国土交通省の土地総合情報システム(不動産情報ライブラリ)とは
不動産の売買を検討する際、「この価格は適正なのか」「周辺の相場はどうなっているのか」と不安に感じることは少なくありません。
この記事では、国土交通省が提供する「土地総合情報システム(2024年4月から不動産情報ライブラリ)」の使い方、得られる情報、活用時の注意点を解説します。国土交通省の公式データを元にした実際の取引価格情報を確認できるため、不動産相場の目安を把握できるようになります。
この記事のポイント
- 土地総合情報システムは2024年4月から「不動産情報ライブラリ」に名称変更され、約547万件の取引価格情報を無料で閲覧可能
- 誰でも会員登録不要で利用でき、時期・種類・地域を選択するだけで実際の取引価格を検索できる
- アンケート調査ベースのため全件ではなく、回収率は3割前後である点に注意
- レインズは不動産業者のみアクセス可能だが、不動産情報ライブラリは一般公開されている
- 取引価格は個別条件により大きく異なるため、あくまで参考情報として活用し、専門家への相談を推奨
1. 国土交通省の土地総合情報システム(不動産情報ライブラリ)とは
(1) 不動産取引価格情報提供制度の概要
土地総合情報システムは、国土交通省が2006年4月から運用している不動産取引価格情報の提供サイトです。不動産の取引当事者へのアンケート調査に基づき、実際の取引価格情報を収集・公開しています。
2025年3月31日時点で約547万件の取引価格情報が蓄積されており、国の公的データベースとして信頼性の高い情報源となっています。
(2) 2024年4月から「不動産情報ライブラリ」に名称変更
2024年4月1日から、土地総合情報システムは「不動産情報ライブラリ」に名称変更されました。国土交通省の報道資料によると、従来の取引価格情報に加えて、災害マップ・都市計画情報・周辺施設情報などを統合的に閲覧できるようになり、スマートフォン対応も強化されています。
(3) 無料で誰でも利用可能(会員登録不要)
不動産情報ライブラリは、特別なアプリのダウンロードや会員登録は一切不要で、誰でも完全無料で利用できます。パソコンでもスマートフォンでも同じ画面構成で利用できるため、外出先でも手軽に不動産の相場を確認できます。
2. 土地総合情報システムで得られる情報
(1) 不動産取引価格情報(約547万件)
最も中心的な機能は、実際に行われた不動産取引の価格情報の閲覧です。以下の項目を確認できます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 取引価格 | 実際の売買価格 |
| 取引時期 | 取引が行われた時期(四半期単位) |
| 面積 | 土地面積・建物面積 |
| 建物の構造 | 木造・鉄骨造・RC造など |
| 用途 | 住宅・事務所・店舗など |
| 建築年 | 建物の築年数 |
(出典: 国土交通省 不動産取引価格情報提供制度)
(2) 地価公示・都道府県地価調査
不動産情報ライブラリでは、取引価格情報以外に以下の公的データも閲覧できます。
- 地価公示: 国土交通省が毎年1月1日時点の標準地の価格を公示
- 都道府県地価調査: 都道府県が毎年7月1日時点の基準地の価格を調査・公表
これらのデータを組み合わせることで、より多角的に不動産の相場を把握できます。
(3) 災害マップ・都市計画情報・周辺施設情報
2024年4月のリニューアルにより、以下の情報も統合的に閲覧できるようになりました。
- 災害マップ: ハザードマップ情報(洪水・土砂災害など)
- 都市計画情報: 用途地域・建ぺい率・容積率など
- 周辺施設情報: 学校・病院・公共交通機関など
これにより、価格だけでなく、物件の立地条件やリスクも一元的に確認できるようになっています。
3. 不動産情報ライブラリの使い方:検索方法と手順
(1) 基本的な検索手順(時期→種類→地域の4ステップ)
不動産情報ライブラリの基本的な検索手順は以下の通りです。
- 時期を選ぶ: 検索したい取引時期(四半期単位)を選択
- 種類を選ぶ: 宅地・土地・マンション・戸建てなどの種類を選択
- 地域を選ぶ: 都道府県→市区町村の順に地域を選択
- 「この条件で検索」をクリック: 条件に該当する取引データが一覧表示される
シンプルな4ステップで、専門知識がなくても誰でも簡単に取引価格を検索できます。
(2) 地図表示と地域選択の2つの検索方法
不動産情報ライブラリには、以下の2つの検索方法があります。
- 地図表示: 地図上に表示された青い丸をクリックして、個別の取引情報を確認
- 地域選択: 都道府県・市区町村を選択して、該当地域の取引一覧を表示
地図表示では、周辺の取引状況を視覚的に把握しやすく、地域選択では一覧形式で効率的に情報を確認できます。
(3) スマートフォン対応の強化(2024年4月)
2024年4月のリニューアルにより、スマートフォンでの操作性が大幅に向上しました。外出先や不動産内覧の際にも、その場で取引価格を確認できるため、実務的な活用がしやすくなっています。
4. 不動産取引価格データの見方と活用ポイント
(1) 取引価格・面積・建物構造・築年数などの詳細確認
検索結果では、取引価格だけでなく、以下の詳細情報も確認できます。
- 面積: 土地面積・建物面積(㎡表示)
- 建物構造: 木造・鉄骨造・RC造など
- 用途: 住宅・事務所・店舗など
- 建築年: 築年数(取引時点)
- 取引時期: 取引が行われた四半期
これらの条件を総合的に見ることで、自分が検討している物件と類似した取引事例を見つけやすくなります。
(2) 地図上の青い丸をクリックして個別取引を確認
地図表示では、取引が行われた場所に青い丸が表示されます。この丸をクリックすることで、個別の取引情報を確認できます。
同じ地域でも、駅からの距離・道路付け・周辺環境などにより価格は大きく異なるため、複数の事例を比較することが重要です。
(3) レインズとの違い(一般公開 vs 不動産業者のみ)
不動産の価格情報を調べる際によく比較されるのが「レインズ(REINS)」です。両者の違いは以下の通りです。
| 項目 | 不動産情報ライブラリ | レインズ |
|---|---|---|
| 利用者 | 誰でも(一般公開) | 不動産業者のみ |
| 情報の種類 | 取引済みの価格情報 | 売り出し中の物件情報 |
| 会員登録 | 不要 | 必要(業者専用) |
不動産情報ライブラリは「実際に成約した価格」を確認できる点が最大の特徴です。一方、レインズは「現在売り出し中の物件」を確認できますが、一般の方はアクセスできません。
5. 土地総合情報システムの注意点と限界
(1) アンケート調査ベースのため全件ではない(回収率3割前後)
不動産情報ライブラリの取引価格情報は、取引当事者へのアンケート調査に基づいています。アンケートの回収率は3割前後と決して高くないため、全ての取引が掲載されているわけではありません。
そのため、データに偏りがある可能性があり、特に取引件数の少ない地域では参考事例が限られる場合があります。
(2) 取引価格は個別条件により大きく異なる
同じ地域・同じ物件種別でも、以下の条件により取引価格は大きく異なります。
- 駅からの距離・道路付け・日当たり
- 建物の構造・築年数・リフォーム状況
- 売却理由(急ぎの売却かどうか)
- 取引時期(市況の影響)
データベースに表示される価格はあくまで参考値であり、個別の物件の適正価格を判断するには、より詳細な条件を考慮する必要があります。
(3) あくまで参考情報として活用すべき
不動産情報ライブラリは、相場の目安を把握するための有用なツールですが、これだけで物件の適正価格を判断することは推奨されません。
実際の売買を検討する際には、不動産業者や宅地建物取引士などの専門家に相談し、物件の個別条件を踏まえた査定を依頼することが重要です。
6. まとめ:不動産相場を調べる際の活用方法
(1) 公的データで相場の目安を確認する
不動産情報ライブラリ(旧・土地総合情報システム)は、国土交通省が提供する公的データベースです。約547万件の取引価格情報を無料で閲覧でき、会員登録も不要なため、誰でも手軽に不動産の相場を確認できます。
2024年4月のリニューアルにより、災害マップや都市計画情報も統合的に閲覧できるようになり、物件の価格だけでなくリスクも一元的に把握できるようになりました。
(2) 複数の情報源を組み合わせる(ポータルサイト、不動産業者等)
不動産情報ライブラリのデータはアンケート調査ベースのため、全ての取引が掲載されているわけではありません。より正確な相場を把握するには、不動産ポータルサイトの売り出し価格や、複数の不動産業者からの査定結果を組み合わせることが推奨されます。
(3) 専門家(不動産業者、宅建士)への相談を推奨
取引価格は個別の条件により大きく異なるため、実際に不動産の売買を検討する際には、宅地建物取引士や不動産業者への相談を推奨します。物件の個別条件を踏まえた査定や、市場動向を考慮したアドバイスを受けることで、より適切な判断ができるようになります。
信頼できる専門家に相談しながら、公的データも活用して、納得のいく不動産取引を進めましょう。
