不動産情報ライブラリとは:国土交通省の公式情報サイト
不動産の購入や売却を検討する際、「適正な価格相場が分からない」「どのデータを信頼すればいいか迷う」と感じる方は多いのではないでしょうか。
不動産情報ライブラリは、国土交通省が2024年4月1日に運用を開始した無料の不動産総合情報サイトです。価格情報、防災情報、都市計画情報など、不動産取引に必要な公的データを地図上で一括表示できます。この記事では、不動産情報ライブラリの特徴、提供データ、活用方法を、国土交通省の公式情報を元に解説します。
信頼できるデータを活用し、適切な意思決定ができるようになります。
この記事のポイント
- 不動産情報ライブラリは国土交通省が2024年4月1日に公開した無料の不動産総合情報サイト
- 約547万件(2025年3月31日時点)の不動産取引価格情報を提供
- 価格情報、防災情報、都市計画情報などを地図上で重ね合わせて一括表示可能
- レインズ(業者専用)と異なり一般公開用のため、情報の詳細度に差がある点に注意
(1) 2024年4月1日運用開始の背景
国土交通省のプレスリリースによると、不動産情報ライブラリは「情報の非対称性と不透明性を解消し、円滑な不動産取引を促進する」目的で開発されました。
スマートフォン・タブレット・PCから誰でも無料でアクセスでき、特別なソフトウェアは不要です。
(2) 土地総合情報システムからの移行
従来の「土地総合情報システム」は2024年3月末で廃止され、4月から不動産情報ライブラリに移行しました。主な機能強化ポイントは以下の通りです。
| 項目 | 土地総合情報システム | 不動産情報ライブラリ |
|---|---|---|
| 情報の表示方法 | 個別表示 | 複数情報を地図上で一括表示 |
| API提供 | なし | 無償提供(申請が必要) |
| スマートフォン対応 | 限定的 | 完全対応 |
(出典: 国土交通省)
提供される不動産データの種類
不動産情報ライブラリでは、以下のデータを提供しています。
(1) 価格情報(地価公示・不動産取引価格・成約価格)
地価公示:
- 毎年1月1日時点の標準地の正常な価格を国土交通省が公示
- 土地取引の指標として活用
不動産取引価格情報:
- 約547万件(2025年3月31日時点)の実際の取引価格データ
- 所在地(町・大字レベル)、取引時期、取引価格(有効数字2桁)、土地面積・形状、建物用途・構造、床面積、建築年、前面道路、最寄駅、用途地域、建ぺい率、容積率等を提供
(出典: 国土交通省 不動産取引価格情報提供制度)
成約価格情報:
- レインズ(不動産流通標準情報システム)のデータを一般公開用に加工
(2) 防災情報(洪水浸水想定・土砂災害・津波・液状化リスク)
以下のハザードマップ情報を地図上で確認できます。
- 洪水浸水想定
- 土砂災害警戒区域
- 津波浸水想定
- 液状化リスク
物件の立地リスクを事前に把握できるため、購入検討時の重要な判断材料になります。
(3) 都市計画情報(建ぺい率・容積率)
都市計画法に基づく以下の情報を提供しています。
- 用途地域
- 建ぺい率
- 容積率
建物の建築可能範囲や用途制限を確認できるため、土地購入や建て替え検討時に活用できます。
(4) その他(周辺施設・人口・地形情報)
- 周辺施設: 学校、医療機関の位置
- 人口情報: 国勢調査データ
- 地形情報: 陰影起伏図、土地条件図、大規模盛土造成地マップ
(出典: 地理空間情報:不動産情報ライブラリとは - 国土交通省)
不動産情報ライブラリの活用方法
(1) 価格相場の調査(購入・売却時)
不動産取引価格情報で、周辺の取引事例(価格・面積・築年等)を確認できます。
検索手順:
- 不動産情報ライブラリにアクセス
- 「不動産取引価格情報」「成約情報」にチェック
- 地図上で希望エリアを選択
- 詳細表示で取引事例を確認
(出典: ホームズ)
(2) 防災リスクの確認(ハザードマップとの重ね合わせ)
価格情報と防災情報を地図上で重ね合わせることで、「相場は安いが洪水リスクが高い」などの立地特性を把握できます。
購入前に防災リスクを確認することで、安全な立地選びが可能になります。
(3) API活用による独自サービス開発(LIFULL社の事例)
不動産情報ライブラリはAPIを無償で提供しており(申請が必要)、不動産業者やテック企業が独自サービスを開発できます。
活用事例:
- 全日本不動産協会によると、LIFULL社が2024年4月5日に生成AIを活用した不動産情報分析ツールを試作し、住所入力で周辺施設・価格情報を解説するGPTsを公開
- 不動産投資サイト「楽待」が2024年7月に不動産情報ライブラリのデータを活用し、取引価格情報の確認機能を追加
レインズや土地総合情報システムとの違い
(1) レインズ(不動産業者専用)との情報詳細度の差
レインズ(REINS:不動産流通標準情報システム)は不動産業者専用のシステムで、成約価格の詳細データを提供します。
| 項目 | 不動産情報ライブラリ | レインズ |
|---|---|---|
| 利用者 | 一般公開 | 不動産業者専用 |
| 所在地の精度 | 町・大字レベル | 番地まで |
| 価格の精度 | 有効数字2桁 | 正確な金額 |
レインズは業者専用のため、一般の方は不動産会社を通じて情報を確認する必要があります。
(2) 土地総合情報システム(廃止)からの機能強化ポイント
前述の通り、土地総合情報システムは2024年3月末で廃止され、不動産情報ライブラリに移行しました。主な機能強化は以下の通りです。
- 複数情報の地図上一括表示
- API提供による外部サービス連携
- スマートフォン対応の強化
活用時の注意点と制約
(1) 取引価格情報の精度(町・大字レベル、有効数字2桁)
国土交通省によると、取引価格情報は個人情報保護のため、以下の制約があります。
- 所在地: 町・大字レベルまで(番地は非公開)
- 価格: 有効数字2桁に丸められている
そのため、完全な精度ではなく、あくまで参考値として活用してください。
(2) アンケート調査ベースのため全件網羅されていない
不動産取引価格情報はアンケート調査に基づくため、全ての取引が網羅されているわけではありません。回答率は一定程度あるものの、一部の取引は含まれていない可能性があります。
(3) あくまで参考値、専門家への相談を推奨
価格情報はあくまで参考値であり、実際の取引では以下の専門家への相談を推奨します。
- 宅地建物取引士: 不動産取引の法律・実務
- 不動産鑑定士: 不動産の適正価格評価
- 税理士: 不動産取得税・譲渡所得税等の税務
まとめ:信頼できるデータで意思決定を
不動産情報ライブラリは、国土交通省が2024年4月1日に公開した無料の不動産総合情報サイトです。約547万件の不動産取引価格情報、防災情報、都市計画情報などを地図上で一括表示でき、不動産取引の意思決定に役立ちます。
取引価格情報は個人情報保護のため精度に制約があり、アンケート調査ベースのため全件網羅されていない点に注意してください。あくまで参考値として活用し、実際の取引では宅地建物取引士や不動産鑑定士などの専門家に相談することを推奨します。
不動産情報ライブラリを活用し、信頼できるデータに基づいた不動産取引を進めましょう。
