住み替え売却戸建ての諸費用・清算の全体像
戸建てを売却して新居へ住み替える際、実際に手元に残る金額を正確に把握することは資金計画の要です。売却価格がそのまま受け取れるわけではなく、複数の諸費用が発生します。
この記事の結論
- 諸費用は売却価格の5-7%が目安(仲介手数料・税金・登記費用等)
- 仲介手数料は売買代金×3%+6万円+消費税が上限
- 譲渡所得税は売却益に対して長期20.315%・短期39.63%
- 固定資産税・都市計画税は引渡し日を基準に日割り清算
- 手取り額=売却価格-諸費用-ローン残債
(1) 売却時にかかる費用の種類
戸建て売却時の主な諸費用は以下の通りです:
| 費用項目 | 相場・計算方法 | 
|---|---|
| 仲介手数料 | 売買代金×3%+6万円+消費税(上限) | 
| 譲渡所得税 | 売却益×20.315%(長期)または39.63%(短期) | 
| 抵当権抹消登記費用 | 不動産1個につき1,000円+司法書士報酬1-3万円 | 
| 印紙税 | 売買代金により1-3万円 | 
| 測量費・境界確定費用 | 30-100万円(土地の状況により変動) | 
| 建物解体費用 | 100-300万円(必要な場合) | 
※国土交通省・国税庁の公表資料に基づく
(2) 清算の仕組みと時期
売却代金の受け取りは通常、売買契約時に手付金(売却価格の10%程度)、引渡し時に残代金という2段階で行われます。諸費用の多くは引渡し時に清算されるため、資金繰りには注意が必要です。
売却時の諸費用一覧と相場
(1) 仲介手数料(3%+6万円+消費税)
仲介手数料は不動産会社に支払う報酬で、宅地建物取引業法により上限が定められています。計算式は以下の通りです:
売買代金400万円超の場合
仲介手数料=売買代金×3%+6万円+消費税
具体例
- 売却価格3,000万円:105.6万円(消費税込)
- 売却価格5,000万円:171.6万円(消費税込)
仲介手数料は成功報酬のため、売買契約が成立しなければ支払う必要はありません。支払時期は契約時50%・引渡し時50%が一般的です。
(2) 抵当権抹消登記費用
住宅ローンを完済した際、抵当権を消す登記手続きが必要です。登録免許税は不動産1個につき1,000円(土地と建物で合計2,000円)。司法書士に依頼する場合、報酬として1-3万円程度が別途かかります。
(3) 印紙税
売買契約書に貼付する収入印紙の金額は売買代金により異なります:
| 売買代金 | 印紙税(軽減措置適用後) | 
|---|---|
| 1,000万円超5,000万円以下 | 1万円 | 
| 5,000万円超1億円以下 | 3万円 | 
※令和9年3月31日まで軽減措置が適用(国税庁)
(4) 測量費・境界確定費用
土地の面積や境界を確定するための測量費用は、土地の状況により30-100万円程度と幅があります。隣地との境界が不明確な場合、境界確定測量が必要となり費用が高額になる傾向があります。
(5) 建物解体費用(必要な場合)
古い建物を解体して更地として売却する場合、解体費用が発生します。木造戸建ての場合、100-300万円程度が目安です。構造(鉄骨造・RC造)や延床面積、アスベスト含有の有無により費用は大きく変動します。
譲渡所得税の計算と節税対策
(1) 譲渡所得税の計算方法
譲渡所得税は売却益に対して課される税金で、所得税と住民税で構成されます。計算式は以下の通りです:
譲渡所得=売却価格-(取得費+譲渡費用)
譲渡所得税=譲渡所得×税率
税率(所有期間による区分)
- 長期譲渡所得(所有期間5年超):20.315%(所得税15.315%+住民税5%)
- 短期譲渡所得(所有期間5年以下):39.63%(所得税30.63%+住民税9%)
※所有期間は売却した年の1月1日時点で判定(国税庁)
(2) 3,000万円特別控除の活用
マイホームを売却した場合、一定の条件を満たせば譲渡所得から最高3,000万円を控除できます。この特別控除を適用すれば、多くのケースで譲渡所得税の負担を大幅に軽減できます。
主な適用要件
- 自分が住んでいた住宅であること
- 住まなくなった日から3年後の12月31日までに売却
- 売却先が配偶者や直系血族ではないこと
(3) 譲渡費用として認められる項目
譲渡所得の計算上、以下の費用は譲渡費用として差し引くことができます:
- 仲介手数料
- 測量費、解体費
- 売買契約書の印紙税
- 立退料(賃借人がいる場合)
- 建物の取壊し費用
これらの領収書は確定申告時に必要となるため、必ず保管しておきましょう。
固定資産税・都市計画税の清算方法
(1) 日割り計算の仕組み
固定資産税・都市計画税は、その年の1月1日時点の所有者に課税されます。年度途中で売却した場合、引渡し日を基準に日割り計算し、買主が売主に未経過分を支払うのが慣例です。
(2) 起算日(1月1日 or 4月1日)の地域差
起算日は地域により異なります:
- 関東地方:1月1日起算が一般的
- 関西地方:4月1日起算が一般的
例えば、9月1日引渡しで年間税額12万円の場合:
- 1月1日起算:売主負担8万円(1-8月)、買主負担4万円(9-12月)
- 4月1日起算:売主負担5万円(4-8月)、買主負担7万円(9-3月)
(3) 清算金の授受方法
清算金は売買代金と一緒に決済時に精算されます。売買契約書に清算方法を明記し、買主から売主へ未経過分相当額が支払われます。
手取り額の計算シミュレーション
(1) 売却価格3,000万円のケース
前提条件
- 売却価格:3,000万円
- 取得費:2,000万円(購入価格)
- 所有期間:7年(長期譲渡所得)
- ローン残債:完済済み
諸費用の内訳
仲介手数料:105.6万円
印紙税:1万円
抵当権抹消費用:2万円
譲渡所得税:(3,000万-2,000万-105.6万)×20.315%=約176万円
合計:約284万円
手取り額:約2,716万円
(2) 売却価格5,000万円のケース
前提条件
- 売却価格:5,000万円
- 取得費:3,000万円
- 所有期間:10年(長期譲渡所得)
- ローン残債:完済済み
諸費用の内訳
仲介手数料:171.6万円
印紙税:1万円
抵当権抹消費用:2万円
譲渡所得税:(5,000万-3,000万-171.6万)×20.315%=約370万円
合計:約544万円
手取り額:約4,456万円
(3) ローン残債がある場合の計算
ローン残債1,500万円がある場合、上記3,000万円のケースでは:
売却価格:3,000万円
-諸費用:284万円
-ローン残債:1,500万円
=手取り額:約1,216万円
ローン残債が多い場合、手取り額が想定より少なくなるため、新居購入の頭金計画に影響する可能性があります。
資金計画と仮住まい費用
(1) 売却代金の使い道
住み替えでは売却代金を以下のように活用するのが一般的です:
- 新居の頭金:手取り額の50-70%程度
- 引越し費用:10-30万円
- 新居の諸費用:購入価格の6-10%
- 予備費:100-200万円
(2) 同時決済と仮住まいの比較
| 方法 | メリット | デメリット | 
|---|---|---|
| 同時決済 | 仮住まい費用不要、引越し1回 | タイミング調整が難しい | 
| 売却先行 | 資金確保が確実 | 仮住まい費用・引越し2回 | 
| 購入先行 | 新居探しに余裕 | つなぎ融資や二重ローンの負担 | 
(3) 仮住まい費用の見積もり
売却先行で仮住まいが必要な場合、以下の費用がかかります:
賃貸マンション家賃:月10-15万円×3-6ヶ月=30-90万円
敷金・礼金:家賃2-3ヶ月分=20-45万円
引越し代(2回):20-40万円
合計:70-175万円
仮住まい期間が長引くほど費用がかさむため、新居の購入スケジュールを事前に立てておくことが重要です。
まとめ
住み替え売却戸建ての諸費用は売却価格の5-7%が目安で、仲介手数料・譲渡所得税・登記費用などが含まれます。手取り額を正確に把握し、新居購入の資金計画に反映させることが成功の鍵です。
特に3,000万円特別控除の活用により譲渡所得税の負担を大幅に軽減できる可能性があります。また、売却先行の場合は仮住まい費用も考慮に入れ、余裕を持った資金計画を立てましょう。
不明点がある場合は、税理士や不動産会社に相談することをおすすめします。
