固定資産税路線価とは?基本知識
不動産を所有する際、「自分の土地の固定資産税はどのように決まっているのか」と疑問に感じる方は少なくありません。
この記事では、固定資産税路線価の仕組み、調べ方、大阪・横浜など主要都市での確認方法を、総務省や大阪市の公式情報を元に解説します。
固定資産税の計算根拠を理解し、評価額の妥当性を検証したいと考えている方でも、具体的な調べ方と活用方法を正確に把握できるようになります。
この記事のポイント
- 固定資産税路線価は公示価格の約7割が目安で、3年毎に更新される
- 全国地価マップ(無料)で誰でも簡単に調べられる
- 相続税路線価(公示価格の8割)とは異なり、固定資産税等の計算に使用
- 大阪市は「マップナビおおさか」、横浜市は全国地価マップで確認可能
- 評価額は路線価×面積で概算できるが、補正率により変動する
(1) 固定資産税路線価の定義と役割
固定資産税路線価とは、固定資産税評価額を計算するために道路に設定された1㎡あたりの土地単価です。公示価格の約7割が目安となります。
固定資産税路線価は、以下の4つの税金の計算に使用されます。
| 税金の種類 | 用途 |
|---|---|
| 固定資産税 | 土地・建物の所有者に課される市町村税 |
| 都市計画税 | 市街化区域内の土地・建物に課される市町村税 |
| 不動産取得税 | 不動産取得時に課される都道府県税 |
| 登録免許税 | 不動産登記時に課される国税 |
(2) 公示価格の7割評価の意義
なぜ固定資産税路線価は公示価格の7割なのでしょうか。船橋市の公式サイトによると、平成6年度の評価替えで全国統一基準として決定されました。
7割評価の意図:
- 納税者保護: 期待要素を排除し、地価変動の緩衝材とする
- 全国統一基準: 地域間の不公平を是正
- 安定性確保: 3年間の評価期間中の地価変動に対応
(3) 3年毎の評価替えの仕組み(令和6年度が基準年)
固定資産税路線価は、3年に1度更新されます。基準年の1月1日時点の価格で評価され、4月に公表されます。
| 基準年度 | 評価時点 | 次回評価替え |
|---|---|---|
| 令和6年度(2024年度) | 2024年1月1日 | 令和9年度(2027年度) |
| 令和9年度(2027年度) | 2027年1月1日 | 令和12年度(2030年度) |
令和6年度が直近の基準年度となっており、次回の評価替えは令和9年度(2027年度)です。
固定資産税路線価の調べ方
固定資産税路線価は、全国地価マップで誰でも無料で調べられます。
(1) 全国地価マップの使い方
手順:
- 全国地価マップにアクセス
- 「固定資産税路線価等」を選択
- 住所を入力して検索
- 地図上の前面道路に記載された数字が路線価(1㎡あたりの単価)
全国地価マップは、資産評価システム研究センターが提供する公式ツールで、固定資産税路線価・相続税路線価・公示価格・基準地価の4つの公的土地評価情報を閲覧できます。
(2) 路線価図の見方と数字の読み方
路線価図には、道路に面して数字が記載されています。
固定資産税路線価の表示:
- 単位: 1円単位(例:150,000円/㎡)
- 表示方法: 道路に直接数字を記載
- 借地権割合の記号: なし(相続税路線価のみ)
相続税路線価の表示:
- 単位: 千円単位(例:500D = 50万円/㎡、借地権割合D=60%)
- 表示方法: 数字+借地権割合のアルファベット(A〜G)
固定資産税路線価と相続税路線価を混同しないよう注意が必要です。
(3) 標準宅地の確認方法
路線価が設定されていない地域では、「標準宅地の単価」を使用して評価額を計算します。
標準宅地も全国地価マップで確認できます。「固定資産税路線価等」を選択し、地図上の「●」マークが標準宅地です。
大阪・横浜など主要都市での確認方法
(1) 大阪市の固定資産税路線価(マップナビおおさか)
大阪市の固定資産税路線価は、「マップナビおおさか」で閲覧可能です。大阪市公式サイトからアクセスできます。
確認方法:
- 大阪市公式サイトから「マップナビおおさか」にアクセス
- 「固定資産税路線価」を選択
- 住所または地図から該当地点を検索
- 路線価データを確認
大阪府全体の基準宅地路線価は、大阪府ホームページで市町村別に公開されています。
(2) 横浜市の固定資産税路線価
横浜市の固定資産税路線価は、全国地価マップで確認できます。
確認方法:
- 全国地価マップにアクセス
- 「固定資産税路線価等」を選択
- 神奈川県横浜市の住所を入力
- 地図上の路線価を確認
横浜市役所の資産税課でも、固定資産税路線価の問い合わせに対応しています。
(3) その他主要都市の公開状況
主要都市の固定資産税路線価は、以下の方法で確認できます。
| 都市 | 確認方法 |
|---|---|
| 東京都 | 全国地価マップ、各区の税務課 |
| 名古屋市 | 全国地価マップ、市役所税務部 |
| 福岡市 | 全国地価マップ、市役所課税企画課 |
| 札幌市 | 全国地価マップ、市役所資産税課 |
全国地価マップは全国の路線価をカバーしていますが、更新は路線価公表から数か月後となるため、最新情報は各自治体の公式サイトで確認することを推奨します。
固定資産税路線価と他の路線価の違い
(1) 相続税路線価との違い(7割vs8割)
固定資産税路線価と相続税路線価は、目的・評価者・更新頻度が異なります。
| 項目 | 固定資産税路線価 | 相続税路線価 |
|---|---|---|
| 目的 | 固定資産税等の課税標準 | 相続税・贈与税の課税標準 |
| 評価水準 | 公示価格の約7割 | 公示価格の約8割 |
| 評価者 | 市町村 | 国税庁 |
| 更新頻度 | 3年毎 | 毎年(7月公表) |
| 表示単位 | 1円単位 | 千円単位 |
| 借地権割合 | 記載なし | A〜Gの記号で記載 |
税理士法人チェスターによると、相続税路線価から固定資産税路線価を推計する計算式は以下の通りです。
計算式: 固定資産税路線価 = 相続税路線価 ÷ 0.8 × 0.7
(2) 公示価格・基準地価との違い
公示価格(公示地価)と基準地価は、土地取引の指標となる標準価格です。
| 項目 | 公示価格 | 基準地価 |
|---|---|---|
| 評価者 | 国土交通省 | 都道府県 |
| 公表時期 | 毎年3月 | 毎年9月 |
| 評価時点 | 1月1日 | 7月1日 |
| 対象地点 | 全国約2.6万地点 | 全国約2.1万地点 |
固定資産税路線価は、これらの公示価格・基準地価を基に、市町村が評価します。
(3) 実勢価格との関係
実勢価格(時価)は、実際に不動産が売買される価格です。
価格水準の目安:
- 公示価格: 100%
- 実勢価格: 110〜120%(市況により変動)
- 相続税路線価: 80%
- 固定資産税路線価: 70%
固定資産税路線価は3年に1度しか更新されないため、地価変動が激しい時期は実勢価格と乖離する可能性があります。
固定資産税路線価の活用方法
(1) 固定資産税評価額の概算計算
固定資産税評価額の概算は、「固定資産税路線価×土地面積」で計算できます。
計算例:
- 固定資産税路線価: 150,000円/㎡
- 土地面積: 100㎡
- 評価額概算: 150,000円 × 100㎡ = 1,500万円
ただし、実際には補正率がかかるため、この計算は概算値となります。
(2) 補正率(奥行・形状)の考え方
土地の評価額は、以下の補正率により調整されます。
主な補正率:
- 奥行価格補正: 土地の奥行距離に応じて調整(奥行が極端に長い・短い場合)
- 形状補正: 不整形地、旗竿地など形状が不規則な土地
- 間口狭小補正: 道路に接する間口が狭い土地
- がけ地補正: 傾斜地・崖地
SUUMOによると、補正率は自治体により異なるため、正確な評価額は自治体の固定資産課税台帳で確認することを推奨します。
(3) 不動産取引・相続時の参考情報
固定資産税路線価は、以下の場面で参考情報として活用できます。
不動産取引:
- 売買価格の妥当性判断
- 実勢価格の推定(路線価÷0.7×1.1〜1.2)
- 複数物件の比較検討
相続・贈与:
- 固定資産税・都市計画税の概算
- 不動産取得税の概算
- 相続税路線価との比較(路線価÷0.7×0.8)
相続税や贈与税の計算には相続税路線価を使用する必要があるため、固定資産税路線価を誤って使用しないよう注意が必要です。
まとめ:固定資産税路線価を理解して税金を正しく把握
固定資産税路線価は、固定資産税等の計算に使用される1㎡あたりの土地単価で、公示価格の約7割が目安です。3年に1度更新され、令和6年度が直近の基準年度となっています。
全国地価マップで誰でも無料で調べられ、大阪市は「マップナビおおさか」、横浜市は全国地価マップで確認できます。評価額は路線価×面積で概算できますが、補正率により変動するため、正確な評価額は自治体の固定資産課税台帳で確認することを推奨します。
相続税路線価(公示価格の8割)とは異なるため、税金の種類により適切な路線価を使用しましょう。不明な点があれば、税理士等の専門家への相談をおすすめします。
