未公開土地とは|知られざる土地市場の20%
「未公開土地って何?」「ポータルサイトに載っていない土地はどうやって探すの?」と疑問に感じる方は少なくありません。
この記事では、未公開土地の定義、非公開になる理由、メリット・デメリット、探し方、購入時の注意点を、不動産業界の一般的な知見を元に解説します。
初めて未公開土地を探す方でも、効果的な情報収集と慎重な判断ができるようになります。
この記事のポイント
- 未公開土地はポータルサイトに公開されていない土地情報で、市場全体の20%以上が未公開物件として流通
- 売主のプライバシー保護、販売準備期間、交渉相手の選定等の理由で非公開となる
- メリットは競争が少なく交渉余地がある一方、情報が限定的で比較検討が困難なデメリットも
- 探し方は不動産会社への直接訪問、地域密着型業者への相談、ハウスメーカー経由の情報入手等が効果的
ポータルサイトに掲載されていない土地情報
未公開土地とは、ポータルサイト(SUUMO、HOME'S、at home等)に掲載されていない土地情報のことです。
公開土地との違い:
- 公開土地: ポータルサイト、不動産会社のホームページ等に掲載されている物件
- 未公開土地: ポータルサイト等には掲載されていないが、今後公開される可能性がある物件
未公開土地は、売主の事情や不動産会社の販売戦略により、一般には公開されていません。
市場全体の20%以上が未公開物件として流通
タウンライフすまいリクエストの調査によると、市場全体の20%以上が未公開物件として流通しています。
これは、ポータルサイトで探すだけでは、市場の約8割しか見られていないことを意味します。好条件の土地を探す場合、未公開土地も視野に入れることで、選択肢が大きく広がります。
未公開土地の定義と非公開になる理由
未公開土地と非公開土地の違い
「未公開土地」と「非公開土地」は、厳密には異なります。
| 項目 | 未公開土地 | 非公開土地 |
|---|---|---|
| 定義 | ポータルサイト等に掲載されていない土地 | 市場にほとんど出回らない土地 |
| 公開予定 | 今後公開される可能性がある | 公開される可能性が低い |
| 例 | 販売準備中の土地、売主の意向で非公開の土地 | 相続や地主の代替わりで稀に出る土地 |
ただし、実務上は両者を明確に区別せず、「未公開物件」として扱われることが多いです。
非公開になる理由5つ|売主のプライバシー・準備期間・交渉相手の選定
土地が非公開になる理由は、主に以下の5つです。
1. 売主のプライバシー保護
- 近隣住民に売却を知られたくない
- 資産状況を公開したくない
- 相続や離婚等のデリケートな事情
2. 販売準備期間
- 測量、境界確定が未完了
- 登記簿の整備が必要
- 売却条件の検討中
3. 交渉相手の選定
- 特定の条件を満たす買主を探している
- 法人・個人を限定したい
- 用途を指定したい(住宅用、事業用等)
4. 不動産会社の販売戦略
- 両手仲介(売主・買主双方から手数料)を狙う
- 優良顧客に優先的に紹介したい
- 競争を避けて高値で売却したい
5. REINS登録義務の猶予期間
- 専任媒介・専属専任媒介は7日以内にREINS登録が義務
- その7日間は未公開物件として扱われる
REINS登録義務と7日間の猶予期間
**REINS(レインズ)**とは、不動産流通標準情報システムのことで、宅地建物取引業法に基づき、専任媒介・専属専任媒介契約の物件情報を登録するデータベースです。
登録義務:
- 専属専任媒介: 契約締結日から5日以内にREINS登録義務
- 専任媒介: 契約締結日から7日以内にREINS登録義務
- 一般媒介: REINS登録義務なし
専任媒介・専属専任媒介でも、契約締結から7日間は未公開物件として扱われる可能性があります。
媒介契約の種類|専属専任・専任・一般
媒介契約には、以下の3種類があります。
| 項目 | 専属専任媒介 | 専任媒介 | 一般媒介 |
|---|---|---|---|
| 複数の不動産会社への依頼 | 不可 | 不可 | 可 |
| 自己発見取引 | 不可 | 可 | 可 |
| REINS登録義務 | あり(5日以内) | あり(7日以内) | なし |
| 報告義務 | 1週間に1回以上 | 2週間に1回以上 | なし |
一般媒介契約はREINS登録義務がないため、一般媒介で売却される土地は、ポータルサイトやREINSに掲載されない可能性が高いです。
未公開土地のメリット・デメリット|お宝物件とは限らない
メリット|競争が少ない・交渉余地がある
未公開土地の主なメリットは以下の通りです。
1. 競争が少ない
- 一般公開されていないため、購入希望者が少ない
- 買い手が多数いる公開物件より有利に交渉できる可能性
2. 交渉余地がある
- 売主と直接交渉できる場合がある
- 価格、引渡し時期、条件等を柔軟に調整できる可能性
3. 好条件の物件が見つかる可能性
- ポータルサイトでは見つからない掘り出し物件
- 売主の事情で急いで売却したい物件
デメリット|情報が限定的・比較検討が困難
未公開土地の主なデメリットは以下の通りです。
1. 情報が限定的
- ポータルサイトのように詳細な情報が公開されていない
- 周辺環境、インフラ、用途地域等の確認が必要
2. 比較検討が困難
- 他の物件と比較しにくい
- 価格が妥当かどうか判断しにくい
3. 情報入手に手間がかかる
- 不動産会社への直接訪問、関係構築が必要
- ポータルサイトのように一覧で確認できない
4. リスクが高い可能性
- 非公開にする理由が物件の欠陥である場合もある
- 相場より高い価格設定の可能性
両手仲介狙いで意図的に未公開にされるケース
一部の不動産会社は、両手仲介(売主・買主双方から仲介手数料を受け取る)を狙って、意図的に物件を未公開にするケースがあります。
両手仲介の仕組み:
- 売主から仲介手数料(売却価格の3%+6万円+消費税)
- 買主からも仲介手数料(購入価格の3%+6万円+消費税)
- 1つの取引で2倍の手数料を得られる
問題点:
- 売主にとっては、より多くの買主候補を集めた方が高値で売却できる可能性が高い
- しかし不動産会社が両手仲介を狙うと、物件情報を意図的に隠し、自社の顧客のみに紹介する
このような物件は、必ずしも好条件とは限らないため、注意が必要です。
相場より高い価格設定や欠陥の可能性
未公開土地が必ずしもお宝物件とは限りません。
相場より高い価格設定の可能性:
- 売主の希望価格が高すぎて、公開すると問い合わせがない
- 不動産会社が高値で売却したいため、限定的に紹介
欠陥がある可能性:
- 地盤が弱い
- 境界が不明確
- 用途地域の制限が厳しい
- インフラ(上下水道、ガス等)が未整備
これらの理由で一般公開されていない場合もあるため、慎重な調査が必須です。
未公開土地の探し方5選|効果的な情報収集方法
不動産会社への直接訪問と希望条件の詳細な伝達
未公開土地を探す最も効果的な方法は、不動産会社に直接訪問し、希望条件を詳しく伝えることです。
伝えるべき条件:
- 希望エリア(市区町村、駅名、学区等)
- 予算(上限、下限)
- 土地面積(最低面積、希望面積)
- 用途(住宅用、事業用等)
- 希望時期(いつまでに取得したいか)
具体的な条件を伝えることで、不動産会社は未公開物件の中から条件に合う土地を優先的に紹介してくれる可能性が高まります。
地域密着型の不動産会社を頼る
希望エリアが決まっている場合は、その地域で長年営業している地域密着型の不動産会社を頼ることが効果的です。
地域密着型業者の強み:
- 地主とのつながりが強い
- 相続や代替わりの情報をいち早く入手
- 地域の土地事情に精通している
- 未公開物件の情報が集まりやすい
大手ポータルサイトには載らない地元の物件情報を持っている可能性が高いです。
ハウスメーカーや工務店経由での情報入手
ハウスメーカーや工務店は、不動産会社から未公開土地情報を受け取っているため、家づくりと同時に土地探しを依頼するとスムーズです。
ハウスメーカー経由のメリット:
- 不動産会社との提携により、未公開物件情報を入手
- 土地探しと家づくりを一貫してサポート
- 建築条件付き土地の情報も豊富
注文住宅を検討している方は、ハウスメーカーに土地探しも依頼することで、効率的に進められます。
希望エリアを実際に歩いて売地看板を探す
希望エリアを実際に歩いて売地の看板を探すと、ポータルサイト未掲載の物件を直接見つけられる可能性があります。
探し方:
- 希望エリアを歩いて、「売地」「売却予定地」の看板を探す
- 看板に記載された不動産会社に直接連絡
- 現地で周辺環境、インフラ、日当たり等を確認
アナログな方法ですが、掘り出し物件を見つける可能性があります。
不動産会社の自社ホームページやメルマガに登録
不動産会社の自社ホームページやメルマガに登録しておくと、未公開土地情報が優先的に届く場合があります。
登録のメリット:
- ポータルサイトに掲載される前の物件情報を入手
- 自社ホームページのみに掲載される物件を確認
- メルマガで新着物件情報を受け取れる
複数の不動産会社に登録することで、情報収集の幅が広がります。
未公開土地購入時の注意点|リスクと確認事項
登記簿・用途地域・インフラの徹底調査
未公開土地は情報が限定的なため、登記簿・用途地域・インフラの徹底調査が必須です。
登記簿の確認事項:
- 所有者(売主が本当の所有者か)
- 抵当権の有無(住宅ローンや借入の残債があるか)
- 地目(宅地、畑、雑種地等)
- 地積(登記簿上の面積)
用途地域の確認:
- 第一種低層住居専用地域、商業地域等の区分
- 建ぺい率、容積率の制限
- 高さ制限、日影規制
インフラの確認:
- 上下水道、ガス、電気の整備状況
- 前面道路の幅員、接道義務の充足
これらの調査は、法務局、市区町村の都市計画課、インフラ事業者等で確認できます。
価格設定の妥当性確認|相場との比較
未公開土地は比較検討が困難なため、価格設定の妥当性を相場と比較することが重要です。
相場の調べ方:
- 国土交通省の不動産取引価格情報で周辺の取引事例を確認
- ポータルサイトで同エリアの公開物件価格を確認
- 複数の不動産会社に査定を依頼
相場より明らかに高い場合は、価格交渉や購入見送りを検討しましょう。
物件状態の確認|地盤・境界・形状
未公開土地は現地調査が特に重要です。
地盤の確認:
- 地盤調査を実施(数万円程度)
- ハザードマップで水害・地震リスクを確認
- 周辺の建物の基礎・外壁にひび割れがないか
境界の確認:
- 境界標が設置されているか
- 隣接地所有者との境界確定が完了しているか
- 測量図が最新か
形状の確認:
- 変形地、旗竿地(敷地延長・路地状敷地とも呼ばれ、道路に接する間口が狭く、細長い通路部分を経て奥に建物が建つ土地)、傾斜地でないか
- 接道義務を満たしているか(原則、幅員4m以上の道路に2m以上接道)
契約条件の確認|手付金・引渡し時期・特約事項
売買契約前に、契約条件を詳細に確認しましょう。
確認事項:
- 手付金: 売買代金の10-20%が一般的
- 引渡し時期: いつ所有権が移転するか
- 特約事項: ローン特約(融資が不成立の場合は契約解除可能)、瑕疵担保責任等
- 諸費用: 仲介手数料、登記費用、測量費用、固定資産税の精算等
契約書は専門的な内容が多いため、不明点は宅地建物取引士に確認しましょう。
複数の専門家(宅建士、土地家屋調査士等)への相談
未公開土地購入では、複数の専門家への相談を強く推奨します。
相談すべき専門家:
- 宅地建物取引士: 契約内容、法規制、価格の妥当性
- 土地家屋調査士: 測量、境界確定
- 司法書士: 登記手続き
- 税理士: 不動産取得税、譲渡所得税等の税務
- ファイナンシャルプランナー: 資金計画
情報が限定的な未公開土地だからこそ、専門家の知見を活用して、リスクを最小限に抑えましょう。
まとめ|未公開土地を賢く活用するために
未公開土地は、ポータルサイトに公開されていない土地情報で、市場全体の20%以上が未公開物件として流通しています。売主のプライバシー保護、販売準備期間、交渉相手の選定等の理由で非公開となります。
メリットは競争が少なく交渉余地がある一方、情報が限定的で比較検討が困難なデメリットもあります。必ずしもお宝物件とは限らず、両手仲介狙いで意図的に未公開にされるケースや、相場より高い価格設定・欠陥の可能性もあるため注意が必要です。
探し方は、不動産会社への直接訪問、地域密着型業者への相談、ハウスメーカー経由の情報入手、希望エリアを歩いて売地看板を探す、不動産会社のホームページやメルマガに登録等が効果的です。購入時は、登記簿・用途地域・インフラの徹底調査、価格設定の妥当性確認、地盤・境界・形状の確認、契約条件の精査、複数の専門家(宅建士、土地家屋調査士等)への相談を行い、慎重に判断しましょう。
