不動産コンサルティングマスター資格とは:業務範囲と法的位置づけ
不動産業界でのキャリアアップを目指す際、「不動産コンサルティングマスター資格を取得すべきか」と迷う方は少なくありません。
この記事では、不動産コンサルティングマスター資格の取得方法、難易度、活用法、キャリアパスを、公益財団法人不動産流通推進センターの公式情報を元に解説します。
宅建士・不動産鑑定士・一級建築士の資格保有者で、さらなる専門性向上や独立開業を目指す方に役立つ情報です。
この記事のポイント
- 不動産コンサルティングマスターは、宅建士・鑑定士・建築士の資格登録者のみが受験できる民間資格
- 合格率40~50%程度、勉強時間は50~200時間が目安
- 2024年7月の法改正により、媒介報酬とは別にコンサルティング報酬を受領できることが明確化
- 相続対策・投資・開発等の高度なコンサルティング業務に従事でき、キャリアの幅が広がる
- 5年ごとの登録更新が必要で、継続的な能力向上が求められる
不動産コンサルティングマスター資格とは:業務範囲と法的位置づけ
公益財団法人不動産流通推進センターが認定する民間資格
公認 不動産コンサルティングマスターは、公益財団法人不動産流通推進センターが認定する民間資格です。国家資格ではありませんが、受験資格は宅地建物取引士、不動産鑑定士、一級建築士という3つの国家資格登録者に限定されています。
2013年1月に「不動産コンサルティング技能登録者」から名称変更され、現在の名称となりました。
不動産の売買・賃貸借・有効活用・投資・相続等の高度なコンサルティング業務
不動産コンサルティングマスターは、以下のような高度なコンサルティング業務を行うための専門資格です。
| 業務分野 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 売買 | 不動産の売却・購入に関する総合的なアドバイス |
| 賃貸借 | 賃貸経営の改善提案、賃料設定の助言 |
| 有効活用 | 遊休不動産の活用方法の提案 |
| 投資 | 不動産投資のリスク分析、収益性評価 |
| 相続 | 相続不動産の分割方法、納税資金対策 |
(出典: 公益財団法人不動産流通推進センター)
2025年3月時点で約15,300名が登録
2025年3月時点で約15,300名が公認 不動産コンサルティングマスターとして登録されています。2024年度は390名が新規登録しており、不動産業界でキャリアアップの選択肢として定着しています。
受験資格と登録要件:宅建士・鑑定士・建築士の実務経験
受験資格:宅地建物取引士、不動産鑑定士、一級建築士の資格登録者のみ
不動産コンサルティングマスターの受験資格は、以下の3つの国家資格のいずれかの登録者に限定されています。
- 宅地建物取引士
- 不動産鑑定士
- 一級建築士
これらの資格を取得していない方は受験できません。
登録要件:各資格における実務経験5年以上、または3~5年+指定講座修了
試験に合格しても、すぐに登録できるわけではありません。登録には、各資格における実務経験が必要です。
- 実務経験5年以上
- または 実務経験3~5年+指定講座修了
実務経験の要件は、保有資格により異なります。詳細は公益財団法人不動産流通推進センターの公式サイトでご確認ください。
5年ごとの登録更新が必要(継続的な能力向上要件)
公認 不動産コンサルティングマスターは、5年ごとに登録更新が必要です。登録更新には、倫理規定の遵守、継続的な能力向上(研修受講等)が求められます。
資格を維持するには、継続的な学習と実務経験の蓄積が不可欠です。
試験の難易度と合格率:やや難しいレベルの実態
合格率40~50%程度(やや難しいレベル)
不動産コンサルティングマスターの合格率は40~50%程度です。一見すると高めに見えますが、受験者が既に難関国家資格(宅建士・不動産鑑定士・一級建築士)の保有者であることを考えると、試験自体の難易度は高いと言えます。
受験者は難関国家資格保有者(宅建士・鑑定士・建築士)
受験者は全員、宅地建物取引士、不動産鑑定士、一級建築士のいずれかの資格保有者です。これらは不動産・建築分野で最も難易度の高い国家資格であり、受験者の知識レベルは高い水準にあります。
それでも40~50%しか合格できないという事実は、試験の難易度を物語っています。
試験形式:午前50問の択一式(2時間)+午後の記述式(2時間)の合計4時間
試験は例年11月に年1回開催され、以下の2部構成です。
| 試験科目 | 形式 | 時間 |
|---|---|---|
| 午前 | 択一式50問 | 2時間 |
| 午後 | 記述式 | 2時間 |
(出典: 公益財団法人不動産流通推進センター)
合計4時間の試験のため、時間管理と集中力が重要です。
効果的な学習方法:独学・通信講座・スクーリングの活用
総勉強時間の目安:50~100時間(35%)、100~200時間(34%)が最多
合格者へのアンケートによると、総勉強時間は以下の分布となっています。
- 50~100時間: 35%
- 100~200時間: 34%
50~200時間程度の学習で合格レベルに到達する方が最も多い結果となっています。
独学(テキスト・過去問を2~3周)で合格可能
独学で合格している方が最も多く、テキストと過去問を2~3周することで合格レベルに到達できます。
効率的な独学の進め方は以下の通りです。
- 公式テキストを1周(全体像の把握)
- 過去問を1周(出題傾向の確認)
- テキスト2周目(弱点の補強)
- 過去問2~3周(解答スピードの向上)
不動産流通推進センターの「不動産コンサルティング入門研修」(インターネット通信講座)
公益財団法人不動産流通推進センターが提供する「不動産コンサルティング入門研修」は、インターネット通信講座で基礎から合格レベルまで学習できます。
約半数の合格者が、この通信講座やスクーリングを活用しています。
ステップアップ・スクーリング(半日集合研修)で実践的なコンサルティング手法を学習
ステップアップ・スクーリングは、半日の集合研修で、具体的なコンサルティングの考え方や進め方を学べます。
実務経験が少ない方や、コンサルティング業務のイメージを掴みたい方におすすめです。
資格取得のメリットとキャリアパス:報酬受領の明確化と業務拡大
2024年7月の法改正:媒介報酬とは別にコンサルティング報酬を受領可能と明確化
2024年7月、国土交通省の「不動産業による空き家対策推進プログラム」で宅建業法の解釈・運用が改正され、媒介報酬とは別にコンサルティング報酬を受領できることが明確化されました。
これにより、不動産コンサルティングマスターの資格保有者は、仲介業務とは別に、コンサルティング業務に対する報酬を正当に受け取ることができるようになりました。
不動産特定共同事業の業務管理者としての資格を取得
不動産コンサルティングマスターは、不動産特定共同事業の業務管理者となるための資格要件を満たします。
不動産特定共同事業とは、複数の投資家から資金を集めて不動産事業を行う事業です。業務管理者の資格を取得することで、業務範囲を拡大できます。
超高齢社会における相続対策や高齢者向け住宅などのコンサルティング需要増加
超高齢社会の進行により、以下のようなコンサルティング需要が増加しています。
- 相続対策: 相続不動産の分割方法、納税資金対策
- 高齢者向け住宅: サービス付き高齢者向け住宅の有効活用
- 空き家対策: 遊休不動産の活用方法
不動産コンサルティングマスターの資格は、これらの分野で専門性を発揮できる強みとなります。
2024年度は390名が新規登録(キャリアアップの選択肢として定着)
2024年度は390名が新規登録しており、不動産業界でキャリアアップの選択肢として定着しています。
宅建士としての実務経験を積んだ後、さらなる専門性向上を目指す方にとって、有力な資格の一つです。
まとめ:資格取得で専門性とキャリアを高めるために
不動産コンサルティングマスターは、宅建士・不動産鑑定士・一級建築士の資格保有者のみが受験できる民間資格です。合格率40~50%程度、勉強時間50~200時間が目安で、やや難しいレベルと言えます。
2024年7月の法改正により、媒介報酬とは別にコンサルティング報酬を受領できることが明確化され、資格の実務的価値が高まっています。相続対策・投資・開発等の高度なコンサルティング業務に従事でき、キャリアの幅を広げることができます。
ただし、5年ごとの登録更新が必要で、継続的な能力向上が求められます。資格取得後も、宅建業法等の関連法規を遵守し、不動産流通推進センターや専門家に相談しながら、実務経験を積むことが重要です。
不動産業界でさらなる専門性を磨き、キャリアアップを目指す方は、不動産コンサルティングマスター資格の取得を検討してみてはいかがでしょうか。
