マンション購入・売却時の登記とは?
マンション購入や売却を検討する際、「登記費用はいくらかかるのか」と不安に感じる方は少なくありません。
この記事では、マンションの登記費用の内訳、購入・売却時の相場、節約のポイントを、国税庁や法務局の公式情報を元に解説します。
諸費用の見積もりを正確に把握し、資金計画を立てたいと考えている方でも、具体的な費用と計算方法を理解できるようになります。
この記事のポイント
- マンション登記費用は登録免許税と司法書士報酬の2つで構成される
- 中古マンション購入時の登記費用は評価額3,000万円で約22万〜36万円が相場
- 新築は所有権保存登記、中古は所有権移転登記で税率が異なる(0.15% vs 0.3%)
- 住宅ローン利用時は抵当権設定登記が追加で約12万円必要
- 売却時の登記費用(抵当権抹消)は約1〜2万円程度と比較的少額
(1) 登記の目的と重要性
不動産登記とは、土地や建物の所有権・抵当権などの権利関係を法務局に記録する手続きです。
登記の目的:
- 所有権を公に証明する
- 第三者への対抗要件(権利を主張できる)
- 不動産取引の安全性を確保
登記をしないと、所有権を第三者に主張できないため、不動産取引では必須の手続きとなります。
(2) 登記の種類(所有権保存・移転、抵当権設定・抹消)
マンション取引で必要な主な登記は以下の通りです。
| 登記の種類 | 内容 | 税率(軽減後) |
|---|---|---|
| 所有権保存登記 | 新築物件で初めて所有権を登記 | 0.15% |
| 所有権移転登記 | 中古物件で売主から買主へ移転 | 0.3% |
| 抵当権設定登記 | 住宅ローンの担保として設定 | 0.1% |
| 抵当権抹消登記 | ローン完済時に抵当権を消す | 1,000円/個 |
(3) 新築と中古の登記の違い
SUUMOによると、新築と中古では登記の種類が異なります。
新築マンション:
- 所有権保存登記(初めての登記)
- 税率: 本則0.4% → 軽減後0.15%
中古マンション:
- 所有権移転登記(所有権の移転)
- 税率: 本則2.0% → 軽減後0.3%
税率は軽減措置により大幅に引き下げられています。
マンション登記費用の内訳
マンション登記費用は、「登録免許税」と「司法書士報酬」の2つで構成されます。
(1) 登録免許税(国に納める税金)
登録免許税は、不動産登記の際に国に納める税金です。固定資産税評価額×税率で計算されます。
計算式: 登録免許税 = 固定資産税評価額 × 税率
税率一覧(軽減措置適用時):
- 所有権保存登記: 0.15%(本則0.4%)
- 所有権移転登記: 0.3%(本則2.0%)
- 抵当権設定登記: 0.1%(本則0.4%)
- 抵当権抹消登記: 1,000円/個
(2) 司法書士報酬(手続き代行費用)
司法書士報酬は、登記手続きを代行する司法書士に支払う費用です。事務所により異なりますが、以下が相場です。
相場:
- 所有権保存登記: 3〜5万円程度
- 所有権移転登記: 5〜10万円程度
- 抵当権設定登記: 3〜5万円程度
- 抵当権抹消登記: 1〜2万円程度
司法書士報酬は自由報酬のため、事務所により価格差があります。
(3) その他の費用(住宅用家屋証明書等)
登記費用以外にも、以下の費用が発生します。
その他の費用:
- 住宅用家屋証明書: 1,300円程度(軽減措置適用に必要)
- 登記事項証明書: 600円/通
- 登記簿謄本: 600円/通
これらの費用は比較的少額ですが、合計で数千円程度かかります。
購入時の登記費用と相場
(1) 新築マンションの登記費用(所有権保存登記)
新築マンションの場合、所有権保存登記が必要です。
費用例(固定資産税評価額2,000万円の場合):
- 登録免許税: 2,000万円 × 0.15% = 3万円
- 司法書士報酬: 3〜5万円程度
- 合計: 6〜8万円程度
(2) 中古マンションの登記費用(所有権移転登記)
中古マンションの場合、所有権移転登記が必要です。
費用例(固定資産税評価額3,000万円の場合):
- 登録免許税: 3,000万円 × 0.3% = 9万円
- 司法書士報酬: 5〜10万円程度
- 合計: 14〜19万円程度
中古マンション購入ガイドによると、評価額3,000万円で約22万〜36万円が相場とされています(抵当権設定登記を含む)。
(3) 住宅ローン利用時の追加費用(抵当権設定登記)
住宅ローン利用時は、抵当権設定登記が追加で必要です。
費用例(借入額3,000万円の場合):
- 登録免許税: 3,000万円 × 0.1% = 3万円
- 司法書士報酬: 3〜5万円程度
- 合計: 6〜8万円程度
住宅ローンを利用すると、登記費用が約6〜8万円増加します。
(4) 登録免許税の軽減措置(令和9年3月31日まで延長)
国税庁によると、住宅用家屋の登録免許税軽減措置は令和9年(2027年)3月31日まで延長されました。
軽減措置の適用要件:
- 床面積50㎡以上
- 築25年以内(木造は20年以内)または耐震基準適合証明書あり
- 取得後1年以内に登記
- 自己居住用
軽減措置を受けるには、市区町村発行の「住宅用家屋証明書」が必要です。
(5) 費用シミュレーション例(固定資産税評価額3,000万円の場合)
中古マンション購入時の登記費用総額(評価額3,000万円、ローン3,000万円):
| 項目 | 登録免許税 | 司法書士報酬 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 所有権移転登記 | 9万円 | 5〜10万円 | 14〜19万円 |
| 抵当権設定登記 | 3万円 | 3〜5万円 | 6〜8万円 |
| その他費用 | - | - | 1〜2万円 |
| 総額 | 12万円 | 8〜15万円 | 21〜29万円 |
固定資産税評価額3,000万円の中古マンション購入時の登記費用は、約21〜29万円が目安です。
売却時の登記費用と相場
(1) 売主が負担する登記費用(抵当権抹消登記)
マンション売却時、売主が負担する登記費用は抵当権抹消登記のみです。
抵当権抹消登記:
- 登録免許税: 1,000円/個(土地1個・建物1個=2,000円)
- 司法書士報酬: 1〜2万円程度
- 合計: 1.2〜2.2万円程度
すまいステップによると、売主負担の登記費用は約1〜2万円程度と比較的少額です。
(2) 費用の目安(1〜2万円程度)
売却時の登記費用は、購入時に比べて非常に少額です。
売却時の費用内訳:
- 抵当権抹消登記: 1.2〜2.2万円程度
- その他(登記簿謄本等): 数千円程度
- 合計: 約1〜2万円程度
(3) 司法書士に依頼する場合と自分で行う場合
抵当権抹消登記は比較的簡単なため、自分で行うことも可能です。
自分で行う場合:
- 登録免許税: 2,000円程度のみ
- 司法書士報酬(約1〜2万円)を節約可能
- 法務局への申請、書類作成が必要
司法書士に依頼する場合:
- 費用: 約1.2〜2.2万円
- 手続きを全て代行してもらえる
- 時間と手間を節約できる
登記費用を節約するポイント
(1) 司法書士報酬の相見積もり
司法書士報酬は自由報酬のため、事務所により価格差があります。複数の司法書士から見積もりを取ることで、費用を抑えられる可能性があります。
相見積もりのポイント:
- 3社以上から見積もりを取る
- 報酬の内訳を明確に確認
- サービス内容を比較(出張対応、相談料等)
(2) 自分で登記を行う場合のメリット・デメリット
自分で登記を行うと、司法書士報酬分(約10万〜20万円)を節約できます。
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 司法書士報酬を節約できる | 書類作成・申請に時間がかかる |
| 登記の仕組みを理解できる | ミスがあると登記が受理されない |
| 手続きを自分でコントロールできる | 法務局に平日行く必要がある |
初めて登記を行う場合は、ミスのリスクを考慮し、司法書士への依頼を推奨します。
(3) 住宅ローン利用時の制約(金融機関指定司法書士)
住宅ローン利用時は、金融機関指定の司法書士を使う必要がある場合が多く、報酬交渉が難しいことがあります。
注意点:
- 金融機関指定の司法書士は変更できない場合が多い
- 報酬は金融機関と司法書士の取り決めによる
- 相見積もりが難しい
住宅ローンを利用する場合は、事前に金融機関に確認しましょう。
(4) 軽減措置の適用条件を確認する
登録免許税の軽減措置を受けるには、床面積50㎡以上等の要件があります。
確認すべきポイント:
- 床面積50㎡以上(登記簿上の面積)
- 築25年以内(または耐震基準適合証明書あり)
- 取得後1年以内に登記
- 自己居住用
要件を満たさない場合は、本則税率が適用され費用が大幅に増加します。
まとめ:登記費用の注意点と相談先
マンションの登記費用は、登録免許税と司法書士報酬の2つで構成されます。中古マンション購入時の登記費用は評価額3,000万円で約21〜29万円、売却時の登記費用(抵当権抹消)は約1〜2万円程度が相場です。
新築は所有権保存登記(税率0.15%)、中古は所有権移転登記(税率0.3%)で、住宅ローン利用時は抵当権設定登記が追加で約6〜8万円必要です。登録免許税の軽減措置は令和9年3月31日まで延長されていますが、床面積50㎡以上等の要件があります。
2024年4月から相続登記が義務化され、3年以内に登記しない場合は10万円以下の過料が課されます。登記費用や手続きについて不明な点があれば、司法書士への相談をおすすめします。
