住宅ローン契約者が死亡したら返済はどうなるのか
住宅ローンを借りている方の中には、「もし自分が亡くなったら、家族に住宅ローンの負担が残るのか」と不安に感じる方も多いのではないでしょうか。契約者が死亡した場合の返済義務がどうなるのか、遺族に負担がかかるのかは、住宅購入時に知っておきたい重要なポイントです。
この記事では、団体信用生命保険(団信)の仕組み、保障内容、死亡時の手続き、免除条件、団信に加入できない場合の対策を、住宅金融支援機構や三井住友銀行の公式情報を元に解説します。
住宅ローンを検討している方や、すでに契約している方が、万が一の際に家族を守る保障内容を正確に把握できるようになります。
この記事のポイント
- 団信に加入していれば、契約者が死亡または高度障害状態になった際に住宅ローン残高が免除される
- 団信の保険料は通常、住宅ローンの金利に含まれており、別途負担する必要がない(特約付きは金利上乗せあり)
- 死亡時は遺族が金融機関に連絡し、死亡診断書等を提出する(保険金請求の時効は3年)
- 団信未加入の場合は相続人が住宅ローンを引き継ぐため、通常の生命保険等で備える必要がある
- 健康状態により団信に加入できない場合は、ワイド団信やフラット35を検討する
団信加入時:住宅ローン残高が免除される
団体信用生命保険(団信)に加入している場合、契約者が死亡または高度障害状態になると、保険会社が住宅ローンの残高を金融機関に支払い、返済が免除されます。HOME'Sによると、団信に加入していれば、遺族は住宅ローンの返済義務を負うことなく、自宅に住み続けることができます。
団信は民間金融機関の住宅ローンでは原則として加入が必須となっており、ほとんどの住宅ローン契約者が加入しています。
団信未加入時:相続人が住宅ローンを引き継ぐ
団信に加入していない場合、契約者が死亡しても住宅ローンは消滅せず、相続人が返済義務を引き継ぎます。住宅金融支援機構によると、相続人は以下のいずれかの対応を選択する必要があります。
- 住宅ローンを引き継ぎ、返済を継続
- 住宅を売却してローンを完済
- 相続放棄(負債全体を引き継がない)
団信未加入の場合は、通常の生命保険等で備えておくことが重要です。
団体信用生命保険(団信)とは
団信の仕組み(保険契約者・被保険者)
団信は、住宅ローン契約時に加入する生命保険です。三井住友銀行によると、金融機関が保険契約者、住宅ローン契約者が被保険者となる仕組みです。
契約者が死亡または高度障害状態になった場合、保険会社が住宅ローン残高を金融機関に支払い、契約者(または遺族)の返済義務が消滅します。
保険料の仕組み(金利に含まれる)
りそな銀行によると、通常の団信(死亡・高度障害のみ)の保険料は、住宅ローンの金利に含まれており、別途支払う必要はありません。ただし、3大疾病特約などの特約を付ける場合は、金利が0.1〜0.3%上乗せされる場合があります。
例:
| 団信の種類 | 金利上乗せ |
|---|---|
| 基本の団信 | なし |
| 3大疾病特約 | +0.2% |
| 8大疾病特約 | +0.3% |
加入のタイミング(住宅ローン契約時のみ)
団信は住宅ローン契約時のみ加入可能で、後から加入することはできません。また、健康状態により加入できない場合があるため、住宅ローン契約前に加入可否を確認することが重要です。
団信の保障内容と種類
基本の団信(死亡・高度障害・余命6ヶ月)
基本の団信では、以下の状態になった場合に住宅ローンが免除されます。
- 死亡
- 高度障害(両眼の失明、言語機能の喪失、両上肢・両下肢の用を全廃する等)
- 余命6ヶ月以内と診断された場合
アットホームによると、基本の団信は金利に含まれており追加負担はありません。
3大疾病特約(がん・急性心筋梗塞・脳卒中)
3大疾病特約は、がん・急性心筋梗塞・脳卒中で所定の状態になった場合に住宅ローンが免除される特約です。金利が0.2%程度上乗せされる場合が一般的です。
保障条件の例:
- がん: がんと診断された時点で免除(上皮内がんは対象外の場合が多い)
- 急性心筋梗塞: 60日以上労働制限が必要な状態
- 脳卒中: 60日以上言語障害等の後遺症が継続
8大疾病特約
8大疾病特約は、3大疾病に加えて、高血圧性疾患・糖尿病・慢性腎不全・肝硬変・慢性膵炎の5疾病を保障する特約です。金利が0.3%程度上乗せされる場合が一般的です。
ペアローン向け連生団信(2024年登場)
日本経済新聞によると、2024年、ペアローン向けの「連生団信」が登場しました。夫婦どちらかが死亡した場合に住宅ローン全額が免除される商品で、みずほ銀行、PayPay銀行等が提供しています(2024年現在)。
死亡時の手続きと免除条件
死亡時の手続きの流れ
東京横浜相続によると、契約者が死亡した場合の手続きは以下の通りです。
- 金融機関への連絡(死亡後速やかに)
- 必要書類の提出(死亡診断書、住民票等)
- 保険会社の審査
- 保険金の支払い(金融機関へ)
- 抵当権抹消登記(別途手続きが必要)
必要書類(死亡診断書・住民票等)
一般的な必要書類は以下の通りです。
- 死亡診断書
- 住民票(除票)
- 戸籍謄本
- 保険金請求書(金融機関が用意)
金融機関により異なる場合があるため、詳細は借入先に確認してください。
免除されるケース・されないケース
免除されるケース:
- 死亡
- 高度障害
- 余命6ヶ月以内と診断
- 3大疾病等の特約に該当する状態
免除されないケース:
- 保障開始から1年以内の自殺
- 保障開始前に診断されたがん
- 保障開始90日以内に診断されたがん
- 故意の事故
保険金請求の時効(3年)
東京横浜相続によると、団信の保険金請求には時効があり、死亡から3年以内に請求しないと権利が消滅します。遺族は死亡後速やかに金融機関へ連絡し、手続きを進めることが重要です。
抵当権抹消登記
住宅ローンが団信で完済されても、抵当権は自動抹消されません。抵当権抹消登記の手続きが別途必要です。司法書士に依頼する場合、費用は一般的に5万円程度と言われています。
団信に加入できない場合の対策と注意点
ワイド団信(引受基準緩和型)
健康状態に不安がある人でも加入しやすい「ワイド団信」(引受基準緩和型)があります。通常の団信よりも加入基準が緩和されていますが、金利が上乗せされる場合があります。
フラット35(団信任意加入)
フラット35(住宅金融支援機構)は、団信が任意加入です。健康状態により団信に加入できない場合でも、住宅ローンを借りることができます。ただし、団信未加入の場合は通常の生命保険等で備える必要があります。
通常の生命保険での備え
団信に加入できない場合は、通常の生命保険(定期保険・収入保障保険等)で住宅ローン相当額を保障することも検討できます。ファイナンシャルプランナー(FP)や保険代理店に相談することを推奨します。
団信加入時の健康告知
団信加入時には、健康状態の告知が必要です。過去3年以内の通院歴・手術歴・投薬歴などを正確に告知する必要があります。告知義務違反が発覚した場合、保険金が支払われないリスクがあるため、正確な告知を心がけてください。
まとめ:団信を選ぶ際の判断基準
団体信用生命保険(団信)は、住宅ローン契約者が死亡または高度障害状態になった際に、住宅ローン残高を免除する生命保険です。保険料は通常、金利に含まれており、別途負担する必要はありません(特約付きは金利上乗せあり)。
死亡時は遺族が金融機関に連絡し、死亡診断書等を提出します。保険金請求の時効は3年のため、速やかに手続きを進めることが重要です。
団信に加入できない場合は、ワイド団信やフラット35を検討し、必要に応じて通常の生命保険で備えることを推奨します。詳細は金融機関やファイナンシャルプランナー(FP)に相談しながら、家族を守る保障内容を選びましょう。
