不動産購入申込書とは:物件購入の最初の重要ステップ
不動産の購入を検討する際、気に入った物件が見つかると「購入申込書」の提出を求められます。この記事では、購入申込書の内容、書き方、法的位置づけ、キャンセル時の扱いを、大手不動産ポータルや専門メディアの情報を元に解説します。
購入申込書を提出する前に知っておくべきポイントを理解し、安心して手続きを進められるようになります。
この記事のポイント
- 購入申込書は購入意思を表明する書類で、売買契約書とは異なる
- 法的拘束力は原則ないが、慎重に検討した上で提出すべき
- 売買契約前であればキャンセル可能で、申込金は返還される
- 記載内容は購入希望価格、手付金額、融資特約、有効期限など
- 提出後1~10日で重要事項説明と売買契約を締結するのが一般的
購入申込書の基礎知識:買付証明書との違いと役割
購入申込書(買付証明書)の定義
不動産購入申込書とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説|マネーフォワード クラウド契約によると、購入申込書(買付証明書とも呼ばれる)は、購入希望者が売主に対して購入意思を表明する書類です。
不動産会社が用意する雛形に記入するのが一般的で、購入希望者が自分で作成する必要はありません。
売買契約書との違い
購入申込書と売買契約書は、以下のように明確に異なります。
| 項目 | 購入申込書 | 売買契約書 |
|---|---|---|
| 法的拘束力 | なし | あり |
| 提出時期 | 物件見学後 | 重要事項説明後 |
| キャンセル | 可能(申込金返還) | 手付金放棄で可能 |
| 目的 | 購入意思の表明 | 契約の成立 |
| 印紙税 | 不要 | 必要 |
国税庁によると、購入申込書は「単なる申込みの事実を証明するに過ぎない」ため、印紙税の課税対象にはなりません。
購入申込書の役割:意思表示と交渉の起点
不動産売買の「買付証明書」とは?|SUUMOによると、購入申込書には以下の役割があります。
- 購入意思の明確化: 口頭ではなく書面で意思表示
- 交渉の起点: 購入希望価格を提示し、価格交渉を開始
- 優先交渉権の確保: 他の購入希望者より優先的に交渉できる
- 言った言わないトラブルの防止: 書面で記録を残す
記載内容と書き方:購入希望価格・手付金・融資特約のポイント
購入希望価格の記載方法
購入申込書には、購入希望価格を記載します。売り出し価格そのままでも、値引き交渉を前提とした価格でも構いません。
価格交渉のポイント:
- 売り出し価格の5~10%程度の値引きが一般的な交渉範囲
- 根拠のない大幅な値引き要求は売主に受け入れられない可能性が高い
- 物件の築年数、設備状況、市場相場を踏まえた価格設定が重要
手付金額の決め方(物件価格の5~10%が目安)
不動産売買の買付証明書とは?|ノムコムによると、手付金額は物件価格の5~10%が目安です。
手付金の目安:
- 3,000万円の物件: 150万円~300万円
- 5,000万円の物件: 250万円~500万円
手付金は売買契約時に支払うもので、購入申込時の申込金とは異なります。
融資特約の記載と有効期限(1~2週間が一般的)
購入申込書には、以下の項目も記載します。
- 融資特約: 住宅ローンが下りなかった場合に契約を白紙撤回できる条項
- 有効期限: 1~2週間が一般的(長くても1ヶ月)
- 契約希望日: 重要事項説明と売買契約を行う日程
融資特約は、住宅ローンを利用する場合に必ず記載すべき重要な条項です。
不動産会社が用意する雛形の活用
購入申込書の雛形は不動産会社が用意してくれるため、購入希望者が自分で作成する必要はありません。雛形に必要事項を記入するだけで完成します。
記入時の注意点:
- 急かされても慎重に記入する
- 不明点は必ず質問する
- 記入前に十分に検討する時間を取る
法的拘束力とキャンセルの可否:契約との違いを理解する
購入申込書に法的拘束力はない理由
不動産購入申込書の役割とは?法的拘束力はないが内容はしっかり検討|モゲチェックによると、購入申込書は「購入希望の意思表示」に過ぎず、法的拘束力はありません。
法的拘束力がない理由:
- 売買契約書のように双方の署名・押印による合意がない
- 単なる申込みの事実を証明するだけの書類
- 印紙税の課税対象にもならない
キャンセルが可能な場合と注意点
不動産の購入は途中でキャンセル可能?気を付けたいこと|スミナビによると、売買契約前であればキャンセル可能です。
キャンセル時のポイント:
- 売買契約前: キャンセル可能(申込金は返還される)
- 売買契約後: 手付金放棄でキャンセル可能(手付金は返還されない)
- 引渡し後: 原則キャンセル不可
ただし、法的には可能でも、売主・不動産会社に迷惑をかける行為であることを理解しておくべきです。
例外:売主承諾後や交渉最終段階でのリスク
購入申込書は原則として法的拘束力がありませんが、以下の場合は例外的にリスクがあります。
リスクが高まるケース:
- 売主が承諾した場合: 契約成立と評価される可能性がある
- 交渉が最終段階の場合: 契約締結上の過失責任(契約交渉を途中で不当に破棄した場合に相手方の損害を賠償する責任)が認められ、損害賠償請求を受ける可能性がある
このため、購入申込書は「法的拘束力はないが、慎重に検討した上で提出すべき」と言えます。
申込金(預かり金)の返還ルール
物件購入の申し込み(購入予約)とは。キャンセルはできる?|SUUMOによると、申込金(預かり金)は売買契約前のキャンセルで全額返還されます。
| 項目 | 申込金(預かり金) | 手付金 |
|---|---|---|
| 支払時期 | 購入申込時 | 売買契約時 |
| 金額目安 | 数万円~10万円程度 | 物件価格の5~10% |
| キャンセル時 | 全額返還 | 放棄 |
申込金と手付金の違いを理解しておくことが重要です。
購入申込後の流れと注意点:重要事項説明から売買契約まで
提出後1~10日で重要事項説明と売買契約
購入申込書を提出した後の一般的な流れは以下の通りです。
- 購入申込書提出(初日)
- 売主の承諾(1~3日後)
- 住宅ローン事前審査(3~7日後)
- 重要事項説明(1~10日後)
- 売買契約締結(重要事項説明と同日または翌日)
重要事項説明では、宅地建物取引士が物件や取引条件の重要事項を説明します。この説明を受けた後、売買契約を締結します。
売主・不動産会社の契約準備が始まる点に留意
購入申込書を提出すると、売主・不動産会社は以下の契約準備を始めます。
- 重要事項説明書の作成
- 売買契約書の作成
- 物件調査(登記簿、境界、設備等)
- 住宅ローン事前審査の手配
これらの準備にはコストと時間がかかるため、キャンセルは迷惑をかける行為になります。
キャンセル時の迷惑を最小限にする方法
キャンセルが避けられない場合、以下の点に留意してください。
- できるだけ早く連絡: 契約準備が進む前に
- 理由を明確に伝える: 「やっぱりやめた」ではなく、具体的な理由を
- 誠意ある対応: 迷惑をかけたことへの謝罪を
キャンセルは法的には可能ですが、信頼関係を損なう行為であることを理解しておきましょう。
まとめ:購入申込書を提出する前に確認すべきこと
不動産購入申込書は、購入希望者が売主に対して購入意思を表明する書類です。法的拘束力は原則ありませんが、売主が承諾した場合や交渉が最終段階に達している場合は、契約締結上の過失責任が認められる可能性があります。
売買契約前であればキャンセル可能ですが、売主・不動産会社に迷惑をかける行為であるため、慎重に検討した上で提出してください。記載内容(購入希望価格、手付金額、融資特約、有効期限)は売買契約の重要な要素となるため、十分に検討しましょう。
購入申込書を提出する前に、物件の立地、価格、設備、管理状態を十分に確認し、住宅ローンの事前審査も通しておくことをおすすめします。不明点がある場合は、宅地建物取引士や専門家に相談しながら進めましょう。
