広い土地の固定資産税が高額になる理由
広い土地を所有していると、「固定資産税が高すぎる」と感じる方は少なくありません。
この記事では、広い土地の固定資産税が高額になる理由、計算方法、軽減措置、有効活用の方法を、東京都主税局など公式情報を元に解説します。
固定資産税の負担を適切に軽減する方法を理解できるようになります。
この記事のポイント
- 固定資産税は評価額×1.4%(標準税率)で計算され、面積に比例する
- 200m²以下の住宅用地は評価額の1/6、超過分は1/3に軽減される
- 更地にすると住宅用地の特例が適用されず、固定資産税が大幅に上がる
- 賃貸アパート経営なら戸数×200m²まで1/6軽減を活用できる
- 固定資産税評価額が適正でない場合は審査の申出が可能
(1) 固定資産税額は面積に比例する
固定資産税は、土地の固定資産税評価額に税率(標準税率1.4%)を掛けて計算されます。
評価額は土地の面積に比例するため、土地が広ければ広いほど固定資産税額も高くなります。
ただし、住宅用地には軽減措置があり、面積だけでなく用途によっても税額が大きく変わります。
(2) 200m²を超えると軽減率が下がる(1/6から1/3へ)
住宅用地の特例では、200m²以下の部分(小規模住宅用地)は課税標準額が1/6に軽減されます。
200m²を超える部分(一般住宅用地)は、課税標準額が1/3に軽減されます。
つまり、広い土地では200m²を超える部分の軽減率が下がるため、固定資産税が高額になりやすいのです。
固定資産税の計算方法と評価額の仕組み
(1) 固定資産税の計算式(評価額×税率1.4%)
固定資産税の基本的な計算式は以下の通りです。
固定資産税額 = 固定資産税評価額 × 税率(標準税率1.4%)
ただし、住宅用地の場合は、課税標準額が軽減されるため、実際の計算式は以下のようになります。
固定資産税額 = 課税標準額(評価額×軽減率)× 税率1.4%
(2) 固定資産税評価額とは(時価の約70%が目安)
固定資産税評価額は、市町村が3年ごとに評価する固定資産の価格です。
時価の約70%が目安とされており、路線価や土地の形状、立地等を考慮して算定されます。
奥行価格補正や不整形地補正などで調整されるため、同じ面積でも土地の形状によって評価額が異なる場合があります。
(3) 評価替えの時期(3年ごと、直近は2024年度)
固定資産税評価額は3年に1度見直しが行われます(評価替え)。
直近の評価替えは2024年度で、次回は2027年度です。
地価上昇時には評価額も上がるため、固定資産税額も増加する可能性があります。執筆時点(2025年)の情報として参考にし、最新情報は市町村の固定資産税担当課に確認することを推奨します。
広い土地の評価と住宅用地の特例
(1) 小規模住宅用地(200m²以下の部分は評価額1/6)
小規模住宅用地とは、住戸1戸あたり200m²以下の住宅用地部分です。
この部分は、課税標準額が固定資産税評価額の1/6に軽減されます。
例えば、評価額1,000万円の200m²の土地の場合、課税標準額は約167万円(1,000万円÷6)となり、固定資産税額は約2.3万円(167万円×1.4%)です。
(2) 一般住宅用地(200m²超の部分は評価額1/3)
一般住宅用地とは、住戸1戸あたり200m²を超える住宅用地部分です。
この部分は、課税標準額が固定資産税評価額の1/3に軽減されます。
例えば、評価額1,500万円の300m²の土地の場合、200m²までは1/6、超過100m²は1/3で計算します。
| 面積 | 評価額 | 軽減率 | 課税標準額 | 固定資産税額 |
|---|---|---|---|---|
| 200m² | 1,000万円 | 1/6 | 167万円 | 2.3万円 |
| 100m²(超過分) | 500万円 | 1/3 | 167万円 | 2.3万円 |
| 合計300m² | 1,500万円 | - | 334万円 | 4.6万円 |
(3) 更地と住宅用地の固定資産税額の違い
更地(建物が建っていない土地)には、住宅用地の特例が適用されません。
例えば、評価額1,500万円の300m²の土地の場合:
- 住宅用地の場合: 約4.6万円(上記表の通り)
- 更地の場合: 約21万円(1,500万円×1.4%)
更地にすると固定資産税が約4.6倍に跳ね上がるため、住宅を解体する際は注意が必要です。
(4) 住宅用地の特例が適用される条件と制限
住宅用地の特例が適用されるには、以下の条件を満たす必要があります。
- 土地の上に住宅が建っていること
- 住宅用地は床面積の10倍までが上限
- 専用住宅・併用住宅(店舗併用住宅など)が対象
床面積の10倍を超える部分は、住宅用地の特例が適用されないため、広すぎる敷地は軽減対象外となる場合があります。
固定資産税を軽減する方法と軽減措置
(1) 住宅を建てて住宅用地の特例を活用
更地や駐車場として使用している土地に住宅を建てることで、住宅用地の特例を活用できます。
200m²以下の部分は評価額の1/6、超過分は1/3に軽減されるため、固定資産税を大幅に抑えられます。
自己使用の住宅だけでなく、賃貸住宅でも適用されるため、有効活用の選択肢として検討できます。
(2) 固定資産税評価額の審査の申出
固定資産税評価額が適正でないと感じた場合、納税通知書受領後3ヶ月以内に審査の申出ができます。
審査の申出には合理的な理由(周辺土地との評価額の著しい乖離など)が必要です。
詳しくは市町村の固定資産税担当課または税理士に相談することを推奨します。
(3) 新築住宅の減税措置(2026年3月まで延長)
新築住宅を建てた場合、一定期間、固定資産税(家屋部分)が減額される措置があります。
2024年度税制改正で、この減税措置は2026年3月まで延長されています。
具体的な要件や減額期間は、国税庁や市町村の税務窓口で確認できます。
広い土地の有効活用で固定資産税を抑える選択肢
(1) 賃貸アパート経営(戸数×200m²まで1/6軽減)
賃貸アパートを建てると、戸数×200m²まで小規模住宅用地として1/6軽減が適用されます。
例えば、10戸のアパートなら2,000m²(200m²×10戸)まで1/6軽減を受けられます。
広い土地を活用しながら、固定資産税を大幅に軽減できる方法として人気があります。ただし、建築費用や経営リスクも考慮する必要があります。
(2) 駐車場・コインパーキング経営
駐車場やコインパーキング経営は、初期投資が比較的少なく、土地活用を始めやすい選択肢です。
ただし、駐車場は住宅用地の特例が適用されないため、固定資産税は更地と同様に高くなります。
固定資産税負担を考慮すると、収益性の見極めが重要です。
(3) 不要部分の分筆・売却
不要な部分を分筆・売却すれば、所有面積が減り固定資産税負担は軽減されます。
ただし、分筆には測量費用や登記費用がかかるため、費用対効果の検討が必要です。
税理士や土地家屋調査士への相談を推奨します。
(4) それぞれの活用策のメリット・デメリット比較
| 活用策 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 賃貸アパート経営 | 1/6軽減活用、家賃収入 | 建築費用、空室リスク |
| 駐車場経営 | 初期投資少、転用しやすい | 住宅用地特例なし、収益性低い |
| 分筆・売却 | 固定資産税負担減、現金化 | 分筆費用、土地が減る |
それぞれの活用策には一長一短があるため、自身の状況に合わせて選択することが重要です。
まとめ:専門家への相談で適切な対策を
広い土地の固定資産税は、評価額×1.4%で計算され、200m²を超えると軽減率が下がるため高額になりやすいです。
住宅用地の特例を活用すれば、200m²以下の部分は評価額の1/6、超過分は1/3に軽減されます。賃貸アパート経営なら戸数×200m²まで1/6軽減を受けられます。
更地にすると住宅用地の特例が適用されず、固定資産税が大幅に上がるため、住宅を解体する際は注意が必要です。
固定資産税の軽減や土地活用は個別事情により異なるため、税理士や不動産コンサルタントへの相談を推奨します。信頼できる専門家のアドバイスを受けながら、適切な対策を立てましょう。


