都市部の賃貸オフィス選びと立地別の特徴

著者: Room Match編集部公開日: 2025/11/18

都市部のオフィス選びが重要な理由(立地と事業の関係)

企業の事務所移転を検討する際、「どのエリアを選べばいいのか」「都市部と郊外のどちらが適しているのか」と悩む経営者は少なくありません。

この記事では、都市部(梅田等)のオフィス選びの基本、立地別の特徴、賃料相場、設備のチェックポイントを、オフィス市場の専門データを元に解説します。

初めてオフィスを移転する方でも、立地と予算のバランスで最適なオフィスを選べるようになります。

この記事のポイント

  • 都市部のオフィスは交通アクセスが良く、採用活動や取引先とのミーティングに有利だが、賃料は郊外より高い
  • 梅田エリアの賃料相場は、ハイグレード物件が坪単価3万円台、ミドルグレードが坪2万円台(2025年時点)
  • 2024年は大阪オフィス市場で過去最大の新規供給年で、梅田が全体の46%を占める
  • オフィス設備はOAフロア・個別空調・光ファイバーが基本。築古ビルでも大規模リニューアル済みなら設備が充実している場合がある
  • 複数社から見積もりを取り、現地確認で天井高・エレベーター・トイレ等を実際にチェックすることが重要

都市部オフィス選びの基本(立地・賃料・設備の優先順位)

都市部オフィスを選ぶ際の基本ポイントを確認しましょう。

(1) 立地選びの基準(駅近・商業集積・ビジネス街の違い)

立地は事業の成功を左右する重要な要素です。都市部の立地は以下の3つに分類されます。

駅近エリア

主要駅から徒歩5分以内のエリアは、従業員の通勤利便性が高く、採用活動に有利です。取引先とのミーティングもアクセスしやすいため、営業活動にも適しています。

梅田エリアの例では、淀屋橋駅・大江橋駅・北新地駅周辺が駅近エリアに該当します。

商業集積エリア

商業施設・飲食店が集積しているエリアは、従業員の利便性が高く、取引先の接待にも適しています。一方、人通りが多く、静かな作業環境を求める業種には不向きな場合があります。

ビジネス街エリア

オフィスビルが集中しているエリアは、同業他社や関連業種との交流がしやすく、ビジネスチャンスが広がる可能性があります。夜間や休日は人通りが少なくなる点に注意が必要です。

(2) 賃料相場の決まり方(エリア・グレード・面積)

オフィス賃料は以下の要素で決まります。

エリア

都市部の主要駅周辺は賃料が高く、郊外に行くほど賃料が下がります。梅田エリアは大阪で最も賃料が高いエリアの一つです。

物件グレード

オフィスビルは以下のようにグレード分けされます。

グレード 特徴 梅田エリアの坪単価(2025年時点)
ハイグレード 新築・築浅、高天井、最新設備 3万円台前半~後半
ミドルグレード 築10~30年、標準設備 2万円台
低グレード 築古、最低限の設備 1万円台

面積

賃貸面積が大きいほど、坪単価は低くなる傾向があります。小規模(10~50坪)の場合、坪単価が高めに設定されることが多いです。

(3) 必須設備とオプション設備

オフィスに必要な設備を確認しましょう。

必須設備

  • OAフロア:配線を床下に収納できる二重床構造。オフィスレイアウト変更が容易
  • 個別空調:テナントごとに空調を制御できるシステム。中央空調より運用コストを抑えられる
  • 光ファイバー:高速インターネット回線。現代のオフィスには必須のインフラ
  • 男女別トイレ:従業員の快適性に影響
  • エレベーター:フロア数と利用人数に応じた台数が必要

オプション設備

  • 立体駐車場(営業車が多い業種に必要)
  • EV充電スペース(近年需要が増加)
  • 喫煙スペース・リフレッシュスペース(従業員の福利厚生)

梅田エリアのオフィス市場の特徴(立地・賃料相場・最新動向)

梅田エリアのオフィス市場を確認しましょう。

(1) 梅田エリアの立地特性(交通アクセス・商業集積)

梅田エリアは大阪の中心業務地区(CBD)で、以下の特徴があります。

交通アクセス

  • JR大阪駅・阪急梅田駅・阪神梅田駅・地下鉄梅田駅が集中
  • 新大阪駅へJR京都線で1駅(新幹線へのアクセスが良い)
  • 関西国際空港へリムジンバスで約60分

商業集積

  • 百貨店(阪急・阪神・大丸)、商業施設(グランフロント大阪等)が集中
  • 飲食店・カフェ・銀行が充実
  • 従業員の利便性が非常に高い

(2) 梅田エリアの賃料相場(ハイグレード坪3万円台、ミドルグレード坪2万円台)

オフィス仲介サービスofficeeによると、2025年10月時点で以下の賃料相場となっています。

大阪ビジネス地区全体

  • 平均賃料:坪12,588円
  • 空室率:3.57%

梅田エリア(グレード別)

グレード 坪単価相場 具体例
ハイグレード 3万円台前半~後半 JPタワー大阪、グラングリーン大阪等の新築ビル
ミドルグレード 2万円台 築10~30年のリニューアル済みビル
低グレード 1万円台 築古ビル、駅から離れた物件

梅田エリアは大阪で最も賃料が高いエリアですが、物件グレードや築年数により賃料に幅があります。

(3) 2024年の市場動向(大量供給と新ランドマークビル)

JLL(国際不動産サービス大手)の調査によると、2024年は大阪オフィス市場で過去最大の新規供給年となりました。

2024年の主要竣工物件

  • JPタワー大阪:大阪駅前に竣工した新ランドマークビル
  • イノゲート大阪:西梅田エリアの大規模複合ビル
  • グラングリーン大阪:うめきた2期地区の再開発プロジェクト

これらの新規供給により、梅田エリアのオフィス市場は大きく変化しています。空室率が上昇する可能性があり、借主にとっては選択肢が広がる一方、賃料交渉の余地も生まれています。

賃貸オフィスの設備とチェックポイント(OAフロア・空調・アクセス)

オフィス設備のチェックポイントを確認しましょう。

(1) オフィス設備の基本(OAフロア・個別空調・光ファイバー)

現代のオフィスに必要な基本設備は以下の通りです。

OAフロア

配線を床下に収納できる二重床構造です。デスクレイアウトを変更する際、配線の引き直しが容易になります。床上げ高さ(床から二重床までの高さ)は100mm以上が標準です。

個別空調

テナントごとに空調を制御できるシステムです。中央空調(ビル全体で一括制御)と比べ、以下のメリットがあります。

  • 営業時間外・休日の空調利用が自由
  • 電気代を抑えられる(使用分のみ支払い)
  • フロア内でエリアごとに温度調整が可能

光ファイバー

高速インターネット回線です。通信速度(上り・下り)、プロバイダー選択の自由度を契約前に確認しましょう。

(2) 築古ビルのリニューアル物件(コストと設備のバランス)

築古ビルでも大規模リニューアル済みなら、設備が充実している場合があります。

リニューアルの例

関電不動産梅田新道ビルは1980年築ですが、2021年に大規模リニューアルを実施しました。また、2023年には立体駐車場を増設し、ハイルーフ車対応・EV充電スペースも完備しています。

築古ビルのメリット

  • 賃料が新築ビルより低い(ミドルグレードの坪2万円台が相場)
  • リニューアル済みなら設備が充実
  • 御堂筋沿いの角地など、立地が良い物件が多い

築古ビルの注意点

  • 天井高が低い場合がある(2,350mm程度。新築は2,400~2,700mm)
  • エレベーター台数が少ない場合がある
  • 最新の超高層ビルと比較すると設備に制約がある

現地確認で実際の設備状態を確認することが重要です。

(3) 駐車場・EV充電設備の確認

営業車が多い業種では、駐車場の有無・台数・車種制限(ハイルーフ車対応か等)を確認しましょう。

近年は、EV(電気自動車)充電設備の需要が増加しています。2023年に立体駐車場を増設した関電不動産梅田新道ビルのように、EV充電スペースを完備している物件も増えています。

オフィス選びのプロセスと注意点(見積もり・現地確認・契約)

オフィス選びの具体的なプロセスを確認しましょう。

(1) 複数社からの見積もり取得

オフィス仲介会社は複数社(最低3社)から見積もりを取ることを推奨します。

見積もりに含まれる項目

  • 賃料(坪単価 × 賃貸面積)
  • 共益費(光熱費、清掃費、設備管理費等)
  • 敷金・礼金(敷金は賃料の6~12ヶ月分が相場)
  • 仲介手数料(賃料の1ヶ月分+消費税が上限)
  • 内装工事費(入居前の内装工事が必要な場合)

比較ポイント

  • 坪単価だけでなく、共益費・初期費用を含めた総額で比較
  • 契約期間(2年・3年等)、更新料の有無
  • 賃料改定条項(数年ごとに賃料が上がる契約もある)

(2) 現地確認のチェックリスト(天井高・エレベーター・トイレ)

現地確認では以下の項目をチェックしましょう。

チェックリスト

項目 確認ポイント
天井高 2,400mm以上が理想。2,350mm未満は圧迫感がある場合がある
エレベーター 台数・待ち時間・積載量(朝の混雑時に確認)
トイレ 男女別か、清潔さ、ウォシュレット有無
光ファイバー 通信速度(上り・下り)、プロバイダー選択の自由度
空調 個別空調か中央空調か、24時間利用可能か
OAフロア 床上げ高さ(100mm以上が標準)
駐車場 台数・車種制限・EV充電設備の有無
セキュリティ 機械警備・有人警備の有無、24時間利用可能か
共用部 喫煙スペース・リフレッシュスペースの有無

現地確認の時間帯

  • 平日の朝(通勤時間帯のエレベーター混雑状況を確認)
  • 平日の昼(周辺の飲食店の混雑状況を確認)

(3) 契約前の最終確認(賃料・共益費・契約期間)

契約書を締結する前に、以下の項目を最終確認しましょう。

契約書の確認項目

  • 賃料・共益費の金額、支払い方法(月払い・年払い)
  • 契約期間(2年・3年等)、更新料の有無
  • 敷金・礼金の金額、返還条件
  • 原状回復義務の範囲(退去時の工事費用)
  • 中途解約条項(契約期間中に解約できるか、違約金の有無)
  • 賃料改定条項(数年ごとに賃料が上がる契約もある)

不明点がある場合は、契約前に宅地建物取引士や弁護士に相談することを推奨します。

まとめ:立地と予算のバランスで最適なオフィスを選ぶ

都市部のオフィスは交通アクセスが良く、採用活動や取引先とのミーティングに有利ですが、賃料は郊外より高くなります。梅田エリアの賃料相場は、ハイグレード物件が坪単価3万円台、ミドルグレードが坪2万円台(2025年時点)です。

2024年は大阪オフィス市場で過去最大の新規供給年で、梅田が全体の46%を占めています。JPタワー大阪、グラングリーン大阪などの新ランドマークビルが竣工し、市場環境が変化しています。

オフィス設備はOAフロア・個別空調・光ファイバーが基本です。築古ビルでも大規模リニューアル済みなら設備が充実している場合があり、コストと設備のバランスで選ぶことが重要です。複数社から見積もりを取り、現地確認で天井高・エレベーター・トイレ等を実際にチェックしましょう。契約前には賃料・共益費・契約期間を最終確認し、不明点は宅地建物取引士や弁護士に相談することを推奨します。

よくある質問

Q1都市部のオフィスを選ぶメリットは何ですか?

A1交通アクセスが良く、採用活動や取引先とのミーティングに有利です。主要駅から徒歩5分以内の立地は、従業員の通勤利便性が高く、営業活動にも適しています。また、商業施設・飲食店が集積しているため、従業員の利便性も高く、取引先の接待にも適しています。一方、賃料は郊外より高くなるため、立地と予算のバランスで判断することが重要です。

Q2梅田エリアのオフィス賃料相場はどれくらいですか?

A22025年10月時点で、ハイグレード物件は坪単価3万円台前半~後半、ミドルグレードは坪2万円台、低グレードは坪1万円台が相場です。大阪ビジネス地区全体の平均賃料は坪12,588円となっています。物件グレード(新築・築浅か築古か)、面積、立地により大きく異なるため、複数社から見積もりを取ることを推奨します。

Q3オフィス選びで最も重視すべきポイントは何ですか?

A3事業内容により異なりますが、一般的には①立地(駅からの距離・商圏)、②賃料(予算内か)、③設備(OAフロア・空調・ネット回線)の順で重視されます。営業活動が多い企業は立地を優先し、開発業務が中心の企業は設備・環境を重視する傾向があります。優先順位を明確にして、立地と予算のバランスで最適なオフィスを選ぶことが重要です。

Q4築古ビルと新築ビル、どちらを選ぶべきですか?

A4新築ビルは最新設備(天井高2,400~2,700mm、高速エレベーター等)で快適ですが、賃料が坪単価3万円台と高めです。築古ビルでも大規模リニューアル済みなら設備が充実し、賃料が坪2万円台に抑えられるケースもあります。現地確認で天井高・エレベーター・空調・OAフロアを実際にチェックし、コストと設備のバランスで判断することが重要です。

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Room Match編集部

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