や、短期プライムレートの動向を定期的に確認し、金利上昇の兆候を早期に察知することが重要です。
借り換えの検討
金利が大幅に上昇する前に、固定金利への借り換えを検討することも有効です。ただし、借り換えには諸費用(融資手数料・登記費用等で30~80万円程度、金融機関の一般的な諸費用として)がかかるため、総返済額をシミュレーションして判断する必要があります。
返済計画の見直し
家計の見直しで余裕資金を確保し、金利上昇時の返済額増加に備えることも重要です。
まとめ
5年ルールと125%ルールは、変動金利型住宅ローンの返済額を一時的に抑制する措置ですが、総返済額を減らす効果はなく、未払利息が発生するリスクがあります。また、すべての銀行が採用しているわけではなく、元金均等返済・固定期間選択型には適用されません。
変動金利型住宅ローンの利用割合は84.3%に達しており、日銀の金利政策転換により金利上昇リスクが現実化しつつあります。繰上返済資金の確保、金利動向のチェック、借り換えの検討等の対策を講じることで、金利上昇リスクに備えましょう。
金融機関や住宅ローンアドバイザーに相談しながら、自身のライフプランに合った返済計画を立てることが重要です。
