住宅ローン繰上げ返済とは?メリット・デメリットと判断基準を解説

著者: Room Match編集部公開日: 2025/11/17

住宅ローン繰上げ返済とは

住宅ローンを利用中の方の中には、「少しでも利息を減らしたい」「早く完済したい」とお考えの方も多いのではないでしょうか。

繰上げ返済は、毎月の返済とは別に、ローン残高の一部または全額を前倒しで返済する方法です。この記事では、繰上げ返済の仕組み、メリット・デメリット、適切なタイミングの判断基準を、住宅金融支援機構全国銀行協会の公式情報を元に解説します。

繰上げ返済が自分にとって本当に有利かどうかを、正確に判断できるようになります。

この記事のポイント

  • 繰上げ返済には「期間短縮型」と「返済額軽減型」の2種類があり、利息削減効果に大きな差がある
  • 期間短縮型は返済額軽減型より利息削減効果が高い(100万円の繰上返済で約116万円vs約45万円)
  • 手元資金の減少、住宅ローン控除の恩恵減少、一度返済すると資金が戻せないといったデメリットもある
  • 借入から5年以内が最も効果的なタイミングだが、住宅ローン控除期間との関係、緊急時の生活資金確保も考慮が必要
  • 繰上げ返済が正解かどうかは、金利、控除額、他の運用機会、ライフプランなど個々の状況により異なる

繰上げ返済の2つの種類

繰上げ返済には、「期間短縮型」と「返済額軽減型」の2つの方法があります。どちらを選ぶかで利息削減効果が大きく変わります。

(1) 期間短縮型の特徴と効果

期間短縮型は、毎月の返済額を変えずに、返済期間を短縮する方法です。

特徴:

  • 毎月の返済額は変わらない
  • 返済期間が短くなる
  • 利息削減効果が大きい

期間短縮型は、返済能力に余裕があり、「早く完済したい」「利息を最大限減らしたい」という方に適しています。

(2) 返済額軽減型の特徴と効果

返済額軽減型は、返済期間を変えずに、毎月の返済額を減らす方法です。

特徴:

  • 返済期間は変わらない
  • 毎月の返済額が減る
  • 利息削減効果は期間短縮型より小さい

返済額軽減型は、「月々の負担を軽くしたい」「将来の支出増加に備えたい」という方に適しています。

(3) 2つの種類の比較(シミュレーション例)

SUUMOの試算によると、100万円の繰上返済を行った場合の利息削減効果は以下のようになります。

項目 期間短縮型 返済額軽減型
利息削減額 約116万円 約45万円
返済期間 短縮される 変わらない
毎月の返済額 変わらない 減少する

(出典: SUUMO

参考例: 上記はあくまで参考例です。実際の削減額は、借入金額、金利、残期間により異なります。詳細は契約している金融機関のシミュレーションツールで確認するか、ファイナンシャルプランナーへの相談を推奨します。

(4) 一部繰上返済と全額繰上返済の違い

住宅金融支援機構によると、繰上返済には以下の2種類があります。

種類 内容 手数料
一部繰上返済 ローン残高の一部を前倒しで返済 インターネットバンキングでは無料の場合が多い
全額繰上返済 ローン残高の全額を一括で返済(完済) 33,000円程度の手数料がかかる場合がある

(出典: 住宅金融支援機構SUUMO

繰上げ返済のメリット

繰上げ返済の主なメリットは、利息の削減と、返済期間の短縮または月々の負担軽減です。

(1) 利息の削減効果

繰上げ返済により、ローン残高が減少するため、その分の利息が削減されます。特に期間短縮型は利息削減効果が高く、数十万円から百万円単位の利息を削減できる場合があります。

(2) 返済期間の短縮または月々の負担軽減

  • 期間短縮型: 返済期間が短くなり、早く完済できる
  • 返済額軽減型: 毎月の返済額が減り、家計の負担が軽くなる

どちらを選ぶかは、ご自身のライフプランで判断してください。

(3) 早期・小刻みがより効果的

全国銀行協会によると、繰上返済は早期・小刻みが効果的です。同じ金額でも、大きな一括返済より、頻繁な小額返済の方が利息削減効果が高くなります。

これは、利息は日々のローン残高に対して計算されるため、早く残高を減らすほど利息が減るためです。

繰上げ返済のデメリット

繰上げ返済にはメリットだけでなく、デメリットもあります。慎重に判断することが重要です。

(1) 手元資金の減少リスク

繰上返済により手元資金が減少すると、その後の大きな支出(教育費、医療費、介護費用等)に対応できなくなるリスクがあります。

りそな銀行は、緊急時の生活資金を十分に確保した上で繰上返済を実施することを推奨しています。

(2) 住宅ローン控除の恩恵減少

住宅ローン控除は、住宅ローンの年末残高の一定割合を所得税・住民税から控除する制度(最大13年間)です。

繰上返済でローン残高が減ると、控除額も減少する可能性があります。全国銀行協会は、控除期間終了後の繰上返済を推奨しています(2024-2025年)。

ただし、個々の状況(金利、控除額、他の運用機会)により最適解は異なります。詳細は税理士やファイナンシャルプランナーへの相談を推奨します。

(3) 一度返済した資金は手元に戻せない

一度繰上返済した資金は、手元に戻すことができません。そのため、慎重な資金計画が必要です。

(4) 繰上返済手数料(全額返済時は高額)

一部繰上返済の手数料はインターネットバンキングでは無料の場合が多いですが、全額繰上返済の場合は33,000円程度の手数料がかかる場合があります。

契約している金融機関に必ず確認してください。

繰上げ返済の判断基準とタイミング

繰上げ返済を実施するかどうか、いつ実施するかは、以下の基準で判断してください。

(1) 効果的なタイミング(借入から5年以内)

全国銀行協会によると、借入から5年以内が最も効果的なタイミングとされています。

これは、住宅ローンの利息は返済初期ほど大きいためです。早く繰上返済するほど、利息削減効果が高くなります。

(2) 住宅ローン控除期間との関係

住宅ローン控除の適用期間中(最大13年間)は、繰上返済により控除額が減少する可能性があります。控除期間終了後の繰上返済が推奨されますが、金利や控除額により判断が分かれます。

国税庁の住宅ローン控除制度の公式サイトで最新情報を確認し、税理士への相談を推奨します。

(3) 緊急時の生活資金の確保

繰上返済は、以下の資金を確保した上で実施してください。

  • 生活費の6ヶ月〜1年分
  • 近い将来の大きな支出(教育費、車の買い替え等)
  • 緊急時の予備費

手元資金が不足すると、その後の支出に対応できなくなります。

(4) インターネットバンキングの活用(手数料無料)

SUUMOによると、インターネットバンキングでの一部繰上返済手数料無料化が進んでいます(2024-2025年)。

手数料を抑えるため、インターネットバンキングの活用を検討してください。

まとめ:繰上げ返済を成功させるポイント

住宅ローンの繰上げ返済は、利息を削減し、返済期間を短縮または月々の負担を軽減できる方法です。期間短縮型の方が返済額軽減型より利息削減効果が高く、早期・小刻みがより効果的です。

ただし、手元資金の減少、住宅ローン控除の恩恵減少、一度返済すると資金が戻せないといったデメリットもあります。繰上げ返済が正解かどうかは、金利、控除額、他の運用機会、ライフプランなど個々の状況により異なります。

緊急時の生活資金を十分に確保した上で、ファイナンシャルプランナーや税理士に相談しながら、慎重に判断することを推奨します。契約している金融機関のシミュレーションツールも活用しましょう。

よくある質問

Q1繰上返済の手数料はかかりますか?

A1金融機関により異なりますが、インターネットバンキングでの一部繰上返済は手数料無料の場合が多いです。全額繰上返済の場合は33,000円程度の手数料がかかる場合があります。契約している金融機関に必ず確認してください。

Q2住宅ローン控除はどうなりますか?

A2繰上返済でローン残高が減ると、控除額も減少する可能性があります。住宅ローン控除の適用期間(最大13年間)終了後の繰上返済が推奨されます。ただし、個々の状況(金利、控除額、他の運用機会)により最適解は異なるため、税理士やファイナンシャルプランナーへの相談を推奨します。

Q3期間短縮型と返済額軽減型、どちらがいいですか?

A3利息削減効果は期間短縮型の方が高いです(100万円の繰上返済で期間短縮型は約116万円、返済額軽減型は約45万円の利息削減)。ただし、月々の負担を軽くしたい場合は返済額軽減型が適します。ご自身のライフプランで判断してください。

Q4繰上返済はいつやるべきですか?

A4借入から5年以内が最も効果的なタイミングとされています。早期・小刻みが効果的で、同額なら大きな一括返済より頻繁な小額返済の方が利息削減効果が高いです。ただし、緊急時の生活資金(生活費の6ヶ月〜1年分)を十分確保した上で実施してください。

Q5繰上返済のデメリットは何ですか?

A5手元資金が減少し、その後の大きな支出(教育費、医療費等)に対応できなくなるリスクがあります。また、一度返済した資金は手元に戻せません。住宅ローン控除適用中に繰上返済すると控除額が減少する可能性もあります。慎重な資金計画が必要です。

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Room Match編集部

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