中古マンションで住宅ローンを組むための基礎知識
中古マンションの購入を検討する際、「住宅ローンは新築と同じように組めるのか」「築年数が古いと審査に通りにくいのでは」と不安を感じる方は少なくありません。
この記事では、中古マンション購入時の住宅ローン審査の流れ、新築との違い、築年数による制限、金利や諸費用、住宅ローン控除の適用条件について、国土交通省や国税庁の公式情報を元に解説します。
初めて中古マンションを購入する方でも、審査のポイントや注意点を正確に把握できるようになります。
この記事のポイント
- 中古マンションでも住宅ローンは利用可能だが、築年数や耐震基準により審査基準が異なる
- 旧耐震基準(1981年5月以前)の物件は審査が厳しくなる傾向があり、耐震基準適合証明書が必要
- 法定耐用年数(RC造47年)との関係で借入期間が制限される場合があり、返済計画の見直しが必要
- 住宅ローン控除は中古でも最大10年間受けられるが、2025年12月31日までの居住開始が条件
- リノベーション一体型ローン(フラット35リノベ)を活用することで、金利引き下げのメリットを受けられる
1. 中古マンション購入に住宅ローンを活用するメリット
(1) 中古マンションでも住宅ローンは利用可能
中古マンション購入時にも、新築と同様に住宅ローンを利用できます。多くの金融機関が中古物件向けの住宅ローンを提供しており、条件を満たせば新築と変わらない金利や返済期間で借入できる場合もあります。
ただし、築年数や耐震基準、管理状態などにより、審査基準や借入期間が制限されることがあります。後述する審査のポイントを理解しておくことで、スムーズな審査通過が期待できます。
(2) 新築より購入価格を抑えられる
中古マンションは新築と比べて購入価格が低いため、借入額を抑えられます。頭金を用意することで借入額をさらに減らせば、返済負担率を下げることができ、審査のハードルも低くなります。
返済負担率とは、年収に対する年間返済額の割合を指し、25%以内が無理のない目安とされています。上限は金融機関により35〜40%程度ですが、将来の金利上昇リスクや家計の変動を考慮すると、低めに抑えることが推奨されます。
2. 中古マンションの住宅ローン審査|新築との違い
(1) 審査の流れ(事前審査と本審査)
住宅ローンの審査は、事前審査(仮審査)と本審査の2段階で行われます。事前審査では、年収や勤続年数、借入希望額などの基本情報をもとに、借入可能額の目安を確認します。本審査では、物件の担保評価や詳細な財務状況が審査されます。
事前審査から融資実行まで1.5〜2ヶ月程度かかるため、物件購入のスケジュールを考慮し、早めに事前審査を済ませておくことが重要です。
(2) 中古マンション特有の審査項目
新築と異なり、中古マンションでは以下の項目が重視されます。
- 築年数: 法定耐用年数との関係で借入期間が制限される
- 耐震基準: 旧耐震基準(1981年5月以前)の物件は審査が厳しくなる
- 管理状態: 修繕積立金の積立状況、管理組合の運営状態
- 担保評価: 物件の市場価値、周辺環境、利便性
これらの項目は、物件ごとに個別に評価されるため、事前審査で確認することが推奨されます。
(3) 物件の担保評価の考え方
金融機関は、万が一返済が滞った場合に物件を売却して債権回収できるよう、担保評価を行います。中古マンションの場合、築年数が古いほど担保価値が低く評価される傾向があります。
担保評価が低いと、希望額の全額を借り入れできない場合があります。この場合、頭金を増やすか、親族からの贈与を検討する必要があります。
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3. 審査で重視されるポイント|築年数・耐震基準・管理状態
(1) 築年数と借入期間の関係
中古マンションの場合、法定耐用年数(RC造マンションは47年)との関係で、借入期間が制限されることがあります。例えば、築30年の物件では、最大で17年程度の借入期間となる場合があります。
法定耐用年数とは、税法上定められた建物の使用可能期間を指します。金融機関によっては「法定耐用年数−築年数」を上限とする場合もあれば、一律35年の借入を認める場合もあるため、複数行に相談することを推奨します。
(2) 旧耐震基準vs新耐震基準(1981年5月が分岐点)
旧耐震基準(1981年5月31日以前の建築確認)の物件は、新耐震基準の物件と比べて審査が厳しくなります。旧耐震基準の物件で住宅ローンを組む場合、耐震基準適合証明書の取得が必要となる場合があります。
耐震基準適合証明書があれば、住宅ローン控除の適用も可能になるため、物件選定時に確認しておくことが重要です。
(3) 管理状態・修繕積立金の確認
マンションの管理状態は、将来の資産価値に直結します。修繕積立金が不足している場合、将来的に大規模修繕時に一時金の徴収が必要となり、家計に負担がかかる可能性があります。
金融機関も管理状態を重視しており、修繕積立金の積立状況、管理組合の運営状態、過去の修繕履歴などを確認します。購入前に管理組合の総会議事録や長期修繕計画を確認しておくことを推奨します。
(4) 再建築不可物件・借地権付き物件のリスク
再建築不可物件や借地権付き物件は、多くの金融機関で住宅ローンの対象外となります。再建築不可物件とは、建築基準法上の道路に接していないため、建て替えができない物件を指します。
これらの物件は担保価値が低く評価されるため、購入を検討する場合は、事前に金融機関に確認することが必要です。
4. 借入期間と返済計画|築年数による制限と注意点
(1) 法定耐用年数との関係(RC造マンションは47年)
前述の通り、RC造マンションの法定耐用年数は47年です。金融機関によっては、この耐用年数を基準に借入期間を制限します。築年数が古い物件ほど、借入期間が短くなる可能性があるため、返済計画を慎重に立てる必要があります。
(2) 借入期間が短い場合の返済負担
借入期間が短いと、月々の返済額が高くなります。例えば、3,000万円を金利1%で借り入れた場合、35年返済なら月々約8.5万円、20年返済なら約13.8万円となり、約5万円の差が生じます。
返済額が高くなると、返済負担率が上昇し、家計に余裕がなくなる可能性があります。借入期間が制限される場合は、頭金を増やすか、購入価格を見直すことを検討してください。
(3) 返済負担率25%以内が無理のない目安
返済負担率は、年収に対する年間返済額の割合を指します。一般的に25%以内が無理のない目安とされており、金融機関の審査でも35〜40%程度が上限とされています。
年収500万円の場合、返済負担率25%なら年間返済額125万円(月々約10.4万円)が目安です。将来の金利上昇リスクや家計の変動を考慮し、余裕のある返済計画を立てることが重要です。
5. 金利・諸費用・住宅ローン控除|コストを総合的に理解する
(1) 2025年の金利動向(変動金利0.652%)
2025年3月時点で、変動金利は0.652%と上昇傾向にあります。1年前の0.488%から約0.16%上昇しており、今後も金利上昇が続く可能性があります。
変動金利は金利が低い時期には有利ですが、将来的に金利が上昇した場合、返済額が増加するリスクがあります。固定金利との比較を行い、ライフプランに合った金利タイプを選択することを推奨します。
(2) 諸費用の目安(物件価格の10〜20%)
住宅ローンを組む際には、物件価格以外に諸費用が必要です。諸費用には、仲介手数料、登記費用、火災保険料、印紙税、不動産取得税などが含まれ、物件価格の10〜20%程度が目安です。
| 項目 | 内容 | 目安額(3,000万円の物件) |
|---|---|---|
| 仲介手数料 | 物件価格の3%+6万円+消費税 | 約105万円 |
| 登記費用 | 所有権移転登記、抵当権設定登記 | 20〜30万円 |
| 火災保険料 | 10年一括払い | 20〜30万円 |
| 印紙税 | 売買契約書、金銭消費貸借契約書 | 2〜3万円 |
| 不動産取得税 | 固定資産税評価額の3%(軽減措置あり) | 30〜50万円 |
(出典: 国土交通省)
諸費用は基本的に現金で用意する必要がありますが、一部金融機関では諸費用ローンとして別途借入が可能です。ただし、住宅ローンよりも金利が高く設定されることが多いため、注意が必要です。
(3) 住宅ローン控除の適用条件(2025年12月31日までの居住開始)
住宅ローン控除は、住宅ローン残高の0.7%を所得税から控除できる制度です。中古住宅の場合、最大10年間(新築は13年間)の控除が受けられます。
主な適用条件は以下の通りです。
- 床面積50㎡以上(一部40㎡以上も対象)
- 借入期間10年以上
- 2025年12月31日までの居住開始
- 旧耐震基準の物件は耐震基準適合証明書が必要
控除上限額は、中古住宅の場合、年間14万円(借入残高2,000万円まで)です。詳細は国税庁の公式サイトで確認してください。
(4) リノベーション一体型ローンの活用(フラット35リノベ)
中古マンションを購入してリフォームする場合、リノベーション一体型ローンを活用できます。住宅金融支援機構の「フラット35リノベ」では、耐震性や省エネ性能を向上させるリフォームを行うことで、金利引き下げのメリットを受けられます。
20代のフラット35リノベ申込数が1年で2倍に増加しており、中古+リノベが若者を中心に人気を集めています。リフォーム費用も住宅ローンに組み込めるため、初期費用を抑えられる点が魅力です。
6. まとめ:中古マンション購入時の住宅ローン活用術
中古マンションでも住宅ローンは利用可能ですが、築年数や耐震基準、管理状態により審査基準が異なります。旧耐震基準の物件では耐震基準適合証明書が必要となる場合があり、法定耐用年数との関係で借入期間が制限される可能性もあります。
2025年は金利上昇傾向が続いているため、変動金利と固定金利の比較を行い、ライフプランに合った金利タイプを選択することが重要です。住宅ローン控除やリノベーション一体型ローンを活用することで、税制メリットや金利引き下げを受けられます。
信頼できる不動産会社や金融機関に相談しながら、無理のない返済計画を立て、安心して中古マンション購入を進めましょう。
