不動産広告の正しい読み方を知っていますか?
不動産広告を見る際、「どの情報が正しいのか」「誇大広告ではないか」「専門用語の意味が分からない」と不安を感じる方は少なくありません。
この記事では、不動産広告を規制する法律、広告で使われる専門用語の解説、誇大広告・おとり広告の見分け方、正しい読み取り方を解説します。
宅地建物取引業法、景品表示法、不動産の表示に関する公正競争規約を理解し、広告を正しく読み取れるようになります。
この記事のポイント
- 不動産広告は宅建業法、景品表示法、不動産の表示に関する公正競争規約の3つの法律で厳格に規制されている
- 誇大広告で使用禁止の特定用語(「完璧」「絶対」「日本一」等)、おとり広告(実際には取引できない物件の広告)は法律違反
- 徒歩○分は80m=1分で計算、築年数は建築確認日から起算など、専門用語の正確な意味を理解することが重要
- 広告だけで判断せず、必ず現地確認・重要事項説明を受けることが必要
なぜ不動産広告の正しい読み方が重要なのか
不動産は人生で最も高額な買い物の一つであり、広告の情報を誤解すると、想定外の費用が発生する、希望と異なる物件を購入するなどのトラブルに発展する可能性があります。
不動産広告は宅建業法、景品表示法、公正競争規約で厳格に規制されていますが、すべての広告が100%正確とは限りません。
広告の表示ルール、専門用語の意味、誇大広告・おとり広告の見分け方を理解することで、正しい判断ができるようになります。
不動産広告を規制する3つの法律
(1) 宅地建物取引業法(宅建業法)による規制
宅建業法は不動産業を規制する法律であり、広告に関しては以下の3点を規定しています。
| 条文 | 内容 |
|---|---|
| 第32条 | 誇大広告の禁止(事実と著しく相違する表示、実際より著しく優良・有利と誤認させる表示の禁止) |
| 第33条 | 広告開始時期の制限(未完成物件は建築確認取得後、未完成の宅地は開発許可取得後のみ広告可能) |
| 第34条 | 取引態様の明示(「売主」「代理」「媒介(仲介)」のいずれかを明示する義務) |
違反すると、6ヶ月以下の懲役または100万円以下の罰金、業務停止や免許取り消しの可能性があります。
(2) 景品表示法による規制
景品表示法(正式名称「不当景品類及び不当表示防止法」)は、商品・サービスの品質や価格を偽って表示することを禁止する法律です。
不動産広告では、特に「おとり広告」(実際には取引できない物件を広告すること)が景品表示法第5条第3項で禁止されています。
違反すると、内閣総理大臣から広告の差し止め命令が出され、命令違反には2年以下の懲役または300万円以下の罰金が科されます。
(3) 不動産の表示に関する公正競争規約
不動産業界の自主規制ルールであり、景品表示法に基づき消費者庁と公正取引委員会の認定を受けています。
2022年9月1日に改正され、特定用語(「完璧」「完全」「絶対」「日本一」「厳選」等)の使用が原則禁止されました。
違反すると、1度目50万円以下、2度目500万円以下の罰金が科される可能性があります。
広告で使われる専門用語と表示義務
(1) 必須表示事項(取引態様・物件所在地・交通・価格等)
不動産広告では、以下の事項を必ず表示する義務があります。
- 取引態様: 「売主」「代理」「媒介(仲介)」のいずれか
- 物件所在地: 市区町村名まで(地番は任意)
- 交通: 最寄り駅と徒歩時間
- 価格: 税込表示、諸費用含むか明記
- 面積: 専有面積(マンション)、土地面積・建物面積(戸建て)
- 構造・階数: 建物の構造(木造、鉄筋コンクリート造等)
- 築年数: 建築確認日からの経過年数
(2) 徒歩○分の計算方法(80m=1分)
広告の「徒歩○分」は、80m=1分で計算されます。1分未満は切り上げます。
例:
- 82m → 2分
- 160m → 2分
- 161m → 3分
ただし、坂道・信号待ち・歩道橋等は考慮されないため、実際の所要時間とは異なる場合があります。必ず現地確認してください。
(3) 築年数の起算日と表示方法
築年数は、建築確認日(または建物登記日)から起算します。
例:
- 2020年1月に建築確認 → 2025年1月時点で「築5年」
(4) 専有面積・バルコニー面積の測定方法
マンションの専有面積は、壁の内側を測定する「内法面積」で表示されます。
バルコニーは専有面積に含まれません(共用部分のため)。
誇大広告・おとり広告の見分け方
(1) おとり広告とは何か(定義と3つのパターン)
おとり広告とは、実際には取引できない物件を広告することです。消費者庁によると、以下の3パターンがあります。
- すでに成約済みの物件: 売却済み・賃貸済みなのに広告を掲載し続ける
- 実在しない架空の物件: 存在しない物件で集客し、別の物件を紹介する
- 実際には販売する意思のない物件: 売る気がないのに広告で集客する
(2) 誇大広告で使用禁止の特定用語(「完璧」「絶対」等)
宅建業法第32条と公正競争規約により、以下の特定用語は原則使用禁止です。
禁止表現の例:
- 「完璧」「完全」「絶対」
- 「日本一」「業界No.1」(根拠なし)
- 「厳選」「特選」(基準不明)
- 「必ず儲かる」「値上がり確実」(断定的判断)
(3) おとり広告の見抜き方(不自然に安い価格、問い合わせても紹介されない)
おとり広告の典型的なサインは以下の通りです。
- 不自然に相場より安い価格: 周辺物件より2-3割安い場合は要注意
- 問い合わせても「先ほど成約しました」と言われる: 常套句
- 別の物件ばかり紹介される: 本命物件を見せない
- 情報の更新日が古い: 数ヶ月前の掲載のまま
2017年1月以降、主要ポータルサイトでは違反業者に1ヶ月以上の広告掲載停止処分を科しています。
(4) 違反した場合の罰則
| 法律 | 罰則 |
|---|---|
| 宅建業法違反 | 6ヶ月以下の懲役または100万円以下の罰金、業務停止・免許取り消しの可能性 |
| 景品表示法違反 | 2年以下の懲役または300万円以下の罰金 |
| 公正競争規約違反 | 1度目50万円以下、2度目500万円以下の罰金 |
広告を正しく読み取る7つのチェックポイント
(1) 取引態様の確認(売主・代理・媒介)
取引態様により、仲介手数料の有無が変わります。
- 売主: 仲介手数料なし
- 代理: 仲介手数料あり(ただし売主側が負担する場合もあり)
- 媒介(仲介): 仲介手数料あり(物件価格の3%+6万円+消費税が上限)
(2) 広告開始時期の確認(未完成物件は建築確認後のみ)
未完成物件は建築確認取得後、未完成の宅地は開発許可取得後でなければ広告できません。
建築確認番号や開発許可番号が記載されていない場合は、宅建業法違反の可能性があります。
(3) 価格表示の確認(税込・税抜、諸費用含むか)
価格は税込表示が原則です。
諸費用(仲介手数料、登記費用、不動産取得税等)が含まれているかを必ず確認してください。
(4) 交通・最寄り駅の確認(徒歩時間の正確性)
徒歩時間は80m=1分で計算されますが、実際の所要時間とは異なる場合があります。
現地で実際に歩いてみることを強く推奨します。
(5) 物件の設備・仕様の確認(写真と実物の相違)
広告の写真は、最も魅力的な角度・時間帯で撮影されている場合があります。
日当たり、眺望、周辺環境は、現地確認で必ずチェックしてください。
(6) 禁止表現の使用有無(「日本一」「厳選」等)
禁止表現が使われている広告は、法規制を理解していない業者の可能性があります。
信頼性に疑問がある場合は、別の物件を検討してください。
(7) 情報の更新日・掲載日の確認
更新日が古い広告は、すでに成約済みの可能性があります。
問い合わせ前に、情報の鮮度を確認してください。
まとめ:広告だけで判断せず現地確認を
不動産広告は、宅建業法、景品表示法、不動産の表示に関する公正競争規約で厳格に規制されています。誇大広告で使用禁止の特定用語(「完璧」「絶対」「日本一」等)、おとり広告(実際には取引できない物件の広告)は法律違反であり、重い罰則が科されます。
広告の専門用語(徒歩○分は80m=1分、築年数は建築確認日から起算等)を正確に理解し、7つのチェックポイント(取引態様、広告開始時期、価格、交通、設備、禁止表現、更新日)で広告を評価してください。
ただし、広告だけで判断せず、必ず現地確認を行い、重要事項説明を受けることが重要です。不明な点は、宅建士や専門家に相談し、慎重に判断しましょう。
