なぜマンション階数選びが重要なのか:生活の質と資産価値を左右する
マンション購入を検討する際、「どの階を選べばよいか」「買ってはいけない階はあるのか」と不安に思う方は少なくありません。階数選びは引っ越し後に変更できないため、慎重な判断が求められます。
この記事では、マンション階数による違い(価格・眺望・騒音・防犯・災害時の避難)、低層階・中層階・高層階それぞれの特徴、ライフスタイル別の選び方を解説します。
初めてマンションを購入する方でも、自分の優先事項(予算・家族構成・ライフスタイル)に合った階数を選べるようになります。
この記事のポイント
- 絶対的な「買ってはいけない階」は存在せず、各階にメリット・デメリットがある
- 階数が1階上がるごとに価格は約0.5%〜2.5%上昇するため、予算重視なら低層階(2〜4階)が狙い目
- 5〜6階の中層階は、虫の侵入リスクが低く、日当たりも確保でき、災害時も階段で避難可能なバランスの良い階層
- 高層階は眺望・静寂性が魅力だが、エレベーター待ち時間、夏の暑さ、災害時の避難困難さを考慮する必要がある
- 小さな子供がいる家庭は低層階、眺望重視なら高層階、バランス重視なら中層階が適している
マンション階数による違いの基礎知識:価格・眺望・騒音・防犯・災害時の避難
(1) 階数プレミアム:1階上がるごとに価格は約0.5%〜2.5%上昇
マンションでは、階数が上がるごとに価格が上昇する「階数プレミアム」が存在します。
| 階数 | 価格上昇率(目安) | 例(5,000万円の場合) |
|---|---|---|
| 2階 | 0.5%〜1.0%上昇 | +25万〜50万円 |
| 5階 | 2.0%〜5.0%上昇 | +100万〜250万円 |
| 10階 | 5.0%〜10.0%上昇 | +250万〜500万円 |
| 最上階 | 10.0%〜20.0%上昇 | +500万〜1,000万円 |
(出典: 長谷工の仲介「マンション査定で階数は影響する?」、2024年)
予算重視の場合は、低層階(2〜4階)を選ぶことで、数百万円のコスト削減が可能です。
(2) 眺望・日当たりの違い
階数により、眺望と日当たりが大きく変わります。
| 階数 | 眺望 | 日当たり |
|---|---|---|
| 低層階(1〜4階) | 周辺建物に遮られる可能性 | 午前中のみ、または遮られる場合も |
| 中層階(5〜8階) | 周辺を見渡せる | 午前〜午後まで確保しやすい |
| 高層階(9階以上) | 遠くまで見渡せる | 1日中良好 |
注意点:
- 眺望・日当たりは周辺環境(建物の高さ、方角)により大きく変動する
- 内覧時に実際の眺望・日当たりを確認することが重要
(3) 騒音の違い(道路・隣人・上階からの音)
階数により、騒音の種類と程度が異なります。
低層階の騒音:
- 道路の交通騒音(車・バイク・人通り)
- 1階は外部の音が入りやすい
中層階の騒音:
- 上階からの生活音(足音、ドアの開閉音)
- 低層階よりは道路騒音が少ない
高層階の騒音:
- 風の音(高層階特有)
- 道路騒音はほぼなし、静寂性が高い
(4) 災害時の避難の難易度(階段・エレベーター停止)
災害時の避難の難易度は、階数により大きく変わります。
| 階数 | 避難の難易度 | 注意点 |
|---|---|---|
| 低層階(1〜4階) | 易しい | 階段で数分、高齢者でも避難可能 |
| 中層階(5〜8階) | 中程度 | 階段で5〜10分、ある程度の体力が必要 |
| 高層階(9階以上) | 困難 | 停電時はエレベーター停止、階段での上り下りが困難 |
(出典: 三井不動産レジデンシャル「タワーマンションの低層階と高層階」、2024年)
低層階(1〜4階)の特徴:価格が安く出入りが楽だが防犯・眺望に注意
(1) メリット:価格が安い、出入りが楽、災害時の避難が容易
低層階の主なメリットは以下の通りです:
価格が安い:
- 高層階と比較して数百万円安い
- 予算を抑えたい方に適している
出入りが楽:
- エレベーター待ち時間が短い、または階段で移動可能
- 小さな子供がいる家庭、荷物の多い買い物時に便利
災害時の避難が容易:
- 停電時もエレベーターに依存せず階段で避難可能
- 地震・火災時の避難が迅速
(2) デメリット:侵入リスク、眺望・日当たりが劣る、道路の騒音
低層階の主なデメリットは以下の通りです:
侵入リスク:
- 1階は特に侵入リスクが高い
- オートロック、防犯カメラ、窓の施錠強化が必須
眺望・日当たりが劣る:
- 周辺建物に遮られる可能性
- 内覧時に日当たりを確認
道路の騒音:
- 交通量の多い道路に面している場合、騒音が気になる
- 二重サッシ、防音カーテン等の対策を検討
(3) 向いている人:小さな子供がいる家庭、予算重視、高齢者
低層階が向いているのは以下のような方です:
- 小さな子供がいる家庭:階下への騒音を気にしなくて済む、出入りが楽
- 予算重視:価格が安く、コストを抑えられる
- 高齢者:階段での移動が可能、災害時の避難が容易
- 荷物の多い買い物が多い方:出入りが楽
(4) 1階の特別な注意点:オートロック・防犯カメラ・窓の施錠強化
1階は特に侵入リスクが高いため、以下のセキュリティ対策が必須です:
- オートロック:エントランスでの不審者チェック
- 防犯カメラ:共用部・専有部の監視
- 窓の施錠強化:補助錠、防犯フィルムの設置
- 植栽・塀:外部からの視線を遮る
中層階(5〜8階)の特徴:バランスが良く人気の階層、虫の侵入リスクも低い
(1) メリット:虫の侵入リスクが低い、日当たり確保、災害時も階段で避難可能
中層階の主なメリットは以下の通りです:
虫の侵入リスクが低い:
- 蚊・ハエ・ゴキブリ等の侵入が少ない(5階以上は特に少ない)
- 虫が苦手な方に適している
日当たり確保:
- 周辺建物に遮られにくく、日当たりが良好
- 洗濯物が乾きやすい
災害時も階段で避難可能:
- 停電時もエレベーターに過度に依存せず、階段での避難が可能
- 5〜6階なら10分程度で地上に到達
(2) デメリット:低層階と高層階の中間のため特筆すべき特徴が少ない
中層階の主なデメリットは以下の通りです:
特筆すべき特徴が少ない:
- 低層階のような価格の安さはない
- 高層階のような眺望の良さもない
- 「無難な選択」という印象
エレベーター待ち時間:
- 低層階よりはエレベーター待ち時間が長い
- ただし、高層階ほどではない
(3) 向いている人:バランス重視、虫が苦手な人、災害時の避難を重視する人
中層階が向いているのは以下のような方です:
- バランス重視:低層階・高層階のデメリットを避けたい
- 虫が苦手な人:蚊・ハエ・ゴキブリ等の侵入を避けたい
- 災害時の避難を重視:停電時も階段で避難可能な階層が良い
- 幅広い年齢層:若い世代から高齢者まで支持されている
(4) 5〜6階が特に人気の理由
5〜6階は、以下の理由で特に人気です:
- 虫の侵入リスクが低い(5階以上は蚊・ハエが少ない)
- 日当たりも確保でき、眺望もある程度良好
- 災害時も階段で避難可能(10分程度)
- 価格も高層階と比較して手頃
(出典: ウィローズ「中古マンション|高層階と低層階どっちが良い?」、2024年)
高層階(9階以上)の特徴:眺望・静寂性が魅力だが災害時の避難とコストに注意
(1) メリット:眺望最高、静寂性、日当たり良好、上階の騒音なし
高層階の主なメリットは以下の通りです:
眺望最高:
- 遠くまで見渡せる、夜景が美しい
- タワーマンションの高層階は特に圧巻
静寂性:
- 道路の騒音がほぼなし
- 風の音が聞こえる程度
日当たり良好:
- 1日中日当たりが良好
- 洗濯物がよく乾く
上階の騒音なし:
- 最上階は特に、上階からの生活音が一切ない
(2) デメリット:高価格、エレベーター待ち時間、災害時の避難困難、夏の暑さ
高層階の主なデメリットは以下の通りです:
高価格:
- 低層階と比較して数百万〜数千万円高い
- 固定資産税も高くなる
エレベーター待ち時間:
- ピーク時(朝・夕方)は数分待つことも
- 高齢者や小さな子供がいる家庭は不便
災害時の避難困難:
- 停電時はエレベーター停止、階段での避難が非常に困難
- 20階以上は特にリスクが高い
夏の暑さ:
- 最上階は特に、夏場の室温上昇が激しい
- 冷房費用が高くなる傾向
(3) 最上階の特別な注意点:室温上昇、冷房費用の増加
最上階は、以下の点に特別な注意が必要です:
室温上昇:
- 屋上からの日射熱により、夏場の室温が上昇
- 遮熱カーテン、屋上緑化等の対策を検討
冷房費用の増加:
- 室温が高いため、冷房を強めに使用
- 電気代が月数千円増加する場合も
(4) タワーマンション高層階の特有リスク(停電時のエレベーター停止)
タワーマンション(20階以上)の高層階は、以下の特有リスクがあります:
- 停電時はエレベーター停止、階段での避難が極めて困難
- 水道・ガスも停止する可能性(ポンプが動作しない)
- 災害時の備蓄(水・食料)が必須
まとめ:あなたのライフスタイルに合ったマンション階数の選び方
絶対的な「買ってはいけない階」は存在せず、各階にメリット・デメリットがあります。
ライフスタイル別の推奨階数:
- 小さな子供がいる家庭、高齢者、予算重視:低層階(2〜4階)
- バランス重視、虫が苦手、災害時の避難を重視:中層階(5〜6階)
- 眺望・静寂性重視、予算に余裕がある:高層階(9階以上)
階数選びのポイント:
- 内覧時に実際の眺望・日当たり・騒音を確認
- 災害時の避難経路を確認(階段の場所、エレベーターの台数)
- 将来のライフスタイル変化を考慮(子供の成長、高齢化)
階数が1階上がるごとに価格は約0.5%〜2.5%上昇するため、予算と優先事項を明確にし、複数の階層を比較検討してから決定しましょう。
