不動産広告を正しく読むために知っておくべきこと
不動産購入や賃貸を検討する際、「広告の情報は信頼できるのか」「誇大広告やおとり広告を見分けるにはどうすればいいのか」と不安に感じる方は少なくありません。
この記事では、不動産広告を規制する法律、表示ルール、禁止表現、おとり広告の見分け方を、国土交通省や公益社団法人首都圏不動産公正取引協議会の情報を元に解説します。
不動産購入・賃貸を検討中の方が、広告を正しく読み、トラブルを回避できるようになります。
この記事のポイント
- 不動産広告は宅建業法、景品表示法、不動産公正競争規約の3つの法規制で厳格に守られている
- 「完全」「日本一」「最高級」「格安」「完売」等の特定用語は使用禁止
- 徒歩1分=80m、新築=建築後1年未満かつ未入居などの表示ルールがある
- おとり広告(取引できない物件の広告)は厳重に禁止され、違反時は50万円~500万円の違約金
- トラブル時は不動産適正取引推進機構や消費生活センターへ相談する
(1) 不動産広告は厳格な法規制で守られている
不動産広告は、以下の3つの法規制で厳格に守られています:
- 宅建業法(宅地建物取引業法): 不動産取引の公正を確保するための法律
- 景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法): 全業種の広告を規制する法律
- 不動産公正競争規約: 景品表示法に基づく不動産業界の自主規制ルール
これらの法規制により、誇大広告やおとり広告が厳重に禁止されています。
(2) 広告の読み方を知らないと損をする理由
広告の表示ルールを知らないと、以下のような損失やトラブルが発生する可能性があります:
- おとり広告に騙される: 相場より安い架空物件に問い合わせ、来店後に別物件を紹介される
- 誇大広告を信じる: 「日当たり抜群」等の根拠のない表現を信じ、実際と異なる物件を契約
- 表示ルールを誤解する: 徒歩分数や築年数の計算方法を知らず、実際の条件と異なると感じる
広告の読み方を正しく理解することで、これらのトラブルを回避できます。
(3) 消費者が確認すべきポイント
不動産広告を見る際、以下のポイントを確認してください:
- 表示義務のある項目(所在地、交通、価格、間取り、面積等)が記載されているか
- 禁止用語(「完全」「日本一」「最高級」等)が使用されていないか
- 相場より極端に安い物件ではないか(おとり広告の可能性)
- 具体的な数値や根拠が示されているか(「徒歩〇分」「築〇年」等)
これらを確認することで、信頼できる広告かどうかを判断できます。
(4) この記事でわかること:法規制と注意点
この記事では、以下の情報を詳しく解説します:
- 不動産広告を規制する3つの法律
- 表示ルールと禁止表現
- おとり広告と誇大広告の見分け方
- トラブル事例と対処方法
不動産広告を規制する3つの法律
不動産広告は、以下の3つの法律で規制されています。
(1) 宅建業法(宅地建物取引業法):誇大広告の禁止
宅地建物取引業法は、不動産取引の公正を確保するための法律です。
第32条(誇大広告等の禁止):
- 著しく事実に相違する表示
- 実際のものより著しく優良または有利であると人を誤認させる表示
の広告を禁止しています。
違反した場合、業務停止命令や免許取り消しの対象となります。
(2) 景品表示法:優良誤認表示の禁止
景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)は、全業種の広告を規制する法律です。
優良誤認表示の禁止:
- 商品・サービスの品質を実際より優良と誤認させる表示
- 競合他社より優良と誤認させる表示
が禁止されています。
不動産広告では、「日当たり抜群」「駅近」等の根拠のない表現が優良誤認表示に該当する可能性があります。
(3) 不動産公正競争規約:業界の自主規制ルール
不動産公正競争規約は、景品表示法に基づく不動産業界の自主規制ルールです。
規定内容:
- 必要表示事項(所在地、交通、価格、間取り、面積等)
- 禁止用語(「完全」「日本一」「特選」「最高級」「格安」「完売」等)
- おとり広告の禁止
- 違反時の罰則(違約金、除名処分)
不動産業界で最も詳細な自主規制ルールとして機能しています。
(4) 違反時のペナルティ:50万円~500万円の違約金、業務停止、免許取り消し
公益社団法人全日本不動産協会によると、違反時のペナルティは以下の通りです:
| 違反内容 | ペナルティ |
|---|---|
| おとり広告(1度目) | 50万円以下の違約金 |
| おとり広告(2度目) | 500万円以下の違約金 + 除名処分 |
| 誇大広告(宅建業法違反) | 業務停止命令、免許取り消し |
| 景品表示法違反 | 措置命令、課徴金納付命令 |
(出典: 公益社団法人全日本不動産協会)
違反した場合の罰則は極めて重く、業者にとって大きなリスクです。
(5) 未完成物件の広告開始時期の制限(宅建業法33条)
宅建業法第33条により、未完成物件は建築確認等の必要な許可を得た後でなければ広告できません。
理由:
- 許可前の広告は、建築されない可能性がある物件の広告となり、消費者を欺く恐れがある
- 建築確認を得た物件のみ広告することで、消費者保護を図る
建築確認番号が記載されているかを確認してください。
不動産広告の表示ルールと禁止表現
不動産広告には、厳格な表示ルールと禁止表現があります。
(1) 表示義務のある項目:所在地、交通、価格、間取り、面積等
公益社団法人首都圏不動産公正取引協議会によると、以下の項目は必ず表示する必要があります:
- 所在地: 住所(地番または住居表示)
- 交通: 最寄り駅・徒歩分数(または自動車・バス等の所要時間)
- 価格: 販売価格(税込み)
- 間取り: 部屋数・種類(1LDK、2LDK等)
- 専有面積: 登記簿面積(壁芯面積)
- 築年数: 新築・中古の別、建築年月
これらが記載されていない広告は、規約違反の可能性があります。
(2) 徒歩分数の計算ルール:徒歩1分=80m(信号待ち・坂道は考慮せず)
不動産公正競争規約では、徒歩1分=80mで計算することが定められています。
注意点:
- 信号待ち時間は考慮されない
- 坂道・歩道橋・踏切等は考慮されない
- 端数は切り上げ(例:81m=2分)
実際の所要時間と異なる場合があるため、現地で確認することを推奨します。
(3) 築年数の表示:新築=建築後1年未満かつ未入居
不動産公正競争規約では、新築は以下の条件を満たす物件のみ表示できます:
- 建築後1年未満
- かつ未入居
建築後1年を経過した場合、または一度でも入居があった場合は「新築」表示は不可となり、「築〇年〇ヶ月」と表示する必要があります。
(4) 禁止用語一覧:「完全」「日本一」「特選」「最高級」「格安」「完売」等
不動産公正競争規約により、以下の用語は使用禁止です:
| カテゴリ | 禁止用語 |
|---|---|
| 完全性を示す表現 | 完全、完璧、絶対、万全 |
| 最上級表現 | 日本一、抜群、当社だけ、他に類を見ない、比類なき |
| 価格に関する表現 | 格安、掘り出し物、土地値、買い得、特選 |
| 取引状況 | 完売(売り切れた物件の広告掲載は禁止) |
根拠のない最上級表現や断定的な表現は、消費者を誤認させる恐れがあるため禁止されています。
(5) 誇大広告の具体例:「日当たり抜群」「公園すぐ」等の根拠のない表現
以下の表現は、根拠が示されない場合、誇大広告に該当する可能性があります:
- 日当たり抜群: 方角や階数等の根拠が必要
- 公園すぐ: 具体的な距離(徒歩〇分)の明記が必要
- 駅近: 徒歩〇分の明記が必要
- 閑静な住宅街: 客観的な根拠が必要
具体的な数値や根拠が示されている広告を選んでください。
おとり広告と誇大広告の見分け方
おとり広告と誇大広告は、消費者を欺く悪質な広告です。見分け方を理解してください。
(1) おとり広告とは:取引できない物件の広告(架空物件、売却済み、売却意思なし)
公益社団法人全日本不動産協会によると、おとり広告とは以下のような広告です:
- 架空物件: 存在しない物件の広告
- 既に売却済みの物件: 成約済みなのに広告を継続
- 売却意思のない物件: 売主が売却する意思がない物件
これらは集客目的で掲載され、来店後に別物件を紹介する手法です。
(2) おとり広告の見分け方:相場より極端に安い、好条件過ぎる物件
おとり広告の特徴:
- 相場より極端に安い価格
- 好条件過ぎる(駅近・広い・新しい・安い等の条件が全て揃う)
- 問い合わせ時に「既に売却済み」「別の物件を紹介したい」と言われる
相場を事前に調べ、極端に安い物件には注意してください。
(3) 誇大広告の見分け方:根拠のない最上級表現、曖昧な距離表示
誇大広告の特徴:
- 「日本一」「抜群」「完璧」等の最上級表現
- 「駅近」「公園すぐ」等の曖昧な距離表示(具体的な徒歩分数がない)
- 「日当たり抜群」等の根拠が示されない主観的表現
具体的な数値や根拠が示されている広告を選んでください。
(4) 二重価格表示の禁止:「元価格〇〇円→今なら△△円」は原則禁止
景品表示法により、二重価格表示(「元価格〇〇円→今なら△△円」等)は原則禁止されています。
理由:
- 元価格が適正でない場合、消費者を誤認させる
- 値引き後の価格が適正価格である場合、実質的な値引きではない
不動産広告で二重価格表示を見かけた場合、慎重に判断してください。
(5) 完売後の広告継続:「完売御礼」後の広告掲載は禁止
不動産公正競争規約により、完売後の広告掲載は禁止されています。
「完売御礼」と表示しながら広告を継続するのは、おとり広告に該当します。
不動産広告のトラブル事例と対処方法
実際のトラブル事例と対処方法を解説します。
(1) トラブル事例1:おとり広告で集客、来店後に別物件を紹介
事例:
- 相場より安い物件の広告を見て問い合わせ
- 来店後「既に売却済み」と言われる
- 「別の良い物件があります」と別物件を紹介される
対処法:
- 問い合わせ時に「この物件は現在も募集中ですか?」と確認
- 「既に売却済み」と言われた場合、おとり広告の可能性を疑う
- 不動産適正取引推進機構や消費生活センターへ相談
(2) トラブル事例2:広告と実際の条件が異なる(日当たり、設備等)
事例:
- 広告で「日当たり抜群」と記載
- 実際は北向きで日当たりが悪い
- 設備(エアコン、照明等)が広告と異なる
対処法:
- 内覧時に広告内容と実際の条件を照合
- 相違点を不動産会社に確認
- 重要事項説明書と契約書で条件を再確認
(3) トラブル事例3:禁止用語を使った誇大広告
事例:
- 「日本一の眺望」「完璧な立地」等の禁止用語を使用
- 根拠が示されず、主観的な表現のみ
対処法:
- 禁止用語が使用されている広告は信頼性が低いと判断
- 具体的な数値や根拠が示されている広告を選ぶ
- 不動産公正取引協議会へ通報
(4) 相談窓口:不動産適正取引推進機構、消費生活センター
トラブルが発生した場合、以下へ相談してください:
- 不動産適正取引推進機構: https://www.retio.or.jp/
- 消費生活センター: https://www.kokusen.go.jp/
- 公益社団法人首都圏不動産公正取引協議会: https://www.sfkoutori.or.jp/
専門家に相談することで、適切な対処法を教えてもらえます。
(5) 違反広告を見つけた場合の報告方法
違反広告を見つけた場合、以下の方法で報告できます:
- 公益社団法人首都圏不動産公正取引協議会へ通報(ウェブフォームまたは電話)
- 国土交通省へ通報(宅建業法違反の場合)
- 公正取引委員会へ通報(景品表示法違反の場合)
報告により、業界全体の健全化に貢献できます。
まとめ:不動産広告の正しい見方と注意点
不動産広告は、宅建業法、景品表示法、不動産公正競争規約の3つの法規制で厳格に守られています。「完全」「日本一」「最高級」「格安」「完売」等の禁止用語が使用されていないか、徒歩分数や築年数の表示ルールが守られているかを確認してください。
おとり広告(取引できない物件の広告)は厳重に禁止され、相場より極端に安い物件や好条件過ぎる物件には注意が必要です。トラブルが発生した場合は、不動産適正取引推進機構や消費生活センターへ相談してください。
信頼できる不動産会社と専門家(宅建士、弁護士)に相談しながら、安全な不動産取引を進めましょう。
(1) 表示ルールを理解して広告を読む
徒歩1分=80m、新築=建築後1年未満かつ未入居などの表示ルールを理解し、広告を正しく読んでください。
(2) おとり広告・誇大広告を見分ける
相場より極端に安い物件、禁止用語を使用している広告、根拠のない最上級表現がある広告には注意してください。
(3) 相場より極端に安い物件には注意
相場を事前に調べ、極端に安い物件はおとり広告の可能性を疑ってください。問い合わせ時に「現在も募集中ですか?」と確認してください。
(4) トラブル時は専門機関(消費生活センター等)へ相談
トラブルが発生した場合は、不動産適正取引推進機構、消費生活センター、公益社団法人首都圏不動産公正取引協議会へ相談してください。専門家のアドバイスを受けることで、適切な対処が可能です。
