住宅ローン本審査通過後の流れ
住宅ローンの本審査に通過すると、多くの方は「これで安心」と感じるかもしれません。しかし、本審査通過は融資確定を意味しません。融資実行までに状況が変化すると、稀に承認が取り消されることがあります。
この記事では、本審査通過後から融資実行までの流れ、やるべきこと・やってはいけないこと、まれに起こる「否決」のケースを、金融機関の公式情報を元に解説します。
初めて住宅ローンを組む方でも、融資実行までの期間を安全に過ごせるようになります。
この記事のポイント
- 本審査通過後も融資実行まで財務状況を変化させないことが重要
- 転職・新規借入・クレジットカード新規作成は融資承認取り消しのリスクがある
- 本審査から融資実行まで10〜14日+約30日(合計約40〜44日)が一般的
- 買主都合の契約解除は物件価格の5〜10%の違約金が発生する可能性がある
- 住宅ローン特約があれば、審査落ちの場合に違約金なしで契約解除可能
(1) 本審査承認の通知
本審査に通過すると、金融機関から「承認」の通知が届きます。この段階で、融資可能額・金利・返済期間などの条件が確定します。
承認通知を受け取ったら、次のステップである「住宅ローン契約(金銭消費貸借契約)」の準備を進めます。
(2) 住宅ローン契約(金銭消費貸借契約)
本審査承認後、金融機関と**住宅ローン契約(金銭消費貸借契約、通称「金消契約」)**を締結します。
この契約では、以下の内容が最終確定します:
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 融資額 | 借り入れる金額 |
| 金利 | 固定金利または変動金利 |
| 返済期間 | 最長35年(金融機関により異なる) |
| 返済方法 | 元利均等返済または元金均等返済 |
| 団体信用生命保険 | 死亡・高度障害時の残債返済保険 |
一部金融機関では、**電子金消契約(オンライン契約)**が可能になり、来店不要で手続きが完了します(2025年時点)。詳細は金融機関にご確認ください。
(3) 融資実行と物件引き渡し
金消契約締結後、物件の引き渡し日に融資実行が行われます。金融機関が実際に資金を提供し、同日に物件の所有権が移転します。
融資実行日までは、本審査で申告した内容(勤務先・年収・借入状況等)に変更がないことが前提です。
本審査から融資実行までの期間
本審査通過から融資実行までの期間は、一般的に約40〜44日です。三井住友銀行の公式サイトによると、以下のスケジュールが目安となります。
(1) 本審査の期間(10〜14日)
本審査には、仮審査(事前審査)よりも詳細な書類提出が必要です。金融機関が以下の項目を審査します:
- 収入証明(源泉徴収票、確定申告書等)
- 勤続年数
- 信用情報(クレジットカード・ローンの利用履歴)
- 団体信用生命保険への加入可否
- 物件の担保価値
審査結果は10〜14日程度で通知されます。
(2) 契約日の設定(承認から約30日後)
本審査承認後、金消契約の日程を設定します。多くの金融機関では、承認から約30日後に契約日を設定します。
この期間を利用して、必要書類(住民票、印鑑証明書等)を準備します。
(3) 融資実行日(物件引き渡し日)
融資実行日は、物件の引き渡し日と同日に設定されます。この日に、金融機関から売主へ資金が振り込まれ、物件の所有権が買主に移転します。
本審査通過後にやるべきこと
本審査通過後は、以下の3つを確実に実施してください。
(1) 住宅ローン契約の準備(必要書類の確認)
金消契約には、以下の書類が必要です(金融機関により異なります):
- 本人確認書類(運転免許証、パスポート等)
- 住民票
- 印鑑証明書
- 実印
- 通帳・キャッシュカード(返済口座)
金融機関から指定された書類を早めに準備しましょう。
(2) 金融機関への報告義務(状況変化があった場合)
本審査通過後に以下の状況変化があった場合は、速やかに金融機関に報告してください:
- 転職・退職
- 収入減少
- 新規借入(車のローン、教育ローン等)
- 健康状態の変化
- クレジットカードの新規作成・高額利用
報告を怠ると、契約違反と見なされ、融資承認が取り消される可能性があります。
(3) 住宅ローン特約の確認
売買契約に住宅ローン特約が含まれているか確認してください。この特約があれば、万が一融資が実行されなかった場合でも、違約金なしで契約解除が可能です。
住宅ローン特約は、買主を保護する重要な条項です。契約書を再確認し、不明点は不動産会社に質問しましょう。
本審査通過後にやってはいけないこと
本審査通過後は、融資実行まで財務状況を変化させないことが最重要です。以下の行動は絶対に避けてください。
(1) 新規借入(車のローン・教育ローン等)
車のローン、教育ローン、クレジットカードのキャッシング等、新規の借入は融資実行後まで控えてください。
新規借入は、返済能力に影響を与え、金融機関が再審査または融資承認を取り消す可能性があります。
(2) クレジットカードの新規作成・高額利用
イー・ローンのFP解説によると、クレジットカードの新規作成や高額利用は危険です。
通常利用(日常の買い物、公共料金の支払い等)は問題ありませんが、以下は避けるべきです:
- クレジットカードの新規作成(信用情報に照会履歴が残る)
- 高額なショッピングローン(家具・家電の分割払い等)
- リボ払いの多用(返済負担が増加)
(3) 転職・退職
SBIエステートファイナンスの解説によると、転職は年収・勤続年数に変化をもたらし、融資承認が取り消されることがあります。
転職のタイミングは、融資実行後が適切です。やむを得ず転職が決まった場合は、速やかに金融機関に報告してください。
(4) 財務状況の変化
以下の変化も融資承認取り消しのリスクがあります:
- 副業の開始(収入源の変化)
- 勤務時間の短縮(収入減少)
- 健康状態の悪化(団体信用生命保険への加入不可)
本審査承認後に落ちるケースと対策
本審査承認後に融資が取り消されるケースは稀ですが、以下の状況変化により起こり得ます。
(1) 転職・退職(年収・勤続年数の変化)
転職は、年収・勤務先・勤続年数に変化をもたらします。金融機関は、本審査時の申告内容と異なる状況を確認すると、融資を取り消すことがあります。
対策:転職は融資実行後に行う。転職が決まった場合は速やかに金融機関に報告する。
(2) 新規借入(返済能力の変化)
車のローン、教育ローン、クレジットカードのキャッシング等、新規借入は返済能力に影響します。
対策:融資実行まで新規借入を一切行わない。
(3) 信用情報の変化(支払い遅延等)
クレジットカードの支払い遅延、携帯電話料金の滞納等があると、信用情報に記録され、融資承認が取り消される可能性があります。
対策:融資実行まで支払い遅延を絶対に起こさない。
(4) 健康状態の悪化(団信加入不可)
多くの住宅ローンでは、**団体信用生命保険(団信)**への加入が必須です。本審査後に健康状態が悪化し、団信に加入できなくなると、融資が実行されないことがあります。
対策:健康状態に変化があった場合は、速やかに金融機関に報告する。
(5) 違約金のリスクと住宅ローン特約
リードホームの解説によると、買主都合の契約解除は物件価格の5〜10%の違約金が発生する可能性があります。
例えば、3,000万円の物件の場合、150〜300万円の違約金が発生します。
対策:売買契約に住宅ローン特約を含める。この特約があれば、融資が実行されなかった場合でも、違約金なしで契約解除が可能です。
まとめ:本審査通過後から融資実行までの心構え
住宅ローンの本審査に通過しても、融資実行まで油断は禁物です。転職・新規借入・クレジットカード新規作成等の財務状況の変化は、融資承認取り消しのリスクがあります。
本審査から融資実行まで、申告内容を変更せず、「おとなしく」過ごすことが重要です。売買契約に住宅ローン特約を含め、万が一の場合に備えましょう。
不明点や状況変化があれば、金融機関や不動産会社に速やかに相談してください。信頼できる専門家のサポートを受けながら、安全に融資実行を迎えましょう。
