抵当権抹消登記の費用と手続き|自分でやる場合と司法書士依頼の違い
住宅ローンを完済した後、「抵当権抹消登記にどれくらい費用がかかるのか」「自分でできるのか、司法書士に依頼すべきか」と悩んでいる方は少なくありません。
この記事では、抵当権抹消登記の費用内訳、自分で手続きする方法、司法書士に依頼する場合の相場を、公式データを元に解説します。自分で手続きすれば3,000円~5,000円程度に抑えられますが、司法書士に依頼する場合は総額1.4万円~2万円程度かかります。
初めて抵当権抹消登記を行う方でも、費用・手順・リスクを正確に把握できるようになります。
この記事のポイント
- 抵当権抹消登記の登録免許税は不動産1個につき1,000円(戸建ては土地+建物で2,000円)
- 自分で手続きする場合の総費用は3,000円~5,000円程度、司法書士に依頼する場合は総額1.4万円~2万円程度
- 自分で手続きすることは可能で、法務局のウェブサイトに申請書のフォーマットと記入例がある
- 抵当権抹消を放置すると、将来の不動産売却時に手続きが煩雑になるため、早めの手続きが推奨される
抵当権抹消登記とは
抵当権抹消登記は、住宅ローン完済後に不動産に設定されていた抵当権を消す手続きです。
抵当権抹消登記の定義と必要性
抵当権とは、住宅ローンを借りる際に、金融機関が不動産に設定する担保権です。ローンを完済しても、抵当権は自動的には消えません。法務局で抵当権抹消登記を行う必要があります。
抵当権抹消登記を行わないと、登記簿には「抵当権が設定されている」と記録されたままになります。
住宅ローン完済後の手続きの流れ
住宅ローンを完済すると、金融機関から以下の書類が送付されます。
- 抵当権設定契約証書(または登記済証)
- 抵当権解除証書
- 登記事項証明書(登記簿謄本)
- 委任状(司法書士に依頼する場合)
- 資格証明書(金融機関の代表者事項証明書)
これらの書類を使って、管轄の法務局で抵当権抹消登記を申請します。
抵当権抹消を放置するリスク
抵当権抹消登記を放置しても、法的なペナルティはありません。ただし、以下のリスクがあります。
将来の不動産売却時に手続きが煩雑になる:
- 抵当権が設定されたままでは、不動産を売却できない
- 古い抵当権は調査に時間がかかる
- 金融機関の担当者が退職・異動している場合、書類の再発行に時間がかかる
必要書類を紛失するリスク:
- 完済から時間が経つと、金融機関から送付された書類を紛失する可能性が高まる
- 紛失した場合、再発行に時間と費用がかかる
住宅ローン完済後、なるべく早めに抵当権抹消登記を行うことが推奨されます。
抵当権抹消登記の費用内訳
抵当権抹消登記にかかる費用は、登録免許税と司法書士報酬(司法書士に依頼する場合)に大きく分かれます。
登録免許税(不動産1個につき1,000円)
登録免許税は、不動産登記を行う際に国に納める税金です。抵当権抹消登記の場合、不動産1個につき1,000円です。
具体例:
- マンション(建物のみ):1,000円
- 戸建て(土地+建物):2,000円
- 土地2筆+建物1棟:3,000円
登録免許税は、収入印紙で納付します。
司法書士報酬の相場(1.5万円~1.6万円)
司法書士に抵当権抹消登記を依頼する場合、司法書士報酬が発生します。
相場:
- 一般的な相場:1.5万円~1.6万円
- 日本司法書士連合会の調査:2万円~9万円(事務所により幅がある)
司法書士報酬には消費税が加算されます。また、郵送料・事務手数料等が別途かかる場合があります。
その他の費用(証明書取得費等)
抵当権抹消登記には、以下の費用が別途かかる場合があります。
| 項目 | 内容 | 目安額 |
|---|---|---|
| 登記事項証明書取得費 | 法務局で取得(窓口) | 600円/通 |
| 登記事項証明書取得費 | オンライン請求 | 500円/通 |
| 住民票・印鑑証明書 | 市区町村役場で取得 | 300円~400円/通 |
| 郵送料 | 法務局への郵送申請 | 500円~1,000円 |
自分で手続きする場合、登録免許税+証明書取得費等で3,000円~5,000円程度が目安です。
自分で手続きする方法
抵当権抹消登記は、自分で手続きすることができます。法務局のウェブサイトに申請書のフォーマットと記入例があり、初めてでも作成可能です。
必要書類の確認(金融機関から送付される書類)
住宅ローン完済後、金融機関から以下の書類が送付されます。
- 抵当権設定契約証書(または登記済証)
- 抵当権解除証書
- 登記事項証明書(登記簿謄本)
- 委任状(司法書士に依頼する場合に使用)
- 資格証明書(金融機関の代表者事項証明書)
これらの書類は、抵当権抹消登記に必要です。紛失しないように保管しましょう。
申請書の作成方法(法務局のフォーマット利用)
抵当権抹消登記申請書は、法務局のウェブサイトからフォーマットをダウンロードできます。
法務局のウェブサイト: 法務局 不動産登記の申請書様式
記入項目:
- 不動産の所在・地番・家屋番号
- 抵当権者(金融機関)の名称・住所
- 申請人(不動産所有者)の住所・氏名
- 登録免許税額
記入例も公開されているため、初めてでも作成できます。
管轄法務局への提出(窓口・郵送)
申請書と必要書類を揃えたら、不動産の所在地を管轄する法務局に提出します。
提出方法:
- 窓口提出: 管轄法務局に直接持参
- 郵送提出: 管轄法務局に郵送(書留・簡易書留推奨)
提出先の確認: 法務局 管轄のご案内
申請後、1~2週間程度で登記が完了します。完了後、登記事項証明書を取得して、抵当権が抹消されていることを確認しましょう。
司法書士に依頼する場合
司法書士に抵当権抹消登記を依頼する場合、費用はかかりますが、手続きの負担を大幅に軽減できます。
司法書士に依頼するメリット
手続きの負担軽減:
- 申請書の作成・書類の準備を司法書士が代行
- 法務局への提出も司法書士が行う
- 不備があった場合の補正も対応
書類紛失時の対応:
- 必要書類を紛失した場合、再発行の手続きを代行
- 金融機関との連絡も司法書士が対応
時間がない方に適している:
- 平日に法務局へ行く時間がない場合に便利
費用の相場と見積もり比較のポイント
司法書士報酬は事務所により異なります。複数の司法書士事務所で見積もりを取り、比較することが重要です。
費用の内訳例:
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 登録免許税 | 2,000円(土地+建物) |
| 司法書士報酬 | 15,000円 |
| 消費税(10%) | 1,500円 |
| 証明書取得費 | 1,000円 |
| 郵送料 | 500円 |
| 合計 | 20,000円 |
見積もり比較のポイント:
- 司法書士報酬の金額
- 消費税・郵送料等の諸費用が含まれているか
- 追加費用の有無
依頼時の流れと必要書類
依頼の流れ:
- 司法書士事務所に連絡し、見積もりを依頼
- 金融機関から送付された書類を司法書士に渡す
- 司法書士が申請書を作成・法務局に提出
- 登記完了後、司法書士から登記事項証明書を受け取る
必要書類:
- 金融機関から送付された書類一式
- 本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカード等)
- 委任状(司法書士が用意)
注意点とよくある失敗
抵当権抹消登記を行う際には、いくつかの注意点があります。
所有権抹消登記との違い(極めて稀なケース)
所有権抹消登記は、不動産の所有権を前の所有者に戻す手続きです。贈与契約の合意解除等で行われる極めて稀なケースです。
抵当権抹消登記は、住宅ローン完済後に抵当権を消す手続きで、一般的な手続きです。
「抵当権抹消登記 費用」と「所有権抹消登記 費用」は異なる手続きのため、混同しないように注意しましょう。
申請書の記入ミスと添付書類の不備
申請書の記入ミスや添付書類の不備があると、法務局から補正や再提出を求められます。
よくあるミス:
- 不動産の所在・地番・家屋番号の記入ミス
- 登録免許税額の計算ミス
- 収入印紙の貼付漏れ
- 添付書類の不足
法務局のウェブサイトの記入例を参考に、慎重に作成しましょう。不安な場合は、事前に法務局の登記相談窓口で確認することをおすすめします。
必要書類を紛失した場合の対処法
金融機関から送付された書類を紛失した場合、再発行が必要です。
対処法:
- 完済した金融機関に連絡し、再発行を依頼
- 再発行には時間がかかる場合がある(1~2週間程度)
- 再発行手数料がかかる場合がある
書類紛失時は、司法書士に依頼することも検討しましょう。司法書士が金融機関との連絡を代行してくれます。
まとめ:状況別の選び方
抵当権抹消登記の費用は、登録免許税が不動産1個につき1,000円(戸建ては土地+建物で2,000円)です。自分で手続きする場合の総費用は3,000円~5,000円程度、司法書士に依頼する場合は総額1.4万円~2万円程度です。
自分で手続きする場合のメリット:
- 費用を大幅に節約できる(司法書士報酬1.5万円~2万円を節約)
- 法務局のウェブサイトに申請書のフォーマットと記入例がある
司法書士に依頼する場合のメリット:
- 手続きの負担を大幅に軽減できる
- 書類紛失時の対応も代行
- 時間がない方に適している
状況別の選び方:
- 費用を抑えたい、時間がある → 自分で手続き
- 時間がない、書類を紛失した → 司法書士に依頼
- 不安がある場合 → 司法書士に依頼(または法務局の登記相談窓口で確認)
抵当権抹消を放置すると、将来の不動産売却時に手続きが煩雑になるため、住宅ローン完済後、なるべく早めに手続きを行いましょう。
