不動産事務とは:営業をサポートする事務職
不動産事務への転職を検討する際、「具体的にどんな仕事をするのか」「未経験でもできるのか」と不安に感じる方は少なくありません。
この記事では、不動産事務の具体的な業務内容、1日の流れ、必要なスキル・資格、やりがい・キャリアパスを、求人サイトや業界団体の情報を元に解説します。
不動産事務への就職・転職を考えている方が、必要な情報を正確に把握できるようになります。
この記事のポイント
- 不動産事務は営業活動をサポートする事務職で、顧客対応・物件管理・書類作成・経理業務が主な仕事
- 未経験歓迎の求人が多く、基本的なPCスキル(Word・Excel)とコミュニケーション能力があれば挑戦可能
- 宅地建物取引士の資格があると転職に有利で、資格手当(月2万円〜5万円)が付く企業も多い
- やりがいは顧客からの感謝・チームで売上貢献・不動産知識の習得の3点
- 平均年収は413万円で、宅建資格取得やキャリアチェンジで年収アップが可能
不動産事務とは:営業をサポートする事務職
不動産事務は、不動産会社で営業活動をサポートする事務職です。会社の顔として顧客対応を行い、営業スタッフが円滑に業務を進められるよう、裏方で支える役割を担います。
(1) 不動産事務の役割と位置づけ
不動産事務は、営業スタッフと顧客の間に立ち、以下の役割を担います。
- 顧客の窓口: 来客対応・電話対応・メール対応で、顧客の要望をヒアリング
- 営業サポート: 契約書作成・物件情報登録・広告作成で営業活動を支援
- 社内調整: 営業・管理・経理部門との連携で業務をスムーズに進行
営業職と違い、直接的な営業活動(物件提案・価格交渉・契約締結)は行いませんが、営業活動の成否を左右する重要なポジションです。
(2) 営業事務と一般事務の違い
不動産事務には「営業事務」と「一般事務」の2種類があります。
| 項目 | 営業事務 | 一般事務 |
|---|---|---|
| 役割 | 営業スタッフのサポートに特化 | 経理・人事・総務等の幅広い事務 |
| 業務内容 | 契約書作成・顧客対応・物件情報登録 | 請求書作成・入金管理・書類整理 |
| ノルマ | なし | なし |
営業事務は営業スタッフと密接に連携し、営業活動の成果に直接貢献します。一般事務は会社全体のバックオフィス業務を担当します。
(参考: 不動産転職コラム)
(3) 未経験歓迎の求人が多い理由
不動産事務は未経験歓迎の求人が多い職種です。その理由は以下の3点です。
- 不動産知識は働きながら習得可能: 最初から専門家である必要はなく、業務を通じて不動産知識を学べる
- 基本的なPCスキルがあれば挑戦可能: Word・Excelの基本操作ができれば、業務に必要なスキルは研修で身につく
- コミュニケーション能力が重視される: 顧客対応や社内調整で必要なのは、専門知識よりも「人と円滑にやり取りする力」
(参考: 宅建Jobマガジン)
不動産事務の主な業務内容
不動産事務の業務は、大きく分けて「顧客対応」「物件管理」「書類作成」「経理業務」の4つです。
(1) 顧客対応(来客・電話・メール対応)
会社の顔として、顧客の窓口を担当します。
- 来客対応: 店舗に来訪した顧客を案内し、営業スタッフに引き継ぎ
- 電話対応: 物件の問い合わせ・内覧予約の受付・営業スタッフへの取次ぎ
- メール対応: 顧客からの質問に回答・資料送付・日程調整
不動産取引は高額なため、顧客は不安を抱えています。丁寧で親身な対応が、顧客の信頼獲得につながります。
(2) 物件管理(情報登録・データ入力・広告作成)
物件情報を管理し、営業活動の基盤を整えます。
- 物件情報登録: 自社管理物件の情報(間取り・価格・設備等)をデータベースに登録
- データ入力: 成約情報・顧客情報・契約内容をシステムに入力
- 広告作成: Webサイト・チラシ・ポータルサイト用の物件広告を作成
正確なデータ入力とタイムリーな情報更新が、営業活動の成果を左右します。
(3) 書類作成(契約書・重要事項説明書の補助)
不動産取引に必要な書類を作成・準備します。
- 契約書作成: 売買契約書・賃貸借契約書の作成補助(テンプレートを使用)
- 重要事項説明書の補助: 宅地建物取引士が作成する重要事項説明書のデータ収集・下書き
- その他書類: 媒介契約書・物件状況報告書・付帯設備表等
注意: 重要事項説明書の作成・説明は宅地建物取引士の独占業務です。不動産事務は補助業務のみを担当します。
(参考: 国土交通省「宅地建物取引業法」)
(4) 経理業務(請求書作成・入金管理)
不動産取引に伴う金銭管理を担当します。
- 請求書作成: 仲介手数料・管理費・広告費等の請求書を作成
- 入金管理: 入金状況を確認し、未入金の場合は営業スタッフに連絡
- 経費処理: 営業活動にかかった経費(交通費・広告費等)を経理部門に報告
高額取引を扱うため、正確性と注意力が求められます。
(5) 売買と賃貸の業務の違い
不動産事務の業務内容は、売買と賃貸で異なります。
| 項目 | 売買 | 賃貸 |
|---|---|---|
| 顧客対応 | 買主・売主の窓口(契約までの期間が長い) | 入居希望者・オーナーの窓口(契約までの期間が短い) |
| 物件管理 | 自社管理物件の情報登録・更新 | 入居者対応・退去手続き・更新手続き |
| 書類作成 | 売買契約書・重要事項説明書の補助 | 賃貸借契約書・重要事項説明書の補助 |
| 経理業務 | 仲介手数料の請求・入金管理 | 家賃・管理費の請求・入金管理 |
売買は1件あたりの取引額が大きく、慎重な対応が求められます。賃貸は契約件数が多く、スピーディーな対応が求められます。
(参考: 不動産人材.com)
不動産事務の1日の仕事の流れ
不動産事務の1日の流れは、以下のようになります。
(1) 午前:来客対応・メール確認・物件情報更新
9:00 - 10:00: 出社・メール確認
- メールで届いた問い合わせに回答
- 営業スタッフへの連絡事項を確認
10:00 - 12:00: 来客対応・電話対応
- 店舗に来訪した顧客を案内
- 物件の問い合わせ・内覧予約の受付
- 物件情報の更新(新規物件の登録、成約物件の削除)
(2) 午後:契約書作成・営業スタッフのサポート
13:00 - 15:00: 書類作成
- 契約書・重要事項説明書の下書き
- 請求書・領収書の作成
15:00 - 17:00: 営業スタッフのサポート
- 営業スタッフが外出中の顧客対応(電話・メール)
- 契約準備(書類の印刷・製本・押印手配)
(3) 夕方:書類整理・翌日の準備
17:00 - 18:00: 書類整理・翌日の準備
- 当日の契約書類・顧客情報をファイリング
- 翌日の契約準備(必要書類の確認)
- メールの最終確認
18:00: 退社
注意: 不動産業界は土日勤務が基本のため、休日は平日(火曜・水曜等)になります。
不動産事務に必要なスキルと資格
不動産事務に必要なスキルと、あると有利な資格を解説します。
(1) 基本的なPCスキル(Word・Excel・PowerPoint)
不動産事務の業務はパソコン作業が中心です。以下のスキルが必要です。
- Word: 契約書・重要事項説明書の作成(テンプレート使用)
- Excel: 顧客リスト・物件リストの管理、データ集計
- PowerPoint: 物件紹介資料・プレゼン資料の作成(会社によっては不要)
高度なスキルは不要で、基本操作(文書作成・表計算・簡単な関数)ができれば十分です。
(2) コミュニケーション能力と正確性
不動産事務に最も求められるのは、以下の2つです。
- コミュニケーション能力: 顧客・営業スタッフ・社内部門と円滑にやり取りする力
- 正確性: 高額取引を扱うため、書類作成・データ入力でミスが許されない
「人と話すのが好き」「コツコツと正確な作業が得意」な人に向いています。
(3) 法律知識(宅建業法・民法・借地借家法)
不動産事務は、幅広い法律知識が必要です。
- 宅地建物取引業法(宅建業法): 重要事項説明義務、誇大広告の禁止等
- 民法: 契約の成立時期、手付金の扱い、契約解除の要件
- 借地借家法: 賃貸借契約の更新・解約ルール
**ただし、最初から専門家である必要はありません。**業務を通じて、徐々に法律知識を身につけていけます。
(4) 宅地建物取引士(宅建士)資格の有効性
宅地建物取引士(宅建士)の資格があると、以下のメリットがあります。
- 転職に有利: 求人の応募条件「宅建士歓迎」に該当
- 資格手当が付く: 月2万円〜5万円の資格手当が付く企業が多い(年収24万円〜60万円アップ)
- 業務範囲が広がる: 重要事項説明書の作成・説明が可能になる
- キャリアアップに有利: 営業職へのキャリアチェンジがスムーズ
**ただし、宅建士資格は必須ではありません。**未経験・無資格でも応募可能な求人が多数あります。
(参考: 一般財団法人 不動産適正取引推進機構)
(5) 宅建資格による年収アップ(資格手当月2万円〜5万円)
不動産事務の平均年収は413万円(範囲302万円〜829万円)です。
宅建資格を取得すると、資格手当(月2万円〜5万円)が付くため、年収が24万円〜60万円アップします。
| 項目 | 無資格 | 宅建資格あり |
|---|---|---|
| 平均年収 | 413万円 | 437万円〜473万円 |
| 資格手当(月額) | なし | 2万円〜5万円 |
| 年収アップ額 | - | 24万円〜60万円 |
(参考: 住まキャリ)
不動産事務のやりがいとキャリアパス
不動産事務のやりがい・大変な点・キャリアパスを解説します。
(1) やりがい:顧客からの感謝、チームで売上貢献、不動産知識の習得
不動産事務の主なやりがいは、以下の3点です。
- 顧客から感謝の声をもらえる: 「丁寧な対応でありがとうございました」と感謝されると、仕事の充実感を得られる
- チームで売上に貢献できる実感がある: 営業スタッフと連携して契約を成立させ、会社の売上に貢献
- 不動産や法律の知識が身につく: 業務を通じて、不動産取引・税金・法律の専門知識を習得できる
営業職と違いノルマがないため、比較的プレッシャーやストレスが少ない点も魅力です。
(参考: 宅建Jobマガジン、ここからオフィスキャリア)
(2) 大変な点:高額取引のプレッシャー、幅広い法律知識の必要性、土日勤務
不動産事務の大変な点は、以下の3点です。
- 高額取引のプレッシャー: 数千万円〜数億円の取引を扱うため、些細なミスも許されない
- 幅広い法律知識の必要性: 宅建業法・民法・借地借家法等、多くの法律知識を継続的に学習する必要がある
- 土日勤務が基本: 顧客の都合に合わせて土日勤務が基本で、休日は平日(火曜・水曜等)になる
**ただし、土日勤務にはメリットもあります。**平日休みのため、混雑を避けて外出できる、病院・銀行・役所の予約が取りやすい等のメリットがあります。
(3) キャリアパス:宅建士取得、営業職へのキャリアチェンジ、管理職
不動産事務のキャリアパスは、以下の3つです。
- 宅建士取得で専門性を高める: 宅建士資格を取得し、重要事項説明書の作成・説明を担当
- 営業職へのキャリアチェンジ: 不動産知識を活かして営業職に転身し、インセンティブで年収アップ
- 管理職を目指す: 事務チームのリーダー・マネージャーとして、後輩の育成・業務改善を担当
不動産事務で身につけた知識・スキルは、不動産業界内でのキャリアアップに大きく役立ちます。
(4) 年収相場:平均413万円(範囲302万円〜829万円)
不動産事務の年収相場は、以下の通りです。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 平均年収 | 413万円 |
| 年収範囲 | 302万円〜829万円 |
| 宅建資格手当(月額) | 2万円〜5万円 |
年収は、会社規模・業種(売買・賃貸)・経験年数・資格有無により異なります。詳細は求人サイト・転職エージェントで確認することを推奨します。
注意: 本記事の年収情報は2025年時点のものです。最新の情報は求人サイト・転職エージェントで確認してください。
(参考: 住まキャリ)
まとめ:不動産事務が向いている人の特徴
不動産事務は、営業活動をサポートする事務職で、顧客対応・物件管理・書類作成・経理業務が主な仕事です。未経験歓迎の求人が多く、基本的なPCスキル(Word・Excel)とコミュニケーション能力があれば挑戦可能です。
宅地建物取引士の資格があると転職に有利で、資格手当(月2万円〜5万円)が付く企業も多くあります。やりがいは顧客からの感謝・チームで売上貢献・不動産知識の習得の3点で、平均年収は413万円です。
(1) コミュニケーション能力がある人
顧客・営業スタッフ・社内部門と円滑にやり取りする力が求められます。「人と話すのが好き」「相手の要望を丁寧にヒアリングできる」人に向いています。
(2) コツコツと正確な作業が得意な人
高額取引を扱うため、書類作成・データ入力でミスが許されません。「細部まで注意深く確認できる」「正確な作業が得意」な人に向いています。
(3) 継続的な学習意欲がある人
不動産取引には幅広い法律知識(宅建業法・民法・借地借家法等)が必要です。「新しい知識を学ぶのが好き」「資格取得に意欲的」な人に向いています。
(4) 次のアクション:求人サイト・転職エージェントへの相談
不動産事務への転職を考えている方は、以下のアクションを推奨します。
- 求人サイトで求人情報を確認: 業務内容・年収・勤務条件を確認
- 転職エージェントに相談: 自分に合った求人を紹介してもらう
- 宅建資格の取得を検討: 資格手当で年収アップ、キャリアアップに有利
信頼できる求人サイト・転職エージェントに相談しながら、自分に合った不動産事務の仕事を見つけましょう。
