緯度経度が不動産調査で重要な理由
不動産を購入する際、物件の正確な位置情報を把握することは、ハザードマップでのリスク確認や周辺環境の調査に欠かせません。国土地理院が提供する地理院地図を活用すれば、緯度経度を無料で簡単に取得できます。
この記事のポイント
- 地理院地図(maps.gsi.go.jp)で地図をクリックするだけで緯度経度・標高を無料取得
- 位置参照情報ダウンロードサービスで住所と緯度経度の対応表をダウンロード可能
- 2024年に日本測地系2024(JGD2024)に名称変更(定義・データは不変)
- 世界測地系と日本測地系の違いに注意、2002年以降は世界測地系が標準
- 不動産調査では緯度経度でハザードマップ照合、標高確認、測量成果活用が可能
(1) 物件位置の正確な特定
住所だけでは特定しにくい物件の位置を、緯度経度で正確に把握できます。特に地番表示のみの土地や、住所が曖昧な物件の場合、緯度経度による位置特定が有効です。
地理院地図を使えば、地図上でクリックするだけで緯度経度と標高を取得でき、不動産会社や売主との情報共有がスムーズになります。
(2) ハザードマップとの照合に活用
ハザードマップは緯度経度で検索できるものが多く、物件の災害リスク(洪水、土砂災害、津波等)を正確に確認できます。住所検索では範囲が広すぎて正確なリスクが分かりにくい場合でも、緯度経度なら地点を限定して確認できます。
緯度経度と測地系の基礎知識
(1) 緯度と経度の定義
国土地理院公式サイトによると、緯度と経度は以下のように定義されます。
- 緯度: 赤道を0度とし、北極を北緯90度、南極を南緯90度とする角度
- 経度: 本初子午線(グリニッジ子午線)を0度とし、東西それぞれ180度までの角度
日本の位置は、北緯20-46度、東経123-154度の範囲に収まります。
(2) 世界測地系と日本測地系の違い
日本では2002年に測地系が切り替わりました。
| 測地系 | 使用期間 | 楕円体 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 日本測地系 | 2002年まで | ベッセル楕円体 | 日本独自、数百m誤差 |
| 世界測地系 | 2002年以降 | GRS80楕円体 | 国際標準、GPS準拠 |
(出典: 国土地理院)
2002年以前の古いデータを使用する場合は、測地系の違いにより数百メートルの誤差が発生する可能性があります。
(3) 日本測地系2024(JGD2024)とは
国土地理院によると、2024年に日本測地系2011(JGD2011)から日本測地系2024(JGD2024)に名称変更されました。ただし、定義・データは不変で、実務上の影響はありません。
国土地理院の地理院地図での緯度経度検索方法
(1) 地図をクリックして座標を取得する方法
地理院地図の使い方によると、以下の手順で緯度経度を取得できます。
- 地理院地図にアクセス
- 調べたい地点をクリック
- ポップアップに緯度経度・標高が表示される
- 画面左下の矢印をクリックすると、画面中心の座標が表示される
表示形式は度分秒形式と10進法形式の両方に対応しており、設定で切り替え可能です。
(2) スマートフォンのGPS機能を使った取得方法
スマートフォンの地理院地図アプリでは、GPS機能を使って現在位置の緯度経度・標高をワンタップで確認できます。
- 地理院地図アプリを起動
- GPSアイコンをタップ
- 現在位置の緯度経度・標高が表示される
現地調査時に即座に座標を記録できるため、不動産調査で便利です。
(3) 住所から緯度経度に変換する位置参照情報サービス
国土交通省の位置参照情報ダウンロードサービスを使えば、住所と緯度経度の対応表を無料でダウンロードできます。
データの種類:
- 町丁目レベル: 全国カバー、住所の大字・町丁目単位
- 街区レベル: 都市計画区域内、住所の街区・番地単位
複数の物件を一括で座標変換したい場合に有効です。
(4) 緯度経度の入力形式(度分秒・10進法)
地理院地図操作マニュアルによると、地理院地図では以下の3種類の入力形式に対応しています。
- 10進法:
35.0821 135.193 - カンマ区切り:
35.0821,135.193 - 度分秒:
35度1分30秒 135度2分12秒
システムに応じた正しいフォーマットで入力してください。
不動産調査での緯度経度活用例
(1) 物件位置の確認と周辺環境の把握
地理院地図で物件の緯度経度を取得すれば、以下の情報を確認できます。
- 標高: 浸水リスクの評価
- 地形: 傾斜地、低地、台地の判別
- 周辺施設: 学校、病院、商業施設との距離
(2) ハザードマップでのリスク確認
ハザードマップは緯度経度で検索できるものが多く、以下の災害リスクを正確に確認できます。
- 洪水浸水想定区域
- 土砂災害警戒区域
- 津波浸水想定区域
- 液状化危険度
住所検索では範囲が広すぎて正確なリスクが分かりにくい場合でも、緯度経度なら地点を限定して確認できます。
(3) 標高の確認と浸水リスクの評価
地理院地図では、地図をクリックするだけで標高を確認できます。標高が低い土地は、豪雨時の浸水リスクが高くなる可能性があるため、事前に確認することが重要です。
(4) 測量成果の活用と境界座標の取得
測量成果電子納品境界座標入力支援サービスを使えば、マップ上でダブルクリックするだけで度分秒形式の座標を取得できます。測量士や土地家屋調査士との情報共有に活用できます。
測地系・座標系の注意点と使い分け
(1) 2002年以前のデータは日本測地系に注意
2002年以前の地図データは日本測地系(日本測地系2000以前)の可能性があります。世界測地系への変換が必要で、変換せずに使用すると数百メートルの誤差が発生します。
古い測量図面や登記資料を使用する際は、測地系を確認してください。
(2) 平面直角座標系との違いと用途
国土地理院の平面直角座標系解説によると、平面直角座標系は日本を19地域に分割し、各地域で平面座標を定義した測量用座標系です。
| 座標系 | 用途 | 特徴 |
|---|---|---|
| 緯度経度 | 地図検索、GPS | 球面座標、全世界で使用 |
| 平面直角座標 | 測量、土木工事 | 平面座標、日本を19地域に分割 |
不動産調査では緯度経度、測量では平面直角座標が一般的です。
(3) 座標系の種類(緯度経度・平面直角・地心直交)
座標系には以下の3種類があります。
- 緯度経度: 地図検索、GPS、ハザードマップ照合に使用
- 平面直角座標: 測量、土木工事、都市計画に使用
- 地心直交座標: 人工衛星測位、高精度測量に使用
用途に応じた使い分けが必要です。
(4) 測地系変換が必要なケース
以下のケースでは測地系変換が必要です。
- 2002年以前の古い地図データを使用する場合
- 日本測地系の測量図面を世界測地系に変換する場合
- 古い登記資料の座標を現在の測地系に合わせる場合
国土地理院の座標変換ツールを使えば、公式に変換できます。
国土地理院ツールの効果的な活用法
国土地理院のツールを不動産調査で効果的に活用するポイントは以下の通りです。
- 地理院地図: 物件位置の確認、標高・地形の把握、周辺環境の調査
- 位置参照情報サービス: 住所から緯度経度への一括変換
- 座標変換ツール: 古い測量図面の測地系変換
- 境界座標入力支援サービス: 測量成果の座標取得
これらのツールを組み合わせることで、正確な物件情報を把握し、リスクを最小限に抑えた不動産購入が可能になります。
まとめ
国土地理院の地理院地図を使えば、地図をクリックするだけで緯度経度・標高を無料で取得できます。位置参照情報ダウンロードサービスを使えば、住所と緯度経度の対応表を無料でダウンロード可能です。
2024年に日本測地系2024(JGD2024)に名称変更されましたが、定義・データは不変で実務上の影響はありません。世界測地系と日本測地系の違いに注意し、2002年以前のデータは測地系変換が必要です。
不動産調査では、緯度経度でハザードマップ照合、標高確認、測量成果活用が可能です。物件位置の正確な特定、災害リスクの確認、浸水リスクの評価に活用してください。
測量士や土地家屋調査士等の専門家と連携しながら、信頼できる物件情報を収集しましょう。
