不動産営業という職業:高収入とやりがいの実態
「不動産営業ってどんな仕事なのか」「年収はどのくらいか」「未経験でもなれるのか」と疑問に感じている方は多いのではないでしょうか。
この記事では、不動産営業の仕事内容、年収相場、キャリアパス、向き不向きを、厚生労働省jobtagの統計データと業界の実態をもとに解説します。
転職・就職を検討している方が、現実的な判断をするための情報を提供します。
この記事のポイント
- 不動産営業は販売営業・賃貸仲介営業・売買仲介営業の3種類に大別される
- 平均年収は約444〜580万円(基本給+インセンティブ制)で、成果次第で1,000万円以上も可能
- 高いノルマ、土日祝出勤、収入の不安定さが「きつい」理由だが、やりがいも大きい
- 未経験歓迎の求人が多く、宅地建物取引士(宅建士)資格取得が推奨される
- キャリアパスは営業→店長→支店長、独立、異業種転職(保険金融、IT、人材等)が主流
不動産営業の仕事内容:3つの職種
不動産営業は、大きく分けて以下の3つの職種があります。
(1) 販売営業(自社物件の販売)
仕事内容:
- 自社やグループ会社が所有する不動産(新築マンション、建売住宅等)を個人顧客に販売
- 物件説明、購入相談、契約手続き、住宅ローン手続きのサポート
- モデルルームでの接客、現地案内
特徴:
- 自社物件のため商品知識を深く習得できる
- 契約単価が高く、インセンティブも高額
- 新築物件の場合、顧客の期待値も高い
(2) 賃貸仲介営業(オーナーと借主の仲介)
仕事内容:
- 賃貸物件のオーナーと借主を仲介し、契約を成立させる
- 物件紹介、内覧案内、契約手続き、鍵の引き渡し
- オーナーからの物件情報収集、借主からの希望条件ヒアリング
特徴:
- 契約単価は低いが、成約までの期間が短い(1-2週間)
- 繁忙期(1-3月)は契約数が増加し、高収入を得られる
- 若手が経験を積むために配属されることが多い
(3) 売買仲介営業(個人・企業の不動産売買仲介)
仕事内容:
- 個人・企業が所有する不動産の売買を仲介
- 売主からの物件査定、買主からの物件探し、契約手続き
- 価格交渉、住宅ローン手続きのサポート
特徴:
- 契約単価が高く、仲介手数料(売買価格の3%+6万円+税)が収益源
- 成約までの期間が長い(3-6ヶ月)が、インセンティブも高額
- 経験とスキルが求められる職種
年収相場と報酬体系:基本給+インセンティブの仕組み
(1) 平均年収は約444〜580万円
不動産営業の平均年収は、情報源により差がありますが、以下のデータが参考になります。
| 情報源 | 平均年収 |
|---|---|
| 厚生労働省jobtag(2024年) | 約580万円 |
| 国税庁(2023年度統計) | 約469万円(不動産業界全体) |
| 求人サイト(doda等) | 約444万円 |
平均年収は500万円前後と考えられますが、成果次第で大きく変動します。
(2) 基本給+インセンティブ制の報酬体系
不動産営業の報酬体系は、**基本給+インセンティブ(歩合給)**が一般的です。
報酬体系の例:
| 項目 | 金額例 |
|---|---|
| 基本給 | 月20-30万円 |
| インセンティブ | 契約金額の0.5-3% |
| 賞与 | 年2回(基本給ベース) |
インセンティブの計算例:
- 3,000万円の物件を1件契約した場合
- インセンティブ率1%とすると:3,000万円 × 1% = 30万円
- 月に2件契約できれば:30万円 × 2件 = 60万円
基本給に加え、契約実績に応じた歩合給が支払われるため、成果を出せば高収入が得られます。
(3) 成果次第で年収1,000万円〜2,000万円以上も可能
高収入を得ている営業の例:
- 年収1,000万円:月平均2-3件の契約(売買仲介)
- 年収1,500万円:月平均3-4件の契約
- 年収2,000万円以上:月平均4-5件以上の契約、または高額物件の成約
トップセールスは年収3,000万円以上を得ているケースもあります。
(4) 他業界との年収比較
| 業界 | 平均年収 |
|---|---|
| 不動産営業 | 約580万円 |
| IT営業 | 約550万円 |
| 金融営業 | 約600万円 |
| 製造業営業 | 約500万円 |
不動産営業は、他業界と比べて平均的な水準ですが、インセンティブで高収入を得られる可能性が高い点が特徴です。
不動産営業がきつい6つの理由と対処法
(1) 高いノルマと未達時のプレッシャー
きつい理由:
- 月次・四半期ごとに高いノルマが設定される
- 未達時は上司からの厳しい叱責がある企業も存在
- ノルマ達成のプレッシャーが常にかかる
対処法:
- ノルマが現実的に設定されている企業を選ぶ
- 固定給が十分に確保されている企業を選ぶ
- 自己管理と計画的な営業活動でノルマを達成
(2) 土日祝出勤と不規則な勤務時間
きつい理由:
- 顧客の都合に合わせて土日祝・夜間の対応が必要
- 火曜・水曜休みが主流で、友人と予定が合わせにくい
- 家族との時間が取りにくい
対処法:
- 休日の過ごし方を工夫し、平日の閑散時間を有効活用
- 家族と事前にスケジュールを共有
- 完全週休2日制(土日祝休み)の企業を選ぶ(一部企業で導入)
(3) 低い成約率と精神的ストレス
きつい理由:
- 高額商品のため顧客の検討期間が長く、最終的に購入を見送られるケースも多い
- テレアポ・飛び込み営業で断られることが多く、精神的に疲弊しやすい
- 成約までに数ヶ月かかり、その間の労力が報われないこともある
対処法:
- 顧客のニーズを丁寧にヒアリングし、信頼関係を構築
- 成約率を上げるための営業スキルを磨く
- ストレス発散の方法を見つける(運動、趣味等)
(4) 収入の不安定さ
きつい理由:
- 契約が取れた月は高収入だが、取れない月は固定給のみ
- 収入が読めず、生活設計が立てにくい
対処法:
- 固定給が十分に設定されている企業を選ぶ
- 契約件数を安定させるための計画的な営業活動
- 貯蓄を厚めにして収入変動に備える
(5) 法改正への対応と継続的な学習
きつい理由:
- 法律・税金・建築・経済など幅広い知識が求められる
- 法改正に伴う業務変更・契約内容の修正が頻繁に発生
- 常に知識のアップデートが必要
対処法:
- 宅地建物取引士(宅建士)資格を取得し、専門知識を体系的に習得
- 業界セミナー・研修に参加し、最新情報をキャッチアップ
- 継続的な自己研鑽を習慣化
(6) テレアポ・飛び込み営業の精神的負担
きつい理由:
- テレアポ・飛び込み営業が主流の手法
- 断られることが多く、精神的に疲弊しやすい
- 1日数十件の電話・訪問が必要な企業もある
対処法:
- 反響営業(問い合わせ対応)中心の企業を選ぶ
- テレアポ・飛び込みを前向きに捉え、経験値として蓄積
- メンタルヘルスケアに注意
向いている人の特徴とキャリアパス
(1) 向いている人の特徴(コミュニケーション力、ヒアリング力、柔軟性、学習意欲)
不動産営業に向いている人の特徴は以下の通りです。
| 特徴 | 詳細 |
|---|---|
| コミュニケーション力 | 初対面の顧客と信頼関係を構築できる |
| ヒアリング力 | 顧客のニーズを正確に把握し、最適な提案ができる |
| 柔軟な対応力 | 土日祝・夜間の不規則な勤務に対応できる |
| 継続的な学習意欲 | 法律・税金・建築等の専門知識を常にアップデートできる |
| 精神的タフネス | ノルマのプレッシャーや契約不成立のストレスに耐えられる |
(2) 必要な資格(宅地建物取引士)
宅地建物取引士(宅建士):
- 不動産取引の専門家資格
- 重要事項説明は宅建士のみ実施可能
- 資格保有者は転職・キャリアアップに有利
宅建士試験:
- 合格率:約15-17%
- 年1回実施(10月)
- 独学でも合格可能(学習期間3-6ヶ月)
多くの企業が入社後の宅建士資格取得をサポートしており、合格すると資格手当(月1-3万円)が支給される場合もあります。
(3) キャリアパス(営業→店長→支店長、独立、異業種転職)
不動産営業のキャリアパスは以下の通りです。
| キャリア | 内容 |
|---|---|
| 営業(1-3年) | 現場で経験を積み、営業スキルを磨く |
| 店長(3-5年) | 店舗のマネジメント、部下の育成 |
| 支店長・エリアマネージャー(5-10年) | 複数店舗の統括、経営戦略の立案 |
| 独立・起業 | 不動産仲介会社を設立 |
| 異業種転職 | 保険金融、IT、人材、自動車販売等 |
(4) 不動産営業から転職できる業界(保険金融、IT、人材等)
不動産営業で培ったスキル(コミュニケーション力、マネジメント力、専門知識)は、他業界でも高く評価されます。
転職先候補:
| 業界 | 理由 |
|---|---|
| 同業他社 | 経験を活かし、条件の良い企業へ |
| 保険金融 | 高額商品の営業経験が活きる |
| IT | 法人営業・SaaS営業で営業スキルが活きる |
| 人材 | 人材紹介・人材派遣でコミュニケーション力が活きる |
| 自動車販売 | 高額商品の営業経験が活きる |
2024年現在、不動産営業からの転職市場は活発で、専門性を活かしたキャリアチェンジが増加しています。
まとめ:不動産営業への転職を成功させるポイント
不動産営業は、高いノルマや不規則な勤務時間など「きつい」面もありますが、成果次第で高収入を得られ、やりがいも大きい職業です。未経験歓迎の求人が多く、宅地建物取引士資格を取得すればキャリアアップにも有利です。
転職を成功させるポイント:
- 企業選びが最重要:ノルマが現実的、固定給が十分、ワークライフバランスが取れる企業を選ぶ
- 宅地建物取引士資格の取得:入社後に資格取得をサポートする企業を選び、早期に取得
- 営業スキルの習得:コミュニケーション力、ヒアリング力、顧客フォロー力を磨く
- 企業の評判・口コミを確認:転職サイト・口コミサイトで実態を把握
- 複数の企業を比較:面接で勤務条件・報酬体系を詳しく確認
- 転職エージェントの活用:専門家のアドバイスを受けながら転職活動
信頼できる転職エージェントや宅地建物取引士などの専門家に相談しながら、自分に合った企業を選びましょう。
