不動産鑑定士とは|役割・依頼時の費用・活用場面を解説

著者: Room Match編集部公開日: 2025/12/2

広告

無料査定依頼キャンペーン 【ノムコム】

なぜ不動産鑑定士が必要なのか

相続、離婚、訴訟など、不動産の正確な価値を知る必要がある場面は少なくありません。「不動産会社の査定では足りないのか」「不動産鑑定士に依頼すべきケースはどんな時か」と疑問に思う方もいるでしょう。

不動産鑑定士は、法律に基づいて不動産の経済価値を判定する国家資格の専門家です。不動産会社による査定とは異なり、不動産鑑定評価書には法的効力があり、相続税申告や財産分与などの公的手続きで使用できます。

この記事では、不動産鑑定士の役割、鑑定評価書と査定書の違い、依頼すべきケース、費用相場を、国土交通省日本不動産鑑定士協会連合会の公式情報を元に解説します。状況に応じた適切な活用方法を理解できるようになります。

この記事のポイント

  • 不動産鑑定士は国家資格で、不動産鑑定評価書の作成は独占業務
  • 鑑定評価書は法的効力があり、相続・離婚・訴訟等の公的手続きで必要
  • 査定書は簡易評価で法的効力はないが、費用がかからず短期間で取得可能
  • 鑑定費用は一般住宅で20-30万円、マンションで40万円~が相場
  • 複数の鑑定事務所で相見積もりを取ることで費用を抑えられる

不動産鑑定士とは

不動産鑑定士は、不動産の経済価値を専門的に判定する国家資格者です。全国で約8,000人しか有資格者がおらず、希少性の高い資格として知られています。

(1) 国家資格としての不動産鑑定士

国土交通省によると、不動産鑑定士になるには以下の流れが必要です。

資格取得の流れ:

  1. 短答式試験: 合格率は平均約33%
  2. 論文式試験: 短答式合格者のみ受験可能、合格率は平均約16%
  3. 実務修習: 1年または2年のコース
  4. 修習修了試験: 合格後、国土交通大臣へ登録

受験資格: 2006年から年齢・学歴不問で誰でも受験可能

日本の三大国家資格の一つと言われるほど難易度が高く、資格取得まで数年かかることが一般的です。

(2) 独占業務:不動産鑑定評価書の作成

不動産鑑定評価書の作成は、不動産鑑定士だけができる独占業務です。他の資格者(宅地建物取引士、不動産会社等)では作成できません。

不動産鑑定評価書は、以下のような場面で使用されます:

  • 相続税申告: 土地や建物の評価額を算定
  • 財産分与: 離婚時の不動産の公平な分割
  • 訴訟・調停: 不動産の価値を証明する公的証拠
  • 担保評価: 金融機関が融資の際に不動産価値を判定
  • 公的土地評価: 地価公示、地価調査等

(3) 不動産鑑定士の仕事内容

国土交通省によると、不動産鑑定士の仕事は鑑定評価だけではありません。

主な業務内容:

業務内容 詳細
不動産鑑定評価 土地・建物・マンション等の価値を法律に基づいて評価
コンサルティング 土地の有効活用提案、不動産投資相談等
公的土地評価 地価公示、地価調査等の評価作業
証券化業務 J-REIT等の不動産証券化における評価

活躍の場:

  • 不動産鑑定事務所
  • 金融機関(銀行、信託銀行、保険会社等)
  • 不動産会社
  • コンサルティング会社
  • 資産運用会社(J-REIT等)

金融業界やコンサルティング会社では年収1,000万円以上も珍しくなく、専門知識を持つ鑑定士は高く評価されています。

不動産鑑定評価書と査定書の違い

不動産の価値を知る方法として、不動産鑑定評価書と不動産会社による査定書がありますが、両者には大きな違いがあります。

(1) 不動産鑑定評価書の法的効力

不動産鑑定評価書は、「不動産の鑑定評価に関する法律」に基づいて作成される公的文書です。

特徴:

  • 法的効力: 相続税申告、財産分与、訴訟等で公的証拠として使用可能
  • 作成者: 不動産鑑定士のみ(独占業務)
  • 評価基準: 国土交通省が定める「不動産鑑定評価基準」に準拠
  • 費用: 一般住宅で20-30万円、マンションで40万円~
  • 期間: 通常1-2週間

(2) 不動産会社による査定書との違い

不動産会社による査定書は、売却を前提とした簡易的な価格評価です。

特徴:

  • 法的効力: なし
  • 作成者: 不動産会社(宅地建物取引士等)
  • 評価基準: 会社独自の基準、過去の取引事例等
  • 費用: 無料が一般的
  • 期間: 即日~数日

査定と鑑定の使い分け:

目的 推奨
売却価格の目安を知りたい 査定
相続税申告 鑑定
離婚の財産分与 鑑定
訴訟・調停 鑑定
投資判断の参考 査定または鑑定

(3) 調査報告書とは

調査報告書は、不動産鑑定評価書よりも簡易的な評価書です。不動産鑑定士が作成しますが、法律に基づく正式な鑑定評価書ではありません。

特徴:

  • 費用: 鑑定評価書より15-20%安い
  • 法的効力: 鑑定評価書より劣る
  • 用途: 紛争リスクが低い場合の参考資料

注意点: 相続税申告や訴訟など、公的証明力が必要な場合は、調査報告書ではなく正式な鑑定評価書を取得すべきです。

不動産鑑定士に依頼すべきケースと費用相場

不動産鑑定士に依頼すべきケースと、費用相場について解説します。

(1) 依頼すべきケース(相続・離婚・訴訟等)

以下のような場合、不動産鑑定士に依頼することを推奨します。

公的手続きが必要な場合:

  • 相続税申告: 土地・建物の評価額を算定する必要がある
  • 贈与税申告: 不動産を贈与する際の評価
  • 財産分与: 離婚時の不動産の公平な分割
  • 訴訟・調停: 不動産の価値を証明する公的証拠が必要

その他の活用場面:

  • 担保評価: 金融機関が融資を検討する際の評価
  • 減額交渉: 固定資産税や相続税の減額を求める際の根拠
  • 投資判断: 不動産投資の収益性を専門家に評価してもらう

(2) 費用相場と料金体系

不動産鑑定の費用は、物件の評価額と類型によって決まります。

費用相場 (HOME4Uによる):

物件類型 費用相場
一般住宅(土地+建物) 20-30万円
マンション 40万円~
更地 15-25万円
商業地 30万円~

料金を決める要因:

  • 評価額: 評価額が高いほど料金も高くなる
  • 物件の類型: マンション、戸建て、商業地等で料金が異なる
  • 調査の複雑さ: 権利関係が複雑な場合は追加料金の可能性がある

注意: 上記は一般的な相場であり、鑑定事務所によって料金体系が異なります。必ず事前に見積もりを取得してください。

(3) 費用を抑える方法

不動産鑑定費用を抑えるには、以下の方法が効果的です。

複数の鑑定事務所で相見積もりを取る:

  • 3社以上に見積もりを依頼し、料金とサービス内容を比較
  • 料金だけでなく、実績や専門分野も確認

調査報告書で代用できるか確認する:

  • 紛争リスクが低い場合、調査報告書で15-20%費用を削減可能
  • ただし、公的証明力が必要な場合は正式な鑑定評価書を取得すべき

不動産鑑定士協会の紹介を利用する:

不動産鑑定士の選び方と注意点

信頼できる不動産鑑定士を選ぶためのポイントと注意点を解説します。

(1) 信頼できる鑑定士の見分け方

以下の点をチェックしましょう。

実績・専門分野:

  • 相続案件の実績が豊富か
  • 対象物件(土地、マンション、商業地等)の鑑定経験があるか
  • 地域に詳しいか

所属・資格:

  • 日本不動産鑑定士協会連合会に所属しているか
  • 国土交通大臣登録の鑑定業者か

説明の丁寧さ:

  • 鑑定評価の流れを分かりやすく説明してくれるか
  • 質問に的確に答えられるか
  • 見積もりの内訳を明示してくれるか

(2) 相見積もりの取り方

複数の鑑定事務所で相見積もりを取る際のポイント:

見積もり依頼時に伝える情報:

  • 物件の所在地・種類(土地、マンション等)
  • 評価の目的(相続、離婚、訴訟等)
  • 希望する納期

比較すべき項目:

  • 料金の内訳(基本料金、追加料金の有無)
  • 納期
  • 実績(同様の案件の経験)
  • アフターサポート(税理士との連携等)

(3) 依頼時の注意点

契約前に確認すべき事項:

  • 料金の総額(追加費用の有無)
  • 納期(通常1-2週間)
  • 鑑定評価書の形式(相続税申告用等、目的に応じた形式か)
  • キャンセル料の有無

依頼の流れ:

  1. 鑑定事務所に問い合わせ: 評価の目的と物件情報を伝える
  2. 見積もり取得: 料金・納期を確認
  3. 契約: 契約書の内容を確認して署名
  4. 現地調査: 鑑定士が物件を訪問して調査
  5. 鑑定評価書作成: 通常1-2週間
  6. 納品: 鑑定評価書を受け取る

まとめ:状況別の活用方法

不動産鑑定士は、法律に基づいて不動産の経済価値を判定する国家資格の専門家です。不動産鑑定評価書には法的効力があり、相続税申告や財産分与など、公的手続きで使用できます。

一般住宅の鑑定費用は20-30万円、マンションは40万円~が相場です。複数の鑑定事務所で相見積もりを取ることで、費用を抑えられます。

不動産会社による査定は無料で短期間に取得できますが、法的効力はありません。売却価格の目安を知りたい場合は査定、相続・離婚・訴訟等で公的証明が必要な場合は鑑定評価書を取得しましょう。

信頼できる不動産鑑定士を選び、状況に応じて適切に活用することで、公正な不動産取引や手続きを実現できます。詳細は日本不動産鑑定士協会連合会または各地域の鑑定事務所にご相談ください。

広告

無料査定依頼キャンペーン 【ノムコム】

広告

よくある質問

Q1不動産鑑定と査定の違いは何ですか?

A1不動産鑑定は「不動産の鑑定評価に関する法律」に基づく正式な評価で、不動産鑑定士のみが作成できます。法的効力があり、相続税申告や財産分与、訴訟等の公的手続きで使用できます。一方、査定は不動産会社による簡易的な評価で、法的効力はありませんが、無料で短期間に取得でき、売却価格の目安を知るのに役立ちます。公的証明が必要な場合は鑑定、売却価格の参考なら査定を推奨します。

Q2不動産鑑定の費用はいくらですか?

A2不動産鑑定の費用は物件の評価額と類型によって決まります。一般的な相場は、一般住宅(土地+建物)で20-30万円、マンションで40万円~、更地で15-25万円です。鑑定事務所によって料金体系が異なるため、複数の鑑定事務所で相見積もりを取ることを推奨します。調査報告書(簡易版)であれば、鑑定評価書より15-20%安く抑えられますが、公的証明力が劣る点に注意してください。

Q3不動産鑑定士に依頼する流れは?

A3①鑑定事務所に問い合わせて評価の目的と物件情報を伝える→②見積もりを取得し料金・納期を確認→③契約書を確認して署名→④鑑定士が物件を訪問して現地調査を実施→⑤鑑定評価書を作成(通常1-2週間)→⑥鑑定評価書を受け取る、という流れです。契約前に料金の総額、納期、キャンセル料の有無を確認しましょう。複数の鑑定事務所で相見積もりを取ることで、料金やサービス内容を比較できます。

Q4鑑定評価書に有効期限はありますか?

A4法的な有効期限は定められていませんが、不動産市場は常に変動するため、一般的には作成から1年以内が目安とされています。相続税申告や贈与税申告などの税務手続きでは、提出期限が定められている場合があります。訴訟や調停では、裁判所が鑑定時点の新しさを重視することがあります。目的に応じて、税理士や弁護士に確認することを推奨します。最新の市場状況を反映するため、必要に応じて再鑑定を検討してください。

R

Room Match編集部

Room Matchは、不動産の購入・売却・賃貸に関する実践的な情報を提供するメディアです。住宅ローン、物件選び、不動産会社の選び方など、実務担当者に役立つ情報を分かりやすく解説しています。

関連記事