地方都市で不動産取引をする前に知っておくべきこと
鹿児島市・松江市などの地方都市で不動産売却・購入を検討する際、「都市圏と何が違うのか」「地方都市ならではの注意点は何か」と疑問に思う方は多いのではないでしょうか。
この記事では、地方都市の不動産市場の特徴、価格動向、鹿児島市・松江市の具体的な相場、業者選びのポイント、災害リスク等の確認方法を解説します。
地方都市の不動産取引は、人口動態や地域特性により、都市圏とは異なる市場環境があります。これらを理解した上で、適切な業者選びと情報収集を行うことが重要です。
この記事のポイント
- 地方4都市(札幌・仙台・広島・福岡)は地価上昇が続くが、2年連続で上昇幅は縮小傾向(2024年)
- 人口減少地域では不動産価格が横ばい〜下落の可能性があり、人口動態の確認が重要
- 鹿児島市の2025年相場はマンション平均1,760万円、土地坪単価51.6万円、全用途で前年比+0.76%〜+0.98%上昇
- 地方都市では地域密着型業者の地元ネットワーク・地域相場の把握が強みになる
- 災害リスク(火山・洪水・土砂災害)の確認は国土交通省「不動産情報ライブラリ」で可能(2024年リリース)
(1) 地方都市と都市圏の不動産市場の違い
地方都市と都市圏(東京・大阪・名古屋等)の不動産市場には、以下のような違いがあります。
| 項目 | 地方都市 | 都市圏 |
|---|---|---|
| 価格帯 | 中価格帯(土地坪単価20-60万円程度) | 高価格帯(土地坪単価100万円超も) |
| 取引件数 | 少ない(市場規模が小さい) | 多い(市場規模が大きい) |
| 価格変動 | 緩やか(人口動態に影響される) | 大きい(景気・金利に敏感) |
| 地域情報の重要性 | 高い(地元ネットワークが鍵) | 中程度(全国ネットワークも有効) |
地方都市では、地域密着型業者の地元ネットワーク・地域相場の把握が強みになります。
(2) 地方都市での不動産取引の基本的な流れ
地方都市での不動産取引の基本的な流れは、都市圏とほぼ同じです。
売却の流れ:
- 複数社で査定を受ける
- 媒介契約を結ぶ(専任媒介 or 一般媒介)
- 売却活動(広告、内覧対応)
- 買付申込・価格交渉
- 売買契約・引渡し
購入の流れ:
- 予算・希望条件を決める
- 物件検索(ポータルサイト、不動産会社)
- 内覧・現地確認
- 買付申込・価格交渉
- 住宅ローン審査・売買契約・引渡し
地方都市特有の注意点として、災害リスク(火山・洪水・土砂災害)の確認が重要です。
地方都市の不動産市場の特徴と価格動向
(1) 地方4都市(札幌・仙台・広島・福岡)の地価上昇と縮小傾向(2024年)
地方4都市(札幌・仙台・広島・福岡)では、地価上昇が続いていますが、2年連続で上昇幅は縮小傾向にあります(2024年データ)。
地価上昇の背景:
- 人口流入による需要増加
- 再開発プロジェクトの進行
- 低金利による住宅ローン需要の高まり
上昇幅縮小の背景:
- 建築工事費の上昇により住宅価格が高騰し、買い控えが発生
- 金利上昇の懸念による様子見ムード
- 人口増加ペースの鈍化
地方4都市は今後も緩やかな上昇が見込まれますが、上昇幅は限定的になる可能性があります。
(2) 人口減少地域での価格横ばい〜下落の可能性
地方都市の中でも、人口減少地域では不動産価格が横ばい〜下落の可能性があります。
人口減少が不動産価格に与える影響:
- 需要減少:買い手・借り手が減り、取引件数が減少
- 空き家増加:供給過剰になり、価格下落圧力が強まる
- インフラ縮小:公共交通・商業施設が撤退し、利便性が低下
地方都市で不動産取引をする際は、人口動態の確認が重要です。各自治体の公式サイトや総務省の人口統計で、人口推移を確認しましょう。
(3) 建築工事費上昇による住宅価格の高騰
2024年以降、建築工事費の上昇により住宅価格が高騰しています。
建築工事費上昇の要因:
- 資材価格の上昇(木材・鉄鋼・セメント等)
- 人件費の上昇(職人不足)
- エネルギー価格の高騰
建築工事費の上昇は、新築住宅の価格を押し上げ、中古住宅の相対的な価値を高める効果があります。
鹿児島市・松江市の不動産相場と地域特性
(1) 鹿児島市の相場:マンション平均1,760万円、土地坪単価51.6万円(2025年)
鹿児島市の2025年の不動産相場は以下の通りです。
マンション相場(2025年):
- 平均売却価格:1,760万円
- 過去3年の推移:約3.6万円/平米上昇
- 直近1年:横ばい
土地相場(2025年公示地価):
- 平均価格:15万6,322円/m²(坪単価51.6万円)
- 住宅地:前年比+0.79%上昇
- 商業地:前年比+1.64%上昇
鹿児島市は、県内で最も不動産取引が活発な地域であり、鹿児島中央駅周辺が最高値です。
(2) 鹿児島市の価格推移:全用途で前年比+0.76%〜+0.98%上昇
鹿児島市の地価は、全用途で前年比+0.76%〜+0.98%上昇しており、緩やかな上昇傾向が続いています(2024年国土交通省公示地価)。
上昇の要因:
- 鹿児島中央駅周辺の再開発
- 九州新幹線の利便性
- 県内外からの人口流入
注意点:
- 築年数が古い物件は価格下落が顕著(築50年超で15万円/平米まで低下)
- 桜島の降灰リスクがある地域は価格が抑えられる傾向
鹿児島市は緩やかな上昇傾向ですが、立地・築年数により価格差が大きいため、個別に査定を受けることが重要です。
(3) 松江市を含む地方都市の取引価格の確認方法(国土交通省の不動産取引価格情報)
松江市を含む地方都市の実際の取引価格は、国土交通省「不動産取引価格情報」で確認できます。
確認方法:
- 国土交通省「不動産取引価格情報」にアクセス
- 都道府県・市区町村を選択(例:島根県松江市)
- 取引時期・物件種別を選択
- 実際の取引価格を確認
全国547万件以上の取引価格データが公開されており、地方都市の相場を正確に把握できます。
地方都市での不動産業者選びのポイント
(1) 地域密着型業者のメリット:地元ネットワーク、地域相場の把握
地方都市では、地域密着型業者の地元ネットワーク・地域相場の把握が強みになります。
地域密着型業者のメリット:
- 地元ネットワーク:地元の住民・企業・地主との独自ネットワークを持ち、スムーズな売却・購入につながる
- 地域相場の把握:地域内の住宅相場を綿密に把握しており、高精度な査定が期待できる
- 地元情報:学校区、治安、商業施設、災害リスク等、地域生活に密着した情報を提供
- 柔軟な対応:地域の実情に合わせた柔軟な営業スタイル
地方都市では、地域密着型業者が大手よりも強い場合が多いため、複数社から話を聞いて比較することをおすすめします。
(2) 複数社で査定を受けて相場感を正確に把握する
不動産会社によって、査定額は大きく異なります。複数社で査定を受けて相場感を正確に把握することが重要です。
複数社査定のメリット:
- 相場感を正確に把握できる
- 査定額の根拠を比較できる
- 不動産会社の対応力・信頼性を比較できる
目安:最低3社から査定を受ける
査定額が極端に高い会社は、契約を取るための「釣り査定」の可能性があるため、査定額の根拠を確認しましょう。
(3) 実績・対応力・口コミを総合的に判断する
不動産会社を選ぶ際は、実績・対応力・口コミを総合的に判断しましょう。
チェックポイント:
- 実績:過去の成約件数、成約価格、取扱物件の種類
- 対応力:レスポンスの速さ、質問への回答の丁寧さ、専門知識の有無
- 口コミ:Googleマップ、不動産ポータルサイトの評価、実際の利用者の声
- 宅建業免許番号:カッコ内の数字が大きいほど営業年数が長い(信頼性の目安)
査定額だけでなく、総合的に判断して信頼できる不動産会社を選んでください。
地方都市特有のリスクと確認すべき情報
(1) 人口動態の確認:人口減少地域では価格下落リスク
地方都市で不動産取引をする際は、人口動態の確認が必須です。
確認方法:
- 各自治体の公式サイトで人口推移を確認
- 総務省「人口推計」で全国・都道府県別の人口動態を確認
- 国立社会保障・人口問題研究所の「将来推計人口」で今後の見通しを確認
人口減少地域のリスク:
- 不動産需要が減少し、価格下落の可能性
- 売却に時間がかかる(買い手が見つかりにくい)
- 将来的な資産価値の低下
人口減少が顕著な地域での不動産購入は、長期的な資産価値を慎重に検討する必要があります。
(2) 災害リスクの確認:火山(鹿児島市の桜島)・洪水・土砂災害
地方都市では、地域特有の災害リスクがあります。
鹿児島市の火山リスク:
- 桜島の降灰リスク:噴火活動により、降灰が日常的に発生
- 影響:洗濯物が干せない、車の汚れ、健康への影響(呼吸器系)
- 火山災害は火災保険の対象外(地震保険で対応)
その他の災害リスク:
- 洪水:河川氾濫による浸水
- 土砂災害:がけ崩れ、地すべり
購入前に、必ずハザードマップで災害リスクを確認しましょう。
(3) 国土交通省「不動産情報ライブラリ」での災害リスク情報の確認(2024年リリース)
国土交通省は2024年に**「不動産情報ライブラリ」**をリリースし、災害リスク情報を統合的に確認できるようになりました。
不動産情報ライブラリで確認できる情報:
- 洪水浸水想定区域
- 土砂災害警戒区域
- 火山ハザードマップ
- 地震の揺れやすさ
- 津波浸水想定区域
確認方法:
- 国土交通省「不動産情報ライブラリ」にアクセス
- 住所を入力
- 災害リスク情報を確認
購入前に必ず確認し、リスクを把握した上で判断してください。
(4) 火山災害は火災保険の対象外(地震保険で対応)
火山災害は火災保険の対象外です。火山噴火による被害は、地震保険で対応します。
地震保険の補償範囲:
- 火山噴火による建物・家財の損害
- 地震による建物・家財の損害
- 津波による建物・家財の損害
鹿児島市など火山リスクがある地域では、地震保険の加入を検討しましょう。
まとめ:地方都市で賢く不動産取引をする方法
地方都市の不動産市場は、人口動態や地域特性により、都市圏とは異なる市場環境があります。地方4都市は地価上昇が続いていますが、2年連続で上昇幅は縮小傾向にあり、人口減少地域では価格が横ばい〜下落の可能性があります。
鹿児島市の2025年相場はマンション平均1,760万円、土地坪単価51.6万円で、全用途で前年比+0.76%〜+0.98%上昇しています。地域密着型業者の地元ネットワーク・地域相場の把握が強みになるため、複数社で査定を受けて相場感を正確に把握しましょう。
災害リスク(火山・洪水・土砂災害)の確認は、国土交通省「不動産情報ライブラリ」で可能です(2024年リリース)。人口動態、災害リスク、利便性を総合的に確認し、信頼できる不動産会社を選んで、賢く不動産取引をしてください。
