平屋と二階建て、固定資産税はどちらが高い?
延床面積が同じなら税額はほぼ同じという事実
戸建て購入・建築を検討する際、「平屋と二階建て、どちらが固定資産税が高いのか」と気になる方は多いでしょう。
結論から言うと、延床面積が同じ場合、建物部分の固定資産税はほぼ同じです。固定資産税は「延床面積×建物構造×築年数」で評価額が決まるため、延床面積が同じであれば、階数による大きな差は出ません。
ただし、平屋は基礎・屋根面積が広く、土地面積も必要となるため、実際の税額は若干高くなる傾向があります。
平屋が高くなりやすい理由(基礎・屋根・土地面積)
平屋が二階建てより固定資産税が高くなりやすい主な理由は以下の3点です。
1. 基礎・屋根面積が約2倍
延床面積100㎡の場合、平屋は基礎・屋根面積がそれぞれ約100㎡必要ですが、二階建ては各約50㎡で済みます。基礎・屋根の面積が広いと建築費が高くなり、評価額も上がります。
2. 土地面積が1.5-2倍必要
平屋は二階建てより敷地面積が広く必要です(延床面積100㎡の場合、平屋は150-200㎡、二階建ては80-100㎡が目安)。土地の固定資産税は面積に比例するため、平屋の方が高くなります。
3. 建材・設備の差
平屋は外壁面積が少ない一方、屋根の断熱性能が重要となり、高性能な建材を使用すると評価額が上がることがあります。
この記事のポイント
- 延床面積が同じなら建物部分の固定資産税はほぼ同じだが、平屋は基礎・屋根・土地面積が広いため年間約3万円高くなる傾向
- 固定資産税は課税標準額×税率1.4%で計算され、家屋評価額は再建築価格×経年減点補正率で決まる
- 新築住宅は3年間固定資産税が1/2に軽減され、長期優良住宅は5年間軽減される
- 小屋裏収納の活用、木造選択、シンプルな設計で評価額を下げ、固定資産税を抑えることが可能
固定資産税の計算方法とは
固定資産税の基本(課税標準額×税率1.4%)
固定資産税は、毎年1月1日時点の土地・建物所有者に課される地方税です。計算式は以下の通りです。
固定資産税 = 課税標準額 × 税率
- 課税標準額: 評価額から各種軽減措置を適用した金額
- 税率: 標準税率は1.4%(自治体により異なる場合あり)
(出典: 総務省「固定資産税の概要」)
家屋の評価額の決まり方(再建築価格×経年減点補正率)
家屋の評価額は、以下の計算式で決まります。
家屋評価額 = 再建築価格 × 経年減点補正率
- 再建築価格: 同じ建物を新築した場合の建築費相当額
- 経年減点補正率: 築年数に応じて評価額を減額する係数(最低20%まで)
評価額は3年ごとに評価替えが行われ、次回は2027年度です。
(出典: 東京都主税局「固定資産税・都市計画税(土地・家屋)」)
土地の評価額と小規模住宅用地特例
土地の固定資産税には「小規模住宅用地特例」という軽減措置があります。
| 区分 | 面積 | 軽減率 |
|---|---|---|
| 小規模住宅用地 | 200㎡まで | 固定資産税1/6、都市計画税1/3 |
| 一般住宅用地 | 200㎡超 | 固定資産税1/3、都市計画税2/3 |
200㎡以内の土地を選ぶことで、固定資産税を最大限抑えられます。
平屋と二階建ての固定資産税比較
建物部分の固定資産税(基礎・屋根面積の違い)
延床面積が同じでも、基礎・屋根面積の違いが評価額に影響します。
延床面積100㎡の場合
| 項目 | 平屋 | 二階建て |
|---|---|---|
| 基礎面積 | 約100㎡ | 約50㎡ |
| 屋根面積 | 約100㎡ | 約50㎡ |
| 建物評価額(目安) | 1,200万円 | 1,150万円 |
| 固定資産税(年間) | 約16.8万円 | 約16.1万円 |
基礎・屋根面積が広い分、平屋の建物評価額は若干高くなります。
土地部分の固定資産税(必要面積の違い)
平屋は土地面積が1.5-2倍必要となり、土地の固定資産税も増加します。
延床面積100㎡の場合(土地評価額10万円/㎡と仮定)
| 項目 | 平屋 | 二階建て |
|---|---|---|
| 必要土地面積 | 約180㎡ | 約100㎡ |
| 土地評価額 | 1,800万円 | 1,000万円 |
| 小規模住宅用地特例適用後 | 300万円 | 167万円 |
| 固定資産税(年間) | 約4.2万円 | 約2.3万円 |
土地面積が広い分、平屋の固定資産税は年間約2万円高くなります。
建物構造による評価額の違い(木造・鉄骨・RC造)
建物構造により評価額が変わります。
| 構造 | 評価係数(目安) | 特徴 |
|---|---|---|
| 木造 | 1.0 | 最も評価額が低い |
| 鉄骨造 | 1.2-1.3 | 木造より評価額が高い |
| RC造 | 1.5-1.7 | 最も評価額が高い |
木造を選ぶことで、同じ面積でも固定資産税を抑えられます。
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固定資産税のシミュレーション(具体例)
延床面積100㎡の場合(平屋 vs 二階建て)
条件:
- 延床面積: 100㎡
- 建物構造: 木造
- 土地評価額: 10万円/㎡
- 新築(軽減措置なしの場合)
年間税額の試算(建物+土地)
| 項目 | 平屋 | 二階建て | 差額 |
|---|---|---|---|
| 建物固定資産税 | 16.8万円 | 16.1万円 | +0.7万円 |
| 土地固定資産税 | 4.2万円 | 2.3万円 | +1.9万円 |
| 合計 | 21.0万円 | 18.4万円 | +2.6万円 |
平屋は年間約2.6万円(月額約2,200円)高くなります。
(参考: LIFULL HOME'S「平屋の固定資産税は2階建てより高い?」)
長期的な税負担の違い
30年間の累計(軽減措置なし):
- 平屋: 約630万円
- 二階建て: 約552万円
- 差額: 約78万円
経年減点補正率により評価額は下がりますが、長期的には平屋の方が税負担が大きくなります。
固定資産税を安く抑える節税のポイント
新築住宅の軽減措置(3年間1/2、長期優良住宅は5年間)
新築住宅には、固定資産税の軽減措置があります。
軽減措置の内容:
- 一般住宅: 新築から3年間、建物の固定資産税が1/2に軽減
- 長期優良住宅: 新築から5年間、建物の固定資産税が1/2に軽減
- 適用期限: 2026年3月31日まで延長(2024年度税制改正)
(出典: 国土交通省「令和6年度税制改正概要」)
軽減額の例(延床100㎡、木造):
| 年 | 通常税額 | 軽減後税額 | 軽減額 |
|---|---|---|---|
| 1年目 | 16.8万円 | 8.4万円 | 8.4万円 |
| 2年目 | 16.8万円 | 8.4万円 | 8.4万円 |
| 3年目 | 16.8万円 | 8.4万円 | 8.4万円 |
| 合計 | - | - | 25.2万円 |
3年間で約25万円の軽減効果があります。
小屋裏収納の活用(延床面積に含まれない)
小屋裏収納(ロフト)は、以下の条件を満たせば延床面積に含まれず、固定資産税を抑えられます。
条件:
- 天井高1.4m以下
- 床面積が直下階の1/2未満
- はしごで昇降(固定階段は不可)
シンプルな設計・建材選び(評価額を下げる)
以下の工夫で評価額を下げられます。
- シンプルな設計: 複雑な間取り・凹凸の多い外観は評価額が上がる
- ガルバリウム外壁: タイル外壁より評価額が低い
- 太陽光パネルなし: 太陽光パネル設置で評価額が上がる場合あり
200㎡以内の土地選び(小規模住宅用地特例)
土地面積200㎡以内なら、小規模住宅用地特例(固定資産税1/6)を最大限活用できます。200㎡を超えると軽減率が下がるため、土地選びの際は注意が必要です。
まとめ:平屋と二階建ての固定資産税の違い
平屋と二階建ての固定資産税は、延床面積が同じなら建物部分はほぼ同じですが、平屋は基礎・屋根面積が広く、土地面積も1.5-2倍必要となるため、年間約3万円(30年間で約78万円)高くなる傾向があります。
固定資産税は課税標準額×税率1.4%で計算され、家屋評価額は再建築価格×経年減点補正率で決まります。新築住宅は3年間固定資産税が1/2に軽減され、長期優良住宅は5年間軽減されます。
小屋裏収納の活用、木造選択、シンプルな設計、200㎡以内の土地選びで評価額を下げ、固定資産税を抑えることが可能です。
信頼できる宅地建物取引士や税理士に相談しながら、建築コストと固定資産税を含めた総合的なコスト比較を行い、ライフスタイルに合った選択をしましょう。
執筆時点: 2025年。税率・軽減措置は変動する可能性があるため、最新情報は総務省や国土交通省、各自治体の公式サイトでご確認ください。
