不動産取得税を支払う前に知っておくべきこと
不動産を購入すると、物件価格以外に「不動産取得税」という地方税が一度だけ課税されます。「実際にいくら払うことになるのか」「いつ支払うのか」といった疑問は、Yahoo!知恵袋などでもよく見られる質問です。
この記事では、不動産取得税の基礎知識から計算方法、軽減措置の活用方法、実際の支払額例まで、総務省・国土交通省の公式情報を元に解説します。
不動産取得が初めての方でも、必要な税金を正確に把握し、軽減措置を活用して負担を抑えられるようになります。
この記事のポイント
- 不動産取得税は取得後4〜6ヶ月で納税通知が届く(新築の場合は1年以上かかることもある)
- 東京都2024年データでは新築平均18万円、中古平均13万円が実際の支払額
- 軽減措置を適用すると実質ゼロ円になるケースも多い
- 軽減措置の申請は取得後60日以内(東京都は30日以内)が原則
- 固定資産税評価額で計算されるため、購入価格×3%ではない
不動産取得税とは(基礎知識)
(1) 課税対象となる取得パターン
不動産取得税は、土地や建物を「購入」「贈与」「新築」「増改築」等で取得した際に一度だけ課税される地方税です。総務省の定義によれば、売買だけでなく、贈与や交換、法人からの現物出資なども課税対象となります。
相続による取得は非課税です。
(2) 納税通知が届くタイミング(取得後4〜6ヶ月)
不動産取得税は、取得後すぐに支払うわけではありません。ナカジツによると、取得後4〜6ヶ月で納税通知書が届き、通知書記載の期限(通常1ヶ月以内)までに支払います。
新築の場合は固定資産税評価額が確定するまで時間がかかるため、1年以上かかることもあります。資金計画を立てる際は、この時期を見込んで余裕を持っておくことが重要です。
(3) 固定資産税評価額と購入価格の違い
不動産取得税は、実際の購入価格ではなく「固定資産税評価額」を基に計算されます。固定資産税評価額は、時価の7割程度(土地)、5〜6割程度(建物)が目安です。
例えば、購入価格3,000万円の土地でも、固定資産税評価額が2,100万円(時価の7割)であれば、2,100万円を基に税額が計算されます。
不動産取得税の計算方法
(1) 基本式:課税標準額×税率(原則4%、住宅は3%)
不動産取得税の基本式は以下の通りです。
不動産取得税 = 課税標準額 × 税率
税率は原則4%ですが、2027年3月31日までに取得した住宅・土地については3%に軽減されます(総務省)。
| 取得物件 | 原則税率 | 軽減後税率(2027年3月31日まで) |
|---|---|---|
| 住宅(建物) | 4% | 3% |
| 住宅用土地 | 4% | 3% |
| 非住宅(事務所・店舗等) | 4% | 4%(軽減なし) |
(2) 土地の課税標準額の計算(宅地は評価額の1/2)
2027年3月31日までに取得した宅地については、固定資産税評価額の1/2が課税標準額となる特例があります。
計算例:
固定資産税評価額:2,000万円
課税標準額:2,000万円 × 1/2 = 1,000万円
不動産取得税:1,000万円 × 3% = 30万円
(3) 建物の課税標準額の計算
建物は、固定資産税評価額から控除額を引いた金額が課税標準額となります。
新築住宅の場合、1,200万円の控除が適用されます(後述の軽減措置で詳しく解説)。
軽減措置の種類と適用条件
(1) 新築住宅の控除(1,200万円控除)
国土交通省によれば、以下の要件を満たす新築住宅は、固定資産税評価額から1,200万円を控除できます。
要件:
- 床面積50㎡以上240㎡以下(戸建て以外の貸家住宅は40㎡以上240㎡以下)
計算例:
建物の固定資産税評価額:1,500万円
控除後の課税標準額:1,500万円 - 1,200万円 = 300万円
不動産取得税:300万円 × 3% = 9万円
(2) 認定長期優良住宅の控除(1,300万円控除)
2026年3月31日までに取得した認定長期優良住宅は、1,300万円の控除が適用されます。
認定長期優良住宅とは、長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられた住宅として認定されたものです。
(3) 中古住宅の控除(築年数別の控除額)
中古住宅の場合、新築時期に応じて控除額が変わります。
| 新築時期 | 控除額 |
|---|---|
| 1997年4月1日以降 | 1,200万円 |
| 1989年4月1日〜1997年3月31日 | 1,000万円 |
| 1985年7月1日〜1989年3月31日 | 450万円 |
| 1981年7月1日〜1985年6月30日 | 420万円 |
(4) 申告期限と手続き(取得後60日以内)
軽減措置を受けるためには、取得後60日以内(東京都は30日以内)に都道府県税事務所へ申告が必要です。申告を忘れても後から申請は可能ですが、満額で納税通知が来る可能性があります。
SUUMOによれば、必要書類は以下の通りです。
- 不動産取得税申告書
- 売買契約書または登記済証の写し
- 住民票(自己居住用の場合)
実際の支払額例(物件種別・価格帯別)
(1) 新築戸建て3,000万円の場合
前提条件:
- 建物価格:1,500万円(固定資産税評価額900万円、時価の6割と仮定)
- 土地価格:1,500万円(固定資産税評価額1,050万円、時価の7割と仮定)
- 床面積:100㎡(軽減措置適用)
建物の税額:
固定資産税評価額:900万円
控除後:900万円 - 1,200万円 = 0円(控除額が評価額を上回る)
不動産取得税:0円
土地の税額:
固定資産税評価額:1,050万円
課税標準額:1,050万円 × 1/2 = 525万円
不動産取得税:525万円 × 3% = 15.75万円
合計:15.75万円
(2) 中古マンション2,500万円の場合
前提条件:
- 建物価格:1,200万円(固定資産税評価額600万円)
- 土地価格:1,300万円(固定資産税評価額910万円)
- 新築時期:2010年(控除額1,200万円適用)
建物の税額:
固定資産税評価額:600万円
控除後:600万円 - 1,200万円 = 0円
不動産取得税:0円
土地の税額:
固定資産税評価額:910万円
課税標準額:910万円 × 1/2 = 455万円
不動産取得税:455万円 × 3% = 13.65万円
合計:13.65万円
(3) 軽減措置でゼロ円になるケース
オウチーノによると、床面積50㎡以上240㎡以下の新築住宅で、土地・建物の控除を適用すると実質ゼロ円になるケースがあります。
具体的には、建物の固定資産税評価額が1,200万円以下で、土地の課税標準額も小さい場合、ゼロ円になる可能性があります。
(4) 軽減措置が適用できないケース
以下の場合、軽減措置が適用できず、満額課税されます。
- 床面積50㎡未満または240㎡超の住宅
- 申告期限(取得後60日以内)に申告しなかった場合
- 非住宅(事務所・店舗等)
計算例(軽減なし):
建物の固定資産税評価額:1,500万円
不動産取得税:1,500万円 × 4% = 60万円
まとめ:不動産取得税の資金計画と申告手続き
不動産取得税は、取得後4〜6ヶ月で納税通知が届く地方税です。東京都2024年データでは新築平均18万円、中古平均13万円が実際の支払額ですが、軽減措置を適用すると実質ゼロ円になるケースも多くあります。
軽減措置を受けるためには、取得後60日以内(東京都は30日以内)に都道府県税事務所へ申告が必要です。申告を忘れると満額で課税される可能性があるため、早めに手続きを済ませましょう。
税制は改正される可能性があるため、具体的な金額や要件は、東京都主税局の計算ツールや、お住まいの都道府県税事務所で最新情報を確認することを推奨します。税理士への相談も検討してください。


