不動産仲介業とは? なぜ今注目されるのか
不動産仲介業への転職や就職を考える際、「具体的にどんな仕事をするのか」「必要な資格は何か」と疑問を持つ方は少なくありません。
この記事では、不動産仲介業の基礎知識、売買仲介と賃貸仲介の違い、必要な資格、仲介手数料の計算方法、開業のポイント、業界動向を国土交通省や不動産流通推進センターの公式情報を元に解説します。
業界未経験者でも、不動産仲介業の全体像を正確に理解できるようになります。
この記事のポイント
- 不動産仲介業は宅地建物取引業の免許が必要で、国土交通大臣または都道府県知事の認可が求められる
- 売買仲介と賃貸仲介では業務内容・手数料体系が大きく異なる
- 仲介手数料は法律で上限が定められており、売買は「物件価格×3%+6万円+消費税」が基本
- 開業には約400万円の資金と専任宅地建物取引士の設置が必要
- 2030年までに業界の約2割が再編される見込みで、小規模事業者の統廃合が進行中
不動産仲介業の基礎知識(定義・免許要件・資格)
(1) 宅地建物取引業とは
不動産仲介業は、正式には「宅地建物取引業」と呼ばれます。売主と買主、貸主と借主の間に立ち、不動産取引の手続きや契約をサポートする仕事です。
国土交通省によると、宅地建物取引業を営むには国土交通大臣または都道府県知事の免許が必要です。
宅地建物取引業に含まれる業務:
- 不動産の売買・交換の仲介
- 不動産の賃貸借の仲介
- 不動産の売買・交換の代理
- 不動産の賃貸借の代理
(2) 免許取得の要件と欠格要件
免許を取得するには、以下の要件を満たす必要があります。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 事務所の設置 | 宅地建物取引業を営む事務所を設置 |
| 専任宅地建物取引士の設置 | 従業員5人につき1人以上の専任宅地建物取引士を配置 |
| 営業保証金の供託 | 1,000万円を供託(保証協会加入で免除可能) |
| 欠格要件に非該当 | 過去の免許取消、刑罰、破産等に該当しないこと |
(出典: 国土交通省)
欠格要件に該当すると免許が取得できないため、申請前に必ず確認が必要です。
(3) 宅地建物取引士の役割と設置義務
宅地建物取引士(宅建士)は、不動産取引の専門家資格です。重要事項説明や契約書への記名・押印など、法律で定められた業務を担当します。
宅建士の主な業務:
- 重要事項説明書の作成と説明
- 重要事項説明書への記名・押印
- 契約書への記名・押印
宅地建物取引業を営む事務所では、従業員5人につき1人以上の専任宅地建物取引士を設置することが義務付けられています。
売買仲介と賃貸仲介の違い
(1) 売買仲介の業務内容
売買仲介は、不動産の売買取引を仲介する業務です。主にマンション、一戸建て、土地などの売買を扱います。
売買仲介の主な業務:
- 売却物件の査定・相場調査
- 販売活動(広告掲載、購入希望者への案内)
- 価格交渉のサポート
- 売買契約の締結サポート
- 決済・引渡しの立会い
売買仲介は1件あたりの手数料が高額(数十万円~数百万円)ですが、案件獲得の難易度が高いという特徴があります。
(2) 賃貸仲介の業務内容
賃貸仲介は、不動産の賃貸借契約を仲介する業務です。主にアパート、マンション、店舗などの賃貸物件を扱います。
賃貸仲介の主な業務:
- 入居者募集(広告掲載、内見案内)
- 入居審査のサポート
- 賃貸借契約の締結サポート
- 鍵の引渡し
賃貸仲介は案件数が多いですが、1件あたりの手数料は売買仲介より低め(賃料の1ヶ月分程度)です。
(3) 仲介会社と管理会社の違い
賃貸仲介を語る上で重要なのが、仲介会社と管理会社の違いです。
| 項目 | 仲介会社 | 管理会社 |
|---|---|---|
| 業務範囲 | 契約締結まで | 入居後の建物・入居者管理 |
| 主な業務 | 入居者募集、契約手続き | 賃料回収、修繕対応、退去手続き |
| 収益モデル | 仲介手数料(契約時のみ) | 管理手数料(継続課金) |
(出典: 全日ラビー不動産コラム)
仲介会社と管理会社を兼業する事業者も多く、継続的な収益確保のため管理業務も行うケースが増えています。
仲介手数料の仕組みと計算方法
(1) 売買仲介の手数料上限と計算式
売買仲介の手数料は、宅地建物取引業法で上限が定められています。
売買仲介の手数料上限(税別):
| 物件価格 | 上限手数料 |
|---|---|
| 200万円以下 | 5% |
| 200万円超400万円以下 | 4% |
| 400万円超 | 3% |
(出典: 三井のリハウス)
計算例(物件価格3,000万円の場合):
3,000万円 × 3% + 6万円 = 96万円(税別)
消費税10%を加えると 105.6万円
この計算式「物件価格×3%+6万円+消費税」は、400万円超の物件で広く使われる簡易計算式です。
(2) 賃貸仲介の手数料上限
賃貸仲介の手数料は、賃料の1ヶ月分が上限です(消費税別)。
賃貸仲介の手数料例(賃料10万円の場合):
10万円 × 1.0 + 消費税10% = 11万円
売買仲介と比較すると手数料は低額ですが、案件数が多いため安定した収益を得やすいという特徴があります。
(3) 手数料の値引き交渉は可能か
仲介手数料は法律で「上限」が定められているだけで、上限以下であれば自由に設定できます。そのため、値引き交渉は可能です。
値引き交渉のポイント:
- 複数の不動産会社に相見積もりを依頼
- 「他社では手数料半額」などの情報を提示
- 繁忙期を避けて交渉(閑散期の方が交渉しやすい)
近年は「仲介手数料半額」「仲介手数料無料」を謳う業者も増えており、競争が激化しています。
不動産仲介業の開業と業界動向
(1) 開業に必要な資金と営業保証金
不動産仲介業の開業には、約400万円の資金が必要とされています。
開業資金の内訳:
| 項目 | 金額目安 |
|---|---|
| 営業保証金(保証協会加入費) | 約60万円 |
| 事務所開設費(敷金・礼金、内装等) | 約100万円 |
| 免許申請費用 | 約3万円 |
| 初期広告費 | 約50万円 |
| 運転資金(3ヶ月分) | 約200万円 |
| 合計 | 約400万円 |
(出典: LIFULL HOME'S Business)
営業保証金は本来1,000万円の供託が必要ですが、全国宅地建物取引業保証協会などの保証協会に加入することで、約60万円の加入費で代替できます。
(2) 運転資金確保と集客戦略
不動産仲介業は参入障壁が低い一方で、毎年約10%の事業者が廃業する厳しい業界です。事業継続の鍵は「十分な運転資金」と「安定した集客」です。
集客戦略の例:
- ポータルサイト(SUUMO、HOME'S等)への物件掲載
- 自社ウェブサイトの構築とSEO対策
- SNS(Instagram、Twitter等)での情報発信
- 地域密着型の営業活動(チラシ配布、地域イベント参加)
開業後3ヶ月程度は売上がゼロの可能性もあるため、運転資金を十分に確保しておくことが重要です。
(3) 2025年以降の業界動向と市場予測
経営承継支援によると、2020年時点で不動産仲介業は127,215事業者あり、コンビニの2倍以上の規模です。しかし、80%以上が従業員3人以下の小規模事業者で、37.4%が一人経営です。
2025年以降の主な動向:
- 2025年は大量のオフィス供給により空室率上昇の懸念
- 団塊世代の後期高齢者化により相続・住み替えによる不動産の大量放出が予測
- 2025年4月から新築住宅・非住宅建築物で省エネ基準適合が義務化
- 2030年までに不動産会社数は約2割減少する見込み
業界再編が加速する中、小規模事業者は大手との提携やM&Aによる統合が増えると予測されています。
まとめ:不動産仲介業でキャリアを築くために
不動産仲介業は、宅地建物取引業の免許と専任宅地建物取引士の設置が必要な専門職です。売買仲介は高額な手数料が見込めますが案件獲得の難易度が高く、賃貸仲介は案件数が多いものの手数料は低めという特徴があります。
仲介手数料は法律で上限が定められており、値引き交渉も可能です。開業には約400万円の資金と十分な運転資金の確保が必要で、集客戦略が事業継続の鍵となります。
2030年に向けて業界再編が進む中、宅地建物取引士資格の取得や専門家(税理士、行政書士等)への相談を通じて、着実にキャリアを築いていきましょう。詳細は国土交通省や各都道府県の公式サイトで最新情報をご確認ください。
