マンションは築何年まで住める?|寿命の基礎知識
中古マンションを購入する際、「築年数が古くても大丈夫?」「あと何年住めるのか?」と不安に感じる方は少なくありません。
この記事では、マンションの耐用年数と実際の寿命の違い、築年数別の状態、長持ちさせる条件を、国土交通省の公式データを元に解説します。築古物件のリスクと判断基準も紹介しますので、安心して物件選びができるようになります。
この記事のポイント
- 法定耐用年数47年は税務上の数値で、実際の寿命とは異なる
- RC造マンションの物理的寿命は120年、適切なメンテナンスで150年まで可能
- 適切な管理があれば70年程度、良好な状態なら100年以上住めるマンションもある
- 建替えの平均築年数は44年だが、実際の建替え実施率は0.65%と低い
- 大規模修繕(10〜15年周期)と長期修繕計画がマンションの寿命を左右する
(1) 適切な管理があれば70年程度、良好な状態なら100年以上
マンションは適切な管理があれば70年程度住むことが可能で、良好な状態を保てば100年以上住めるケースもあります。
長谷工によると、「法定耐用年数47年は税務上の数値であり、適切なメンテナンスをすれば100年以上住める可能性がある」とされています。
実際の寿命を決める要因:
- 定期的な大規模修繕の実施(10〜15年周期)
- 管理組合の運営状況(修繕計画・積立金の管理)
- 外装修繕によるコンクリートの中性化防止
- 給排水管・電気設備の適切な更新
これらの条件が揃っているマンションは、築年数にかかわらず長く住み続けることができます。
(2) 耐用年数と実際の寿命は異なる
マンションの「耐用年数」には3つの種類があり、それぞれ意味が異なります。
| 種類 | 意味 | RC造マンションの年数 |
|---|---|---|
| 法定耐用年数 | 税務上の減価償却の計算に使う年数 | 47年 |
| 物理的耐用年数 | 建物が物理的に使用可能な期間 | 120年(メンテナンス次第で150年) |
| 経済的耐用年数 | 建物が経済的な価値を持ち続ける期間 | 一般的に40〜50年 |
法定耐用年数47年を過ぎたからといって、マンションに住めなくなるわけではありません。物理的には120年以上持つ可能性があるため、管理状態を確認することが重要です。
法定耐用年数と物理的耐用年数の違い|47年と120年の意味
(1) 法定耐用年数47年|税務上の減価償却の年数
法定耐用年数は、税務上の減価償却を計算するために定められた年数です。
国税庁「減価償却資産の耐用年数表」によると、鉄筋コンクリート造(RC造)の住宅用建物の法定耐用年数は47年と定められています。
法定耐用年数の注意点:
- 税務上の計算に使う数値であり、建物の物理的な寿命とは無関係
- 賃貸経営・売却時の税金計算で使われる
- 法定耐用年数を過ぎても、建物は使用可能
築47年を超えたマンションでも、適切なメンテナンスがされていれば問題なく住み続けることができます。
(2) 物理的耐用年数|RC造は120年、メンテナンス次第で150年
物理的耐用年数は、建物が物理的に使用可能な期間を指します。
国土交通省「長期修繕計画作成ガイドライン」によると、鉄筋コンクリート造の物理的寿命は以下の通りです。
| 条件 | 物理的寿命 |
|---|---|
| 一般的なRC造 | 120年 |
| 外装を修繕してコンクリートの中性化を防いだ場合 | 150年 |
コンクリートの中性化とは:
- コンクリート内部のアルカリ性が低下し、鉄筋が錆びやすくなる現象
- 外装修繕(防水・塗装)により中性化の進行を遅らせることができる
- 定期的な大規模修繕で中性化を防ぐことが、マンションを長持ちさせる鍵
適切なメンテナンスを行えば、マンションは100年以上住める可能性があります。
(3) 経済的耐用年数|一般的に40〜50年
経済的耐用年数は、建物が経済的な価値を持ち続ける期間を指します。一般的に40〜50年とされています。
経済的耐用年数の考え方:
- 建物の資産価値・賃貸収益が維持される期間
- 物理的には使用可能でも、立地・設備の陳腐化により経済的価値が下がる
- 築40〜50年を過ぎると、建替えや大規模リノベーションが検討される
経済的耐用年数を過ぎたマンションでも、立地が良ければ一定の需要があります。中古マンションの価格は、築年数だけでなく立地・管理状態・周辺環境により決まります。
(4) 設備の耐用年数|給排水管・電気設備は15〜40年
マンション管理組合のミカタによると、建物本体(RC造)の寿命は120年ですが、設備の耐用年数はそれより短くなります。
| 設備 | 耐用年数 |
|---|---|
| 給排水管 | 30〜40年 |
| 衛生設備(トイレ・浴室) | 15〜30年 |
| 電気設備 | 15〜30年 |
| エレベーター | 20〜30年 |
築古マンションを購入する際は、給排水管の状態を確認することが重要です。古いマンションの中には、給排水管がコンクリートに埋まっているため取替工事ができない物件もあります。この場合、配管の寿命が建物の寿命になる可能性があります。
築年数別のマンションの状態とリスク|築30年・50年の違い
(1) 築10〜20年|第1回大規模修繕の時期
築10〜20年のマンションは、第1回目の大規模修繕が実施される時期です。
築10〜20年マンションの特徴:
- 外壁・防水・共用部の設備が一定の劣化を見せる
- 第1回大規模修繕(外壁塗装・防水工事等)が10〜15年目に実施される
- 修繕積立金の残高が十分か確認する必要がある
- 新耐震基準(1981年6月以降)であれば耐震性に問題なし
大規模修繕が計画通り実施されているか、修繕履歴を確認しましょう。
(2) 築30年|設備の老朽化が進む時期
SUUMOによると、築30年のマンションは設備の老朽化が進む時期です。
築30年マンションの特徴:
- 第2回大規模修繕(外壁・防水・給排水管更新等)が実施される時期
- 給排水管・電気設備の更新が必要になる場合がある
- エレベーター・機械式駐車場のメンテナンス費用が増加
- 管理組合の修繕計画・積立金の確保が重要
築30年マンションを購入する際は、長期修繕計画・修繕積立金の残高を確認し、今後の修繕費用負担を見積もることが重要です。
(3) 築40〜50年|建替えの検討時期(平均44年)
野村不動産によると、マンション建替えの平均築年数は44年です。築40〜50年台での建替えが最も多くなっています。
築40〜50年マンションの特徴:
- 建替えの検討時期に入る(ただし実際の建替え実施率は0.65%と低い)
- 大規模修繕が3〜4回目を迎え、修繕費用が高額化
- 設備の老朽化が顕著になり、更新費用も増加
- 旧耐震基準(1981年5月以前)の物件は耐震性の確認が必須
2021年末時点で築30年以上のマンションは約249万戸ですが、建替え済み・準備中は270件(0.65%)に留まります。多くのマンションは大規模修繕・長寿命化で対応しています。
(4) 築50年超|管理状態による差が大きくなる
SUUMOによると、築50年超のマンションは管理状態による差が大きくなります。
築50年超マンションの特徴:
- 適切な管理を行っている物件は市場で一定のニーズがある
- 管理が不十分な物件は、老朽化が深刻化
- 住宅ローンが出にくい場合がある(旧耐震基準の影響)
- 建替え・大規模リノベーションの計画があるか確認が必要
築50年超のマンションを購入する際は、耐震診断・補強工事の実施状況、長期修繕計画、管理組合の運営状況を詳細に確認することを推奨します。
マンションを長持ちさせる条件|大規模修繕と管理組合の重要性
(1) 定期的な大規模修繕|10〜15年周期での実施
マンションを長持ちさせる最も重要な条件は、定期的な大規模修繕の実施です。
大規模修繕の内容:
- 外壁塗装・タイル補修(防水性能の回復)
- 防水工事(屋上・バルコニー等)
- 給排水管の更新
- 共用部の設備更新(エレベーター・照明等)
大規模修繕は10〜15年周期で実施されるのが一般的です。築10〜15年で第1回、築20〜30年で第2回、築30〜45年で第3回を迎えます。
(2) 長期修繕計画の策定と修繕積立金の確保
国土交通省「長期修繕計画作成ガイドライン」によると、長期修繕計画の策定と修繕積立金の確保がマンションの寿命を左右します。
長期修繕計画のポイント:
- 将来の修繕内容・時期・費用を計画したもの
- 5年ごとに見直し、最新の状況を反映
- 修繕積立金が計画通り積み立てられているか確認
修繕積立金が不足している場合、大規模修繕が実施できず、建物の劣化が加速します。中古マンション購入時は、修繕積立金の残高・積立額を確認しましょう。
(3) 管理組合の運営状況|修繕履歴の確認
管理組合の運営状況は、マンションの寿命に直結します。
管理組合の確認ポイント:
- 総会議事録で意思決定がスムーズか確認
- 修繕履歴(過去の大規模修繕の実施記録)
- 長期修繕計画の有無と内容
- 管理費・修繕積立金の滞納率
管理組合がしっかり運営されているマンションは、築年数が古くても良好な状態を保てます。
(4) 外装修繕によるコンクリートの中性化防止
マンションを150年持たせるためには、外装修繕によるコンクリートの中性化防止が重要です。
コンクリートの中性化防止:
- 外壁塗装・タイル補修で防水性能を維持
- 雨水の浸入を防ぎ、コンクリートの劣化を遅らせる
- 定期的な外装修繕で中性化の進行を抑制
外装修繕を怠ると、コンクリートの中性化が進み、鉄筋が錆びて建物の強度が低下します。
築古物件購入時の注意点|旧耐震・設備・住宅ローン
(1) 旧耐震基準(1981年5月以前)のリスクと耐震診断
1981年5月31日以前に建築確認を受けた旧耐震基準のマンションは、現行基準より耐震性が低いリスクがあります。
旧耐震基準と新耐震基準の違い:
| 基準 | 想定する地震 | 適用時期 |
|---|---|---|
| 旧耐震基準 | 震度5強程度 | 1981年5月31日以前 |
| 新耐震基準 | 震度6強〜7でも倒壊・崩壊しない | 1981年6月1日以降 |
旧耐震マンションを購入する際は、耐震診断・耐震補強工事の実施状況を確認することを推奨します。
(2) 給排水管の状態確認|取替工事の可否
築古マンションを購入する際は、給排水管の状態を確認することが重要です。
給排水管のチェックポイント:
- 配管がコンクリートに埋まっているか、露出しているか
- 取替工事が可能か(コンクリートに埋まっている場合は取替不可の場合がある)
- 最後に配管更新が行われた時期
- 今後の更新計画があるか
給排水管がコンクリートに埋まっている古いマンションは、配管の寿命が建物の寿命になる可能性があります。
(3) 住宅ローンの借入可能期間|築年数による制限
築年数が古いマンションは、住宅ローンの借入可能期間が短くなる・審査が通りにくくなる場合があります。
住宅ローンの注意点:
- 旧耐震基準(1981年5月以前)のマンションは住宅ローンが出にくい
- 借入期間が短くなると、月々の返済額が増える
- 耐震診断・補強工事の実施状況により審査が異なる
- 金融機関により基準が異なるため、複数社に相談
住宅ローンの借入可能性を事前に確認してから、物件購入を進めましょう。
(4) 建替え・大規模修繕の計画と費用負担
築40〜50年のマンションを購入する際は、建替え・大規模修繕の計画と費用負担を確認することが重要です。
確認ポイント:
- 建替えの検討状況(総会議事録で確認)
- 大規模修繕の実施計画と費用見積もり
- 修繕積立金の残高と今後の積立額
- 一時金徴収の可能性
建替え・大規模修繕の費用負担は物件ごとに異なるため、不動産会社または管理組合に詳細を確認しましょう。
まとめ:築年数と居住可能年数の判断基準
マンションの法定耐用年数47年は税務上の数値で、実際の寿命とは異なります。RC造マンションの物理的寿命は120年、適切なメンテナンスで150年まで可能です。適切な管理があれば70年程度、良好な状態なら100年以上住めるマンションもあります。
マンションの寿命は、定期的な大規模修繕(10〜15年周期)、長期修繕計画の策定、修繕積立金の確保、管理組合の運営状況により左右されます。築古物件を購入する際は、旧耐震基準(1981年5月以前)のリスク、給排水管の状態、住宅ローンの借入可能性を確認しましょう。
築年数だけで判断せず、管理状態・修繕履歴・耐震性を総合的に評価することが重要です。詳細は建築士・マンション管理士などの専門家にご相談ください。


