リースバックが注目される背景と老後資金の課題
住宅ローンの返済や老後資金の確保に悩む方の間で、「リースバック」という選択肢が注目されています。自宅を売却しながら同じ家に住み続けられる仕組みとして、資金ニーズに応える方法の一つです。
この記事では、リースバックの仕組み、メリット・デメリット、注意点について、国土交通省のガイドブックや不動産会社の情報を元に解説します。
この記事のポイント
- リースバックは自宅を売却して現金化しながら、同じ家に賃貸として住み続けられる仕組み
- 売却価格は市場価格の7〜8割程度が一般的、買戻し価格は売却価格の1.1〜1.3倍
- 定期借家契約の場合は更新できないリスクがあるため、契約形態の確認が重要
- 複数社の見積もり比較で数百万円の差が出る可能性がある
リースバックの仕組みと基本用語
リースバックとは、自宅を不動産会社等に売却して一括で現金を受け取りながら、同じ家に賃貸として住み続けられる仕組みです。正式には「セール&リースバック」と呼ばれます。
リースバックの基本的な流れ
リースバックでは、以下の2つの契約を同時に締結します。
| 契約 | 内容 |
|---|---|
| 不動産売買契約 | 自宅を不動産会社等に売却し、現金を受け取る |
| 賃貸借契約 | 売却した家を借りて、毎月家賃を支払う |
売却代金は一括で受け取れるため、住宅ローンの返済、老後資金の確保、事業資金など、まとまった資金が必要な場面で活用されています。
リバースモーゲージとの違い
リースバックと混同されやすいのが「リバースモーゲージ」です。両者の違いは以下の通りです。
| 項目 | リースバック | リバースモーゲージ |
|---|---|---|
| 仕組み | 自宅を売却して現金化 | 自宅を担保に融資を受ける |
| 所有権 | 買主に移転する | 本人が維持 |
| 資金調達 | 売却代金(一括) | 融資(年金形式等) |
| 返済 | 毎月の家賃 | 死亡時に自宅を売却して返済 |
リースバックは所有権が移転するため、固定資産税や管理費の負担がなくなります。一方、リバースモーゲージは所有権を維持したまま資金調達できる点が特徴です。
定期借家契約と普通借家契約の違い
リースバック後の賃貸借契約には、「定期借家契約」と「普通借家契約」の2種類があります。
- 定期借家契約: 契約期間が満了すると更新されない契約。リースバック事業者が再契約に同意しなければ、退去を余儀なくされる可能性がある
- 普通借家契約: 借主が希望すれば原則として更新できる契約。長期居住を希望する場合はこちらが安心
契約前に、どちらの契約形態かを必ず確認してください。
リースバックのメリット・デメリット
リースバックには明確なメリットとデメリットがあります。両方を理解した上で判断することが重要です。
メリット:即金化・住み続けられる・維持費削減・買戻し可能
リースバックの主なメリットは以下の通りです。
- まとまった現金を迅速に受け取れる: 売却代金を一括で受け取れるため、住宅ローン返済や老後資金に活用可能
- 同じ家に住み続けられる: 引っ越しが不要で、近隣との関係や生活環境を維持できる
- 維持費の負担がなくなる: 固定資産税、管理費、火災保険等の維持費が不要になり、毎月一定の家賃にまとまる
- 買戻しの可能性がある: 契約内容によっては、将来自宅を買い戻すことも可能
デメリット:売却価格が市場価格より低い・家賃負担・改装制限
一方、以下のデメリットにも注意が必要です。
| デメリット | 内容 |
|---|---|
| 売却価格が低い | 市場価格の7〜8割程度(物件状況により40〜50%のケースも) |
| 家賃負担 | 周辺相場より高い場合が多い(売却価格に対する利回りを考慮) |
| 改装制限 | 賃貸のため、自由にリフォームできない |
| 買戻し価格が高い | 売却価格の1.1〜1.3倍が一般的 |
リースバックが向いている人・向いていない人
リースバックはすべての人に適した選択肢ではありません。向き・不向きを確認しましょう。
向いている人:老後資金確保・住宅ローン返済・事業資金
- 住宅ローンの返済が厳しく、売却を検討している方
- 老後資金を確保したいが、住み慣れた家から離れたくない方
- 事業資金や子どもの教育資金など、まとまった現金が必要な方
- 相続人がおらず、資産を現金化しておきたい方
向いていない人:長期居住希望・資産承継重視
- 長期間(10年以上)同じ家に住み続けたい方(定期借家契約の場合、更新できないリスクあり)
- 自宅を子どもに相続させたい方(所有権が移転するため相続不可)
- 売却価格が住宅ローン残債を下回る方(オーバーローン状態)
リースバックの注意点とトラブル回避策
リースバックに関する相談は国民生活センターでも増加傾向にあります。トラブルを回避するために、以下の点に注意してください。
クーリング・オフ不適用と違約金リスク
宅地建物取引業者への売却の場合、クーリング・オフは適用されません。契約後のキャンセルには違約金が発生するケースも多いため、契約前に十分な検討が必要です。
契約形態の確認(定期借家は更新不可の可能性)
定期借家契約の場合、契約期間満了後に更新の概念がありません。リースバック事業者が再契約に同意しなければ、退去を求められる可能性があります。
契約前に以下を確認してください。
- 賃貸借契約の種類(定期借家 or 普通借家)
- 契約期間と再契約の条件
- 家賃改定の条件
家賃引き上げリスクと複数社比較の重要性
家賃の引き上げ請求が来るケースも報告されています。長期的な資金計画を立てる際は、家賃改定条件を事前に確認してください。
また、複数社の見積もりを比較することで、売却価格に数百万円の差が出る可能性があります。1社だけで決めず、必ず複数社から査定を受けることを推奨します。
まとめ:リースバック利用の判断ポイント
リースバックは、自宅を売却しながら住み続けられる仕組みとして、住宅ローン返済や老後資金確保に活用できます。ただし、売却価格が市場価格より低くなる点、家賃負担が発生する点、定期借家契約では更新できないリスクがある点に注意が必要です。
利用を検討される際は、国土交通省のガイドブックを確認し、複数社の見積もりを比較した上で、不動産業者やファイナンシャルプランナー等の専門家に相談することを推奨します。


