不動産の評価額とは?調べ方・計算方法を理解する
不動産の売却、購入、相続を検討する際、「固定資産税評価額」「路線価」「実勢価格」など複数の評価額があり、どれを使えばよいか迷う方は少なくありません。
この記事では、不動産評価額の種類、調べ方、計算方法、目的別の使い分けを解説します。国税庁、国土交通省の公式情報を基に、正確な情報を提供します。
この記事のポイント
- 1つの不動産には4つまたは5つの評価額(一物四価・一物五価)が存在する
- 固定資産税評価額は公示価格の約70%、相続税路線価は約80%が目安
- 「固定資産税の納税通知書」で固定資産税評価額を簡単に確認できる
- 路線価×土地面積÷0.8で土地の売却価格の目安を計算できる
- 2024年1月からマンション相続税評価が厳格化され、実勢価格の最低60%で課税される
不動産の評価額とは?一物四価・一物五価の基本
不動産評価額は、不動産の資産価値や税金を計算する基準となる価格です。
不動産評価額の定義と重要性
不動産評価額は、以下の用途で使用されます。
- 固定資産税・都市計画税の計算(固定資産税評価額)
- 相続税・贈与税の計算(相続税評価額)
- 売買価格の目安(実勢価格)
- 地価の公的指標(公示地価、基準地価)
一物四価・一物五価とは何か
1つの不動産に4つまたは5つの評価額が存在することを、一物四価・一物五価と呼びます。
| 評価額 | 評価主体 | 水準の目安 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| 公示地価 | 国土交通省 | 100% | 地価の公的指標 |
| 基準地価 | 都道府県 | 公示地価とほぼ同じ | 地価の補完指標 |
| 相続税評価額(路線価) | 国税庁 | 公示価格の約80% | 相続税・贈与税の計算 |
| 固定資産税評価額 | 市区町村 | 公示価格の約70% | 固定資産税・都市計画税の計算 |
| 実勢価格(時価) | 市場 | 市場の需給で変動 | 実際の売買価格 |
不動産評価額の種類と目的別の使い分け
各評価額の詳細と使い分けを解説します。
固定資産税評価額(固定資産税・都市計画税の計算)
定義: 固定資産税や都市計画税を計算する基準となる評価額です。
評価主体: 市区町村(3年に1度の評価替え、次回は2024年)
水準: 公示価格の約70%が目安
用途: 固定資産税、都市計画税、不動産取得税、登録免許税の計算
相続税評価額(路線価)(相続税・贈与税の計算)
定義: 相続税や贈与税を計算する基準となる評価額です。
評価主体: 国税庁(毎年1月1日時点の評価)
水準: 公示価格の約80%が目安
用途: 相続税、贈与税の計算
計算方法: 路線価方式(道路に面した土地の1㎡あたりの価格を基に計算)または倍率方式(固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて計算)
公示地価(公示価格)(地価の公的指標、毎年1月1日時点)
定義: 国土交通省が毎年3月に公表する標準地の価格です。
評価主体: 国土交通省(毎年1月1日時点の評価)
用途: 地価の公的指標、公共事業の用地買収価格の参考
基準地価(都道府県地価調査、毎年7月1日時点)
定義: 都道府県知事が毎年9月に公表する基準地の価格です。
評価主体: 都道府県(毎年7月1日時点の評価)
用途: 公示地価の補完指標
実勢価格(時価)(実際の売買価格)
定義: 実際に不動産が売買される市場価格です。
評価主体: 市場の需給
用途: 売買価格の目安
不動産評価額の調べ方:公的ツールの活用
各評価額の調べ方を具体的に解説します。
固定資産税評価額の調べ方(納税通知書の確認)
毎年4~6月頃に送付される「固定資産税の納税通知書」の課税明細書で簡単に確認できます。
紛失した場合: 市区町村役場で固定資産評価証明書を取得(手数料300円程度)
路線価の調べ方(国税庁路線価図、全国地価マップ)
国税庁路線価図: 国税庁ホームページで全国の路線価を無料閲覧可能
全国地価マップ: 全国地価マップで、固定資産税路線価、相続税路線価、地価公示価格、都道府県地価調査価格の4つの公的土地評価情報を無料閲覧可能
公示地価・基準地価の調べ方(国土交通省地価公示、全国地価マップ)
国土交通省地価公示: 国土交通省ホームページで毎年3月に公表
全国地価マップ: 全国地価マップで無料閲覧可能
実勢価格の調べ方(不動産情報ライブラリ、REINS等)
不動産情報ライブラリ: 国土交通省不動産情報ライブラリで実際の取引価格を閲覧可能
REINS: 不動産流通機構が運営する不動産流通標準情報システム(不動産会社経由で閲覧)
不動産評価額の計算方法と目安
各評価額の計算方法と目安を解説します。
固定資産税評価額の目安(公示価格の約70%)
計算式: 公示価格 × 0.7 = 固定資産税評価額(目安)
例: 公示価格3,000万円の土地の場合、固定資産税評価額は約2,100万円
相続税評価額の計算(路線価方式・倍率方式)
路線価方式: 路線価 × 土地の面積 = 相続税評価額
倍率方式: 固定資産税評価額 × 倍率 = 相続税評価額
国税庁の公式サイトで詳細な計算方法を確認できます。
相続税評価額の簡易計算(固定資産税評価額×114%)
計算式: 固定資産税評価額 × 1.14 = 相続税評価額(目安)
根拠: 固定資産税評価額は公示価格の約70%、路線価は約80%のため、70 ÷ 80 × 100 = 114%
例: 固定資産税評価額2,100万円の場合、相続税評価額は約2,394万円
土地価格の目安計算(路線価×土地面積÷0.8)
計算式: 路線価 × 土地の面積 ÷ 0.8 = 土地の売却価格の目安
根拠: 路線価は公示価格の約80%のため、0.8で割り戻すと公示価格水準(売却価格の目安)になる
例: 路線価20万円/㎡、土地面積100㎡の場合、売却価格の目安は2,000万円 ÷ 0.8 = 2,500万円
不動産評価額を活用した節税方法と2024年の税制改正
不動産評価額を理解することで、節税対策が可能です。ただし、2024年の税制改正により従来の節税策が使えなくなったケースもあります。
小規模住宅用地の特例(200㎡以下は固定資産税評価額が1/6)
200㎡以下の住宅用地は、固定資産税評価額が1/6に軽減されます。
例: 固定資産税評価額1,200万円の土地(200㎡以下)の場合、課税標準額は200万円
分筆による評価額の減額
土地を分筆することで、形状や接道状況による補正が適用され、評価額が減額される場合があります。
ただし、分筆には登記費用や測量費用がかかるため、専門家への相談を推奨します。
2024年1月からのマンション相続税評価の厳格化(実勢価格の最低60%)
2024年1月1日から、マンション相続税評価が実勢価格の最低60%で課税される新ルールが適用開始されました。
日本経済新聞の報道によると、従来のタワーマンション節税対策への規制強化です。
固定資産税の評価替え(2024年)
固定資産税評価額は3年に1度見直されます。次回は2024年(令和6年)で、2024年1月1日時点の評価額が3年間適用されます。
まとめ:不動産評価額を正しく理解して活用する
不動産評価額には、固定資産税評価額、相続税評価額、公示地価、基準地価、実勢価格の5種類があり、それぞれ目的と水準が異なります。
固定資産税評価額は「固定資産税の納税通知書」で確認でき、路線価は国税庁や全国地価マップで無料閲覧可能です。
2024年1月からマンション相続税評価が厳格化されたため、従来の節税策が使えなくなった点に注意が必要です。
土地の評価は形状や接道状況などの補正が必要で複雑なため、相続税申告や節税対策を検討する際は、税理士や不動産鑑定士への相談を推奨します。税制は改正される可能性があるため、最新情報は国税庁や国土交通省の公式サイトで確認しましょう。
