不動産投資の営業電話が来る理由と実態
「なぜ自分に不動産投資の営業電話がかかってくるのか」「どうやって断ればいいのか」と困っている方は少なくありません。
この記事では、不動産投資の営業電話が来る理由、効果的な断り方、法的規制、悪質な勧誘の見分け方、相談窓口を解説します。「からかう」といった不適切な対応ではなく、適切に断る方法を知ることで、無駄な時間を使わず、トラブルを避けることができます。
この記事のポイント
- 営業電話は名簿業者から購入した個人情報を基にかけられている
- 明確に「興味がありません」と断ることが最も効果的
- 断った相手への再勧誘は宅地建物取引業法違反
- しつこい場合は「監督官庁に相談します」と伝えると効果的
- 契約してしまっても8日以内ならクーリングオフで解約可能
(1) なぜあなたに電話がかかるのか(名簿業者の仕組み)
不動産投資の営業電話がかかってくるのは、名簿業者から購入した個人情報を基にしているケースがほとんどです。
名簿業者とは:
- 個人情報(名前、住所、電話番号、勤務先、年収等)をリスト化して販売する業者
- 「ビジネスマンデータ」として、会社員の情報を販売
- 不動産会社はこのリストを購入し、営業電話をかける
個人情報の流出源としては、以下が考えられます。
流出経路:
- 会社の人事情報(転職サイト、名刺交換等)
- 不動産ポータルサイトへの問い合わせ
- アンケート回答、懸賞応募
- 過去の取引履歴(不動産・金融機関等)
一度リストに載ると、複数の業者に情報が流れ、営業電話が続く可能性があります。
(2) ターゲットにされやすい人の特徴
Navivaによると、不動産投資の営業電話は、以下のような人をターゲットにしています。
ターゲット層:
- 年収700万円以上の会社員: 住宅ローンが通りやすい
- 大企業勤務者: 安定した収入と信用力
- 公務員・教員・医師: 長期的に安定した職業
- 20-40代: 長期ローンを組める年齢層
国民生活センターへの相談件数は、2013年の160件から2019年に400件超に急増しており、特に20代のサラリーマンへの勧誘が増加しています。
(3) 営業電話の架電ノルマの実態
営業担当者も厳しい環境で働いています。
営業の実態:
- 1日300件の架電ノルマ: 会社によっては1日に300件電話をかけるノルマがある
- 成約率は極めて低い: 300件かけても1-2件しかアポが取れない
- 話を聞いてもらえることは稀: ほとんどが即座に断られる
この実態を理解すると、営業担当者も「仕事でやっている」ことがわかります。ただし、違法な勧誘は別問題であり、適切に対処する必要があります。
効果的な断り方と撃退法
しつこい営業電話を止めるには、明確に断ることが最も重要です。
(1) 明確に断る(「興味がありません」)
最も効果的なのは、明確に拒否の意思を伝えることです。
効果的な断り方:
- 「不動産投資には興味がありません」
- 「今後も予定はありません」
- 「二度と電話をかけてこないでください」
ポイントは、曖昧さを残さないことです。「今は忙しい」「また今度」といった返答は、「将来的には可能性がある」と受け取られ、再度電話がかかる原因になります。
さらに効果的な対応:
- 「監督官庁に相談します」と伝える
- 「宅地建物取引業法違反ですよね」と指摘する
- 会社名、担当者名、電話番号を聞く
不動産投資TOKYOリスタイルによると、「関係団体に通報します」と伝えると、即座に電話を切るケースが多いとされています。
(2) やってはいけない対応(曖昧な返答・からかう)
以下の対応は逆効果です。
やってはいけないこと:
- 曖昧な返答: 「今は忙しい」「また今度」→ 再度電話がかかる
- 話を聞く姿勢: 少しでも興味を示すと「見込み客」と判断される
- 個人情報を伝える: さらに多くの業者に情報が流れる
- 相手をからかう: 時間の浪費であり、相手を怒らせる可能性がある
- ガチャ切り(突然切る): 嫌がらせの原因になる場合がある
「からかう」目的で対応するのは推奨されません。時間を浪費するだけでなく、相手を挑発すると予期しないトラブルに発展する可能性もあります。
(3) 「監督官庁に相談します」の効果
しつこい場合は、法的措置を示唆する発言が効果的です。
効果的なフレーズ:
- 「監督官庁に相談します」
- 「消費生活センターに通報します」
- 「宅地建物取引業法違反ですよね」
宅建Jobマガジンによると、監督官庁への相談を明言すると、違法行為が発覚することを恐れて即座に電話を切る業者が多いとされています。
しつこい勧誘は違法?宅建業法の規制
不動産の営業電話には法的な規制があり、違反すると行政処分の対象になります。
(1) 再勧誘の禁止規定
宅地建物取引業法では、一度断った相手への再勧誘を禁止しています。
宅地建物取引業法第47条の2:
- 相手方が契約を締結しない旨の意思を表示したときは、その契約の締結について勧誘を継続してはならない
- 違反すると業務停止などの行政処分の対象
一度「興味がありません」と明確に断った後に再び電話がかかってきた場合、それは宅地建物取引業法違反です。
(2) 夜間・勤務先への勧誘禁止
以下の勧誘も禁止されています。
禁止される勧誘行為:
- 夜間の勧誘: 午後9時から午前8時までの勧誘
- 勤務先への勧誘: 職場への執拗な営業電話
- 長時間の勧誘: 相手が迷惑と感じる長時間の拘束
- 威迫・困惑させる行為: 脅しや強引な勧誘
これらも宅地建物取引業法違反です。
(3) 違反した場合の行政処分
違反した業者には、以下の行政処分が科されます。
行政処分:
- 指示処分: 違反行為の是正を指示
- 業務停止: 一定期間(1ヶ月〜1年)の営業停止
- 免許取消: 重大・悪質な違反の場合、宅建業免許を取り消し
違反行為を見つけたら、免許行政庁(国土交通省または都道府県)に通報することができます。
悪質な勧誘の見分け方と対処法
すべての営業電話が悪質というわけではありませんが、以下のパターンには注意が必要です。
(1) 悪質な勧誘の典型パターン
悪質な勧誘の特徴:
- 会社名・担当者名を明かさない: 架空の会社名を名乗る
- メリットのみ強調: リスクを隠し、「必ず儲かる」などと断定
- 即決を迫る: 「今日中に契約しないと」などと焦らせる
- 個人情報を聞き出す: 年収、勤務先、家族構成などを詳しく聞く
- 強引な訪問: 電話の後、自宅や職場に突然訪問する
東京都住宅政策本部が注意喚起しているように、詐欺まがいの手口も存在します。
(2) 会社名・担当者名・電話番号の記録
悪質な勧誘に対しては、情報を記録しましょう。
記録すべき情報:
- 会社名(正式名称)
- 担当者名(フルネーム)
- 電話番号(発信元の番号)
- 日時
- 会話の内容(「興味がないと断った」等)
この情報は、後で消費生活センターや免許行政庁に通報する際に役立ちます。
(3) もし契約してしまったら(クーリングオフ)
万が一、強引な勧誘で契約してしまった場合でも、クーリングオフで契約を解除できます。
クーリングオフ制度:
- 期間: 説明を受けた日から8日以内
- 条件: 無条件で契約解除可能
- 方法: 書面(内容証明郵便推奨)で通知
アットホームによると、クーリングオフは「説明を受けた日」から起算するため、契約書にサインした日ではないことに注意が必要です。
相談窓口と法的対処の方法
しつこい勧誘や悪質な営業に対しては、専門機関に相談できます。
(1) 消費生活センターへの相談
消費生活センター(消費者ホットライン: 188):
- 全国の自治体に設置された消費者トラブルの相談窓口
- 無料で相談可能
- 専門の相談員がアドバイス
相談できること:
- しつこい勧誘への対処法
- クーリングオフの手続き
- 悪質な勧誘の通報
電話番号「188」(いやや)に電話すると、最寄りの消費生活センターにつながります。
(2) 免許行政庁への通報方法
宅地建物取引業法違反の疑いがある場合、免許行政庁に通報できます。
国土交通省(国土交通大臣免許の場合):
- 複数都道府県に営業所がある業者
- 国土交通省 不動産・建設経済局 不動産業課
都道府県(都道府県知事免許の場合):
- 単一都道府県内のみで営業する業者
- 各都道府県の宅建業担当課
通報の際は、記録した会社名、担当者名、電話番号、違反内容を伝えます。
(3) 弁護士への相談が必要なケース
以下の場合は、弁護士への相談を検討してください。
弁護士相談が必要なケース:
- 契約を解除したいが業者が応じない
- 脅迫や威迫を受けた
- 金銭トラブルが発生した
- クーリングオフ期間を過ぎてしまった
弁護士会の法律相談(有料・無料の場合あり)や、法テラス(日本司法支援センター)の無料法律相談を利用できます。
まとめ:営業電話への正しい対応
不動産投資の営業電話は、名簿業者から購入した個人情報を基にかけられています。明確に「興味がありません」「二度と電話しないでください」と断ることが最も効果的です。
断った後も電話がかかってくる場合、それは宅地建物取引業法違反です。「監督官庁に相談します」と伝えると、即座に止むケースが多いです。
もし契約してしまっても、説明を受けた日から8日以内であればクーリングオフで無条件に解約できます。消費生活センター(188)に相談すれば、専門の相談員がサポートしてくれます。
「からかう」といった不適切な対応ではなく、適切に断る方法を知ることで、無駄な時間を使わず、トラブルを避けることができます。悪質な勧誘に遭った場合は、記録を取り、免許行政庁や消費生活センターに相談しましょう。
