不動産賃貸仲介とは何か
賃貸物件を探す際、「仲介手数料はいくらかかるのか」「仲介会社と管理会社はどう違うのか」と疑問に感じる方は少なくありません。不動産賃貸仲介は、貸主と借主の間を取り持つ業態で、物件探しから契約までをサポートします。この記事では、賃貸仲介の仕組み、仲介手数料の法定上限、業者選びのポイントを、全日本不動産協会などの公式情報を元に解説します。
賃貸契約で損をしないための具体的なチェックポイントを知ることができます。
この記事のポイント
- 賃貸仲介は貸主と借主の間を取り持ち、物件探しから契約手続き・鍵の受け渡しまでをサポート
- 仲介手数料の上限は法律で貸主・借主合計「家賃1ヶ月分+消費税」、借主負担は原則「家賃0.5ヶ月分+消費税」
- 借主の承諾があれば仲介手数料は1ヶ月分まで請求可能(契約前に必ず確認)
- 仲介会社は入居前の対応、管理会社は入居後の対応を担当(連絡先の使い分けが重要)
- 2024年7月の法改正で長期空き家物件の仲介手数料上限が家賃2ヶ月分に変更
- 2024年の調査では電子契約経験者が75.4%に増加、DX推進が進む
(1) 賃貸仲介の定義と役割
賃貸仲介とは、賃貸物件の貸主と借主の間を取り持つ業態です。全日本不動産協会によると、物件探しから契約手続き・鍵の受け渡しまでをサポートし、収入源は貸主と借主からの仲介手数料です。
賃貸仲介会社が提供する主なサービスは以下の通りです。
- 物件探し: 借主の条件に合う物件を紹介
- 物件案内: 内見のアレンジ・物件の説明
- 契約手続き: 重要事項説明・契約書作成・契約締結
- 鍵の受け渡し: 入居時の鍵の引き渡し
(2) 宅地建物取引業免許の必要性
不動産の賃貸仲介を行うには、宅地建物取引業免許が必要です。国土交通大臣または都道府県知事が交付するもので、5年ごとに更新されます。
また、仲介業者は従業員5人に1人以上の宅建士(宅地建物取引士)を設置することが法律で義務付けられています。宅建士は不動産取引の専門家資格で、契約時の重要事項説明などを担当します。
(3) 賃貸仲介業界の規模
賃貸仲介業界は日本全国で広く展開されています。2024年の調査によると、DX推進率は64.9%に達しており、電子契約経験者は75.4%に増加しました。業界全体でデジタル化が進んでいます。
2. 賃貸仲介の仕組みと業務内容
(1) 物件探しから契約までの流れ
賃貸仲介のプロセスは以下のように流れます。
1. 借主が仲介会社に物件探しを依頼
↓
2. 仲介会社が条件に合う物件を紹介
↓
3. 内見(物件見学)のアレンジ
↓
4. 申し込み・審査
↓
5. 重要事項説明・契約締結
↓
6. 鍵の受け渡し・入居
(2) 仲介会社が提供するサービス
仲介会社が提供する主なサービスは以下の通りです。
| サービス内容 | 詳細 |
|---|---|
| 物件紹介 | 借主の条件(立地・間取り・家賃等)に合う物件を提案 |
| 内見アレンジ | 物件見学の日程調整・同行・説明 |
| 申し込み代行 | 入居申込書の作成・貸主への提出 |
| 審査サポート | 審査に必要な書類の準備・提出 |
| 契約手続き | 重要事項説明・契約書作成・契約締結 |
| 鍵の受け渡し | 入居日の鍵の引き渡し |
(3) 収入源(貸主・借主からの仲介手数料)
仲介会社の収入源は、貸主と借主から受け取る仲介手数料です。法律で上限が定められており、原則として貸主・借主合計で「家賃1ヶ月分+消費税」が上限となります(詳細は後述)。
(4) 宅建士の設置義務(従業員5人に1人以上)
賃貸仲介会社は、従業員5人に1人以上の宅建士を設置することが法律で義務付けられています。宅建士は契約時の重要事項説明(物件の状態・契約条件・禁止事項等を説明する業務)を担当します。
3. 仲介手数料の相場と法律上の上限
(1) 法定上限(貸主・借主合計で家賃1ヶ月分+消費税)
LIFULL HOME'Sによると、仲介手数料の上限は法律(宅地建物取引業法)で定められています。
法定上限:
- 貸主・借主合計で家賃1ヶ月分+消費税
- 例: 家賃10万円の場合、貸主・借主合計で11万円(10万円×1.1)が上限
(2) 借主負担の原則(家賃0.5ヶ月分+消費税)
法律では、借主が負担する仲介手数料は原則「家賃0.5ヶ月分+消費税」とされています。
| 家賃 | 借主負担の仲介手数料(原則) |
|---|---|
| 5万円 | 2.75万円(5万円×0.5×1.1) |
| 8万円 | 4.4万円 |
| 10万円 | 5.5万円 |
| 15万円 | 8.25万円 |
(3) 承諾があれば1ヶ月分まで請求可能
ただし、借主の承諾があれば仲介手数料は1ヶ月分まで請求可能です。多くの場合、契約前に「仲介手数料は家賃1ヶ月分+消費税」と説明され、借主が承諾するケースが一般的です。
契約前に必ず仲介手数料の金額を確認し、納得できない場合は交渉するか他の物件を検討しましょう。
(4) 2024年7月の法改正(長期空き家物件の上限変更)
LIFULL HOME'Sによると、2024年7月の法改正で、長期空き家物件(一定期間以上空室の物件)の仲介手数料上限が「家賃2ヶ月分+消費税」に引き上げられました。
ただし、借主負担は従来通り0.5ヶ月分に抑えられています。引き上げられた1ヶ月分は貸主が負担する仕組みです。
(5) 値引き交渉の可能性
SUUMOによると、仲介手数料は物件や時期により値引き交渉が可能な場合があります。
交渉しやすいケース:
- 繁忙期以外(5~8月、11~12月)
- 空室期間が長い物件
- 仲介会社が貸主からも手数料を受け取る物件
ただし、無理な交渉はサービス品質低下につながる可能性があるため、相手の立場も考慮しながら交渉しましょう。
4. 賃貸仲介会社と管理会社の違い
(1) 仲介会社の役割(入居前の対応)
仲介会社は入居前の対応を担当します。
- 物件探しから契約までのサポート
- 内見のアレンジ
- 重要事項説明・契約書作成
- 鍵の受け渡し
契約が完了すると、仲介会社の役割は終了します。
(2) 管理会社の役割(入居後の対応)
管理会社は入居後の対応を担当します。
- 物件のメンテナンス(設備故障・修繕対応)
- 家賃の管理・督促
- 退室時の原状回復・敷金精算
- 入居者からのクレーム対応
SUUMOによると、入居後のトラブル(設備故障、騒音等)は管理会社に連絡する必要があります。
(3) 仲介管理会社(両方を担当)
一部の会社は仲介と管理の両方を担当する「仲介管理会社」です。客付けから入居者対応・建物管理まで一貫して行うため、連絡先が統一されて便利な場合があります。
(4) 連絡先の使い分け
| タイミング | 連絡先 | 対応内容 |
|---|---|---|
| 入居前 | 仲介会社 | 物件探し・内見・契約 |
| 入居後 | 管理会社 | 設備故障・騒音・家賃支払い |
| 退去時 | 管理会社 | 退去手続き・敷金精算 |
重要: 入居後に仲介会社に連絡しても対応できない場合が多いため、管理会社の連絡先を必ず確認しておきましょう。
5. 賃貸仲介業者選びのポイント
(1) 対応エリアと物件数
仲介業者を選ぶ際は、対応エリアと物件数を確認しましょう。地域密着型の業者は特定エリアの情報に精通している一方、大手は全国規模で物件数が豊富です。
(2) サービス内容とレスポンスの速さ
サービス内容(内見の柔軟性、契約手続きのサポート等)とレスポンスの速さを確認しましょう。問い合わせ時の初期対応が早く、丁寧な業者を選ぶことが重要です。
(3) 宅建業免許番号の確認
宅建業免許番号を確認することで、業者の営業年数と信頼性を判断できます。免許番号の表記は以下の形式です。
東京都知事 (5) 第0000号
↑
カッコ内の数字 = 免許更新回数
カッコ内の数字が大きいほど営業年数が長く、信頼性が高い傾向にあります。
(4) DX推進状況(電子契約対応等)
2024年の調査では電子契約経験者が75.4%に増加しました。電子契約に対応している業者は、契約手続きがスムーズで効率的です。
(5) 複数社への相談推奨
複数の仲介業者に相談し、提案内容・対応・仲介手数料を比較することで、自分に合った業者を選べます。
6. まとめ:賃貸仲介を利用する際の注意点
賃貸仲介は、貸主と借主の間を取り持ち、物件探しから契約手続き・鍵の受け渡しまでをサポートします。仲介手数料の上限は法律で貸主・借主合計「家賃1ヶ月分+消費税」、借主負担は原則「家賃0.5ヶ月分+消費税」ですが、借主の承諾があれば1ヶ月分まで請求可能です。
仲介会社は入居前の対応を担当し、管理会社は入居後の対応を担当します。入居後のトラブルは管理会社に連絡しないと対応が遅れるため、連絡先の使い分けが重要です。
2024年7月の法改正で長期空き家物件の仲介手数料上限が変更されましたが、借主負担は従来通りです。業者選びでは対応エリア・物件数・レスポンス・宅建業免許番号・DX対応状況を確認し、複数社に相談しながら慎重に判断しましょう。
