住宅ローン仮審査通過後も油断禁物:本審査の重要性
住宅ローンの仮審査に通過すると、「もう大丈夫」と安心する方も多いでしょう。しかし、仮審査通過は融資確定を意味するものではなく、本審査で落ちる可能性もゼロではありません。
この記事では、仮審査通過後の本審査通過率、仮審査と本審査の違い、本審査で落ちる原因と対策を、国土交通省の調査や住宅金融支援機構の公式情報を元に解説します。
仮審査通過後の注意点を理解し、本審査を無事に通過できるようになります。
この記事のポイント
- 仮審査通過後の本審査通過率は9割以上とされるが、数パーセントは落ちる現実がある
- 仮審査は申告内容の簡易チェック、本審査は信用情報・物件評価・団信審査を含む詳細審査
- 審査期間中の転職・新規借り入れ・滞納はNG行為であり、審査落ちの主要原因となる
- 本審査で落ちた場合は、他の金融機関への再申込や条件変更が選択肢となる
(1) 仮審査通過は融資確定ではない
仮審査はあくまで融資可否の見込みを判断する簡易的な審査です。仮審査通過は「融資の可能性が高い」という意味であり、融資が確定したわけではありません。
本審査では、仮審査では確認されなかった詳細な項目が審査されます。
(2) 本審査で数パーセントは落ちる現実
一般的に、仮審査通過後の本審査通過率は9割以上とされています。しかし、数パーセントは本審査で落ちているのも事実です。
本審査で落ちる理由には、審査期間中の状況変化や信用情報の問題、物件の担保価値不足などがあります。
(3) 審査期間中の行動が合否を左右する
仮審査通過後から本審査承認までの期間(1~2週間程度)の行動が、審査結果を大きく左右します。転職や新規借り入れなどのNG行為を避け、現状維持を心がけることが重要です。
仮審査と本審査の違い:審査内容・期間・必要書類
仮審査と本審査の違いを理解することで、本審査で何が審査されるのかを把握できます。
(1) 仮審査:申告内容の簡易チェック(3~4営業日)
仮審査では、以下の項目を申告内容に基づいて簡易的に審査します。
- 年収: 年収と借入希望額のバランス
- 勤続年数: 収入の安定性
- 他の借り入れ: 返済負担率の計算
- 信用情報: 簡易的なチェック
仮審査の期間は3~4営業日が一般的です。ネット銀行では申込当日に結果が判明する場合もあります。
(2) 本審査:詳細な信用調査と物件評価(1~2週間)
本審査では、仮審査より厳格な審査が行われます。
- 信用情報機関への照会: 過去の借り入れ・返済履歴の確認
- 収入証明書の精査: 源泉徴収票・課税証明書の確認
- 物件の担保評価: 物件の資産価値の評価
- 団体信用生命保険の審査: 健康状態の確認
本審査の期間は1~2週間程度です。全体で申し込みから融資実行まで1ヵ月~1ヵ月半程度を見込む必要があります。
(3) 審査項目の違い(信用情報・担保評価・団信審査)
国土交通省の調査によると、約9割の金融機関が以下の9項目を審査しています。
| 審査項目 | 仮審査 | 本審査 |
|---|---|---|
| 完済時年齢 | ○ | ○ |
| 健康状態(団信) | - | ○ |
| 担保評価 | - | ○ |
| 借入時年齢 | ○ | ○ |
| 年収 | ○(申告ベース) | ○(証明書) |
| 勤続年数 | ○ | ○ |
| 連帯保証 | - | ○ |
| 返済負担率 | ○ | ○ |
| 雇用形態 | ○ | ○ |
(出典: 国土交通省「民間住宅ローンの実態に関する調査」)
(4) 必要書類の違い(源泉徴収票・課税証明書・物件資料)
仮審査の必要書類:
- 本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカード等)
- 収入の申告(給与明細・源泉徴収票等)
本審査の必要書類:
- 源泉徴収票(直近1~2年分)
- 課税証明書(所得証明書)
- 物件の売買契約書
- 物件の重要事項説明書
- 団体信用生命保険の告知書
書類に不備があると審査が長引いたり、落ちる原因となるため、正確な準備が必要です。
本審査で落ちる確率と主な原因
本審査で落ちる確率と主な原因を把握することで、対策を講じることができます。
(1) 本審査で落ちる確率は数パーセント程度(9割以上は通過)
仮審査通過後に本審査で落ちる確率は、一般的に数パーセント程度とされています。つまり、9割以上の方は無事に本審査を通過しています。
ただし、審査期間中の行動や状況変化によっては、落ちる可能性があるため油断は禁物です。
(2) 信用情報の問題(延滞・他ローン増加)
本審査では信用情報機関(CIC、JICC、KSC)への照会が行われます。以下のような問題があると、審査に悪影響を与えます。
- クレジットカードの延滞: 直近2年以内の延滞履歴
- 他のローン残高増加: 仮審査後に新規借り入れを行った場合
- 過去の債務整理: 個人再生・自己破産の履歴
(3) 仮審査後の状況変化(転職・収入減・借入増加)
仮審査通過後に以下のような状況変化があると、本審査で落ちる可能性が高まります。
- 転職・退職: 収入の安定性が損なわれる
- 収入減: 年収が大幅に減少した場合
- 新規借り入れ: カーローン・カードローンの契約
(4) 物件の担保価値不足
本審査では、物件の担保価値が評価されます。購入価格より担保評価額が低い場合、融資額に影響が出ることがあります。
特に中古物件や立地条件が悪い物件は、担保評価が低くなる傾向があります。
(5) 団体信用生命保険の審査(健康状態)
団体信用生命保険(団信)の加入審査では、健康状態が確認されます。以下のような場合、団信に加入できず、本審査で落ちる可能性があります。
- 持病がある(高血圧・糖尿病等)
- 過去に重大な病歴がある
ただし、ワイド団信(引受条件緩和型団信)や団信なしのフラット35などの選択肢もあります。
(6) 申告内容の相違や書類不備
仮審査時の申告内容と本審査時の提出書類に相違がある場合、信用性に疑問が持たれ、審査に落ちることがあります。
- 年収の申告と源泉徴収票の金額が異なる
- 勤続年数の申告が実際と異なる
- 他の借り入れを隠していた
審査期間中に避けるべきNG行為
審査期間中は、現状維持が鉄則です。以下のNG行為を避けましょう。
(1) 転職・退職(収入の安定性が審査基準)
転職や退職は収入の安定性を損なうため、審査落ちの主要原因となります。本審査承認まで、現在の勤務先を継続することが重要です。
やむを得ず転職する場合は、事前に金融機関に相談しましょう。
(2) 新規借り入れ(カーローン・カードローン等)
審査期間中に新規借り入れを行うと、返済負担率が上昇し、審査に悪影響を与えます。
- カーローン
- カードローン
- クレジットカードのキャッシング
- 新規クレジットカードの作成
これらは本審査承認後まで控えてください。
(3) クレジットカードの滞納
クレジットカードの支払いを1日でも滞納すると、信用情報に記録され、審査に悪影響を与えます。審査期間中は特に注意が必要です。
(4) 物件価格の大幅変更
仮審査後に物件価格を大幅に変更すると、再審査が必要になる場合があります。特に物件価格を上げる場合は、融資額が増えるため、審査が厳しくなる可能性があります。
本審査通過率を高めるポイントと落ちた場合の対処法
本審査を無事に通過するためのポイントと、万が一落ちた場合の対処法を紹介します。
(1) 提出書類の正確性と不備のない準備
本審査では多くの書類を提出する必要があります。以下のポイントを押さえましょう。
- 最新の書類を用意: 源泉徴収票・課税証明書は最新年度のもの
- 記入漏れ・誤記入を防ぐ: 団信の告知書は正確に記入
- コピーの鮮明さ: 書類のコピーは読みやすいものを提出
(2) 審査期間中の生活維持(現状維持が鉄則)
審査期間中は、仮審査時の状態を維持することが重要です。
- 転職・退職を避ける
- 新規借り入れを控える
- クレジットカードの支払いを遅延しない
- 収入を減らさない
(3) 金融機関との密なコミュニケーション
審査期間中に不明点があれば、金融機関の担当者に積極的に質問しましょう。また、状況変化(転職の可能性等)がある場合は、事前に相談することで対策を講じることができます。
(4) 落ちた場合の対処:他の金融機関への再申込
本審査で落ちた場合、他の金融機関への再申込が可能です。金融機関によって審査基準が異なるため、別の金融機関では通過する可能性があります。
- メガバンク
- 地方銀行
- ネット銀行
- フラット35(住宅金融支援機構)
(5) 落ちた場合の対処:条件変更(借入額減額・頭金増額)
借入額を減額したり、頭金を増額したりすることで、審査に通りやすくなる場合があります。
- 借入額を減額: 物件価格を下げる、または頭金を増やす
- 返済期間を短縮: 月々の返済額は増えるが、完済時年齢が下がる
- 連帯保証人を立てる: 配偶者や親族を連帯保証人にする
ファイナンシャルプランナーや住宅ローンアドバイザーへの相談を推奨します。
まとめ:状況別のアドバイスと専門家への相談
住宅ローンの仮審査通過後の本審査通過率は9割以上とされますが、数パーセントは落ちる現実があります。本審査では信用情報・物件評価・団信審査が詳細に行われるため、審査期間中の行動が合否を左右します。
転職・新規借り入れ・滞納などのNG行為を避け、現状維持を心がけることが重要です。提出書類の正確性を確保し、金融機関と密にコミュニケーションを取ることで、本審査通過率を高めることができます。
万が一本審査で落ちた場合は、他の金融機関への再申込や条件変更を検討しましょう。詳細はファイナンシャルプランナーや住宅ローンアドバイザーへの相談を推奨します。
