不動産経済研究所とは:新築マンション市場調査の権威
新築マンションの購入を検討する際、「今は買い時なのか」「市場価格は適正なのか」と悩んだことはありませんか?
この記事では、不動産経済研究所が発表するマンション市場動向データの見方、2024年の市場動向、購入・投資判断への活用方法を解説します。
市場全体の動向を把握することで、適切なタイミングでの購入判断ができるようになります。
この記事のポイント
- 不動産経済研究所は1964年創立の民間調査機関で、新築マンション市場調査の権威
- 毎月中旬に供給戸数・契約率・平均価格などのデータを公式サイトで無料公開
- 初月契約率70%以上が好調の目安、50%以下は市場が慎重な状態を示す
- 2024年首都圏は23,003戸で前年比14.4%減、1973年以降最低水準
- データは新築マンション市場に特化、中古市場・戸建て市場は対象外
(1) 1964年創立の民間調査機関
不動産経済研究所は、公式サイトによると、1964年に創立された民間の調査機関です。
新築マンション市場の動向調査を専門とし、60年以上にわたり市場データを蓄積してきました。
マンション市場の調査研究において、長年の実績と専門性を持つ信頼できる情報源です。
(2) 新築マンション市場調査の専門性と信頼性
不動産経済研究所は、新築マンション市場に特化した調査を行っています。
公式サイトによると、毎月中旬に前月のマンション供給戸数・契約率・平均価格などの調査結果を無料で公表しています。
首都圏・近畿圏の新築マンション市場の動向を定期的に発表しており、不動産市場分析の基礎データとして広く活用されています。
(3) 内閣府も参照する権威あるデータソース
内閣府の経済財政政策でも、不動産経済研究所の資料がリンクされています。
政府機関でも参照される権威ある調査機関であり、データの信頼性は高いと言えます。
(4) 日本不動産研究所との違い
「日本不動産研究所」と「不動産経済研究所」は、名称が似ているため混同されやすいですが、別組織です。
| 項目 | 不動産経済研究所 | 日本不動産研究所 |
|---|---|---|
| 法人格 | 民間調査機関 | 一般財団法人 |
| 創立年 | 1964年 | 1942年 |
| 専門分野 | 新築マンション市場調査 | 不動産鑑定評価・市場調査研究 |
| 調査対象 | 新築マンション市場 | 幅広い不動産市場 |
不動産経済研究所が発表する主要な調査データと見方
(1) 毎月公表されるマンション市場動向レポート
不動産経済研究所は、毎月中旬に前月のマンション市場動向レポートを公表しています。
主な調査項目は以下の通りです。
- 供給戸数: 販売開始されたマンション戸数
- 契約率: 販売開始されたマンション戸数のうち、契約に至った割合
- 平均価格・平米単価: マンションの平均販売価格と1平米あたりの価格
(2) 供給戸数とは何か
供給戸数とは、一定期間(通常は1か月または1年)に市場に供給された(販売開始された)マンション戸数のことです。
供給戸数が多いほど、市場が活況であることを示します。
逆に供給戸数が減少すると、デベロッパーが販売を控えているか、市場が慎重な状態にあることを意味します。
(3) 契約率の意味と好調ラインの目安
契約率は、販売開始されたマンション戸数のうち、実際に契約に至った割合です。
初月契約率(販売開始月に契約に至った割合)が重要な指標であり、70%以上が好調の目安とされています。
これは、販売開始月に7割以上が契約に至ったことを意味し、需要が強い状態を示します。
逆に50%を下回ると、市場は慎重な状態であると判断されます。
(4) 平均価格・平米単価の推移
平均価格は、販売されたマンションの平均販売価格です。
平米単価は、1平米あたりの価格であり、物件の広さに関わらず価格水準を比較できる指標です。
これらの推移を見ることで、市場のトレンド(価格上昇・下落)を把握できます。
(5) 首都圏・近畿圏の調査範囲
不動産経済研究所の調査は、主に以下のエリアを対象としています。
- 首都圏: 東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県の1都3県
- 近畿圏: 大阪府・兵庫県・京都府・奈良県・滋賀県・和歌山県の2府4県
地方都市のデータは限定的であり、全国すべてのエリアをカバーしているわけではありません。
マンション市場動向データの具体的な読み解き方
(1) 供給戸数から見る市場の活況度
供給戸数の推移を見ることで、市場の活況度を把握できます。
- 供給戸数が増加: 市場が活況、デベロッパーが積極的に販売
- 供給戸数が減少: 市場が慎重、デベロッパーが販売を控えている
日本経済新聞によると、2024年の全国新築マンション供給は59,467戸で前年比8.6%減、4年ぶりに6万戸を割り込みました。
これは、建築コスト上昇や金利上昇を背景に、デベロッパーが供給を控えたことを示しています。
(2) 契約率から読み取る需給バランス
契約率は、需給バランスを示す重要な指標です。
- 契約率70%以上: 需要が強く、供給が不足している状態
- 契約率50-70%: 需給がバランスしている状態
- 契約率50%以下: 供給過剰または需要が弱い状態
契約率が高いエリアは、人気が高く、今後も価格が維持される可能性があります。
(3) 平均価格・平米単価の推移から見る市場トレンド
平均価格・平米単価の推移を見ることで、市場の価格トレンドを把握できます。
- 価格が上昇: 需要が強い、供給が不足している
- 価格が横ばい: 需給がバランスしている
- 価格が下落: 需要が弱い、供給過剰
日本経済新聞によると、2024年の首都圏平均価格は7,820万円、平米単価は117.7万円(いずれも前年比減)でした。
価格が高止まりしていることが、契約率の低下につながっている可能性があります。
(4) エリア別データの比較方法
首都圏内でも、都心・郊外でデータは異なります。
公式サイトでは、都心3区(千代田区・中央区・港区)、東京23区、都下、神奈川県、埼玉県、千葉県など、エリア別のデータが公表されています。
自分が購入を検討しているエリアのデータを確認し、他エリアと比較することで、そのエリアの市場動向を把握できます。
2024年の新築マンション市場動向と今後の予測
(1) 2024年全国の供給実績:4年ぶりに6万戸割れ
2024年の全国新築マンション供給は59,467戸で、前年比8.6%減、4年ぶりに6万戸を割り込みました。
建築コスト上昇、金利上昇、販売価格の高騰により、デベロッパーが供給を控えたことが背景にあります。
(2) 2024年首都圏の動向:1973年以降最低水準
2024年の首都圏は23,003戸で、前年比14.4%減、1973年以降で最低水準となりました。
首都圏の供給減少は、価格高騰による需要の冷え込みが主な要因です。
(3) 平均価格7,820万円の背景
2024年の首都圏平均価格は7,820万円、平米単価は117.7万円(いずれも前年比減)でした。
価格が高止まりしていることで、一般消費者の購入意欲が低下し、契約率の低下につながっています。
(4) 2025年の供給予測と市場見通し
2025年の予測は、全国6.2万戸(前年比4.3%増)、首都圏2.6万戸(13.0%増)とされています。
供給が若干回復する見通しですが、価格水準や金利動向により、市場は引き続き慎重な状態が続く可能性があります。
データを購入・投資判断に活用する方法と注意点
(1) 購入タイミングの判断材料として活用
供給戸数や契約率のデータを見ることで、市場全体の動向を把握できます。
- 供給戸数が少なく、契約率が高い: 市場が過熱している可能性、購入を急ぐ必要がある
- 供給戸数が多く、契約率が低い: 市場が慎重、じっくり選べる状態
ただし、データはあくまで市場全体の傾向を示すものであり、個別物件の判断には専門家への相談が必要です。
(2) 投資エリアの選定に役立てる方法
エリア別データを比較することで、投資エリアの選定に役立てることができます。
契約率が高いエリアは、需要が強く、今後も賃貸需要や資産価値の維持が期待できる可能性があります。
(3) データの限界:新築マンション市場に特化
不動産経済研究所のデータは、新築マンション市場に特化しています。
中古市場、戸建て市場、賃貸市場は対象外であるため、これらの市場動向を知りたい場合は、別のデータソースを参照する必要があります。
(4) 中古市場・戸建て市場は対象外
中古市場のデータは、不動産流通推進センターの「指定流通機構の活用状況について」などを参照できます。
戸建て市場のデータは、国土交通省の住宅着工統計などを参照しましょう。
(5) 個別物件の判断には専門家への相談が必須
不動産経済研究所のデータは、市場全体の傾向を示すものです。
個別物件の購入・投資判断は、物件の個別事情(立地、築年数、設備、管理状態等)を考慮する必要があるため、宅地建物取引士や不動産鑑定士などの専門家に相談することが推奨されます。
まとめ:不動産経済研究所のデータを正しく活用するポイント
不動産経済研究所は、1964年創立の民間調査機関で、新築マンション市場調査の権威です。毎月中旬に供給戸数・契約率・平均価格などのデータを公式サイトで無料公開しており、初月契約率70%以上が好調の目安とされています。
2024年の首都圏は23,003戸で前年比14.4%減、1973年以降最低水準となりました。平均価格は7,820万円で、価格高騰により契約率が低下しています。2025年は供給が若干回復する見通しですが、市場は引き続き慎重な状態が続く可能性があります。
データは新築マンション市場に特化しており、中古市場・戸建て市場は対象外です。市場全体の動向把握には役立ちますが、個別物件の購入・投資判断には、宅地建物取引士や不動産鑑定士などの専門家に相談することが重要です。
不動産経済研究所のデータを活用して、適切なタイミングでの購入判断を行いましょう。
