なぜマンションの正確な定義が重要なのか
不動産情報サイトで物件を探す際、「マンション」と「アパート」という言葉を何気なく使っていますが、「両者の違いは何か」「法律上の定義はあるのか」と疑問に感じたことはありませんか。実は、マンションとアパートには法律上の明確な定義がありません。不動産会社が独自の基準で分類しているため、同じ構造の建物でも「マンション」と呼ばれたり「アパート」と呼ばれたりすることがあります。
この記事では、マンションの定義、法律上の分類、建築基準と構造、アパートとの違い、物件選びの注意点を、SUUMO、三井のリハウス等の不動産情報サイトを参考に解説します。
この記事のポイント
- マンションは和製英語で、英語のmansionは「豪邸」の意味。一般的にはRC・SRC造等の耐火構造の集合住宅を指す
- 建築基準法や宅建業法には「マンション」の明確な定義はなく、不動産会社が独自の基準で分類している
- 一般的には構造(RC/SRC=マンション、木造/軽量鉄骨=アパート)と階数(3階建て以上=マンション)で区別される
- 分譲マンション購入時は区分所有法が適用され、専有部分と共用部分の権利関係を理解する必要がある
- 名称だけで判断すると誤解が生じるため、構造・設備・立地等の実質的な条件を確認することが重要
マンションの定義と語源
「マンション」という言葉は日常的に使われていますが、その定義と語源を正確に知っている方は少ないかもしれません。
(1) マンションは和製英語
語源: 「マンション」は和製英語です。英語のmansionは「豪邸」「大邸宅」を意味し、日本で使われる「マンション」とは異なります。
歴史: Wikipedia「マンション」によると、昭和30年代(1950年代後半〜1960年代前半)に、高級路線の集合住宅を「マンション」と銘打って売り出したのが由来とされています。それまで「アパート」と呼ばれていた集合住宅よりも高級なイメージを打ち出すため、この名称が使われました。
(2) 一般的な定義(RC・SRC造の集合住宅)
一般的な定義: マンションは、一般的にRC(鉄筋コンクリート)造・SRC(鉄骨鉄筋コンクリート)造等の耐火構造の集合住宅を指します。
特徴:
- 耐震性・耐火性・遮音性に優れる
- 3階建て以上の建物が多い
- エレベーターが設置されている場合が多い
参考:SUUMOジャーナル「マンションとは | SUUMO住宅用語大辞典」では、RC・SRC造等の耐火構造の集合住宅と説明されています。
(3) 法律上の明確な定義はない
重要なポイント: 建築基準法や宅地建物取引業法(宅建業法)には、「マンション」という用語の明確な定義はありません。不動産会社が独自の基準で「マンション」「アパート」を分類しています。
なぜ定義がないのか: 日本の法律では、「マンション」という用語ではなく、「共同住宅」「長屋住宅」という建築基準法上の分類が使われます(詳細は後述)。
法律上の分類と区分所有法
マンションを購入・居住する際、関連する主な法律があります。
(1) 区分所有法とは
正式名称: 「建物の区分所有等に関する法律」(昭和37年法律第69号)
概要: 区分所有法は、分譲マンション等の集合住宅における専有部分と共用部分の権利関係、管理組合の運営ルールを定めた法律です。
適用対象: 「2以上の区分所有者が存する建物」が対象です。つまり、分譲マンションを購入した場合に適用されます。
参考:三井不動産レジデンシャルサービス「区分所有法 | 管理組合の基礎知識」で詳細が解説されています。
(2) 専有部分と共用部分の権利関係
専有部分: 区分所有建物のうち、区分所有者が単独で所有している部分です。天井・床・壁で囲まれ、独立した出入口がある住戸の内部空間を指します。
共用部分: エントランス、エレベーター、共用階段、廊下、駐車場等、区分所有者全員で共有している部分です。
権利関係:
- 専有部分は区分所有者が自由に使用・処分できる
- 共用部分は区分所有者全員の共有財産であり、勝手に改造・占有できない
- 管理組合が共用部分の管理・維持を行う
(3) 分譲マンションと賃貸マンションの法的扱いの違い
分譲マンション購入時: 区分所有者となり、区分所有法が適用されます。管理組合に加入し、管理費・修繕積立金を支払う義務があります。
賃貸マンション入居時: 賃借人であり、区分所有者ではありません。基本的に借地借家法が適用されます。管理組合への加入義務はなく、管理費・修繕積立金の支払い義務もありません(家賃に含まれている場合があります)。
参考:ゴールドオンライン「「マンション」と「アパート」の違いは? 法律上の定義を解説」で、賃貸と分譲の法的扱いの違いが説明されています。
(4) 2026年の区分所有法改正
改正の背景: 築年数が古いマンションの増加により、建物の老朽化、管理組合の運営困難、建替えの合意形成の難しさ等が課題となっています。
改正のポイント(2026年予定):
- マンション管理の円滑化
- 区分所有者の所在不明時の対応
- 建替え・解体の円滑化
参考:エスコ「区分所有法 2026年の改正ポイントとその影響について解説」で詳細が解説されています。
アパートとの違いと構造による分類
マンションとアパートの違いは、一般的に構造と階数で区別されますが、法律上の明確な定義はありません。
(1) 構造による分類(RC・SRC・木造・軽量鉄骨)
一般的な分類基準:
| 分類 | 構造 | 特徴 |
|---|---|---|
| マンション | RC(鉄筋コンクリート)造、SRC(鉄骨鉄筋コンクリート)造 | 耐震性・耐火性・遮音性に優れる。建築コストが高い |
| アパート | 木造、軽量鉄骨造 | 建築コストが低い。遮音性はマンションに劣る |
注意点: 上記は一般的な分類であり、不動産会社により基準が異なります。例えば、鉄骨造でも3階建て以上であれば「マンション」と呼ばれることがあります。
参考:UR賃貸住宅「アパートやマンションの違いは?分け方の基準やそのほかの住宅の種類」で、構造による分類が説明されています。
(2) 階数による目安(3階建て以上がマンション)
一般的な目安:
- マンション:3階建て以上
- アパート:2階建てまで
理由: 建築基準法により、3階建て以上の共同住宅は耐火建築物または準耐火建築物とする必要があります。そのため、3階建て以上の集合住宅は必然的にRC造・SRC造・鉄骨造等の堅牢な構造となり、「マンション」と呼ばれることが多くなります。
注意点: 2階建てでもRC造の集合住宅を「マンション」と呼ぶ場合や、3階建ての鉄骨造を「アパート」と呼ぶ場合もあり、統一的な基準はありません。
(3) 共同住宅と長屋住宅の法律上の分類
集合住宅は法律用語ではない: 「集合住宅」「マンション」「アパート」は法律用語ではなく、俗称です。建築基準法では、以下の2種類に分類されます。
共同住宅: 各住戸がエントランスホール・廊下・階段等の共用部分を通じてアクセスできる構造の住宅。一般的なマンション・アパートはこれに該当します。
長屋住宅: 各住戸の玄関が道路や敷地内の外部通路に直接接し、独立した玄関から直接出入りできる構造の住宅。テラスハウス、タウンハウス等がこれに該当します。
参考:三井のリハウス「集合住宅とは?マンション・アパートとの違いや定義を解説」で詳細が解説されています。
物件選びで注意すべきポイント
マンションとアパートの定義が不動産会社ごとに異なるため、物件選びでは以下の点に注意しましょう。
(1) 名称だけで判断するリスク
リスク: 「マンション」という名称だけで「高品質」「遮音性が高い」と判断すると、期待外れになる可能性があります。逆に、「アパート」でも高品質な物件は存在します。
対策: 物件名だけでなく、以下の情報を確認しましょう。
- 構造(木造、鉄骨造、RC造、SRC造)
- 築年数
- 設備(エレベーター、宅配ボックス、オートロック等)
- 立地(駅距離、商業施設、騒音等)
(2) 構造・設備・立地の実質的な確認
確認すべきポイント:
| 項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 構造 | RC造・SRC造は遮音性が高い。木造・軽量鉄骨造は遮音性が劣る |
| 築年数 | 築10年以内は設備が新しい。築20年以上は大規模修繕の時期 |
| 設備 | エレベーター、宅配ボックス、オートロック、駐車場の有無 |
| 立地 | 駅からの距離、スーパーマーケット、病院、学校へのアクセス |
| 管理状態 | 共用部分の清掃状態、修繕履歴(分譲マンションの場合) |
おすすめ: 内見時に、実際に部屋の中で生活音を確認したり、共用部分の清掃状態をチェックしたりすることが重要です。
(3) 管理組合の運営状況(分譲マンションの場合)
分譲マンション購入時の確認ポイント:
- 管理組合の運営状況(総会の開催頻度、議事録の有無)
- 管理費・修繕積立金の月額と残高
- 長期修繕計画の有無と内容
- 修繕履歴(大規模修繕の実施状況)
- 滞納者の有無
なぜ重要か: 管理組合の運営が適切でないと、修繕積立金が不足したり、共用部分の維持管理が行き届かなくなったりする可能性があります。
まとめ:名称にとらわれない物件選びのコツ
マンションは、一般的にRC・SRC造等の耐火構造の集合住宅を指しますが、建築基準法や宅建業法には明確な定義がなく、不動産会社が独自の基準で分類しています。一般的には構造(RC/SRC=マンション、木造/軽量鉄骨=アパート)と階数(3階建て以上=マンション)で区別されますが、統一的な基準はありません。
分譲マンションを購入する場合は区分所有法が適用され、専有部分と共用部分の権利関係を理解する必要があります。賃貸マンションの場合は区分所有者ではないため、借地借家法が適用されます。2026年には区分所有法の改正が予定されており、マンション管理・再生の円滑化が図られる見込みです。
物件選びでは、「マンション」という名称だけで判断すると誤解が生じる可能性があります。構造・築年数・設備・立地等の実質的な条件を確認し、内見時に生活音や共用部分の清掃状態をチェックしましょう。分譲マンションの場合は、管理組合の運営状況や長期修繕計画の確認も重要です。名称にとらわれず、ご自身の生活スタイルや予算に合った物件を選びましょう。
