住宅ローン審査が通らない?知っておくべき審査の実態
住宅ローンの審査に落ちてしまった、または審査が不安で事前に対策したいとお考えではないでしょうか。審査に落ちる理由は様々ですが、事前に審査基準を理解し、対策を講じることで、通過の可能性を高めることができます。
この記事では、住宅ローン審査で見られる主な項目、審査が通らない主な理由(返済負担率、信用情報、年収等)、信用情報の確認方法、審査落ち後の対処法を解説します。国土交通省の調査データや金融機関の審査基準を元に、審査通過のための具体的なポイントをお伝えします。
この記事のポイント
- 住宅ローン審査で最も重視される項目は、完済時年齢(98.9%)、健康状態(97.7%)、年収(95.6%)、返済負担率、信用情報
- 審査が通らない主な理由は、返済負担率が30〜35%超、信用情報にブラックリスト、年収不足、他のローン残高、スーパーホワイト
- 信用情報はCIC・JICC・全銀協で開示請求でき、ブラックリストは最終返済から5〜10年で消える
- 審査落ち後は6ヶ月待ってから再申し込みし、頭金増額や別の金融機関を検討することで通過の可能性を高められる
(1) 住宅ローン審査の流れ(事前審査・本審査)
住宅ローン審査は、事前審査(仮審査)と本審査の2段階に分かれます。
- 事前審査:物件購入前に、借入可能額や返済能力を簡易的に審査する(数日〜1週間程度)
- 本審査:正式な申し込み後、金融機関と保証会社が詳細に審査する(1〜2週間程度)
事前審査に通過しても、本審査で落ちる可能性があります。本審査では、信用情報、団体信用生命保険(団信)への加入可否、物件の担保価値等がより厳格に審査されます。
(2) 審査期間の目安(1〜2ヶ月)
審査期間の目安は、事前審査から本審査完了まで1〜2ヶ月です。ただし、書類の不備や追加確認が必要な場合は、さらに時間がかかることがあります。
購入希望物件の引き渡し時期に合わせて、余裕を持って審査を申し込むことが重要です。
(3) なぜ審査に落ちるのか?主な理由の全体像
住宅ローン審査が通らない主な理由は以下の通りです。
- 返済負担率が高すぎる(年収に占める返済額が30〜35%超)
- 信用情報にブラックリストがある(延滞・債務整理の履歴)
- 年収が低い、または不安定(自営業者は3年分の確定申告が必要)
- 他のローンやリボ払い残高がある(返済負担率に加算される)
- スーパーホワイト(クレジット履歴が全くない)
- 健康状態が団信の加入条件を満たさない
次のセクションで詳しく解説します。
住宅ローン審査で見られる主な項目
国土交通省の「令和5年度民間住宅ローンの実態に関する調査結果」によると、金融機関が審査で重視する項目は以下の通りです。
(1) 年収と借入可能額(年収倍率の目安)
年収は審査で重視される項目の一つです(95.6%の金融機関が重視)。年収が低いと、借入可能額が制限されます。
年収倍率の目安:
- 一般的な目安は年収の5〜7倍
- たとえば、年収500万円の場合、借入可能額は2,500万円〜3,500万円程度
ただし、返済負担率が30〜35%を超えると審査に通りにくくなります。詳細は次のセクションで解説します。
(2) 勤続年数と雇用形態(正社員・契約社員・自営業)
勤続年数は、収入の安定性を測る指標です(94.5%の金融機関が重視)。
勤続年数の目安:
- 一般的には1〜3年以上が目安
- 勤続年数が短くても、正社員で年収が安定していれば審査に通る可能性がある
- 自営業者は最低3年分の確定申告が必要なことが多い
転職直後や勤続年数が1年未満の場合は、審査に不利になる可能性があります。
(3) 返済負担率(年収に占める返済額の割合)
返済負担率(返済比率)は、年収に占める年間返済額の割合です。金融機関の審査基準は30〜35%ですが、理想的には20〜25%以内に抑えることが推奨されます。
計算例:
- 年収500万円、年間返済額150万円の場合:150万円 ÷ 500万円 = 30%(審査基準ぎりぎり)
- 年収500万円、年間返済額100万円の場合:100万円 ÷ 500万円 = 20%(理想的)
返済負担率には、住宅ローンだけでなく、自動車ローン、カードローン、クレジットカードのリボ払い、スマホ代金の分割払い等も含まれます。
(4) 信用情報(過去の延滞・債務整理の履歴)
信用情報は、過去のクレジットカードやローンの利用履歴・延滞情報です。信用情報機関(CIC、JICC、全銀協)に記録されており、金融機関が審査時に照会します。
審査に影響する信用情報:
- 長期延滞(61日以上または3ヶ月以上)
- 債務整理(自己破産、個人再生、任意整理)
- 代位弁済(保証会社が代わりに返済)
- スマホ代金の分割払い延滞
これらの記録がある場合、審査に通らない可能性が高くなります。
(5) 健康状態(団体信用生命保険への加入)
住宅ローンを借りる際、**団体信用生命保険(団信)**への加入が原則必須です(97.7%の金融機関が重視)。団信に加入できない健康状態の場合、審査に通らない可能性があります。
ただし、フラット35では団信加入が任意のため、健康状態に不安がある場合は検討の余地があります。
(6) 物件の担保価値
住宅ローンは物件を担保にするため、物件の担保価値も審査に影響します。
- 新築物件より中古物件の方が担保価値が低く評価される場合がある
- 再建築不可物件や違法建築物件は審査に通らない可能性が高い
物件の担保価値が低いと、借入可能額が減少することがあります。
審査が通らない主な理由|返済負担率・信用情報・年収
審査が通らない主な理由を詳しく解説します。
(1) 返済負担率が高すぎる(30〜35%超)
返済負担率が30〜35%を超えると、審査に通りにくくなります。住宅ローンだけでなく、他のローンも合算されるため、注意が必要です。
対策:
- 他のローンを完済または減額する
- 借入額を減らす(頭金を増やす)
- クレジットカードのリボ払いを完済する
(2) 信用情報にブラックリストがある(延滞・債務整理)
長期延滞や債務整理の履歴がある場合、審査に通らない可能性が高くなります。信用情報は5〜10年間記録されます。
対策:
- 信用情報機関で開示請求し、記録を確認する(詳細は次のセクション)
- ブラックリストが消えるまで待つ(最終返済から5〜10年)
- フラット35等、審査基準が比較的緩やかな商品を検討する
(3) 年収が低い、または不安定(自営業者は3年分の確定申告)
年収が低い、または不安定な場合、審査に通りにくくなります。
年収の目安:
- フラット35:最低100万円
- 一般的な民間銀行:300万円以上が目安
自営業者の注意点:
- 最低3年分の確定申告が必要
- 年収が年々減少している場合は不利になる可能性がある
(4) 他のローンやリボ払い残高がある
自動車ローン、カードローン、クレジットカードのリボ払い等の残高がある場合、返済負担率に加算されます。
対策:
- 審査前に可能な限り完済する
- リボ払いは一括返済に切り替える
(5) スーパーホワイト(クレジット履歴が全くない)
クレジットカードやローンの利用履歴が全くない「スーパーホワイト」の状態も、審査で不利になる可能性があります。金融機関は信用情報がないため、返済能力を判断できないためです。
対策:
- クレジットカードを作成し、利用実績を作る(少額の買い物を毎月利用し、期日までに返済)
- 携帯電話の分割払いを利用する
(6) 健康状態が団信の加入条件を満たさない
持病や過去の病歴により、団信に加入できない場合、審査に通らない可能性があります。
対策:
- フラット35(団信加入が任意)を検討する
- ワイド団信(持病がある方向け、金利+0.3%程度)を検討する
信用情報の確認方法と改善策
審査に落ちた場合、または事前に対策したい場合は、信用情報を確認しましょう。
(1) 信用情報機関(CIC・JICC・全銀協)で開示請求する方法
信用情報は以下の3つの機関で管理されています。
- CIC(シー・アイ・シー):クレジットカード会社、信販会社が加盟
- JICC(日本信用情報機構):消費者金融、銀行が加盟
- 全銀協(全国銀行個人信用情報センター):銀行が加盟
開示請求の方法:
- オンライン、郵送、窓口で開示請求が可能
- 手数料:500円〜1,000円程度
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード等)が必要
詳細は各機関の公式サイトでご確認ください。
(2) ブラックリストはいつ消えるか(最終返済から5〜10年)
ブラックリストの記録は、最終返済から5〜10年で消えます。
- 長期延滞:5年(CIC、JICC)
- 債務整理:5〜10年(CICは5年、JICC・全銀協は10年)
- 自己破産:10年(全銀協)
この期間が経過すれば、記録が削除され、審査に影響しなくなります。
(3) スマホ代金の分割払い延滞にも注意
スマホ代金の分割払いも信用情報に記録されます。延滞すると、長期延滞として記録され、住宅ローン審査に影響します。
対策:
- スマホ代金の支払いは必ず期日までに行う
- 口座残高不足にならないよう注意する
(4) 他のローンを完済または減額する
他のローンやリボ払い残高がある場合は、審査前に完済または減額しましょう。返済負担率が下がり、審査に通りやすくなります。
審査落ち後の対処法|再申し込みのポイント
審査に落ちた場合、以下の対処法を検討しましょう。
(1) 審査落ちの原因を特定する
まず、審査落ちの原因を特定します。金融機関は審査落ちの理由を詳しく教えてくれないため、以下を確認しましょう。
- 信用情報機関で信用情報を開示請求する
- 返済負担率を計算する
- 勤続年数や年収が基準を満たしているか確認する
(2) 6ヶ月待ってから再申し込みする(申込情報が残るため)
申込情報は信用情報機関に6ヶ月間記録されます。すぐに再申し込みしても、同じ結果になる可能性が高いため、6ヶ月待つことを推奨します。
この期間中に、原因を改善する(他のローンを完済、頭金を増やす等)ことが重要です。
(3) 頭金を増やして借入額を減らす
頭金を増やして借入額を減らすと、返済負担率が下がり、審査に通りやすくなります。
例:
- 物件価格3,000万円、頭金0円の場合:借入額3,000万円
- 物件価格3,000万円、頭金500万円の場合:借入額2,500万円(返済負担率が下がる)
(4) 別の金融機関(フラット35等)を試す
審査基準は金融機関により異なります。民間銀行で落ちた場合、フラット35等の公的ローンを検討しましょう。
フラット35の特徴:
- 団信加入が任意(健康状態に不安がある場合)
- 年収の下限が低い(最低100万円)
- 審査基準が比較的緩やか
ただし、金利が変動金利より高い点に注意が必要です。
(5) 複数同時申し込みは避ける(2社程度に抑える)
複数の金融機関に同時申し込みすると、「申し込みブラック」として審査に不利になる可能性があります。申し込みは2社程度に抑えましょう。
まとめ|審査通過のための事前準備
住宅ローン審査で最も重視される項目は、完済時年齢、健康状態、年収、返済負担率、信用情報です。審査が通らない主な理由は、返済負担率が30〜35%超、信用情報にブラックリスト、年収不足、他のローン残高、スーパーホワイトです。
信用情報はCIC・JICC・全銀協で開示請求でき、ブラックリストは最終返済から5〜10年で消えます。審査落ち後は6ヶ月待ってから再申し込みし、頭金増額や別の金融機関(フラット35等)を検討することで、通過の可能性を高めることができます。
事前に信用情報を確認し、他のローンを完済、返済負担率を20〜25%以内に抑えることで、審査通過の可能性を高めましょう。詳細な審査対策については、ファイナンシャルプランナーや住宅ローンアドバイザーへの相談をおすすめします。
