がんで住宅ローンがチャラになった?団信のがん保障とは
住宅ローンを利用している方や検討中の方にとって、「もしがんと診断されたら、住宅ローンはどうなるのか」という不安は大きいものです。実際に「がんで住宅ローンがチャラになった」という話を聞いたことがある方もいるでしょう。
この記事では、団信(団体信用生命保険)のがん保障の仕組み、適用条件、加入要件、フラット35と民間ローンの違いを、金融庁や住宅金融支援機構の公式情報を元に解説します。
がん診断時の住宅ローン返済に不安を感じている方でも、団信のがん保障の仕組みを正確に理解できるようになります。
この記事のポイント
- 団信の基本保障は死亡・高度障害のみで、がん保障は特約(オプション)
- がん保障には「100%保障」と「50%保障」があり、保険料は金利上乗せ(0.1-0.3%程度)
- 適用には90日の待機期間、医師による診断確定、上皮内がん・皮膚がん等の除外規定あり
- すべてのがんで即座に免除されるわけではない
がん保障は、団信(団体信用生命保険)の特約(オプション)として提供されています。団信の基本保障は「死亡・高度障害」のみで、がん診断だけでは住宅ローンは免除されません。
がん保障を付けることで、がんと診断された場合に住宅ローンが免除されるケースがありますが、すべてのがんで即座に免除されるわけではない点を理解しておく必要があります。
団信の基本保障とがん保障の違い
団信の基本保障とがん保障の違いを理解することが、適切な保険選びの第一歩です。
団信の基本保障
団信(団体信用生命保険)の基本保障は、以下の場合に住宅ローンの残債が免除されます。
- 死亡: 住宅ローン契約者が死亡した場合
- 高度障害: 所定の高度障害状態になった場合(両眼失明、両手足切断等)
注意: がん診断だけでは基本保障の対象外です。がん保障を付けない限り、がんと診断されても住宅ローンは免除されません。
がん保障の種類
がん保障には、主に以下の2つのタイプがあります。
①がん診断給付型(100%保障):
- がんと診断された時点で、住宅ローンの残債が100%免除される
- 保険料は金利上乗せ(0.2-0.3%程度)
②がん診断給付型(50%保障):
- がんと診断された時点で、住宅ローンの残債が50%免除される
- 残り50%は引き続き返済が必要
- 保険料は金利上乗せ(0.1%程度)
③3大疾病保障型:
- がん・脳卒中・急性心筋梗塞のいずれかで所定の状態になった場合、住宅ローンが免除される
- 保険料は金利上乗せ(0.2-0.3%程度)
比較表:
| 保障タイプ | 保障範囲 | 残債免除率 | 金利上乗せ | 
|---|---|---|---|
| 基本保障(死亡・高度障害) | 死亡・高度障害 | 100% | なし | 
| がん100%保障 | がん診断 | 100% | 0.2-0.3% | 
| がん50%保障 | がん診断 | 50% | 0.1% | 
| 3大疾病保障 | がん・脳卒中・急性心筋梗塞 | 100% | 0.2-0.3% | 
保険料と金利上乗せ
がん保障を付ける場合、保険料は金利上乗せという形で支払います。
例(借入額3,000万円、返済期間35年、金利1.0%の場合、住宅金融支援機構の返済シミュレーションを参考):
- 金利上乗せなし(基本保障のみ): 総返済額 約3,556万円
- 金利上乗せ0.1%(がん50%保障): 総返済額 約3,663万円(+107万円)
- 金利上乗せ0.2%(がん100%保障): 総返済額 約3,770万円(+214万円)
注意: 金融機関により金利上乗せの幅は異なります。契約前に複数の金融機関で比較することをおすすめします。
がん保障の適用条件
がん保障は、すべてのがんで即座に免除されるわけではありません。以下の適用条件を満たす必要があります。
責任開始日から90日の待機期間
がん保障には、責任開始日(住宅ローン実行日)から90日の待機期間があります。
待機期間とは:
- 責任開始日から90日以内にがんと診断された場合、保障の対象外
- 90日経過後にがんと診断された場合、保障の対象
例:
- 2025年1月1日に住宅ローン実行 → 2025年4月1日以降のがん診断が対象
- 2025年3月31日までにがんと診断された場合、保障対象外
注意: 待機期間中にがんと診断された場合でも、住宅ローンの返済義務は残ります。待機期間の存在を理解しておきましょう。
医師による診断確定
がん保障の適用には、医師による診断確定が必要です。
診断確定の要件:
- 病理組織学的検査(生検)または画像診断により、医師ががんと診断
- 診断書の提出が必要
注意: 「がんの疑い」や「精密検査中」の段階では、保障の対象外です。診断が確定してから保険会社に申請します。
上皮内がん・皮膚がん等の除外規定
主要金融機関の約款によると、多くの団信では、以下のがんが除外規定により保障の対象外となります。
除外されるがん:
- 上皮内がん: がん細胞が粘膜の表面にとどまっている初期のがん(子宮頸がん上皮内がん、大腸の粘膜内がん等)
- 皮膚がん: 悪性黒色腫(メラノーマ)を除く皮膚がん
- その他: 金融機関により除外規定が異なる場合あり
理由: 上皮内がんや皮膚がんは、治療により完治する可能性が高く、住宅ローンの返済能力に大きな影響を与えないとされるため。
注意: がん保障を付けたからといって、すべてのがんで住宅ローンが免除されるわけではありません。契約前に約款で除外規定を必ず確認しましょう。
がん保障の加入要件と告知義務
がん保障に加入するには、健康状態の告知が必要です。
健康状態の告知
がん保障に加入する際は、健康状態の告知が求められます。
告知項目:
- 過去3年以内の病気・治療歴
- 現在の健康状態
- 服薬状況
- 入院・手術の有無
告知方法:
- 書面による告知(告知書の記入)
- 医師の診断は不要な場合が多い(ただし、高額借入の場合は診断書が必要な場合あり)
既往症がある場合
既往症がある場合、がん保障に加入できない可能性があります。
加入困難な既往症:
- がん(過去の罹患を含む)
- 糖尿病
- 心臓病
- 脳血管疾患
- 精神疾患
ワイド団信(引受基準緩和型):
- 既往症がある方でも加入しやすい団信
- 主要金融機関の公式情報によると、保険料は通常より高い(金利上乗せ0.3-0.5%程度)
- がん保障は付かない場合が多い
注意: 既往症がある場合でも、治療状況や経過により加入できる場合があります。複数の金融機関で審査を受けることをおすすめします。
告知義務違反のリスク
告知義務違反(虚偽告知)をした場合、以下のリスクがあります。
リスク:
- 保険金不払い: がんと診断されても、住宅ローンの免除が受けられない
- 契約解除: 団信契約が解除され、住宅ローンの返済義務が残る
- 損害賠償請求: 悪質な場合、保険会社から損害賠償請求される可能性
重要: 告知義務違反は絶対に避けるべきです。正確な告知を行い、不明点があれば金融機関に相談しましょう。
フラット35と民間ローンの団信の違い
フラット35と民間ローンでは、団信の加入要件が異なります。
フラット35の団信
フラット35は、住宅金融支援機構が提供する住宅ローンです。
特徴:
- 団信加入は任意(未加入でも融資可能)
- 団信に加入しない場合、金利が0.2%低くなる
- がん保障は「がん団信」として提供(2025年時点で金利上乗せ0.24%)
メリット:
- 健康状態に不安がある方でも、団信未加入で融資を受けられる
- 団信に加入しない分、金利が低くなる
デメリット:
- 団信未加入の場合、死亡・高度障害時も住宅ローンの返済義務が残る
- 遺族に返済負担が残る可能性
民間ローンの団信
民間ローン(銀行・信用金庫等)では、団信加入が融資条件となります。
特徴:
- 団信加入が必須(未加入では融資不可)
- がん保障は金融機関により提供内容が異なる
メリット:
- 死亡・高度障害時に住宅ローンが免除される
- 遺族に返済負担が残らない
デメリット:
- 健康状態に不安がある方は、団信加入が難しく、融資を受けられない可能性
- ワイド団信で対応できる場合もあるが、金利が高くなる
がん保障の比較
フラット35と民間ローンのがん保障を比較します。
| 項目 | フラット35 | 民間ローン | 
|---|---|---|
| 団信加入 | 任意 | 必須 | 
| がん100%保障 | あり(金利+0.24%) | 金融機関により異なる | 
| がん50%保障 | なし | 金融機関により異なる | 
| 3大疾病保障 | あり(金利+0.24%) | 金融機関により異なる | 
| 除外規定 | 上皮内がん等を除外 | 金融機関により異なる | 
注意: 民間ローンでは、金融機関により保障範囲・保険料が大きく異なります。複数の金融機関で比較することが重要です。
まとめ
がん保障は団信の特約(オプション)で、がんと診断された場合に住宅ローンが免除されます。ただし、適用には90日の待機期間、医師による診断確定、上皮内がん・皮膚がん等の除外規定があり、すべてのがんで即座に免除されるわけではありません。
がん保障には「100%保障」と「50%保障」があり、保険料は金利上乗せ(0.1-0.3%程度)です。加入には健康状態の告知が必要で、既往症があると加入できない場合もあります。
フラット35は団信加入が任意ですが、民間ローンは団信加入が融資条件です。がん保障の有無・範囲は金融機関により異なるため、契約前に約款を確認し、複数の金融機関で比較することをおすすめします。不明点は専門家に相談しましょう。
