不動産事務とは?仕事の概要と役割
不動産事務は、不動産会社で営業活動をサポートする事務職です。顧客対応、物件管理、書類作成、経理業務など、不動産取引をスムーズに進めるための幅広い業務を担当します。
この記事のポイント
- 不動産事務は未経験でも挑戦しやすく、人材需要が高い職種
- 主な業務は顧客対応・物件管理・書類作成・経理業務の4つ
- ワード・エクセルの基本操作スキルは必須、宅建士資格があればキャリアアップにつながる
- 平均年収428万円(月収約36万円)で、一般事務より若干高めの傾向
- 高額商品を扱うため間違いが許されないプレッシャーがあるが、顧客の人生の大きな決断をサポートできるやりがいもある
(1) 不動産事務の役割(営業活動のサポート)
不動産事務の主な役割は、営業担当者が顧客対応や物件案内に集中できるよう、裏方でサポートすることです。
具体的なサポート内容:
- 来店顧客の受付・お茶出し
- 電話応対・メール対応
- 契約書類の作成・管理
- 物件情報のデータベース管理
- 経理業務(入金確認・請求書作成)
営業担当者が外回りや商談に専念できるよう、社内業務全般を担当します。
(2) 一般事務との違い
不動産事務と一般事務には、以下のような違いがあります。
| 項目 | 不動産事務 | 一般事務 |
|---|---|---|
| 業務内容 | 不動産取引に特化 | 一般的な事務全般 |
| 専門知識 | 宅建業法・民法・税法等が必要 | 基本的なPCスキルが中心 |
| 給与水準 | 平均年収428万円 | 平均年収約350万円 |
| 資格 | 宅建士があると有利 | 特定の資格は不要な場合が多い |
| 顧客対応 | 高額商品のため慎重な対応が必要 | 比較的定型的な対応 |
(出典: 給与バンク)
不動産事務は専門知識が必要な分、給与水準が高めに設定されています。
(3) 不動産業界の事務職の特徴
不動産業界の事務職は、以下の特徴があります。
プラス面:
- 専門知識が身につく
- 資格取得でキャリアアップが可能
- 一般事務より給与が高め
- 未経験でも挑戦しやすい
注意点:
- 高額商品のため、書類作成で間違いが許されない
- 幅広い法律知識が必要
- クレーム対応が発生する場合がある
(出典: STEP)
不動産事務の主な仕事内容を詳しく解説
不動産事務の業務は、大きく4つに分類されます。
(1) 顧客対応・受付業務(来店対応・お茶出し・電話応対)
来店対応:
- 店舗への来店時、最初の案内やお茶出しを行う
- 営業担当者への取り次ぎ
- 商談スペースの準備・片付け
電話応対:
- 物件に関する問い合わせ対応
- 内見予約の受付
- 営業担当者への連絡・取り次ぎ
顧客の第一印象を左右する重要な業務です。
(2) 物件管理業務(物件情報の入力・更新・データベース管理)
物件データベースの管理:
- 新規物件情報の入力
- 成約・空室状況の更新
- 物件写真の登録・更新
- 不動産ポータルサイトへの物件掲載
物件資料の作成:
- 物件概要書(マイソク)の作成
- 図面・写真の整理
ワード・エクセルを使って、正確かつ迅速に情報を管理することが求められます。
(3) 書類作成業務(契約書・重要事項説明書・請求書等)
契約関連書類:
- 売買契約書・賃貸借契約書の作成
- 重要事項説明書の作成(宅建士が最終チェック)
- 媒介契約書の作成
その他の書類:
- 請求書・領収書の作成
- 顧客へのお礼状・案内状
不動産取引は高額なため、書類作成で一つのミスが重大なトラブルにつながります。正確性が求められる業務です。
(4) 経理業務(入金確認・請求書作成・経費精算)
経理関連業務:
- 家賃・売買代金の入金確認
- 請求書の作成・発送
- 経費精算の処理
- 管理費・修繕積立金の管理
不動産会社によっては、経理専門の部署がある場合もありますが、小規模な会社では不動産事務が兼務することが一般的です。
不動産事務に必要なスキルと資格
(1) 必須スキル(ワード・エクセルの基本操作、コミュニケーション能力)
PCスキル:
- ワード: 契約書・案内状の作成
- エクセル: 物件データベース管理、経理処理
- PowerPoint: 物件資料の作成(企業により)
基本操作ができれば、入社後の研修で業務を習得できます。
コミュニケーション能力:
- 電話応対・来客対応
- 営業担当者との連携
- 顧客の要望を正確に聞き取る力
不動産取引は高額で複雑なため、正確な情報伝達が不可欠です。
(2) 取得すると有利な資格(宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士)
宅地建物取引士(宅建士):
- 不動産取引の専門家として、重要事項説明や契約書への記名・押印を行う国家資格
- 従業員5人につき1人以上の配置が法律で義務付けられている
- 合格率15~17%と難易度が高い
賃貸不動産経営管理士:
- 賃貸住宅の管理業務に関する専門資格
- 2021年に国家資格化
- 賃貸管理に特化したキャリアを目指す場合に有利
(出典: スタディング)
(3) 宅建士の資格手当と難易度(月2~3万円、合格率15~17%)
宅建士を取得すると、多くの企業で月2~3万円の資格手当が支給されます。
年収への影響:
- 月2万円の場合 → 年間24万円アップ
- 月3万円の場合 → 年間36万円アップ
合格率は15~17%と決して高くありませんが、計画的に学習すれば取得可能な資格です。
(出典: 不動産人材)
(4) 法律知識の必要性(宅建業法・民法・税法等)
不動産事務では、以下の法律知識が必要です。
主な関連法規:
- 宅地建物取引業法
- 民法(特に契約・不動産に関する部分)
- 借地借家法
- 不動産登記法
- 国土利用計画法
- 都市計画法
- 建築基準法
- 各種税法(不動産取得税、固定資産税、譲渡所得税等)
これらの法律は頻繁に改正されるため、継続的な学習が必要です。例えば、2024年4月から相続登記が義務化され、相続から3年以内に登記が必須となりました(違反には10万円以下の過料)。
(出典: 東洋経済オンライン)
不動産事務のやりがいと大変さ
(1) やりがい(顧客の人生の大きな決断をサポート、専門知識が身につく)
やりがいを感じる場面:
- 顧客の人生の大きな決断(住宅購入・売却・賃貸)をサポートできる
- 「ありがとう」と感謝される瞬間
- 宅建士等の資格を取得し、専門知識が身につく
- 契約が無事に完了した時の達成感
不動産取引は、顧客にとって人生の大きなイベントです。そのサポートができることは、大きなやりがいにつながります。
(2) 大変さ(高額商品のため間違いが許されない、幅広い法律知識が必要)
大変だと感じる場面:
- 高額商品のため、書類作成や契約手続きで間違いが許されない
- 一つのミスが重大なトラブルにつながるプレッシャー
- 幅広い法律知識が必要で、頻繁に更新される
- 繁忙期(2-3月、9-10月)は業務量が増加
(出典: 宅建JOB)
(3) クレーム対応の難しさ
不動産取引は高額で複雑なため、顧客から厳しい意見をいただく場合もあります。
クレーム対応のポイント:
- 顧客の不満を丁寧に聞き取る
- 事実確認を正確に行う
- 営業担当者や上司と連携して対応
クレーム対応は精神的に負担が大きいですが、適切に対応することで顧客の信頼を回復できる場合もあります。
不動産事務に向いている人の特徴
(1) 臨機応変な対応力がある人
不動産事務では、突発的な業務や顧客からの急な問い合わせが発生します。
必要な対応力:
- 優先順位をつけて業務を進める
- 複数の業務を並行して処理
- 想定外の事態にも冷静に対応
(出典: STEP)
(2) コミュニケーション能力が高い人
コミュニケーションが必要な場面:
- 顧客との電話応対・来店対応
- 営業担当者との情報共有
- 他部署(経理・管理部門等)との連携
円滑なコミュニケーションが、業務をスムーズに進める鍵となります。
(3) 正確性と速さを兼ね備えた人
不動産取引は高額で複雑なため、正確性が求められます。一方で、顧客を待たせないよう、迅速な対応も必要です。
求められるバランス:
- 書類作成では正確性を最優先
- 顧客対応では迅速さも重視
- ミスを防ぐためのダブルチェック体制
(4) 継続的な学習意欲がある人
不動産関連の法律は頻繁に改正されるため、継続的な学習が必要です。
学習すべき内容:
- 法改正の情報(相続登記義務化、税制改正等)
- 最新の不動産市場動向
- 新しいITツール・システムの使い方
宅建士の資格取得を目指すなど、学習意欲がある人が成長しやすい職種です。
不動産事務のキャリアパスと転職のポイント
(1) 未経験からの転職可能性(業界は人材需要が高い)
不動産事務は、未経験でも挑戦しやすい職種です。
未経験歓迎の理由:
- 業界全体で人材需要が高い
- 仕事への姿勢やコミュニケーション能力が、経験より重視される傾向
- 入社後の研修制度が充実している企業が多い
ただし、ワード・エクセルの基本操作スキルは必須です。また、宅建士資格の取得を目指す意欲があると、評価されやすくなります。
(出典: 不動産人材)
(2) 給与水準(平均年収428万円、初任給約22万円)
不動産事務の給与水準:
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 平均年収 | 428万円(月収約36万円) |
| 初任給 | 約22万円 |
| 平均時給 | 1,178円 |
| 宅建士資格保有者 | 月給30万円以上も可能 |
一般事務の平均年収は約350万円のため、不動産事務は若干高めの傾向です。
(出典: 給与バンク)
ただし、企業規模・地域・経験により差があるため、応募前に求人票で確認することを推奨します。
(3) ワークライフバランス(年間休日120日以上の企業が増加)
近年、不動産業界でも働き方改革が進んでいます。
改善傾向:
- 年間休日120日以上を導入する企業が増加
- 残業時間の削減(月10~20時間程度の企業も)
- 週休2日制の徹底
2024年4月からは建設業界に働き方改革が適用され(残業時間の制限:月45時間、年360時間)、不動産業界にも影響が及んでいます。
(出典: 東洋経済オンライン)
(4) キャリアアップの道(営業職へのステップアップ、管理職への昇進)
不動産事務からのキャリアパスには、以下の選択肢があります。
キャリアの選択肢:
- 営業職へのステップアップ: 事務で培った知識を活かし、営業担当者に転身
- 管理職への昇進: 事務部門のリーダー・マネージャーに昇進
- 専門職への転身: 宅建士資格を活かし、重要事項説明専任者に
- 他社への転職: より大手企業や専門性の高い企業への転職
宅建士資格を取得すると、キャリアの選択肢が広がります。
まとめ:不動産事務の仕事内容とキャリアパス
不動産事務は、営業活動をサポートする事務職で、顧客対応・物件管理・書類作成・経理業務の4つが主な業務です。未経験でも挑戦しやすく、人材需要が高い職種です。
ワード・エクセルの基本操作スキルは必須ですが、宅建士資格を取得すると月2~3万円の資格手当が支給され、キャリアアップにつながります。平均年収は428万円(月収約36万円)で、一般事務より若干高めの傾向です。
高額商品を扱うため書類作成で間違いが許されないプレッシャーがある一方、顧客の人生の大きな決断をサポートできるやりがいもあります。臨機応変な対応力、コミュニケーション能力、正確性と速さを兼ね備えた人が向いています。
2025年時点の情報であるため、最新の求人情報や法改正については、公式サイトや専門家に確認してください。転職を検討する際は、企業の研修制度や資格取得支援制度を確認し、面接で実際の業務内容やワークライフバランスを確認することを推奨します。
