オフィスビル・商業ビル賃貸の重要性
オフィスビルを賃貸する際、「立地はどう選べばいいか」「賃料相場はどれくらいか」「設備で重視すべきことは何か」と悩む経営者や担当者は少なくありません。
この記事では、オフィスビル選びの基本、立地と交通アクセスのポイント、賃料相場と契約条件、設備とセキュリティの見極め方を、不動産業界のデータを元に解説します。
初めてオフィス移転を検討する方でも、失敗しないビル選びができるようになります。
この記事のポイント
- オフィスビルの立地は事業成功に大きく影響する
- 駅からの距離(徒歩10分以内)と複数路線アクセスが重要
- 賃料相場はエリア・築年数・設備により大きく異なる
- 免震構造・BCP対応・OAフロアなどの設備が業務効率に影響
- 契約形態(定期借家vs普通借家)と初期費用を必ず確認
- 大崎エリア等の副都心は都心に比べて割安で、再開発が進行中
(1) 事業成功とオフィス立地の関係
オフィスの立地は、以下の点で事業に大きく影響します。
従業員の採用・定着:
- 駅近のオフィスは通勤が便利で、採用活動で有利
- 複数路線アクセス可能なオフィスは、広範囲から人材を集められる
取引先との関係:
- 都心に近いオフィスは、取引先が訪問しやすい
- ブランド力のあるエリアは、企業イメージ向上につながる
業務効率:
- 周辺に商業施設・飲食店が充実していると、来客対応や打ち合わせがスムーズ
オフィスの立地は、採用力・営業力・業務効率に直結するため、慎重に選ぶことが重要です。
(2) 大崎エリア等の副都心オフィス市場の特徴
大崎エリアは、「大崎副都心」として大規模高層ビルの開発が進行中です。
大崎エリアの特徴:
- JR山手線・埼京線・湘南新宿ライン・りんかい線が利用可能
- 品川駅・五反田駅へのアクセスも良好
- ゲートシティ大崎、アートヴィレッジ大崎等の大型ビルが集積
- 2022年に住友不動産大崎ツインビル東館、2024年秋に西館が竣工
- 2027年2月に大崎リバーウォークガーデン(仮称)が完成予定
副都心のメリット:
- 都心(千代田・中央・港区)に比べて賃料が割安
- 新築・高スペックのビルが多い
- 再開発により、周辺環境が向上している
副都心は、コストを抑えながら高品質なオフィス環境を確保したい企業に適しています。
オフィスビル選びの基本と流れ
オフィスビルを賃貸する際の基本的な流れと、確認すべきポイントを解説します。
(1) 賃貸の流れ(物件探し→内覧→契約→引渡し)
オフィスビル賃貸の一般的な流れは以下の通りです。
1. 物件探し:
- 予算、立地、面積、設備などの条件を整理
- 不動産仲介業者に相談
- 複数の物件を比較
2. 内覧:
- 気になる物件を実際に見学
- 建物の外観、エントランス、エレベーター、専有部分をチェック
- 周辺環境(駅距離、飲食店等)を確認
3. 申込・契約:
- 入居申込書を提出
- 審査(企業の信用情報、業種等)
- 重要事項説明を受ける
- 賃貸借契約を締結
4. 引渡し・入居:
- 内装工事(必要な場合)
- 引き渡し
- 入居
オフィス移転には、通常3~6ヶ月程度かかるため、余裕を持ったスケジュールを組むことを推奨します。
(2) 基準階面積と専有面積の確認
オフィスビルの面積には、以下の用語があります。
基準階面積:
- オフィスビルの標準的な1フロアの専有面積
- 例: 住友不動産大崎ツインビル東館は546.94坪(約1,805㎡)
専有面積:
- 実際に借りる部分の面積
- 基準階面積の一部を借りる場合もある
共用部分:
- エレベーター、トイレ、廊下等は専有面積に含まれない
坪単価:
- 賃料 ÷ 専有面積(坪)で計算
- 1坪 = 約3.3㎡
面積の定義を正確に理解し、賃料を比較することが重要です。
(3) 契約形態(定期借家契約vs普通借家契約)
オフィスビルの賃貸契約には、以下の2種類があります。
| 項目 | 定期借家契約 | 普通借家契約 |
|---|---|---|
| 契約期間 | 固定(更新なし) | 2年等(更新可能) |
| 更新 | 原則不可(再契約は可能) | 可能 |
| 中途解約 | 原則不可(特約で可能) | 可能(6ヶ月前予告等) |
| 賃料 | やや割安な傾向 | 市場相場 |
定期借家契約のメリット:
- 賃料がやや割安
- 契約期間が明確
定期借家契約のデメリット:
- 契約期間満了後、更新できない(再契約の交渉が必要)
- 中途解約が難しい
契約形態は、事業計画と照らし合わせて選択することを推奨します。
立地と交通アクセスのポイント
オフィスビルの立地は、従業員の通勤利便性や取引先からのアクセスに直結します。ここでは、立地選びのポイントを解説します。
(1) 駅からの距離と複数路線アクセス
駅からの距離は、オフィスビル選びで最も重要な要素の一つです。
駅距離の目安:
- 徒歩5分以内: 非常に便利、従業員の満足度が高い
- 徒歩10分以内: 許容範囲、一般的なオフィスビルの標準
- 徒歩15分以上: やや不便、賃料が割安になる傾向
複数路線アクセス:
- 複数路線が利用可能なエリアは、広範囲から人材を集められる
- 乗り換えなしで主要駅にアクセスできると通勤が楽
例(大崎エリア):
- JR山手線・埼京線・湘南新宿ライン・りんかい線が利用可能
- 品川駅・五反田駅へのアクセスも良好
- 複数路線により、東京・新宿・渋谷・横浜方面から通勤可能
駅近で複数路線アクセス可能なオフィスは、採用力・定着率の向上につながります。
(2) シャトルバス等の補助交通手段
駅から距離があるオフィスビルでは、シャトルバスが運行されている場合があります。
シャトルバスのメリット:
- 駅からの距離をカバー
- 雨天時も快適に通勤できる
- 企業イメージの向上
例:
- 品川駅(高輪口)から住友不動産大崎ツインビル東館へのシャトルバスが運行
シャトルバスの有無は、立地選びで考慮すべきポイントです。
(3) 周辺環境(商業施設、飲食店等)
オフィス周辺の商業施設・飲食店の充実度も、業務効率に影響します。
チェックポイント:
- 飲食店(ランチ、打ち合わせ、接待等)
- コンビニ・カフェ(軽食、休憩等)
- 銀行・郵便局(各種手続き)
- ホテル(出張者の宿泊、取引先の宿泊等)
周辺環境は、内覧時に実際に歩いて確認することを推奨します。
(4) 大崎エリアの例(大崎駅・五反田駅の両アクセス)
大崎エリアのオフィスビルは、以下のアクセスが可能です。
住友不動産大崎ツインビル東館の例:
- JR大崎駅新東口から徒歩8分
- JR五反田駅東口から徒歩10分、都営浅草線A3出口から徒歩10分
- 東急五反田駅から徒歩9分
- 品川駅(高輪口)からシャトルバスあり
大崎駅・五反田駅の両方からアクセス可能なため、広範囲から通勤できます。
賃料相場と契約条件の確認
オフィスビルの賃料は、立地・築年数・設備により大きく異なります。ここでは、賃料相場の調べ方と契約条件の確認ポイントを解説します。
(1) エリア別賃料相場の調べ方
賃料相場は、エリアにより大きく異なります。
主要エリアの坪単価目安(2024年時点):
- 千代田・中央・港区(都心): 2.5~4万円/坪
- 大崎・五反田(副都心): 1.5~2.5万円/坪
- 新宿・渋谷(副都心): 2.0~3.5万円/坪
賃料相場の調べ方:
- 不動産仲介業者に相談
- 不動産ポータルサイト(オフィスター、三幸エステート等)で検索
- 同じビル・同じエリアの募集事例を比較
賃料相場は市場動向により変動するため、最新情報を確認することを推奨します。
(2) 坪単価の計算方法(坪 = 約3.3㎡)
賃料は、坪単価で比較するのが一般的です。
計算例:
- 専有面積: 100坪
- 坪単価: 2万円/坪
- 月額賃料: 100坪 × 2万円/坪 = 200万円
㎡から坪への換算:
- 1坪 = 約3.3㎡
- 330㎡ = 330㎡ ÷ 3.3 = 100坪
坪単価を正確に計算し、複数の物件を比較しましょう。
(3) 契約時の初期費用(敷金・礼金・仲介手数料等)
オフィスビル賃貸では、月額賃料以外に初期費用がかかります。
主な初期費用:
| 項目 | 金額の目安 |
|---|---|
| 敷金 | 月額賃料の6~12ヶ月分 |
| 礼金 | 月額賃料の1~2ヶ月分(無しの場合もある) |
| 仲介手数料 | 月額賃料の1ヶ月分(上限) |
| 保証金 | 月額賃料の数ヶ月分(地域・ビルにより異なる) |
| 内装工事費 | 数百万円~数千万円(規模により異なる) |
例(月額賃料200万円の場合):
- 敷金: 1,200万円(6ヶ月分)
- 礼金: 200万円(1ヶ月分)
- 仲介手数料: 200万円(1ヶ月分)
- 合計: 1,600万円 + 内装工事費
初期費用が大きいため、資金計画を慎重に立てることが重要です。
(4) 共益費・管理費の確認
賃料以外に、共益費・管理費がかかります。
共益費・管理費に含まれるもの:
- 共用部分の清掃・維持管理
- エレベーター・空調の運用費
- セキュリティシステムの運用費
- 共用部分の電気代・水道代
目安:
- 賃料の10~20%程度
共益費・管理費は、賃料に含まれる場合と別途請求される場合があるため、契約書で確認しましょう。
設備とセキュリティの見極め方
オフィスビルの設備とセキュリティは、業務効率と従業員の安全に直結します。ここでは、確認すべきポイントを解説します。
(1) 免震構造・耐震性能の確認
地震大国である日本では、免震構造・耐震性能が重要です。
免震構造:
- 地震の揺れを建物に伝えにくくする構造
- 建物の損傷を最小限に抑える
- BCP(事業継続計画)対応に有効
耐震性能:
- 新耐震基準(1981年6月以降)に適合しているか
- 耐震診断・耐震補強の実施履歴
免震構造のビルは、地震リスクを軽減し、従業員の安全を確保できます。
(2) OAフロアと配線スペース
OAフロアは、オフィスレイアウト変更を容易にする設備です。
OAフロア:
- 床下に配線スペースを設けた二重床構造
- 電源・LAN配線を床下に隠せる
- レイアウト変更が容易
床下配線スペースの高さ:
- 10cm以上が理想(配線の取り回しが楽)
- 5cm未満だと配線が難しい
OAフロアは、IT機器が多いオフィスには必須の設備です。
(3) 電源容量と空調能力
業務内容により、必要な電源容量と空調能力は異なります。
電源容量:
- IT機器が多いオフィスは、大容量の電源が必要
- 30~50VA/㎡が目安(業種により異なる)
空調能力:
- サーバールーム等は24時間空調が必要
- 個別空調か中央管理空調かを確認
電源容量と空調能力が不足すると、業務に支障が出るため、事前に確認しましょう。
(4) BCP対応(無停電電源、非常用電源等)
BCP(事業継続計画)対応の設備は、災害時の事業継続に重要です。
無停電電源(UPS):
- 停電時も一定時間電源を供給
- サーバー・通信機器の保護
非常用電源(自家発電機):
- 長時間の停電に対応
- 72時間以上の連続運転が可能なビルもある
例:
- 住友不動産大崎ツインビル東館は72時間無停電電源を備える
BCP対応の設備は、金融・IT・医療等の業種では必須です。
(5) セキュリティシステム(入退館管理、監視カメラ等)
オフィスビルのセキュリティは、情報漏洩・不正侵入のリスクを軽減します。
入退館管理:
- ICカード、生体認証等
- 入館履歴の記録
監視カメラ:
- エントランス、エレベーター、共用部分に設置
- 24時間録画
有人警備:
- 警備員が常駐
- 夜間・休日も対応
セキュリティレベルは、業種・取り扱う情報により選択しましょう。
(6) DBJグリーンビル認証等の環境性能
DBJグリーンビル認証は、日本政策投資銀行による環境・社会配慮評価です。
認証のメリット:
- 環境性能が高いビル
- 企業のCSR・ESG対応に有効
- 従業員の満足度向上
環境性能の高いビルは、企業イメージ向上にもつながります。
まとめ:失敗しないオフィスビル選び
オフィスビル選びでは、立地(駅からの距離、複数路線アクセス)、賃料相場(エリア・築年数・設備による違い)、設備(免震構造、OAフロア、BCP対応、セキュリティ)を総合的に検討することが重要です。
契約形態(定期借家vs普通借家)と初期費用(敷金・礼金・仲介手数料等)を必ず確認し、資金計画を慎重に立てましょう。
大崎エリア等の副都心は、都心に比べて賃料が割安で、新築・高スペックのビルが多く、再開発により周辺環境が向上しています。複数路線アクセス可能で、広範囲から人材を集められる点もメリットです。
オフィス移転は事業に大きく影響するため、不動産仲介業者などの専門家に相談しながら、複数の物件を比較し、慎重に選定することを推奨します。
